隔離説・純系説・突然変異脱・反復説・定向進化説とは?

そのほかの進化説

ダーウィンの学説が発表されるとイギリスの学会はもちろんのこといっぱんの社会にも、大きな影響をあたえました。

その後、イギリス以外の国では、自然選択説とは違ったいろいろな進化説があらわれてきました。


新ダーウィン説

ドイツのワイズマン(1834~1914)は、生物が生まれてから後にできた新しい体の性質は、子孫には伝わらないと考え、自然選択だけを進化の大事な原因と考えていました。

このような考えかたは、ダーウィンの進化説の一部をみとめ一部を捨てた考えかたであるために、新ダーウィン説とよばれています。

隔離説

ドイツのワグナー(1823~1887)ははじめ「生物が地理的に分け隔てられている(隔離)ことが自然選択を促す原因である」と考えていました。

しかし後には「生物が地理的に分け隔てられて、新しい集団をつくることだけが
進化のおもな原因である」と考えるようになりました。

オーストラリアなどのように、海でへだてられている場所にだけ見られる
カンガルーやフクロウサギなどのような
特別の生物が生まれてきた理由を証明するには、都合のよい説です。

しかし、大陸の複雑な生物については、この考えかただけでは証明することがでません。

純系説

オランダのヨハンセン(1857~1927)はインゲンを使って実験し、つぎのような結果をえました。

インゲンといっても、種の形や性質はいろいろあります。
ですから、ふつうに栽培すると、いろいろな種ができます。

しかし、たとえば重い種だけを選んで栽培を繰り返すとはじめのうちは、だんだん重い種になっていきます。
そのうちに、いくら努力しても、ある程度以上には重くなりません。

そこで彼は、このかわらなくなった性質を生物がもっていたもともとの性質と考え、これを純系とよびました。

そして「生物が、一時的にかわった性質や形をもったりして少しずつかわるということは、進化には関係がない」と考えました。

このようなことから、彼は「純系だけが子孫に伝わり、これが進化のもとになる」と説きました。

これを、ふつう、純系説とよんでいます。

突然変異脱

これは、オランダのド=フリース(1848~1935)によって唱えられました。

彼は、オオマツヨイグサやサトウダイコンなどについて人為選択の実験をしているうちに「生物には、まったく体つきの違うものが突然あらわれ、それが、子孫にまで伝わることがある」ということに気づきました。

そこで彼は「新しい種は、体の小さな変化が積み重なってできたものではない」と考えました。

そして進化は、突然にあらわれた変化(突然変異)のために起こるのだと考えました。
このような考えかたを、突然変異説とよんでいます。

この考えかたによれば、生活に都合のよい突然変異を受けたものは生存競争に打ち勝って生き残り、その変化は子孫に伝えられて新しい種を生み出すというのです。

これは、遺伝学の知識や成果をもとにしているものでこんにちの遺伝学の、大事な基礎になっています。



反復説

ド=フリースと同じころ、ドイツでは、いろいろな学者が進化についての考えかたを、発表しました。

なかでも、ヘッケル(1834~1919)は、ダーウィンの進化説を熱心に支持していろいろな生物の親類関係を、系統樹にあらわす仕事を続けていました。

そのうちに、彼は「生物の1つ1つの個体が成長していく道すじ(個体成長)はその生物の先祖から、現在までにかわってきた道すじ(系統発生)を繰り返してあらわれている」ことに気づきました。

進化について、ヘッケルのような考えかたを、反復説と呼んでいます。
この考えは、化石を古いものから順序正しくならべたとき途中の化石の記録が抜けているような場合、その変化を知ろうとするのにたいへん役立ちます。

また、その繰り返しかたにも、いろいろな例があります。
そのために、このような考えかたを否定している人もあります。

しかし、系統発生が、なんらかの形で個体発生に影響をあたえているという意味では、この考えかたは、充分に生きていると言えます。

定向進化説

ヘッケルに続いて、ドイツでは、コープ (1840~1897)・ワーゲン(1841~1900)、オーストリアではチッテル(1839~1904)などが、化石を材料にして生物の親類関係を明らかにすることにつとめていました。

とくにコープは、化石にある変化があらわれるとその方向にむかって、しだいに変化か強めていく性質があるということに気がつきました。

生物のこのような変化を、定向進化とよびました。

ゾウの牙や鼻が長くなったり、馬の4本の足指が、両はしからしだいに退化してついに1本になるといったような変化はいずれも定向進化によっておこなわれたと考えています。

この性質は、はじめは、生物の環境とは関係なしに生物の体の内部の原因によってだけあらわれる、と考えられていました。

しかし現在では環境とむすびつきながらあらわれると考えられており生物の進化をもたらす原因を考える場合には、大事な考えかたになっています。




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