魚の回遊
鳥に、留鳥や渡り鳥があるように魚にも、海岸に近い岩かげや海藻のしげっているところに住むものと大洋を広く泳ぎ回るものがあります。
魚が、群れをつくって広い範囲を泳ぎ回ることを回遊と言います。
回遊は、その目的によって、つぎのようにわけることができます。
たまごを生むための回遊
サケやマスは、川で生まれます。
サケはすぐにマスは1年経ってから海に下り、海で7、8年過ごします。
海にいるあいだ、これらの魚は、非常に遠くのほうまで泳ぎ回りますが、親になると大群をつくって、たまごを生むために、また自分の生まれた川にかえってきます。
これらの魚は海にいるあいだ、充分に食物をとり、たまごを生むための準備を終えて海から川にのぼりはじめると、まったく食物をとりません。
そして、たまごを生み終わると、たいていは、すぐに死んでしまいます。
ウナギは、サケやマスとは反対に、ふだんは川に住んでいますが、たまごを生むときには、川から海に下ります。
そして、南方の深海にまで回遊して、そこでたまごを生むのです。
たまごを生み終わったウナギはサケやマスと同じく、たいてい死んでしまいます。
ウナギやサケ・マスが、数千キロメートルも旅をするのにくらべると、タイやサンマは、それほど遠くまで、回遊しません。
タイは、たまごを生むために、四国沖から、瀬戸内海に入ってきます。
この時期には体の色が、とりわけ美しくなるのでサクラダイと言われます。
水温の変化にしたがう回遊
陸上の動物と同じように、魚にも、それぞれ適温があります。
たとえば、タラの適温は3度前後、ニシンでは5度前後、サバでは15度前後、カツオでは22度前後です。
海水でも、季節がかわるにつれて、水温がいくらかかわります。
ですから、魚たちも適当な水温のところへ移動しなければなりません。
カツオは春から夏にかけて、南から日本近海にむかって回遊してきます。
秋から冬にかけては、タラが北海から訪れてきます。
これらはみな、水温の変化にしたがう回遊です。
この回遊が、季節回遊と言われるのも、このためです。
えさをとるための回遊
川や海には、どこでも、同じようにえさがあるわけではありません。
もっとも、イワシのえさになるようなプランクトンは、どこにでもいます。
しかし、カツオのえさになるイワシ、カレイやヒラメのえさになる貝やカニなどは、どの海にも、同じように分布しているわけではありません。
したがって、多くの魚は、えさをもとめて広い海を群れをなして泳ぎ回ります。
これが、えさをとるための回遊です。
この回遊には広い範囲にわたって、海の中を平面的に泳ぎ回るものとハダカイワシのように、深いところと浅いところを垂直に行ったり来たりするものとがあります。
これは、えさになる小さな生物(プランクトン)が昼は深いところに、夜になると浅いところへと移動するからです。
成育のための回遊
ニシンは成育しながら北海道をほとんどひとまわりするように移動します。
このような回遊を、成育のための回遊と言います。
この回遊をするものにはニシンのほかに、ボラやスズキなどがあります。