原子核の人工破壊
鉛より原子番号の小さい原子を壊してほかの原子にかえることはできないだろうか、ということが20世紀のはじめころから考えられていました。
原子核を壊すには、強い弾丸の役目をするものが必要です。
イギリスのラザフォードは1919年にラジウムからでるアルファ線を弾丸に使って窒素原子を壊すことに成功しました。
つぎに、考えられたのは、アルファ線のような自然の弾丸ではなく、人間がつくった弾丸で安定した原子核を壊すことでした。
たとえば、水素ガスを蛍光灯のように電気で光らせると電子のとれた裸の原子になります。
これは、陽子で水素イオンとも言います。
これに、何十万ボルトと言う電圧をかけて真空中を走らせ原子核を壊すための弾丸を使うのです。
この方法で、イギリスのコッククロフトとウォルトンが1932年にリチウムの原子核を壊すことに成功しました。
その後、いろいろのイオン加速装置が工夫され現在では、すべての安定した原子核を壊したり放射性にすることができるようになりました。
中性子と人工放射性元素
水素イオンが、まとになる原子核に近づくと、原子核の陽電気力が反発するのでよほどの高速度でないと中に突入して、これを壊すことはできません。
ところが、中性子は電気をもたないのでどんなに遅くても原子核の中へ入りこみ、これを壊したり、放射性にしたりします。
このような方法で、放射性になった元素を、人工放射性元素と言います。
減速材
中性子が、原子核に入ってはたらくとき遅い中性子ほど原子核と作用する時間が長いので、効果が上がるのです。
そこで中性子を水素原子や炭素原子と衝突させて、速さを遅くします。
このような材料を、減速材と言います。
原子核を壊す弾丸に中性子を使うことをはじめて考えたのはイタリアのマエルミという学者です。
フェルミは中世子をぶつけると、ほとんどすべての安定な原子が壊れるか放射性をもつようになることを発見しました。
この研究は、1934年から、その翌年にかけてのことです。
原子核の分裂
鉛より原子番号の小さい、安定した元素の原子でなく安定な自然放射性元素の原子に中性子を打ちこんだらどうなるかということを研究したのは、ドイツのハーンとシュトラックスマンというふたりの学者でした。
この研究で、たとえば、ウランに中性子を打ち込むとウランがほとんどまっぷたつに裂ける、ということを1938年に研究しました。
これを核分裂と言います。
原子力
中性子が突入して原子核が分裂するときには質量がエネルギーに変化して、非常に多くのエネルギーを出します。
このエネルギーを原子力、または、原子エネルギーと言います。
この原子エネルギーは、石油や石炭などを燃やしたときにでるエネルギー(熱エネルギー)とは、全くその発生の原因が違うばかりでなくその大きさは、何億倍というほど違います。
連鎖反応
紙などに火をつけると、その一部が燃えて、熱を出しこの熱で、つぎの部分が発火点に達し、つぎつぎと燃え広がっていきます。
ウラン235の原子核の分裂は1回の核分裂で、2個から3個の中性子が飛びだしこれが、つぎのウラン原子核に飛び込んで分裂を起こすことになるのです。
すると、また、2~3個の中性子が飛出してつぎのウラン原子核を分裂させるというように、つぎつぎと分裂が続きます。
これを連鎖反応と言います。
濃縮ウラン
天然のウランには質量数が238、235の2つの同位元素が140対1の割合でまじっています。
ウラン238は、分裂を起こさないばかりかウラン235の分裂でできた中性子をとらえて、連鎖反応をさまたげます。
そこで、このウラン238をできるだけ少なくしウラン235をできるだけ多くする必要があります。
これには、いろいろな装置が工夫されています。
こうして、天然のウランから、ウラン235の割合の多いウランをつくることを濃縮と言い、そのウランを濃縮ウランと言います。
核融合
重水素を何千万度という高い温度にすると2つの重水素核がむすびついて、ヘリウム原子核になります。
この反応でも非常にたくさんの原子力が放出されます。
これを核融合とか・熱核反応と言います。