アイソトープの利用はいつ頃から? わかりやすく解説!

科学の進歩

アイソトープの存在もまた原子の不思議の1つです。
水素爆弾のところで重水素・三重水素というのがでてきました。

くりかえしますと、ふつうの水素では原子核は1個の陽子で、そのまわりを2個の電子がまわっています。

ところが重水素の原子核は、1個の陽子のほかに1個の中性子を持っています。
また、三重水素には1個の陽子、2個の中性子がふくまれています。

そこで、重水素、三重水素の原子量はふつうの水素のそれぞれほぼ2倍、3倍になります。

このように、原子量は違っても.科学的な性質(たとえば酸素と結合して水をつくるといった)がほとんどまったく同じ物質をイギリスのフレデリック=ソディは同位体(アイソトープ)と名づけました。


はじめのころは、ごく特別なものだけに同位元素があると考えられていましたが1919年に、イギリスのフランシス=ウィリアム=アストンは原子の重さ(原子量)のわずかの違いを区別できる質量分析器というたいへん便利な装置を開発、これを使ってほとんどすべての元素が同位体をもっていることをつきとめました。

ソディは1921年、アストンは1922年いずれも同位体の研究でノーベル化学賞をうけました。
さて、同位体の中には放射能をもっているものもあります。

フランスのアンリ=ベクレルが1896年、ウラン化合物の放射能を発見ついで1898年、同じくフランスのピエール=キュリー・マリー=キュリー夫妻は放射能をもつ元素ポロニウムとラジウムを発見し、分離することに成功しました。

これらの放射性元素は、放射線で(アルファ線・ベータ線・ガンマ線)をはなちながらしだいに壊れていき、別の元素にかわってしまいます。

たとえば、ラジウムは鉛にかわってしまいます。

元素は不変なもの、と長いあいだ信じられていたことが放射性元素の発見でくつがえされてしまったのです。

アルファ線というのは、ヘリウムの原子核(陽子2、中性子2)の流れです。
アルファ線がでて、原子核が壊れることがアルファ崩壊といいます。

アルファ崩壊が起こると、もとの原子の原子番号は2、質量数ぱ4だけ少なくなります。

ベータ線は、中性子が陽子にかわるときに出る電子の流れでベータ線が出てベータ崩壊が起こると陽子が1つ増え中性子が1つ減ることになりますのでもとの原子の原子番号は1つだけ増え質量数はかわりません。

ガンマ線は、透過力の非常に強い、一種の電磁波です。

さて、放射性元素から出る放射線は、さまざまな利用面か持っています。
たとえば、ラジウムから出るガンマ線はいまでもガンの治療などに用いられています。

しかし、利用の道が広いのは放射性同位体です。



たとえば、放射能をもっているウラン235は放射能を持たないウラン238への放射同位体こそがその核分裂性を利用して、原爆や水爆をつくりまた原子力発電をおこなわせることについてはすでに述べました。

このような放射性同位体は、原子炉の中などで人工的につくりだすこともできます。

たとえば、放射能をもたないウラン238に中性子をあてるとプルトニウム239という放射能をもった人工放射性同位体が得られます。

これも原爆で原子力発電の核燃料に用いられます。

とくに用途の広い放射性同位体に、原子炉の中で鉄に中性子をあてて得られるコバルト60です。

これに強いガンマ線を放出し、しかも、ラジウムよりたいへん多量に供給できるのでラジウムのかわりとして、ガンの治療にさかんに利用されています。

またコバルト60のガンマ線を使って、農作物の品腫改良もさかんにすすめられています。

たとえばイネの種にコバルト60からのガンマ線をあてるといろいろなかわりもの(突然変異体)ができますがその中から優秀なものを選び出していくというわけです。

日本の農林省農業技術研究所も茨城県大宮町にガンマーフィールドという大規模な、放射線による農作物の品種改良試験農場をもっておりすでにいくつかの輝かしい成果をあげています。

このガンマ線は工業界でもさかんに利用されています。

たとえば合成繊維やプラスチックをつくるときにこの放射線をあてると、ふつうでは起こりにくい化学反応が簡単に進行していろいろなめずらしい、新しい利用面をもったものがつくれるのです。

日本原子力研究所の高崎研究所は、放射線の工業への利用を専門に研究しているところです。

同位体の中にはトレーサー(追跡子)として使われるものもあります。
放射性同位体のリン32・ヨウ素132などです。

リンは骨の成分であり、ヨウ素は甲状腺から分泌されるサイロキシンというホルモンの成分です。

そこで、放射性のリンやヨウ素を体内に入れることによってリンやヨウ素がどのような経過で骨やホルモンの中にふくまれていくかつまりは生体のからくりがつかめるというわけです。

また、炭素14も同じような目的につかうことができます。
ふつうの炭素は原子量が12ですから、炭素14はそれよりも重い同位体です。
この重い炭素をふくむ二酸化炭素をつくり、これを植物に吸わせます。

すると、植物が二酸化炭素と水と太陽光線とからぶどう糖でんぷんなどをつくりあげる光合成のしくみが炭素14の行方を手がかりにして解き明かされるというわけです。

また古代の化石植物(あるいは建造物)などにふくまれる炭素14を分析してその年代を知る放射線年代測定法にもさかんに利用されています。




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