経度と時刻
平均太陽時がわかっても時刻については、もう1つの問題が残っています。
それは、土地によって食い違う時刻をどうすればよいかということです。
上の図は、地球を北極の真上から見たものです。
アの場所では、いまちょうど南中ですがイの場所では、南中を過ぎていますし、ウの場所ではまだです。
太陽の南中を、12時として時刻を決めるとするとアの場所の12時はイの場所の12時より遅く、ウの12時より早くなります。
時刻は、このように場所によって違ってくるのです。
この関係は、平均太陽についても同じようになります。
この様子を、もっとくわしく調べてみましょう。
子午線と時刻
ある地点を通る経線のことを、その土地の子午線といいます。
天の子午線というのは、この子午線を天球まで引き伸ばしたものです。
太陽や星が、その土地の子午線の上にくることが、南中です。
地球は、西から東へ向かって自転しますから左の図のように、太陽がいまちょうどアの子午線上にあるとすると時間が経つにつれて、つぎつぎに西のほうのイ・ウの子午線の上にきます。
そして、24時間後には、ふたたびアの子午線の上にきます。
ですから1時間経つと、太陽は360°÷24=15°だけ西によった子午線上にくるはずです。
経度が15度西によると、南中は1時間ずつおくれるわけです。
太陽の南中する時刻を、12時と決めたのですから経度が15度西のイの12時は、アの12時より1時間あとになるわけです。
イの12時のときには、アでは午後1時です。
標準時
経度の違うところで、それぞれ違った時刻を使うことにたいへん不便なことです。
たとえば、東京(東経140度)で12時のとき明石(東経135度)では11時40分になります。
これでは、同じ日本の中で、いろいろな時刻を使うことになってとても都合が悪くなります。
日本では、だいたい東経135度が東西の中心になります。
そこでこの地点の子午線に平均太陽のくるときは日本中どこの土地でも、正午と決めています。
こうすれば、私たちは、みな同じ時刻が使えて便利です。この時刻を日本中央標準時といいます。
世界の各国でも、それぞれ都合のよい子午線を決めここを平均太陽が通る時刻を、正午としています。
アメリカのように大きな国では、国全体を4つにわけ4つの標準時を使っています。
世界時
交通で通信がすすんでくると各国ごとに違った標準時か使うのでは不便なことがあります。
天文の研究などのためにも世界共通の時刻があったほうが都合がよいのです。
そこで、経度0度の地点の平均太陽時を、世界共通の時刻としました。これが世界時です。
日本標準時と世界時は、9時間ずれています。
世界時で正午のときは、日本中央標準時では午後9時になります。
日付変更線
世界地図を開いて、太平洋の真ん中あたりを見ると経度180度の線にそって、日付変変更線というものがあります。
この線を越えて通る飛行機や船は、ここで日付を進めたり遅らせたりしなければなりません。
イギリスのグリニッジで、6月10日12時のとき西経180度の地点では、10日の0時です。
また、東経180度の地点では、10日の24時、つまり11日の0時となります。
ところで、東経180度の経線と西経180度の経線とは同じものです。
そうすると、そこでは、グリニッジで6月10日11時のときは10日の0時とも考えられ、また、11日の0時とも考えられるわけです。
こうして、グリニッジから、東へ東へと時刻を調べていって経度180度の地点へいったときグリニッジから西へ西へと時刻を調べていって、同じ地点までいったときとでは、ちょうど2日だけ日付が違ってしまいます。
時刻は、どちらの場合でも同じ0時です。
まだ、グリニッジから西へ西へと数えていってふたたびグリニッジまできたとするとグリニッジで6月10日の12時という時刻が6月11日の12時ということになります。
これは地球のまわりに経度を数えると、どうしても起こることなのです。
それで、だいたい180度の経線にそって日付け変更線というものをつくりました。
これは、西から東へ通り抜けるときには、1日だけ日を減らし、反対に東から西へ通り抜けるときには1日だけ加えることにしています。
陸上にこの日付け変更線が通っていたのではすぐ隣り合った村と村とで日付けが違うというようなことが起こり不便です。
しかし、180度の経線が通っているところは大部分が海なので、その心配はありません。
180度の経線は、北のほうでは大陸に少しかかり南のほうでは、小島にかかりますが日付け変更線はそのようなところをよけてひかれています。
時報
天文台では毎晩、標準星が子午線を通る時刻を観測して正しい恒星時をはかり、これから計算して正しい平均太陽時を出しています。
天文台には、精密な時計がありいつも正しい時刻をしめすように動いています。
しかし、その時計でも、絶対にくるいがないとはいえません。
観測してはかった正しい時刻をくらべて、時計のくるいを調べています。
この時計は、日本全岡の時計のもとになるものでこれを標準時計ということがあります。
標準時計は、これまでは精密な振り子時計が使われていましたがいまでは、もっと正確で、磁針の影響などを受けることもほとんどない、水晶時計や原子時計が使われています。
この正しい時刻を広く知らせることを、報時といいます。
また、東京都小金井の郵政省電波研究所からは、昼も夜も休むことなく、水晶時計の正しい毎秒の時刻信号が、短波無線で送り出されています。
この時刻は、東京天文台の時計で監督されているのです。
放送局では、これらによって、自分の時計を直しその時計で、時報を出しています。
NHKの特報は、100分の1秒くらいまで正確に出されています。