ガスの力
燃料を燃やしたときにできる燃焼ガスは、はじめから空気中にあった窒素や
燃焼によってできた二酸化炭素や水蒸気からなっています。
燃焼ガスで水を熱して蒸気をつくり、蒸気機関やタービンを動かすことができます。
しかし、この高い温度の気体のもつエネルギーを直接動力にかえることもできるのです。
内燃機関の仕組み
燃料を、機械の中のせまい室で燃やしてできる燃焼ガスは高い温度と高い圧力になります。
そのエネルギーから、直接に動力をつくりだすのが、内燃機関です。
まず、ガスの力をためす実験からやってみましょう。
実験
まえに使ったドロップの缶の中に、ガソリンを2滴たらして、かるくふたをします。
そして、底を少しあたためます。
缶の底を指でさわって、あたたかいなと思うくらいの温度にしておきます。
このとき、缶の中では、ガソリンが蒸気になって、空気と混じりあっています。
そこで、上の図のようにふたをあけ、火のついたマッチ棒を投げこむと音を立てて炎がふきだします。
こんどは、缶の底に近いところに、直径2ミリくらいの穴をおけてみましょう。
ガソリンを2滴、上の口から落としほんの少しあたためてから口の上にふたを逆さまにおきます。
つぎに、下の穴に火のついたマッチ棒の炎を近づけると缶の中のガスに火がつき音を立てて炎がふきだし、ふたを吹き飛ばします。
これは、燃料と空気がまじったガスが、爆発のように燃え燃焼ガスができて、その圧力がふたを飛ばしたりです。
このとき、ふたをねじこむと危ないので、注意しなければなりません。
燃料と空気がまじったガスを、混合ガスと言います。
ピストンを押す燃焼ガス
図のようにピストンによってシリンダの中に閉じ込められた混合ガス(ガソリンの蒸気と空気のまじったもの)に火をつけると非常に速い燃え方をするので、高温度・高圧力ができます。
その様子が、爆発に似ているので、爆発とも言います。
この圧力でピストンを押します。
ピストンを押す力は、連接棒(コネクチングロッド)とクランクによって回転する力にかえられます。
ピストンを押し終わったガスは、くりかえして使うことはできません。
そこで、新しい混合ガスにかえて、同じことをくりかえします。
ガスを入れる方法の違いで、内燃機関は、四行程式と二行程式にわけられます。
ピストンがいちばん上にきた位置を上死点、ピストンがいちばん下にきた位置を、下死点と言います。
そして、ピストンが上死点から下死点へ、または、下死点から上死点へ動くことを、それぞれ一行程と言います。
四行程式
下の図にしめしたのが。四行程式の内燃機関です。
吸気・圧縮・膨張および排気の4つの行程を順におこなったのちもとの吸気の行程にかえるしくみです。
吸気行程のときは、ピストンが上死点から下死点に動きます。
そのとき、吸気弁が開いて、混合ガスをシリンダの中に吸い込みます。
ピストンが下死点にくると吸気弁が閉じて混合ガスはシリンダの中に閉じ込められ、つぎにピストンが上がって圧縮されます。
これが圧縮行程です。
この圧縮でガスの温度と圧力が高くなります。
圧縮行程のまわる少しまえに、ガスに火がつけられて爆発し燃焼ガスとなって温度と圧力がいっそう高まり、その圧力でピストンを押し下げます。
このピストンを押し下げる力が、動力のもとです。
ピストンが下がると、ガスの体積が増え(膨張する)温度と圧力が下がって、下死点にきます。
これが、膨張行程です。
つぎの排気行程には、排気弁が開いて、燃焼ガスが大気中に押し出されます。
二行程式
二行程式は、クランク1回転ごとに同じことがくりかえされ四行程式の吸気・排気行程にあたるはたらきを下死点の近くで同時にすまさせてしまいます。
ピストンがシリンダの中のガスを圧縮しながら上死点にくると点火が起こり爆発して、ガスの温度と圧力が高くなり、ピストンを押し下げます。
ピストンが下がって、下死点に近づくころ排気の穴が開いて燃焼ガスの吐き出しがはじまります。
そしてシリンダの中の圧力が充分に下がったころ掃気穴が開いて、新しい混合ガスが入ってきます。
混合ガスは、はじめクランク室に吸い込まれピストンが下がるときに、かるく圧縮されます。
つぎに、シリンダの中に入って燃焼ガスを排気穴から押し出します。
下死点をすぎてまもなく、掃気と排気の穴が閉まりピストンの上向き運動によって、圧縮がおこなわれます。
圧縮が終われば、また火をつけて爆発させます。