摩擦力
机の上にある本やスタンドを、軽く押してごらんなさい。
わずかの力で押したのでは動きませんが、強く押すと動き出します。
物を動かすには、力を加えなければなりません。
しかし、加える力が、ある大きさより小さいとこのように物が動かないことがあります。
力を加えているのに物が動かないほかの例を考えてみましょう。
ふたりが向き合って、1本の棒を両はしから互いに押したとします。
ふたりの押す力の大きさが等しくて向きが反対なので棒はどちらへも動きません。
机の上の物も、これと同じです。
物を押しても動かないのは、動かす方向と反対に別の力がはたらいていて、動くのを止めているからです。
このときの力は、目には見えませんが触れ合っている2つの物の面のあいだにはたらいている力で摩擦、または、摩擦力と言います。
このように、摩擦力は、物の運動をさまたげる方向にはたらくので摩擦力より大きな力で押したり引いたりしなければ物を動かすことはできません。
雪や氷の上では、よく滑ります。これからです。
しかし、スキーで滑る場合でも、板の上ならともかく平地で滑るときには、ときどき手や足に力を加えて加減しないと続けて滑ることができません。
力を加えないでいると、まもなく止まってしまいます。
このことから、滑っているときでも運動をさまたげろ力は小さいけれども、
はたらいてしることがわかります。
走っている自動車や電車は、動きだしてからもたえずエンジンやモーターをはたらかせています。
これは摩擦力によって、自動車や電車の運動が絶えずさまたげられているためです。
このように、摩擦力は物が止まっているときばかりでなく滑っている物や転がっている物にもはたらいてその動きを止めようとしています。
実験
摩擦力の大きさを調べるには、図のような摩擦実験装置を使います。
摩擦用の箱は、4つの面がそれぞれすべすべする金属の面と金属に紙をはった面、紙やすりをはった面、もう1つの面は板に接している面積が少なくなっています。
摩擦用の箱と皿を、滑車を通して写真のようにつなげます。
つぎに、箱が滑り出すまで、さらに分銅を載せていきます。
このとき、摩擦用の箱には、分銅と皿の重さのために上の図のようにPという水平な力がはたらきますが、まだ動きません。
これは、Qのような水平で、Pと反対向きの摩擦力がはたらきPとつりあっているからです。
さらの分銅を増やせば増やすほど、箱を引く力Pは大きくなります。
しかし、摩擦力もだんだん大きくなります。
この2つの力の大きさが同じで、いつもつりあっているときは箱は動きません。
摩擦力の大きさは、面の材質によってもまた、斜面の角度によっても、かわってきます。
静止摩擦力
物体が止まっているときの摩擦はその物体を引く力と大きさが等しく向きが反対です。
たとえば、1キログラムの力で引いても動かないときは1キログラムの摩擦力がはたらいているわけです。
まえと同じ実験で、ある重さまで分銅を載せると、ついに箱が動きはじめます。
摩擦力は、これ以上大きくなりません。
つまり、摩擦力は、箱が動きはじめようとするときが、いちばん大きいのです。
物体が止まっているときに、はたらく摩擦力を静止摩擦力と言い物体が動きだす瞬間のいちばん大きな摩擦力を最大(静止)摩擦力と言います。
最大摩擦力の大きさは、このときの皿と分銅の重さと等しくなります。
したがって、それを測りで測れば、最大摩擦力がわかります。
運動摩擦力
静止摩擦力に対し、物体が動いているときにその動いている物体を止めようとする摩擦力を運動摩擦力と言います。
運動摩擦力は、最大摩擦力より小さくなっています。
この運動摩擦力の大きさは物体の速度の大きさにはほとんど関係かわりません。