ポンプで上がる水の高さ
ポンプで水を吸い上げることができるのは、実は大気の圧力のためです。
いま、ポンプのピストンが上がったため中に隙間ができたとします。
この部分は真空になっています。
ところが管の外の水面は、大気の圧力で押されているので水が管に押し上げられるのです。
しかし、外の水面を押している大気の圧力の大きさには限度があってその強さは、ふつう1平方センチあたり1キログラムです。
それで、ポンプでくみあげられた水の圧力の強さが1平方センチあたり約1キログラムになるくらいしか上がらないのです。
つまり、どんなによくできたポンプでも、約10メートルの高さまでしか水をくみあげることができません。
トリチェリの実験
むかし、イタリアの物理学者でトリチェリという人はつぎのような実験をして、大気の圧力を測りました。
まず、一方のはしを閉じた、長さ1メートルのガラス管に水銀をつめてその口をしっかりおさえながら、水銀の入っている器の中に逆さまにしてたてました。
はじめ、管内の水銀は少し下がりましたが器の水銀面から76センチの高さのところで、止まってしまいました。
管の上のすいている部分にはなにも入るはずがありませんから、真空であると考えられます。
それで、この部分を、トリチェリの真空と言います。
また、この実験をトリチェリの実験と呼んでいます。
トリチェリの実験で管内に水銀が押し上がるのは管の外の水銀面に、大気の圧力がはたらいているからです。
それで、管を少し傾けても、水銀柱の高さはかわりません。
上の図で、A面にはたらく大気の圧力は、A面と同じ高さにある管内のB面に下からはたらく圧力の強さと等しいと考えられます。
B面では、その上にある水銀柱の重さとつりあっています。
水銀の比重は、13.6ですから、Bには、1平方センチあたり、76 × 13.6 = 1033.6(グラム)の圧力が加わっていることになります。
このため、Aの大気の圧力は、やはり1平方センチあたり約1キログラムの割合ではたらいていることになります。
サイホン
水を入れたビーカーを高いところにおき水をいっぱいにしたビニル管のはしを水に入れます。
そして、ビニル管のもう一方のはしをビーカーの中の水面より低くするとビーカーの中の水はどんどん流れ出します。
このようなしかけを、サイホンと言います。
私たちも、サイホンを使って、ビーカーの水をうつしてみましょう。
サイホンがはたらくのも、水面にかかる大気の圧力のためです。
図のように、Cの部分にうすい膜を考えると、この膜は、Aの水面から。
(大気の圧力)-(h1の水柱による圧力)の圧力で押されています。
また、同時にこの膜はBの水面から(大気の圧力)-(h2の水柱による圧力)の圧力で押されています。
このとき、h2はh1より長いので、Cの部分の膜を考えるとAの水面からの圧力は、Bの水面からの圧力より大きくなるはずです。
そのため水は、AのほうからBのほうへ流れることになるのです。
気圧の単位
気圧の大きさをしめすのに、水銀柱の高さを用いそれをミリメートルの単位であらわすことがあります。
たとえば、水銀柱の高さが、760ミリのときには気圧は、760mmHg(Hgは水銀の記号)であると書きあらわすのです。
また、水銀柱の高さが760ミリのときの気圧を標準気圧と言ってこれを1気圧ということもあります。
気象観測では、気圧をあらわすのにふつう、ミリバール(mbar)という単位を用いています。
これは、1平方センチあたり100万ダイン(1ダインは1グラム重の980分の1の大きさ)の割合で加わる圧力の強さを1バールとして、その1000分の1をミリバールと言うのです。
それで、一気圧は、約1013ミリバールにあたります。
つまり、760mmHg = 1気圧 = 1013mbar
の関係があります。