分裂法
体が1つの細胞からできている原生動物では、よく1匹の体がふたつにわかれて、2匹になることがあります。
この増えかたを分裂法と言います。
ゾウリムシでは、体が横にくびれて2匹になりまた、その各々が2ひきにわかれる、というふうに増えていくので、しばらくすると、たいへんな数になってしまいます。
また、トリパノゾーマという原生動物はバナナのような形をしていますが、この動物は体が縦に裂けて2匹になります。
出芽法
動物のなかには、植物のように体から芽を出して増えるものがあります。
このような増えかたを、出芽法と呼んでいます。
池の底の落ち葉やくち木などを見ると小さなヒドラという植物が、くっついていることがあります。
ヒドラは体の先に、ふつう6、7本の細長い触手をヤナギの枝のようにたらしている動物です。
このヒドラは体の一部から、ちょうど木の芽のようなふくらみを出し、やがてこれが成長すると触手ができ、はなれて別の体になります。
海には出芽法で増える動物がたくさんいます。
サンゴチュウはその代表的なもので小さいイソギンチャクのようなものが、つぎつぎと芽を出して増えしかも、親の体からはなれないで、体の中が互いにつながっています。
このように、たくさんの体がつながって生活しているものを群体と呼んでいます。
海の岩や船の底などについているコケムシやホヤなども出芽法で増えます。
淡水に住むコケムシも群体をつくりますが、これらにはキチン質の殻で包まれた特別の芽がつくられることがあります。
この芽はスタトブラストとよばれ乾かしても低い温度にさらしても生きていて水にもどし適当な温度にしておくと、体が開いて芽ができます。
池や沼は、海と違って、夏の日でりで干上がったり冬の寒さのために群体が死んでしまうことがありますが、この特別の芽で、自然の激しい変化にたえていくことができるのです。
再生
カニの足やトカゲの尾を切るとやがて、なくなった部分が再びはえてきて、もと通りになってしまいます。
このように、なくなったものが再びできることを再生と言います。
この再生が、動物によっては1つの増えかたとなることがあります。
ヒトデなどは腕を切ってばらばらにし、海にもどしておくと1つ1つの腕がもと通りに再生して、たくさんのヒトデになることがあります。
また、小川の石の下などに住むプラナリアという長さ2センチほどの動物は、体をかみそりの刃で横にいくつかに切りはなすと1週間もするうちにそれぞれが1匹のプラナリアになってしまいます。
世代の交代
同じ動物が一生のあいだに、ある時期は有性生殖、他の時期は無性生殖で増えるというように違った増えかたを繰り返すことを世代の交代と呼んでいます。
ふつうの有性生殖と単為生殖を繰り返すことも世代の交代の1つとしてふくめられています。
ミズクラゲの世代の交代
ミズクラゲはクラゲ形をした親に卵子や精子ができ、これらが水中に出されると受精して小さなプラヌラという幼生になります。
プラヌラは有性生殖によって生まれたわけです。
このプラヌラは、やがて岩にくっついてヒドラのような形のものにかわります。これをスキフラと言います。
スキフラは、やがていくつにも体がくびれて上のほうから1つ1つはなれて泳ぎだします。
これはクラゲを小さくしたような形で、エフィラと言います。
スキフラからエフィラになるのは、無性生殖です。
エフィラはそのまま成長して、親クラゲになっていきます。
ゴカイの世代の交代
ゴカイの仲間は海岸の砂の中に巣をつくって、その中で生活しています。
このゴカイのある種類では時期がくると体のうしろ半分が切れて、いっせいに泳ぎだします。
そして、それぞれの部分が、なくなった部分を再生して、もと通りになるので、1匹から2匹に増えたことになります。
それで、これは無性生殖の1つと考えることができます。
おもしろいことに、このようなことが早く起きると2匹のゴカイがつながったような形になってしまいます。
泳ぎ出したほうの体は、めすならば卵子を、おすならば精子を出したあと、死んでしまいます。
しかし、受精したたまごは成長して立派にゴカイになります。
これは、ふつうの有性生殖です。
このように、ゴカイの場合は少しかわっていますが、やはり、世代の交代と考えることができます。
動物の増える割合
ゾウリムシのように、1匹が2匹になり、2匹が4匹、4匹が8匹という割合で増えたとしたら、ゾウリムシを飼っているいれものは、たちまち、ゾウリムシでいっぱいになってしまいます。
しかし、実際の自然界では、あらゆる動物はそうどんどん増えていきません。
魚なども、あれほどたくさんのたまごを生んでも、そのうち、ごくわずかしか親になることができません。
大きくなるまでに、ほかの大きな動物に食べられたり、たまごがみな育つほどのえさもないのです。
そのうえ病気になったり台風や洪水など、いろいろな災害にもみまわれます。
こんなわけで、動物は決して理屈通りには増えません。
鳥や獣では、親が于どもの小さいときには、えさをやったり、乳を飲ませたり、また敵からまもってやるので少ししか子を生まなくても、それらが、わりあいによく育ちます。
しかし、魚や昆虫のように、子の面倒を見ないものは、たくさんのたまごを生んでおかないと子が全滅してしまう恐れがあるわけです。
このように、自然界では、お互いにたいへんよく、つりあいがとれるようになっています。