世界と日本の植物の分布とは?水平分布・垂直分布とは?

植物の広がり

地球上には約40万種の植物があると言われています。

これらの植物は、動物の場合と同じように、ある種類の植物がはえている場所は一定の範囲にかぎられています。

これは、気象条件や、その土地がどのようにしてできたかということと、深い関係があります。


水平分布

温度の差だけから、植物の分布を見ると赤道中心の熱帯から極地(北極や南極)にむかって熱帯や亜熱帯の常緑、広葉樹林、暖帯の常緑広葉樹林、温帯の落葉広葉樹林、亜寒帯や寒帯の常緑針葉樹林、そしてツンドラ地帯の草やコケという順にならんでいます。

ところが、地球上にはアフリカ・中央アジア・オーストラリア・北アメリカ・南アメリカなどに、ほとんど雨のふらない砂漠があり、その砂漠を中心に外にむかって、ステップ・サバンナ・森林という順に、植物の群落ができています。

ステップとは、降水量が少ないためにできる草原で丈の低い草ばかりの地帯です。

またサバソナとは、ステップよりは降水量が多く丈の高い草の中に、まばらに木が混ざっている地帯です。

このように、緯度による温度の差や降水量の差から見た植物の分布のことを水平分布と言います。

これは、平地を基準にしたものです。

垂直分布

緯度による温度の違いと同じように平地から高山にうつるにつれても温度は下がり植物の分布もかわってきます。

このような植物の広がりかたを垂直分布と言います。

平地では常緑広葉樹の多い地方でも山地に入っていくと、しだいに落葉広葉樹が多くなり、亜高山帯と呼ばれるかなり高い山では、ほとんどが常緑針葉樹になります。

もっと高い山は高山帯とよばれ木はハイマツなどの低木しかはえていません。

高山帯のうちでも、さらに高いところでは木ははえないで、草だけになります。

お花畑などとよばれる、高山植物の群落があるのはこのあたりです。
それよりももっと高いところでは地衣類以外の植物は、はえていません。

いろいろな種類の植物には、それぞれ原産地があり、しだいにまわりへ広がっていった、と考えられるのですが、ふつう、植物が生活できないような高い山脈や海を越えて広がることはできません。

ですから、植物の分布は地形や、その陸地がもとどの大陸につながっていたかなどとも深い関係があります。

同じ熱帯でもアフリカと南アメリカとでは、はえている植物が違うのです。

世界の植物の分布

現在の植物の分布を整理すると世界は北区・旧熱帯区・新熱帯区・南区の4つにわけられます。

北区

北半球のうち熱帯地方をのぞく地域で、北は北極から南は北回帰線にまでおよんでいます。

広い地域ですから、地方によって気候も違い植物の種類もかなり違っています。

しかし、そのような植物のなかには同じ祖先からわかれたと思われるものがたくさんあります。

とくに、アジアやヨーロッパと北アメリカとでは同じ種類のものや似た種類のものが、ずいぶんあります。

この地域には、マツ・カラマツ・モミ・カシワ・バラ・サクラソウ・キキョウなどがあります。

旧熱帯区

アフリカ大陸・インド・イソドシナなどをふくむ地域でソテツ・ココヤシ・タコノキ・ランなどがあります。

新熱帯区

南アメリカ・中央アメリカ・西インド諸島をふくむ地域です。
気候は旧熱帯区とよく似ていて、どちらも同じ熱帯植物と言われるものがはえていますが、種類はたいへん違います。

この地域特有のものとしては、サボテン・リュウゼツラン・イトラン・パイナップル・カンナなどがあります。

南区

オーストラリア・ニュージーランドなどをふくむ地域で古くから他の大陸とはなれていたため、珍しい植物がたくさんあります。

ナンヨウスギ・ユーカリ・アカシアなどが、その例です。



日本の植物の分布

日本は、大部分が北区に属していますが一部は旧熱帯区に入ります。
島国ですので特有のものもあり種類は多く高等なものだけでも一万種におよぶと言われます。

熱帯区

動物の場合と同じように、渡瀬線よりも南の地域で世界的分布のうえからは旧熱帯区に入ります。
ここには、ソテツ・ビロウ・リュウキュウマツなどがはえています。

亜熱帯区

九州東南部、四国の最南部、紀伊半島の南のはし、八丈島などの地域で、ハマオモト・アコウ・ビロウ・ソテツ・ヘゴ・リュウビンタイ・オオタニワタリなどがあります。

暖帯区

本州南部、四国・九州の大部分をふくむ地域でカシ・シイ・クスノキ・アカマツ・クロマツ・ウラジロ・コシダなどがあります。

温帯区

本州中央部以北から北海道南部までにわたる地域でブナ・カエデ・シラカンバ・ミズナラ・サワラ・カラマツなどがあります。

亜寒帯区

冷帯(亜寒帯)に属する北海道東北部と千島区をふくむ地域でエゾマツ・トドマツ・シラビソ・ミヤマハンノキなどがあります。




世界の動物の分布とは?日本の動物の分布とは?

世界の動物の分布

熱帯には熱帯に適した動物が寒帯には寒帯に適した動物が住んでいるのですが同じ熱帯でもアフリカと南アメリカとでは、住んでいる動物はかなり違います。

これは、2つの大陸がはなれているために一方の大陸の動物が他方の大陸にうつっていくことができないで、それぞれ違った方向に進化してきたからです。

このことを考えにいれて、現在の動物の広がりを整理すると世界は旧北区・新北区・エチオピア区・東洋区・オーストラリア区・新熱帯区の6つにわけることができます。

このうち旧北区と新北区をあわせて全北区、エチオピア区と東洋区をあわせて旧熱帯区ということもあります。

また、世界全体を大きく3つにわけ、オーストラリア区を南界、新熱帯区を新界、他の全部をあわせて北界と言うこともあります。


旧北区

アジアの大部分、ヨーロッパ、アフリカ北部をふくむ地域でパンダ・タヌキ・イノシシ・カモシカ・カササギ・コマドリなどが住んでいます。

新北区

北アメリカとグリーンランドをふくむ地域でアライグマ・カナダヤマアラシ・スカンク・コモリネズミ・シチメソチョウなどが住んでいます。

エチオピア区

サハラ砂漠より南のアフリカとマダガスカルをふくむ地域でツチブタ・キリン・ゴリラ・チンパンジー・ダチョウなどがいます。

マダガスカルは、かなり古くアフリカ大陸からはなれたために、あとで栄えた大きな動物は住んでいません。

そのかわり、テンレックなど原始的な食虫類(モグラやジネズミの仲間)や、キツネザルなど原始的なサルがいいます。

東洋区

インド・イソドシナ・台湾などをふくむ地域でオランウータン・テナガザル・メガネザル・クジャクなどが住んでいます。

ライオン・チーター・ゾウ・センザンコウ・コブラなどは東洋区だけでなくエチオピア区にもいます。

東洋区とオーストラリア区のさかいは、古くから問題がありセレベス島やチモール島などをオーストラリア区にふくめるウォーレス線と、それらの島を東洋区にふくめるウェーバー線などがあります。

これらの境界線にはさまれる地域には、両区の動物がまじっています。

また、クスクス・コモドオオトカゲなど、この地域特有の珍しい動物もいます。

オ-ストラリア区

オーストラリア・ニューギニア・ニュージーランドをふくむ地域でカンガルー・コアラーカモノハシーハリモグラなど原始的な獣がいるほか、ヒクイドリ・エリマキトカゲ・マツカサトカゲなどがいます。

この地域にはネズミやコウモリの仲間をのぞくと高等な獣は住んでいません。

これは、他の高等な獣がまだはびこらないうちに、この地域がアジア大陸からはなれてしまったためです。

新熱帯区

中央アメリカ・南アメリカ・西インド諸島をふくむ地域でオポッサム・ナマケモノ・アリクイ・アルマジロ・キヌザル・イワドリ・イグアナなどが住んでいます。

南アメリカは、もとは北アメリカとははなれていました。
ピューマ・スカンク・アライグマなどは陸続きになってから北アメリカよりうつったものです。



日本の動物の分布

日本は、世界的分布から見ると、大部分が旧北区に属していますが奄美大島より南は、東洋区に入り、その境界線を渡瀬線と言います。

また、旧北区にふくまれる部分を、さらに細かくみると本州・四国・九州にはあまり差がありませんので、ひとまとめにして本州区といい北海道だけを別にして北海道区と言います。

本州区と北海道区の境界は、津軽海峡にあり、この境界線をブラキストン線と言います。

ほかに、北海道と樺太(サハリン)のあいだに八田線とよばれる境界かわりますがこれは、は虫類や両生類をもとにしたものです。

つまり、は虫類や両生類では北海道も、本州・四国・九州とあまり差がないということです。

本州区には、サル・ツキノワグマ・アナグマ・カモシカ・イタチ・ヤマネなどの獣のほか、キジ・ヤマドリ・トノサマガエルなどがいます。

これに対して北海道区には、ヒダマ・エゾテン・ナキウサギ・エゾヤマドリ・エゾアカガエルなどが住んでいます。

また、奄美大島には、アマミノクロウサギやハブがいます。




世界の動物の広がりとは?いろいろな環境に住む動物とは?

動物の広がり

地球上に住んでいる動物の種類は全部で約100万種あると言われていますがその全部がどこの地域にも住んでいるというわけではありません。

オーストラリアに住むカンガルーやカモノハシはアシアカ陸やアメリカには住んでいません。
地域によって住んでいる動物の種類は、かなり違っているのです。

これは、気象条件や長いあいだの地球の歴史などによって生じたもので、このような生物の広がりかたを、生物の分布と言います。

とくに、陸に住む動物の分布は気象条件や、その陸地が他の大陸とつながっているか、はなれているかなどの影響を受けやすく、また、植物の分布とも深い関係があります。


いろいろな環境に住む動物

気候や植物の分布によって、住んでいる動物がどのように違うかを見ると、およそ、つぎのようにわけられます。

熱帯林の動物

熱帯の森林では、木は勢いよくしげり、木から木へと、つる植物がからまり、下草がしげっています。
林の中は陸上を歩く大きな動物は通り抜けることができませんので獣はネズミジカのような小さなものしか住んでいません。

いつも気温が高いので、昆虫・ヘビ・トカゲ・カエルなどの変温動物が住んでいます。

また林の上のほうには、木の実が1年中実り、それを食べるサルの仲間や、オウム・インコなどがいます。

これらは、ほとんど地上には降りてきません。

熱帯の草原や砂漠の動物

草原や砂漠には水が少ないのでラクダやレイヨウなど何日も水を飲まないでも平気なものが住んでいます。

ほかに、ライオン・チーターなどの猛獣やシマウマ・ダチョウなどがいます。

こういう地域には、ほとんど木がなく見通しがよいのでシマウマ・ウシカモシカ・ダチョウなどは猛獣がら逃れるために足が速く、また、いつも群れをつくって生活しています。



温帯林の動物

温帯の林は、落葉広葉樹が多く、下草はあまりしげりません。
それで、シカ・キツネ・クマなど地上を歩く獣がいます。

また、冬はかなり寒いので、ここに住む昆虫・トカゲ・ヘビ・カエルなど変温動物の多くは冬眠して冬を越します。

ヤマネなど、恒温動物でも冬眠するものがあります。

寒帯林の動物

ここは気温が低いので、変温動物はほとんど住んでいません。
リス・ヒグマ・オオヤマネコ・クロテンなど、すばらしい毛皮をもった獣がいます。

ツンドラ地帯の動物

寒帯林よりもさらに極地(北極)に近いところをツンドラと言います。
ここは、夏が短く、小さな草やコケしかはえていません。

雪や氷に閉ざされた期間が長いので1年を通してここに住む動物は少なくトナカイ・レミング・ライチョウなど草食性のものと、これを食べるホッキョクギツネ・オオカミなどがいるだけです。

ここに住む獣は体温が奪われないように足の裏にまで毛がはえ耳や尾のような冷えやすい部分は小さくなっています。

高山の動物

高山は、気温が低いので寒帯やツンドラ地帯と同じような動物が住んでいます。




樹木の冬越しとは? 落葉樹の冬越しとは? 冬芽と副芽とは?

樹木の冬越し

樹木は草と違ってみな長生きです。けれども、やはり、寒さに弱いのです。

夏のあいだはさかんに生長しますが冬になると落葉樹は葉を落とし、まる裸になって冬を越します。

葉の落ちない常緑樹でも生長をやめ、眠ったようになって冬を越します。


落葉樹の冬越し

落葉樹は、冬になると葉を落とします。

これは、冬のあいだは、養分や水分をとることができないので無駄な養分や水分を使わないようにするためです。

秋になると、葉の柄のつけねに離層というものができます。
葉が落ちたあとは、この離層がふたのように傷口をふさいでしまいます。

こうして、体には糖分や脂肪をたくさんたくわえ寒さに負けない強い体になるのです。

ヤマナラシについて調べたところでは、夏の体つきでは零下9.5度の温度までしか、たえられませんが冬では零下24度までたえられることがわかりました。

常緑樹でも、冬の寒さにたえるために夏から秋にかけて糖分や脂肪をたくさんたくわえています。



冬芽のいろいろ

春になると樹木は葉を出したり花を咲かせたり枝を伸ばさなければなりません。

そのために、冬のあいだ、まる裸に見える落葉樹でも、よく見ると芽をつけていて、春がくるのをまっています。

この冬越しをする芽を、冬芽と言います。

冬芽は寒さに負けないように、つぎのようにいろいろ保護されています。

① たくさんのりん片葉という、うろこのようなもので硬く包まれている芽

ケヤキ・ブナ・ナラ・イヌシデ・カエデ・ツツジ

② 2、3枚のりん片葉がくっついて、帽子のように芽を包んでいるもの

トネリコ・ホオノキ

③ 古い葉の柄のもとに包まれているもの

スズカケノキ・ハクウンボクーリョウブ

④ たくさんの毛をもったりん片葉につつまれているもの

モクレン・ヤナギ

⑤ 葉のつけねのところに、隠れている芽

サルナシ・マタタビ

⑥ りん片葉の上が、油(樹脂)おおわれているもの

トチノキ

また、冬芽には、アオギリ・アカメガシワ・ムラサキシキブなどのように、りん片葉のないはだかの芽があります。

けれどもこれらのものには、まわりのところに細かい毛がはえていて寒さをふせいでいます。

副芽

春になると、冬芽が伸びて開きはじめます。
しかし、早く開き過ぎたため遅霜でせっかく伸びた芽が枯れてしまうことがあります。

このようなとき、ポプラ・ニワトコ・ブドウ・ハクウソボクなどでは枯れた葉のわきから、副芽というかわりの芽を伸ばします。




植物の冬越しとは? 草や作物の冬越しとは? わかりやすく解説!

植物の冬越し

植物が生活するうえに、いちばん都合の悪いことは雨が少ないことと気温が低いということです。

日本では、冬になると、いくらか雨が少なくなりますが四季を通じて植物が育たないほど、雨が少ないということはありません。

しかし、気温は、春・夏・秋・冬によって、たいへんかわります。
このうちで、冬はとくに気温が低く、植物にとって、たいへん暮らしにくい季節です。

このような冬を植物がどのようにして過ごしているか調べてみましょう。


冬に強い種

種(種子)は植物の体のうちでも、ほかの部分と違って水分を少ししかふくんでいません。

それで寒さのために凍ったり、乾き過ぎてしおれたりして死ぬことがなく冬などの暮らしにくい季節でも乗り越えることができます。

ですから、冬を越せないような弱い植物は葉や茎や根が寒さのために枯れてしまっても、秋のあいだに種を実らせておいて種の形で冬を越します。

種は、冬のあいだ水を吸わず芽を出すこともなく眠って過ごします。
このようなありさまを休眠と言います。

ハスの種のように何千年ものあいだ地下に休眠していたものもあります。

一年草の冬越し

春に芽ばえて、その年のうちに、枯れてしまうものを一年草と言います。
このような植物は、みな種で冬を越します。

ブタクサ・エノコログサ・オヒシバ・メヒシバなどの雑草・ソバ・トマト・イネなどの作物、ホウセンカ・アサガオ・コスモス・などの草花などが一年草です。



越年草の冬越し

越年草は、苗で冬越ししますが、多年草ほど長生きしません。

また、越年草はふつう冬型一年草をさしますが二年草をふくむこともあります。

冬型一年草には、ヒメジョオン・ホウレンソウ・ムギなどがあります。
この冬型一年草に対して、まえの一年草を夏型一年草ということがあります。

冬型一年草は、夏から秋にかけて、熟した種が地面に落ちると、すぐに芽を出して生長し、葉の形をロゼッ卜という形にして冬を越し、つぎの年の春に花が咲きます。

ロゼッ卜は、丈が低く、オエタビラコ・タンポポなどのように葉が根ぎわから地面に平たく広がっています。
それで、寒い風からまもられ、冬を越すことができるのです。

二年草とは冬型一年草と同じように、秋に芽ばえて冬を越しますが、はじめの1年間は、生長を続けるだけで2回冬を越してから、はじめて花を咲かせるものなのです。

二年草には、フウリンソウやコケリンドウなどがあります。

多年草の冬越し

一年草や越年草と違って何年も何年も生長するものを多年草と言います。
冬越しのしかたには、つぎのようにいろいろあります。

① 葉を地面にはわすようにして枯れずに冬を越すものチドメグサ・カタバミ・ハルジョオン・ギシギシ

② 地面のすぐ下の地下茎や根に芽をつけて、冬越しをするものスミレ・リンドウ・スゲ類

③ ふつう球根と言われるもので地中の深いところで地下茎や根に芽をもって冬を越すものオユユリ・ヤマノイモ・アマドコロ・クワイ、多年草はこのような冬越しのほかに、種での冬越しもします。




動物と湿度の関係とは?夏眠とは? 動物の低温麻酔とは?

動物と湿度

どんな生物でも水分のまったくないところでは生きていくことができません。

動物が、元気に活動するのに、それぞれ都合のよい温度があるように適当な湿度もまた必要なのです。

これは、いつも、じめじめしたところにいるナメクジを乾いたところにうつすと、しばらくは生きていても、やがて、死んでしまうことから見てもわかるでしょう。


夏眠

熱帯地方には、1年が、雨期と乾期とにわかれているところがあります。

こういうところでは、乾期になると、ひどい乾きと暑さのために活動できなくなる動物があり、なかには、少しでも涼しくて水分が逃げない場所で、じっと眠ってしまうものがあります。

これを夏眠、または乾眠と言います。

マダガスカル島に住むキツネザルの仲間は乾期になると小枝などで巣をつくり、この中で夏眠します。

アフリカや南アメリカの熱帯地方では乾期になると沼の水が干上がってしまいます。

すると、ここに住むハイギョは沼のそこに穴を掘って入り粘液の膜ですっぽり体を包み、乾期が終わるまで夏眠します。

このほか、熱帯地方に住むヘビやカエルの仲間に夏眠するものがあります。

夏眠をしているときは冬眠中と同じように体の中の皮下脂肪を、少しずつ使って、命をつないでいます。



動物の低温麻酔

動物は、まわりの温度の違いによって、さかんに活動したり、活動が鈍くなったりします。

セミは、夏の日中の気温の高いときによく鳴きますしイナゴは、日中はさかんに飛びまわり、なかなか捕まえることができませんが、朝夕の気温の低いときなら、わりあいかんたんに捕まえられます。

また、ハエも涼しい日には、動きが鈍くなります。

このように、とくに変温動物は、まわりの温度が上がったり下がったりすると体温もそれにつれてかわってきますから、まわりの温度の変化の影響を受けやすいことになります。

変温動物を、冷たい水の中や、冷蔵庫の中に入れたりすると急に体温が下がって、動くことができなくなります。これを低温麻酔と言います。

写真①はタナゴ・キンギョ・ドジョウを氷水の中に入れて低温麻酔したものです。

ふつうの水にもどすと、また泳ぎだします。ドジョウ・キンギョ・イモリの実験です。

イモリは、氷水の中でも麻酔されません。
カエルは腹のほうから冷やしても、なかなか麻酔できませんが頭部から冷やすと、かんたんに麻酔できます。




恒温動物の冬越しとは? 冬ごもり中の体のはたらきとは?

恒温動物の冬越し

獣や鳥のなかにも冬ごもりをするものが、いくつかいます。


ヤマネ・コウモリの冬眠

ヤマネ・コウモリは、ほかの恒温動物と違って寒くなって気温が下がると体温も下がってきます。

しかし、変温動物と違うところは気温がずっと下がっても体温はある温度まで下がると、それ以上は低くなりません。

コウモリは、岩穴の中などにたくさん集まり、翼で体を包むようにして、逆さにぶら下がったまま冬眠します。

おもしろいことに、冬眠中のコウモリに光をあてると小刻みに体をふるわせはじめ、やがて目が覚めて元気に飛び立ってしまいます。

ヤマネは、リスに似た動物で、木の洞穴や落ち葵の下で冬眠します。

体をまるめ、ボールのような形をしている冬眠中のヤマネは、ころころと転がしても、なかなか目を覚ましません。

獣ではこのほかに、マーモット・ハリネズミなどが同じように冬眠します。

クマの冬ごもり

北海道のヒグマ、本州・四国・九州のツキノワグマは秋になると、えさをたくさんとり、まるまるとふとります。体の中に、脂肪をためるのです。

そして、あたたかいところの木や土中や岩などの穴を見つけ、その中で眠って冬を越します。

この眠りは、ちょっとしたもの音にも目を覚ます程度のもので本当の冬眠とは言えません。

めすグマは、この穴の中で、2、3匹の子を生みます。
生まれたての子はネコぐらいの大きさしかありません。

冬ごもり中のクマの体温は、15度ぐらいで、ふだんの半分しかなく呼吸も活動しているときの10分の1ぐらいで1分間に3回ほどしかしません。

この体温は、子グマについて測ったものです。
親で調べる必要があるのですが、危なくて、まだ測った人がありません。

鳥の冬ごもリ

鳥の仲間は、翼をもち、冬になっても、あたたかいところや、えさのあるところに飛んでいけるので冬眠しないものと思われていました。

しかし、アメリカのプーアウィルという鳥が岩の割れ目で冬ごもりしているのがみつかりました。



冬ごもり中の体のはたらき

冬ごもり中の動物が食物をとらないのに生きていけるのは、なぜでしょう。

冬ごもりをする獣たちでは、獣のおいたに食物をたくさん食べますが、これが消化されると、どんどん脂肪分にかわって皮膚の下にたくわえられるのです。

これを皮下脂肪と言います。

冬ごもり中は、じっとしていますし体温も低く呼吸も少ないので体があまり疲れません。

それで、皮下脂肪が少しずつ秋とは逆に消化されて栄養分として体に行き渡り生きていけるのです。

そして、春が訪れて、脂肪分も少なくなると体温ももとにかえり、ふたたび元気になって、活動しはじめます。

また、昆虫やカエルなどでは獣たちの皮下脂肪のかわりに脂肪体というものがたくわえられます。




変温動物の冬越しとは? 蛇・カエル・魚・昆虫の冬眠とは?

ヘビ・カエルの冬眠

ヘビ・カエル・カメなどは、変温動物なので冬になってまわりの温度が下がると体温も下がり活動できなくなります。

それで、土の中や木の根の下、泥や落ち葉などの下にもぐって寒い冬を過ごします。

気温や地面の温度が大きくかわるのにくらべると土の中の温度はあまりかわらず、地下10センチでは1日中に3度ぐらい、地下30センチでは一度ぐらいしかかわりません。

冬眠中は、じっとしていて目を閉じ呼吸もあまりせず脈もわずかしかうちません。
触ってもわからず、ぐったりして死んだようになっています。


昆虫の冬越し

昆虫も、変温動物ですから冬がくると、いろいろな方法で寒さにたえていかねばなりません。

多くの昆虫は、たまごから成虫(親)になるまでに幼虫、さなぎと姿をかえます。

たまごやさなぎは硬い殻をかぶっているし、幼虫は木の幹の中や石の下、土の中などに、もぐることができます。

それで成虫よりも、たまごやさなぎ・幼虫で冬を越すものが多いのです。

成虫で冬越しするもの

チョウの仲間では、キチョウ・アカタテハ・ルリタテハ・ヒオドシチョウ・ムラサキシジミなどで、木の穴などに隠れています。

甲虫では、ウリハムシ・テントウムシ・ゴミムシの仲間などが落ち葉の下などに隠れて冬を越します。

ハチの仲間ではアシナガバチ・スズメバチなどは女王バチだけが物影に隠れて、春をまっています。

ミツバチでは、女王バチをはたらきバチが囲んで、じっとしています。

巣の中の温度があまり下がると、たくわえた蜜を食べたり羽根をふるわせて体温を上げ、その熱で巣の中をあたためます。

アリは女王アリ・はたらきアリ・幼虫が地中深くもぐって冬越しをします。
ゲンゴロウ・ミズスマシは、水中の泥の中にもぐって冬を過ごします。

また、タイコウチ・ミズカマキリなども水中の泥の中や水からあがって、湿った落ち葉の下などで寒さにたえています。

さなぎで冬越しをするもの

アゲハチョウの仲間は、ほとんど、さなぎで冬を越します。

春や夏に幼虫やさなぎになったものは2週間ぐらいでチョウになりますが、秋にさなぎになったものは、よく年の春まで、じっとしているわけです。

ニカメイガやサンカメイガはイネの切り株の中にまゆをつくり、さなぎで冬を越します。



幼虫で冬越しをするもの

モンキチョウ・ベニヒカゲ・ヒョウモンチョウ・ベニシジミ
ヤマトシジミ・ゴマダラチョウの仲間のほとんどは幼虫で冬を越します。

マツカレハなども、やはり毛虫の姿で木の皮の下などや落ち葉の下などにいます。

甲虫の仲間では、コガネムシ・コメツキムシが幼虫の姿で地中に隠れカミキリムシの幼虫は木の幹の中にトンネルを掘って、冬を過ごします。

セミの幼虫は、地中で冬越しをします。

たまごで冬を越すもの

ミドリシジミ・アカシジミなどが、たまごで冬を越します。

成虫は、夏、これらの幼虫の食草となる草や木のそば、芽の近くなどに、冬越しをするたまごを生みつけておくのです。

オビカレハやクスサンも、たまごのすがたで寒さにたえています。

また、バッタ・コオロギの仲間は、たいてい土の中にたまごで冬を過ごします。

カマキりの仲間も、たまごで冬を過ごしますが、たまごは泡のかたまったようなものに包まれています。

貝の冬越し

多くの貝は、ねばねばした液で貝殻の隙間を閉じ泥や砂の中に、もぐって冬を越します。

カタツムリは、陸に住む貝の一種で、やはりねばっこい液でからの口を閉じ、落ち葉の下、木の根もとなどに隠れて春の訪れを待ちます。

魚の冬越し

魚も変温動物ですから、冬になって水が凍ると浅い池や沼にいるものは、体も凍ってしまいます。

ですから、コイやフナなどの池や沼の魚は冬のあいだ水の底のほうで枯れ枝や枯れ葉の影、ときには泥の中にもぐってじっとしています。

池や沼では、水の上のほうは冷たくても、底のほうの泥の中は、そんなに浅くなければ、あんがい温度が高いのです。




動物と温度の関係とは? 動物の冬越し、冬眠とは?

適温

動物や植物などすべての生物には、それぞれ、成長したり活動したりするのに都合のよい温度があります。

この温度を適温と言います。生物の種類によって、適温の範囲は、それぞれ違っています。

たとえばワタの害虫のワタミゾウムシは適温の範囲が13.5度から35度です。

35度以上、または13.5度以下になると活動することができなくなります。
50度以上、または、零下4.4度以下になると、死んでしまいます。

また動物には、まわりの気温や水温がかわっても体温がいつも同じものと気温や水温がかわるにつれて体温がかわるものとがあります。

しかし、どちらの動物でも体温のほうが、まわりの温度より、いくらか高いのがふつうです。


変温動物

鳥や獣以外の動物たちは、まわりの温度がかわると体温もいっしょに、上がったり、下がったりします。
こういう動物を、変温動物と言います。

変温動物では冬になって、まわりの温度が0度ぐらいに下がると体温も0度ちかくにまで下がってしまいます。

そうなるとどの動物でも、生きていくための活動が、ほとんど、止まってしまいます。

恒温動物

私たち人間をはじめ、獣や、鳥たちは、まわりの温度がかわっても、だいたい1年中、気温より少し高い、決まった体温を保ち続けています。

それで、獣や鳥を、恒温動物または定温動物と言います。

このような恒温動物では食べ物が体の中で消化されると生きていくのに必要な熱を生みだします。

そのうえ、もって生まれた毛や羽根が、衣服のかわりになって体温を逃がさないようにしているので、食べ物さえなくならなければ寒い日でも、元気に活動できるのです。

しかし、恒温動物でも冬になると、いくらか体温の下がる動物もあります。

冬眠

気温や水温が下がると、自分の体温もいっしょに下がる動物は、そのままでは、凍え死ぬことがあります。

そのために、動物たちは、いろいろな方法で冬越しをするのですが冬眠はその1つの方法なのです。

ちょうど、人間が眠っているように冬のあいだ中、食物もとらずに、じっとして活動をやめ、体のはたらきも劣らせ余計な体力を使わないで冬を越すありさまを冬眠というのです。

冬眠をする動物は、冬が近づくと、あまり温度の下がらないような場所を探しそこで深い眠りに入るわけです。

そうして、寒い冬のあいだは、生きているのが死んでいるのか、わからないような様子をしていますが、春になると元気をとりもどし、また活動をはじめます。




乾いた土地の植物の群れとは? 植物の移り変わりとは?

乾いた土地の植物の群れ

乾いた土地は、有機物の分解が少ないので岩のかけらや砂ばかりです。
そのいちばんよい例が、砂漠です。

このほか、砂丘や川原、高山の岩石地も、このような土地です。


砂漠の植物

砂漠は雨の極めて少ない地方にできています。
そして、植物は、乾きに強い特別なものが、まばらにはえているだけです。

たとえばアメリカ大陸の砂漠ではサボテン・リュウゼツラン・ユッカの仲間などが見られアフリカ大陸の砂漠ではナツメヤシ、トウダイグサ科の多肉植物、ゴビ砂漠などにはマオウ・ヨモギの仲間などがはえています。

砂丘の植物の群れ

海岸砂丘は海岸の近くにできています。

このくぼんだところには湿地もあって、湿地の植物がはえますが、少し高いところは、乾いた砂の層が厚くコウボウムギ・ケカモノハシのような長い地下茎をもった砂浜の植物がはえています。

砂浜の砂は風で動くので、ふつうの植物は砂にうずもれたり根がむきだされたりするので、よく育ちません。

長い年月でのうつりかわり

ある地域の植物の群れを何十年、何百年と続けて観察したらどうなるでしょう。

いろいろな方面から調べてみると群れはかなり規則正しくうつりかわっていきます。

いま、私たちが見ている草原や森林も、みなこのうつりかわりを重ねてきたものですし、これからも、かわっていくことでしょう。



火山の植物のうつりかわリ

火山が爆発して溶岩が流れだし、まったく植物がなくなったところにも、いつかは植物が根をおろします。

はじめにはえる植物は日でりにたえ養分や水分の少ない土地でも生活できる地衣類やせん類などです。
そのつぎが、イタドリなどの日なたを好む草などです。

長いあいだに、これらの植物の腐った腐植がたまると土壌は、しだいに養分や水分をふくんできてヤシャブシ・アカマツ・カソバ類のような日なたを好む木もはえるようになります。

そして、この木が伸びて、その下の地面に日かげができるとイタドリなどの日なた植物は生活できなくなり日かげの好きな植物がしげるようになります。

林がこんでくると、地面はいよいよ日かげになり日かげにたえられる、シイ・シラビソ・スギなどが生長してきます。

こうして、日なた植物の林は日かげ植物の林に、うつりかわっていきます。
こうなると、森林はいつまでも、そのままの姿をたもつようになります。

水生植物のうつりかわリ

水生植物の群れもまた、うつりかわります。

沼や湖の岸部では、まわりから流れこむ土や砂がたまりエビモ・クロモ・コウホネ・ガマ・オモダカなどの水生植物の枯れたものなどもたまって、しだいに浅くなります。

すると、湿地を好むアシ・タデのような植物が入りこんできて水生植物の群れにかわってきます。

沼や湖は、こうして、岸部から浅くなり、できた湿地はさらに原野となって、ふつうの草や日なたを好む木まではえてくるようになります。

これからさきは、火山の植物のうつりかわりと同じで最後は日かげにたえられる木の森林になります。




水辺の植物の群れとは? 海辺の植物の群れとは?

水の中の植物の群れ

水の中にも、さまざまな植物の群れがあります。なかでも重要なのは、植物プランクトンです。


ちかごろよく話にのぼるクロレラも、真水の植物プランクトンですが、このほかにも、らんそう類・緑そう類・けいそう類などのたくさんの種類の植物プランクトンが真水にも海水にも生活しています。

植物プランクトンは、魚のえさになるので海や湖沼では重要な植物です。
流れのない池や沼の水面にはウキクサ・サンショウモ・ヒンジモなどが、群れをつくって浮いています。

底に根をはっているものには茎や葉が水の中にあるオオカナダモ・エビモ・クロモなどがあります。

葉だけを水面に浮かべているものには、スイレン・ヒシなどがあります。
水の中にはえていても、茎や葉を水の上につきだしているものにはコウホネ・ガマ・オモダカなどがあります。

いっぱんに、底に根をはっている植物の群れは水があまり深くないところにはえます。

湿地にある植物の群れ

水辺や、低い土地のじめじめした湿地にはアシ・セリ・タデなどの仲間の群れがあります。

池や沼の岸べでは、このような植物がおいしげって水の中の植物の日あたりをさまたげ、はえにくくしてしまいます。

山の中や、水の冷たい地方の沼や湖の岸部にはミズゴケなどの湿った土地を好む、植物の群れがあります。

海の植物の群れ

海の中にも、たくさんの植物プランクトンが生活しています。
それと、アマモのように花の咲く植物もありますが、たいていは花の咲かない、藻類です。

海藻の群れ

海藻は、緑藻・褐藻・紅藻の3つの大きな仲間にわけられますが海の浅いところには、アオサ・アオノリなどの緑藻が見られます。

中くらいの深さには、ワカメ・コンブ・ヒジキなどの褐藻が多く、ところによっては、これらが草原のように、おいしげっています。

深いところになると、テングサ・サンゴモなどの紅藻が見られます。



海岸にちかい土地の植物の群れ

海岸のちかくの、山や崖には、陸の内部とは違った植物があります。

たとえば、ハイネズ・ハマオモト・イワギク・ワダン・トベラなどで、いずれも葉が厚くなっています。

砂浜の植物の群れ

砂浜にも、特別な植物の群れがあります。
たとえばケカモノハシ・コウボウムギ・ハマエンドウ・ハマボウフウ・ハマヒルガオ・ハマゴウ・ネコノシタ・ハマニガナなどがそれです。

砂浜は、表面は乾いていても深く掘ると真水にちかい水分がかなりあります。

そのため、砂浜の植物は、いずれも長い根や地下茎をもっています。
したがって風で砂が飛ばされても日でりが続いても、なかなか枯れません。

海水をかぶる土地の植物

遠浅の湾の奥や川口にちかい平地などでは満ち干のとき海水に使えるようなところがあります。

このようなところでは、土にたくさんの塩分がふくまれているので、ふつうの植物はよく育ちません。

マツナ・アッケシソウなどは、このような土地にも生活できるので群れをつくっています。




植物の群れとは? 帰化植物とは? 草原と森林とは?

植物の群れ

植物は群れをつくって生活します。
この群れは、同じ種ばかりから成り立っていることもあり、いくつかの種がまじりあっていることもあります。


植物には、湿ったところによく生育するものや乾いたところによく生育するものなどがあります。

また、日あたりのよいところで、よく公報するものや日かげで、よく生育するものなどがあります。

ですから、ある土地には、そこらの環境条件のもとで、よく生育する植物が集まって群れをつくります。

この群れのことを群落と言います。

これから、いろいろな土地に、どんな植物の群れが見られるか、また、長い年月のあいだに植物の群れが、どのようにうつりかわっていくかを調べてみましょう。

道ばたにある植物の群れ

道ばたや、空き地などには、いろいろな雑草が群れをなしています。
庭や畑や運動場など、ちょっと手入れを怠ると、すぐに雑草群落ができあがります。

これらの草は、たいてい種がたくさん出来たり丈夫な地下茎をもっています。

そして、生活力が強いので、花壇や畑の弱い栽培植物を打ち負かして自分たちの群れを広げていきます。

道ばたにある雑草のおもなものにはスギナ・メヒシバ・スズメノカタビラ・チカラシバ・ハコベ・カタバミ・ヤブガラシ・ヨモギなどがあって日あたりのよいところにはえています。

日かげには、ドクダミ・ヒメワラビ・ハングなどがよくはえます。
また、雑草のなかには、帰化植物がたくさんあります。

帰化植物

むかし、外国から輸入した植物のなかには畑の外に出て、ひとりでに広がっているものがあります。

また、人の気づかないうちに種が荷物などについて運ばれ勝手に広がったものもあります。

このように、外国からきた植物のうち人の世話にならないで勝手に野山にはえているものを帰化植物と言います。



草原と森林

陸上のもっとも代表的な植物群落は、草原と森林です。

草原

大陸の雨の少ない地方には、イネ科・カヤツリグサ科などの群れが一面にしげってプレーリーとかステップとかよばれる草原をつくります。

日本はいっぱんに雨が多いのですが、山のふもとや山腹が火事などで森林が焼けるとススキ・トダシバ・ササなどが群れをつくって草原をつくります。

この草原は、人が草かりをするために、生長の遅い木は、そのたびに切られて、なかなか森林ができず長く草原のままになっています。

九州阿蘇山の火口丘、富士山のふもと長野県の霧ヶ峰などの草原はその例です。

森林

我が国は雨が多いので、いたるところに、森林が見られます。

森林は山にかぎらず、平地にもできるのですが平地は人が住むようになってから切り払ってしまったのです。

遠くから森林をみるとブナ・クヌギ・シラカンバ・スギ・モミ・シラビソのような高木の集まりに見えます。

しかし、森林の中に入ってみると、さらに、シキミ・ヤブデマリのような低木やササ、日かげ植物などの下草がはえいてい、それぞれに群れをつくっています。




一年草・多年草とは? 常緑樹・落葉樹・広葉樹と針葉樹とは?

生活する姿

私たちが、いちばんよく見かける植物は、木と草です。
木と草の違いは形と生活のしかたの違いで仲間わけの違いではありません。

たとえば、同じマメ科のなかにニセアカシアやネムノキのような木もあればエンドウやシロツメクサのような草もあります。

同じ祖先から生まれてきても、いろいろな環境で長いあいだ暮らすうちに、それぞれの形が決まってきたのです。


草の姿

草は、木と違って、茎が毎年かわるか、生き残っても木のように年輪ができません。
草にも、4、5メートルにもなる大きなものがあります。

けれども、いっぱんに丈は低く、しかも、1~2年から4~5年で最大の大きさに生長してしまいます。

形でわけると、ヒマワリ・ソバなどのように長さのわりに幅の広い葉が、だいたい平らにつく広葉型とイネ・シュンランのように細長い葉がななめにでる長草型とがあります。

また、生育期間の長さから見ると、つぎのようにわけられます。

一年草

アサガオ・メヒシバのような春に種から芽を出して、その年のうちに花を咲かせ、実をむすんで、枯れてしまうものです。

越年草

秋に種から芽を出し冬を越して、翌年の春から夏に花を咲かせ実をむすんで、枯れるものです。
麦類・アブラナ・エンドウ・ダイコンなどが越年草と言われるものです。

二年草

春に、種から芽を出して生長しますが、その年には花が咲きません。
つぎの年になって、花を咲かせ、実をむすぶと枯れてしまいます。

リンドウ・センブリなどがこれにあたります。

多年草

茎の一部、地下茎。
根などが、枯れずに残っていて、毎年、茎や葉を伸ばすものでキク・キキョウ・ススキなどがこの例です。

また、冬になっても、葉が枯れず、1年中緑色をしているものもありランやオモトなどが、これにあたります。

たいていは、大きくなると、毎年、花を咲かせますが、なかには、アオノリュウゼツランなどのように何年も花をつけずにいて、いちど花をつけると枯れてしまうものもあります。

いっぱんに、草は、木が生育できないような水分の少ないところでも生活できるので、降水量の少ない地方や高山・川原・海岸などでも草原ができています。

木の姿

幹という、年々太くなる茎をもった植物が木です。
日本のような温帯地方では、幹に年輪ができます。

木は、草にくらべると、生活するすがたが、ずっと変化しています。
それで、いろいろなにわけかたができます。

① 高木と低木

高木というのは、中心になる幹がはっきりしていて丈の高くなる木です。
むかしは喬木と言いました。

低木は、丈の低い木で根もとから同じような幹が何本も出ている木です。
むかしは灌木と言いました。



② 常緑樹と落葉樹

常緑樹と言うのは、1年中、緑色の葉のついている木です。
葉は、春に新しくできると、1年から3年ぐらい長いもので8年ぐらいも枝についています。

落葉樹というのは、冬に葉を落とす木です。

③ 広葉樹と針葉樹

広葉樹というのは、長さのわりに、幅の広い葉をもった木です。
これに対して、針葉樹は細長い針のような葉をもっている木です。

以上のようなわけかたを組み合わせて、つぎのように木をわけています。

常緑広葉樹

葉は厚くて、幅が広く、葉の表面につやがあります。
関東地方から南のほうに多い木で高木では、カシ・シイ・クスノキなど低木ではヤツデ・アオキなどがあります。

落葉広葉樹

葉のは幅広いが常緑のものより肉がうすく葉の表面につやもありません。

これは、関東・東北地方に多く見られる木で高木ではブナ・クヌギ・ナラなど、また、低木ではヤマブキ・ドウダンツツジなどが、これにあたります。

常緑針葉樹

北海道や東北地方の寒い地方に多い木です。
あたたかいところでも、山の高いところには見られます。

高木では、エゾマツ・シラビソ・モミなどがあり低木では、ハイマツ・ハイネズなどがあります。

また、アカマツ・クロマツ・スギなどはあたたかい地方の平地にも、見られます。

落葉針葉樹

種類が少なく、日本には、カラマツしかありません。
これは、本州中部の山地などでよく見られる高木です。

スギの育たないような高い山に、よく植林されます。

このほか、公園の池のふちなどによく植えられている。ラクウショウというものも、外国産の落葉樹です。




土壌と植物の特徴・性質とは? 土壌微生物とは?

土壌と植物

私たちが、ふつう土といっているものは植物の生活を考えあわせるときには土壌と言われています。

すべての陸上の植物は、土壌に根をはって生活しています。
たとえ岩山でも、そこに植物がはえているからには岩石の上に土壌があるのです。



土壌のできかたと植物

岩石は、風化作用を受けて、表面から崩れおちます。

こうしてできた、岩石くずの上には、はじめは、コケ類や地衣類のような下等な植物しかはえません。
というのは、岩石くずだけでは、水分や栄養分をよく保てないからです。

この岩石くずも長い年月のあいだには下等な植物の体の腐ったものがたまると岩石くずの粒と粒とをつなぎとめ水分や栄養分をよく保つようになります。

そうなると、植物が腐ってできた栄養分のたまりかたに応じてはじめはやせ地にはえる植物がはえ、それが枯れて腐ると、それよりも、もう少し肥えた土地にはえる植物がはえるというように、だんだん肥えた土地にはえる植物が、はえてくるようになります。

土壌は、このようにしてできてくるのです。

ですから、ひと口に土壌といっても岩石くずから土壌になったばかりのものから腐ったものが充分にまざった、黒っぽい発達した土壌まで、いろいろな程度のものがあるわけです。

土壌の性質

土壌の成分である岩石くずには、いろいろな大きさのものが混ざっています。

そのなかには、石ころや砂粒のように、はっきり目で見える大きな粒もあり、目で見えないような粘土や顕微鏡でも見えないような細かい粒まで、いろいろあります。

土壌に粗い砂粒が多いと、水はけがよく、空気もよく入ります。
ですから、植物の呼吸には都合がよいのですが乾きやすいという恐れもあります。

海岸に多いハマエンドウ・ハマボウフウ・ハマゴウなどは、こういう土壌によくはえます。

栽培植物でも、サツマイモ・ラッカセイなどは、どちらかと言えば、このような土壌を好みます。

土壌に細かい粒が多いと、よく水分や栄養分を保ちますが土壌の中に空気が入りにくく根の呼吸は充分できません。
しかし、イネ・ダイズ・ハクサイなどは、こういう土壌によくできます。

土壌微生物

土壌の発達にはミミズやバクテリアなど土中に住む生物も大きな役割りを果たしています。
とくに徹生物のはたらきは大きなものです。

土壌微生物の種類や数はものすごく多く、茶さじ1杯の土壌の中に、たとえばバクテリアは数百万、カビは数千から数万、放線菌は数十万、原生動物は数千もいるのです。

植物の葉・茎・根や動物の死骸は、はじめに、1種類の微生物がある程度分解すると、そのさきを別の種類の微生物が分解するという具合にして、ついには形も残らないようにされ大部分の有機物は二酸化炭素と水にされ、一部の有機物と無機物は土壌の中に混じってしまいます。

もし地球上に、こうしたはたらきをする土壌微生物がいなかったとしたら大むかしからの動物や植物の死骸が腐らずに地上にうずたかくたまっていたことでしょう。



植物のはたらきかけ

植物や動物は、環境の影響を受けて生活していますが同時に、それぞれの生活を通じて環境にはたらきかけて環境をかえるはたらきもしています。

「土壌のできかた」のところで調べたように土壌そのものも、植物や動物のはたらきによって岩石くずからつくられたものです。

もっと大きなものを例にとると、むかしの地球上には、植物の大群落や大森林が発達しました。

これらの植物はさかんに光合成をおこなって空気中から二酸化炭素をとって酸素を出しました。
そのため、空気中の酸素が多くなり現在のように動物が住めるようになったのです。

また、地球には、ところどころに砂漠がありますが、その中には、むかしは森林や草原であったものを人間が木を切ったり焼き払ったりしたため、植物は枯れ、気候までもかわってしまい雨の降らない土地になったところもあります。

落葉樹の林では、春に木の葉が広がると林の中はうす暗くなり、温度や湿り気もかわります。

これも植物のはたらきかけの1つの例です。




温度と植物の関係とは?春化現象とは? わかりやすく解説!

水のつりあい

生きている植物の体に、いちばん多くふくまれているものは水です。

そのうえ、植物はたえず根から水を取り入れ葉の気孔から空気中に送り出しています。


植物は、水が多すぎて、生活できなくなるというようなことは、あまりありません。
むしろ水不足になりがちです。水不足は1つの原因で起こります。

1つは、土の中の水が少なくなったり、凍ったりして植物が充分に水を吸いあげることができないために起こります。

もう1つは、気温が高く、空気が乾いたり風が吹いて葉から水が失われすぎたために起こります。
夏の日でりのときなど、これらのことが重なって起こり植物がしおれかかっていることが、よくあります。

こんなありさまが、もし長く続けば、植物は、枯れてしまいます。

植物は、たえず、水を取り入れたり送り出したりしていますが体の中の水分は、ほぼ一定に保たれています。

降水量

植物が吸いあげる土の中の水は、もとを正せば、雨や雪として地上に降ったものです。

雨や雪など地上に降るの水の量を降水量と言います。
この降水量は、場所によってたいへん違います。

日本は、世界でも雨の多いところで、1年間に降る雨の量は1000ミリから2500ミリくらいあり、また、地方によっては4000ミリも降るようなところがあります。

降水量が1年に500ミリ以上あると森林ができます。

降水量が、これより少なくて200ミリから500ミリのあいだでは草原ができます。

さらに、200ミリ以下のところでは特別な植物がまばらにはえる砂漠になってしまいます。

乾きやすいところの植物

砂漠・砂丘・海岸・川原のように乾きやすいところの植物は水のつりあいを、うまく保つような体のつくりをしています。

まず、地上に出ている部分は小さいのにたいそう長い根や太い根をもっています。
そして、この根で土の深いところにある水を吸い上げます。

またサボテンのように、茎が太って、貯水タンクの役目をし葉は、ごく小さくなったり、とげなどにかわってしまったりして植物の体から水分の出ることを、できるだけふせいでいます。

夏の日でりに強いスベリヒユやマツバボタンも、このような体のつくりになっています。

温度と植物

植物の生活は、温度が違うと、たいそう違ってきます。
生活のもとになっている生長は温度が低いと、止まってしまいます。

温度が高くなると、生長もそれだけ早くなります。
しかし、そうかといって、ある温度以上に高くなると、こんどはかえって、生長が衰えてきます。

花が咲くのにも、温度が関係しています。

気候帯

地球は、赤道を中心にして北と南に行くにしたがって温度は低くなります。
場所によっても、違いがありますがだいたい赤道に平行に6つの帯にわけることができます。

それは、赤道から南北にむかって熱帯・亜熱帯・暖帯・温帯・冷帯(亜寒帯)・寒帯となっています。

それぞれの帯(これを気候帯と言います)では植物が、それぞれ特徴のある生活をしています。

それは、植物の生活が、温度の影響を強く受けているからです。



春化現象

ダイコンやハクサイは秋に種をまき、冬の寒さにあうと春になって花を咲かせます。

しかし、あたたかい春になってからまくと葉や茎は、ずいぶん大きくなりますが花が咲きません。

つまり秋まきのものは、いちど寒さにあわないと花が咲かないのです。

ところが、ダイコンやハクサイの種を、水を吸わせて芽をださせ発芽したばかりのものを零下五度ぐらいの低い温度に1週間から1か月ぐらいのあいだ保っておいて、これを畑にまくと春にまいたものでも秋まきと同じように花を咲かせ、実をむすびます。

このように、秋まきの植物のごく若いころに低い温度にあわせると春にまいても花が咲き、実をむすぶという現象を、春化現象と言います。

この春化現象は、秋に発芽して苗で冬を越し春に花を咲かせる越年生植物によくみられます。

また、これらの植物は、たいてい長日施物なので低い温度にあわせたあとで、日が長くならないと花を咲かせないものもあります。




日向の植物と日陰の植物の特徴とは? 植物を育てる光とは?

植物を育てる光

緑色をした植物は光合成によって、自分の体をつくります。
この場合の光は、もちろん、太陽の光です。

その強さは、地球上どこでも、だいたい同じです。


しかし、くわしくみると赤道では、1年中光の強さにそれほどの変化はありませんが、赤道より北や南へいくと、夏は光が強く、冬は弱くなります。

日本では、夏のいちばん強い光が、およそ10万ルクス。冬は、その半分の五万ルクスです。

ところで、植物の光合成は、光が5万ルクスもあれば、充分ですから、光だけについてみると、地球上のたいていのところなら、植物は生活できることになります。

しかし、光が1枚の葉を通ると、大部分は葉に吸収されるので、葉の下では、光の強さは、ほぼ10分の1になってしまいます。

植物の葉は、光がよくあたるようにならんではいますが、森林の植物を見ればわかるように、葉の数は途方もなく多いのです。

ついていた全部の葉を、その林地に隙間のないように敷き詰めたとすると、少ないものでも、5、6層、多いものでは10層にも重なってしまいます。

これでは、上のほうの葉は、充分光があたって光合成ができても、下のほうの葉は、光が弱くて充分な光合成ができるとはかぎりません。

森林の木を注意してみると、下のほうの枝には、葉がついていません。
畑のトウモロコシも、下のほうの葉は黄色に枯れています。

これらの木や作物の葉も、以前には元気に光合成をし、植物の生活を支えていたのですが、あとから、若い茎や葉が上にできて広がったため、日かげになって充分な光合成ができず、できた養分を自分の呼吸に使うほうが多くなり、枯れてしまったのです。

日なたの植物と日かげの植物

植物には、たとえばマツ・ダリア・ヒマワリ・イネなどのように、日なたでよく生長する日なた植物と、アオキ・オサバグサ・ラン・シダなどのように、日かげでよく生長する日かげ植物があります。

日なた植物の葉は、厚さが厚く、緑色が濃く、丈夫そうです。
この葉は、光が強ければ強いほど、さかんに光合成を行います。

ですから、天気がよければどんどん有機物をつくります。
しかし、光が弱いと光合成も弱まり、つくられる有機物も少なくなり、ときには呼吸で使ってしまうほうが多くなります。

日なた植物を日かげにうえると、まず、葉が落ち、ついには枯れてしまいます。
これは、光合成によってつくられる有機物が、呼吸によって使われる量においつかず、それまでにたくわえておいた有機物を使いつくして、枯れていくのです。

日かげ植物の葉は、うすく、色もうす緑で、弱弱しそうです。
この葉は、光が弱いときには、日なた植物の葉よりも、光合成をするはたらきはずっと強いのです。

しかし、数千ルクス(曇った日の明るさ)以上に光が強くなると、光合成はそれ以上に増えません。

日かげ植物の呼吸は、日なた植物よりずっと低いので日かげで少しの有機物をつくり、少なく使って、つつましく生活しています。

森林の下のような日かげは、光こそ充分ではありませんが、強い風もふかず、空気も土も、ほどよく湿っていて、いろいろな種類の日かげ植物がはえています。

植物によってはスギ・シイなどのように、日なたでもよく生長するし、日かげでもよく育つものがあります。

日なただけを好む植物が大きくなるとその下には、日かげができ、その植物の子や孫の植物は、大きくなれないうちに、かれてしまいます。

しかし、日かげにもたえられる植物は、まわりが日かげになっても、生長できますから、だんだん増えていきます。



光のあたる時間と花の咲く時期

植物は、1日に何時間ずつ光があたるか、ということによっても生長の様子や、花の咲く時期などが違ってきます。

この場合には、光の強さは関係がなく、明るい時間と暗い時間つまり、昼と夜の長さが関係するのです。

花が咲くのに、昼の長さが、どのくらいあればよいかは植物の種類によって、違いますが大きく3つにわけることができます。

短日植物

昼の長さが、ある決まった時間より短くなると花の芽をつくり、花を咲かせる植物を短日植物と言います。

イネ・ダイズ・トウモロコシ・キク・コスモスなどは短日植物です。
短日植物の多くは、亜熱帯の原産です。

この亜熱帯は、夏に乾きすぎて花が咲くのに適さないところが多くしかも秋が長いので植物は夏から秋にかけて日が短くなりだすと花芽をつくり、秋に花を咲かせ、実をむすぶのです。

長日植物

昼の長さがある決まった時間より長くなると花芽をつくり、花を咲かせる植物を、長日植物と言います。

レングソウなど、春から夏にかけて花の咲く越年生植物の多くは長日植物です。

長日植物は、冷帯地方の原産です。
そこは夏の期間が短いので、種をつくってしまわなければ、じきに、霜と氷の冬がやってきて、熟していない種は死んでしまいます。

そのため、春がきて氷が溶け、昼が長くなりだすと、はやばやと花をつけるのです。

日の長さに関係のない植物

植物のなかには、昼の長さに関わりなく、花をつける植物があります。
四季咲きの植物がそれで冬のごく寒い時期をのぞいて1年中花をつけます。

このような、日の長さに関係しないで花をつける植物は北から南まで広く分布してはえています。

いっぱんに、花が咲くのには昼の長さのほかに植物の若いころの温度も関係しています。




植物をとりまくものとは? 植物の生活と生長とは?

植物をとりまくもの

植物がはえているということは、ごくあたりまえのことです。
しかし、植物がはえるためには、光・水・温度・土などの具合が適当でなければなりません。

植物や動物をとりまいているまわりの世界を、環境と言います。
植物や動物は、具合のよい環境か、悪くてもどうやら我慢ができる環境に生活しているのです。

生活するのに都合の悪い環境では植物は枯れ動物は死んだり逃げ出したりしてしまいます。

けれども、植物はなかなか我慢強いので線路の砂利の中、屋根や石垣の割れ目などにも、よくはえています。

このように、植物がはえることができたり、はえることができなかったりするわけを知ったり植物のいろいろな生活を理解するために環境が植物にどのようにはたらくかを調べてみましょう。

また、綰物が環境にはたらきかけて、環境をかえることもあります。
このように植物と環境は、なかなか複雑な関係にあります。

それでは、環境を形づくっている、光・水・温度・土などと植物の生活のあいだには、どんな関係があるか調べてみましょう。


植物の生活と生長

植物の生活のいろいろなできごとは植物の生長がうまくいっているかどうかがもとになっています。

植物は光合成によって、炭水化物をつくり、さらにアミノ酸・たんぱく質・脂肪などをつくります。

これらの有機物は、植物の体をつくるもととなって新しい細胞をつくりだします。

いっぽう、植物は、いろいろの生活作用を営むためにエネルギーを必要とします。

このエネルギーは、呼吸によって、さきの有機物を分解することによって取り出されます。

つまり、光合成は、体の有機物の量を増やし、呼吸は反対に有機物の量を減らします。
そして、光合成と呼吸による有機物の差が生長する量ということになります。

植物が、どんどん生活するためにはエネルギーもたくさん必要ですから、たくさんの有機物を使います。

しかし、それ以上に、光合成によって、たくさんの有機物がつくられれば植物は、どんどん生長するわけです。




広告色とは?動物の身のまもりかたとは? わかりやすく解説!

広告色

動物のうちには、たいへん鮮やか色をしていて、よく目につくものがいます。

このような動物たちは、たいてい毒があったり悪臭を出したりしますから、保護色をしている動物とは反対に自分のありかを敵に知らせれば、敵はかえってよりつかないのです。

動物たちが、このような色をもっていることを広告色または警戒色と言います。


テントウムシ

テントウムシの仲間は、目につきやすい水玉模様の甲を背負っています。
しかし、この仲間は、触るとくさい汁を出します。

それで、ほかの動物たちは、テントウムシの姿をみると、すぐ臭いにおいを思い浮かべるのでテントウムシには、あまり近づかないと考えられています。

ハチ

ハチの仲間には黒と黄のしま模様の目につきやすい体をしているものがあります。

この仲間は、尻にある毒針で敵を刺すので、ほかの動物たちは、逃げてしまいます。

死んだまねをするもの

昆虫やクモなどには、触られると死んだまねをしてじっと動かなくなるものがあります。

小鳥やカエルなどは動いているものを襲う習性があるので昆虫やクモが死んだようにじっとしていると、これを食べないでいってしまいます。

体の一部分を切り離して、逃げるもの

潮干狩りなどでカニをつかまえたとき足をもつとカニが自分で足をもいで下に落ち、そのまま逃げてしまうことがあります。

また、トカゲをつかまえるとき、尾をおさえると尾が途中から切れてトカゲが逃げてしまうことがあります。

残された尾のはしは、激しく動くので小鳥などが、その尾を食べているあいだに、トカゲは草むらに逃げこんでしまいます。

このカニの足やトカゲの尾には、特別な仕掛けがあって自分から切り離せるようになっています。

そして、足や尾は切れても、しばらくすると、またはえてきて、もと通りになるのです。

毒液や悪臭を出すもの

イタチは、大きい獣に襲われると肛門のまわりから強い嫌な臭いを出して、相手を困らせます。

スカンクはアメリカの平原や森林に住んでいますが背中から尾にかけて、黒池に白いすじの入った、美しい獣です。

これがやはり、嫌な臭いの液を出すので有名です。

しかし、美しい毛なみをもっているので、いまでは臭いを出す部分だけを切り取って家の中で飼うことがあるそうです。

また、海に住んでいるアメフラシは、ほかの動物が体に触ると紫色の臭い液を出して、その動物を追い払います。

ガラガラヘビ

ガラガラヘビは、毒ヘビで、アメリカやメキシコなどに住んでいます。

尾の先には、硬い輪が10以上もつながっていて、この部分だけを持ち上げて空中で激しく振り、カラカラとかシューシューという音を出します。

ほかの動物たちは、この音を聞くと、恐れて近づきません。



殻をかぶっているもの

貝の仲間は、硬い石灰質の殻をかぶって身をまもっています。

ヤドカリは、丈夫な巻貝の殻を背負って暮らしていますが敵に襲われると、殻の中にもぐって身を隠してしまいます。

また、ミノムシは、ミノガの幼虫ですが細い枝や葉を噛み切ってみのをつくり、その中に入って暮らします。

体から電気を出すもの

デンキエイやデンキウナギは、体の中に電気を起こす仕掛けがあります。
敵に襲われると、この電気で相手を感電させてしまいます。

これは身をまもるのに役立つだけでなく小さい魚などを殺して、えさにするのにも役立ちます。

墨を出すもの

だれでも知っているように、タコやイカは敵に襲われるとまっ黒な墨を出して煙幕をはり、敵の目をくらまして、そのあいだに、逃げてしまいます。

恐ろしい体つきのもの

シャチホコガの幼虫は、たいへん恐ろしい形をしていますが、そのうえ、長いとげのある尾を、上のほうにあげて木にとまっています。

その姿を見ると、いかにも激しい毒でもありそうですが、ほんとうは、毒はもっていないのです。

しかし、この恐ろしい格好が、動物の世界で、どれだけ身をまもるのに役立っているのかは、まだはっきりわかっていません。




保護色とは?擬態とは? わかりやすく解説!

保護色

幹に止まったガ、葉にいる青虫、砂原にいるバッタ、これらはまわりの色や模様とよく似ていて、なかなか見つけにくいものです。

このように、動物の体が住んでいる場所とよく似た色や模様をしていることを保護色と言います。

保護色をした動物にはコオロギやバッタなどのように一生体の色がかわらないものとカメレオンのように住む場所によって体の色をかえるものなどかあります。

エチゴノウサギやライチョウが冬になると毛や羽根が白くはえかわるのも保護色と考えてよいでしょう。


保護色の役目

私たちの目から見れば、動物の保護色は、たしかに身をまもるのに役立っているようです。

しかし、ほかの動物の目にも身をまもるのに役立っているかどうかは疑問です。

ここに、つぎのような実験があります。
バッタの仲間には、かっ色のものと、緑色のものとがあります。

この、色の違ったバッタを同じ数ずつ緑の草むらに糸でつないでおいたところ緑色のバッタのほうが、たくさん生き残りました。

これは、緑色のバッタは鳥などに見つけられることが少なく、これらの天敵に食べられなかったためと思われます。

カメレオンの色

カメレオンは、まわりの色によって体の色をかえることで知られています。

そのために、ほかの動物に見つけられにくいので強い動物から襲われることが少ないばかりでなく昆虫をつかまえるときにも、たいへん都合がよいわけです。

まわりの色によって、体の色をかえる動物にはカメレオンのほかアマガエル・ヒラメ・カレイ・イカ・タコなどがあります。

擬態

動物のうちには、色だけでなく形までも、まわりの草や木に似せているものがあります。

また、自分の体を毒や臭い臭いをもつ動物の特徴に似せて敵から身をまもっているものもあります。

動物たちが、このような色や形をもっていることを擬態と言います。



木の枝に似た昆虫

シャクトリムシは、シャクガの幼虫で、木の葉を食べて育ちます。

体の色が木の枝に似ているばかりでなく休んでいるときは小枝のような形をして枝についているので木の小枝と区別しにくいことがあります。

また、ナナフシという昆虫は緑色かかっ色の体をしていますが形が木の枝に似ています。

これらの昆虫たちは、敵から発見されにくいので危険から逃れることが多いと考えられています。

攻撃するための擬態

木の葉などに、まっ黒な、アリのような形をしたクモ(アリグモ)が歩いていることがあります。

クモは四対の足をもち、アリは、三対の足をもっているので、ふつうなら、すぐ見分けがつきます。

しかし、このアリグモは、いちばん前の足を、いつも上にあげているので、それが触角のような形になっておりアリと見間違うのです。

アリは、仲間どうしが出あうとよりあう性質があるので間違えてアリグモのそばへよっていきます。

アリグモは、それを捕えて食べるのです。




魚の回遊とは? 水温の変化にしたがう回遊とは?

魚の回遊

鳥に、留鳥や渡り鳥があるように魚にも、海岸に近い岩かげや海藻のしげっているところに住むものと大洋を広く泳ぎ回るものがあります。

魚が、群れをつくって広い範囲を泳ぎ回ることを回遊と言います。
回遊は、その目的によって、つぎのようにわけることができます。


たまごを生むための回遊

サケやマスは、川で生まれます。
サケはすぐにマスは1年経ってから海に下り、海で7、8年過ごします。

海にいるあいだ、これらの魚は、非常に遠くのほうまで泳ぎ回りますが、親になると大群をつくって、たまごを生むために、また自分の生まれた川にかえってきます。

これらの魚は海にいるあいだ、充分に食物をとり、たまごを生むための準備を終えて海から川にのぼりはじめると、まったく食物をとりません。

そして、たまごを生み終わると、たいていは、すぐに死んでしまいます。

ウナギは、サケやマスとは反対に、ふだんは川に住んでいますが、たまごを生むときには、川から海に下ります。
そして、南方の深海にまで回遊して、そこでたまごを生むのです。

たまごを生み終わったウナギはサケやマスと同じく、たいてい死んでしまいます。

ウナギやサケ・マスが、数千キロメートルも旅をするのにくらべると、タイやサンマは、それほど遠くまで、回遊しません。

タイは、たまごを生むために、四国沖から、瀬戸内海に入ってきます。
この時期には体の色が、とりわけ美しくなるのでサクラダイと言われます。

水温の変化にしたがう回遊

陸上の動物と同じように、魚にも、それぞれ適温があります。

たとえば、タラの適温は3度前後、ニシンでは5度前後、サバでは15度前後、カツオでは22度前後です。

海水でも、季節がかわるにつれて、水温がいくらかかわります。
ですから、魚たちも適当な水温のところへ移動しなければなりません。

カツオは春から夏にかけて、南から日本近海にむかって回遊してきます。
秋から冬にかけては、タラが北海から訪れてきます。

これらはみな、水温の変化にしたがう回遊です。
この回遊が、季節回遊と言われるのも、このためです。



えさをとるための回遊

川や海には、どこでも、同じようにえさがあるわけではありません。
もっとも、イワシのえさになるようなプランクトンは、どこにでもいます。

しかし、カツオのえさになるイワシ、カレイやヒラメのえさになる貝やカニなどは、どの海にも、同じように分布しているわけではありません。

したがって、多くの魚は、えさをもとめて広い海を群れをなして泳ぎ回ります。

これが、えさをとるための回遊です。

この回遊には広い範囲にわたって、海の中を平面的に泳ぎ回るものとハダカイワシのように、深いところと浅いところを垂直に行ったり来たりするものとがあります。

これは、えさになる小さな生物(プランクトン)が昼は深いところに、夜になると浅いところへと移動するからです。

成育のための回遊

ニシンは成育しながら北海道をほとんどひとまわりするように移動します。
このような回遊を、成育のための回遊と言います。

この回遊をするものにはニシンのほかに、ボラやスズキなどがあります。




モバイルバージョンを終了