植物の広がり
地球上には約40万種の植物があると言われています。
これらの植物は、動物の場合と同じように、ある種類の植物がはえている場所は一定の範囲にかぎられています。
これは、気象条件や、その土地がどのようにしてできたかということと、深い関係があります。
水平分布
温度の差だけから、植物の分布を見ると赤道中心の熱帯から極地(北極や南極)にむかって熱帯や亜熱帯の常緑、広葉樹林、暖帯の常緑広葉樹林、温帯の落葉広葉樹林、亜寒帯や寒帯の常緑針葉樹林、そしてツンドラ地帯の草やコケという順にならんでいます。
ところが、地球上にはアフリカ・中央アジア・オーストラリア・北アメリカ・南アメリカなどに、ほとんど雨のふらない砂漠があり、その砂漠を中心に外にむかって、ステップ・サバンナ・森林という順に、植物の群落ができています。
ステップとは、降水量が少ないためにできる草原で丈の低い草ばかりの地帯です。
またサバソナとは、ステップよりは降水量が多く丈の高い草の中に、まばらに木が混ざっている地帯です。
このように、緯度による温度の差や降水量の差から見た植物の分布のことを水平分布と言います。
これは、平地を基準にしたものです。
垂直分布
緯度による温度の違いと同じように平地から高山にうつるにつれても温度は下がり植物の分布もかわってきます。
このような植物の広がりかたを垂直分布と言います。
平地では常緑広葉樹の多い地方でも山地に入っていくと、しだいに落葉広葉樹が多くなり、亜高山帯と呼ばれるかなり高い山では、ほとんどが常緑針葉樹になります。
もっと高い山は高山帯とよばれ木はハイマツなどの低木しかはえていません。
高山帯のうちでも、さらに高いところでは木ははえないで、草だけになります。
お花畑などとよばれる、高山植物の群落があるのはこのあたりです。
それよりももっと高いところでは地衣類以外の植物は、はえていません。
いろいろな種類の植物には、それぞれ原産地があり、しだいにまわりへ広がっていった、と考えられるのですが、ふつう、植物が生活できないような高い山脈や海を越えて広がることはできません。
ですから、植物の分布は地形や、その陸地がもとどの大陸につながっていたかなどとも深い関係があります。
同じ熱帯でもアフリカと南アメリカとでは、はえている植物が違うのです。
世界の植物の分布
現在の植物の分布を整理すると世界は北区・旧熱帯区・新熱帯区・南区の4つにわけられます。
北区
北半球のうち熱帯地方をのぞく地域で、北は北極から南は北回帰線にまでおよんでいます。
広い地域ですから、地方によって気候も違い植物の種類もかなり違っています。
しかし、そのような植物のなかには同じ祖先からわかれたと思われるものがたくさんあります。
とくに、アジアやヨーロッパと北アメリカとでは同じ種類のものや似た種類のものが、ずいぶんあります。
この地域には、マツ・カラマツ・モミ・カシワ・バラ・サクラソウ・キキョウなどがあります。
旧熱帯区
アフリカ大陸・インド・イソドシナなどをふくむ地域でソテツ・ココヤシ・タコノキ・ランなどがあります。
新熱帯区
南アメリカ・中央アメリカ・西インド諸島をふくむ地域です。
気候は旧熱帯区とよく似ていて、どちらも同じ熱帯植物と言われるものがはえていますが、種類はたいへん違います。
この地域特有のものとしては、サボテン・リュウゼツラン・イトラン・パイナップル・カンナなどがあります。
南区
オーストラリア・ニュージーランドなどをふくむ地域で古くから他の大陸とはなれていたため、珍しい植物がたくさんあります。
ナンヨウスギ・ユーカリ・アカシアなどが、その例です。
日本の植物の分布
日本は、大部分が北区に属していますが一部は旧熱帯区に入ります。
島国ですので特有のものもあり種類は多く高等なものだけでも一万種におよぶと言われます。
熱帯区
動物の場合と同じように、渡瀬線よりも南の地域で世界的分布のうえからは旧熱帯区に入ります。
ここには、ソテツ・ビロウ・リュウキュウマツなどがはえています。
亜熱帯区
九州東南部、四国の最南部、紀伊半島の南のはし、八丈島などの地域で、ハマオモト・アコウ・ビロウ・ソテツ・ヘゴ・リュウビンタイ・オオタニワタリなどがあります。
暖帯区
本州南部、四国・九州の大部分をふくむ地域でカシ・シイ・クスノキ・アカマツ・クロマツ・ウラジロ・コシダなどがあります。
温帯区
本州中央部以北から北海道南部までにわたる地域でブナ・カエデ・シラカンバ・ミズナラ・サワラ・カラマツなどがあります。
亜寒帯区
冷帯(亜寒帯)に属する北海道東北部と千島区をふくむ地域でエゾマツ・トドマツ・シラビソ・ミヤマハンノキなどがあります。