くさびのはたらき
斜面を使うと、小さい力でも、重い物を引き上げることができます。
つまり、小さい力で大きな力を出したことになります。
くさびは、この斜面の性質を利用したものです。
くさびのきり口は、たいてい2つの辺の等しい、細い三角形をしています。
この二辺にはさまれた角をくさびの角、短い一辺をくさびの頭と言います。
下の図をごらんなさい。
ハンマーなどで、くさびの頭にPの力を加えるとこの力は、くさびの斜辺に直角な2つの力、QとRとにわかれます。
この力が、木を折るときの力になります。
この3つの力のあいだにも、斜面のときと同じように力の平行四辺形があてはまります。
平行四辺形の対角線Sは、Pと同じです。
この平行四辺形の半分の三角形は、くさびと同じ角度をもっているのでRとSの大きさの割合は、くさびの斜面と頭の長さの割合に等しくなります。
(Rの力):(Sの力)=(斜面の長さ):(頭の長さ)
Rの力は、くさびの出す力ですから、これを式であらわすと、
R……くさびの出す力
S……加えた力
この式からわかるように、くさびの頭の長さが、斜面にくらべて短いほど、くさびは大きな力を出すことができます。
たとえば、くさびの斜面の長さが、頭の長さの5倍あったとします。
このくさびに1キログラムの力をはたらかせると5キログラムずつの力となって、2つの斜面からはたらきます。
くさびと刃物
斧や、包丁などは、その切り口を見るとちょうどくさびと同じ形をしています。
物を割ったり、切ったりするときの力のはたらき方も、くさびと同じです。
刃物は刃がうすいほど、切れ味がよくなります。
それは、くさびの角度が小さいほど、くさびの出す力は大きくなるからです。
しかし、刃がうすいと折れやすくなるので使い道によって、いろいろとかわった形にしています。
くわ・すき・つるはし・スコップなど地面を掘り起こす道具もくさびと同じに考えられます。
これらの道具の形と厚さ、えと刃の角度、地面の硬さなどとの関係を調べてみるのも、おもしろいでしょう。
かんな・のみなど、材料に食い込んで削っていくときの力のはたらき方も、くさびと同じです。
包丁やナイフは、ただ上から押しつけて切るよりも押したり、引いたりするほうが、よく切れます。
下の図をごらんなさい。
包丁を手もとに引きながら切ると、包丁の動きは、Rの方向になります。
このときのくさびの形は、(A)のようになります。
包丁を、ただ上から押したときのくさびの形は(E)です。
この2つのくさびを調べると、くさびの頭の長さは同じでも手もとに引いたときのほうが、斜面の長さはずっと長いことがわかります。
斜面が長くなると、くさびの角度は小さくなりますからよく切れることになるのです。