船の形と抵抗
船が水面を楽に走るためには、水の抵抗がなるべく少ない形にしなければなりません。
船は、まず水の流れによって、大きな抵抗をうけます。
また、船尾にうずのできるようなときには、そこの水の圧力が低くなって、船をひきもどすような力がはたらきます。
そのため、船の形は、できるだけ流線形に近い形にして圧力による抵抗をなくすようにしてあります。
とくに、鋼船などでは船体だけでなく、かじなどの部分の形も、流線形に工夫されてします。
このほか、船が受ける抵抗には、波によって起きる抵抗があります。
船がゆっくり進むときは、波があまり立たないので、この抵抗もほとんどありませんが速力が真下につれて、船首が起こす波は非常に大きくなります。
つまり、波をつくって船が進むということを船のほうから考えれば走る力のうえに、波をつくるぶんだけ、余計に動力が必要となることになります。
たとえば、いま長さ150メートルの船を考えると10ノッ卜くらいまではほとんど水との摩擦による抵抗だけですが20ノットを越すと波による抵抗が急に増え、これが全体の抵抗の80パーセント近くをしめるようになります。
そのため高速の船ほど波をつくらないような船の形を考える必要があります。
波による抵抗を減らすには、船の形をできるだけやせ形にすると効果があります。
また、船首にまるみのある船は大きな波を立てますから波切りをよくするように、船首と船尼を細長くとがらせます。
船体の長さも、批抗の大きさに関係していて、いっぱんに細長くすればするほど、抵抗は減ります。
競走用の船が細長いのは、このためです。
また最近では、船首の底の部分を、球形にした船が多くつくられています。
これは、この球形の部分で船首が起こす波か打ち消すような波をつくり、これによって抵抗を減らすようにしているのです。
船の重心と安定
広い大洋を航海している船が、波や風を受けて、転覆するようなことがあったら、たいへんです。
そのため、船では安定ということが大切な条件になっています。
船がまっすぐに浮かんでいるときは、重力と浮力がつりあって、安定しています。
そして船が傾くと、水面下の形がかわるので、浮心の位置もかわります。
このとき重心が低いと、重力と浮力は、船がひとりでにもとにもどるようにはたらきます。
ところが、船の中心が高いと重力と浮力は両手でハンドルをまわすようにはたらいて船をひっくり返してしまいます。
このように、船は重心が高いほど不安定で、低いほど安定がよいのです。
そのため船をつくるときは、できるだけ重心が低くなるように工夫しています。
船体のしくみ
下の図は船の中をしめしたものです。
船の底に二重になっていて、丈夫な横のしきりで、細かくわけられています。
これは、船が衝突したり、浅瀬に乗り上げたりしたとき海水がほかの場所に入らないようにするためです。
甲板は、船の中でいちばん丈夫につくられている上甲板のほか、その上や下に何重にもなっています。
また、二重底の中のたくさんにしきられたところには燃料油・潤滑油・海水・飲料水などを入れます。
二重底の中の海水は、船の傾きを調整するために利用されます。
機関室は、船の中央に近いところにあるものと、うしろのほうにあるものがあります。
この中には、推進機関のほかにボイラ・発電機などの大きな機械や、たくさんのポンプ・冷却器・加熱器などがすえつけられています。
推進機関の軸は、うしろのほうまで伸びていて、その先にスクリューがついています。
軸は、ふつうアーチ型のトンネルの中に入っています。
機関室のまえやうしろは、荷物を積む大きな貨物倉になっています。
甲板とか甲板のあいだも、貨物倉に使います。
また、乗組員や旅客の食料などをしまっておく冷蔵庫や倉庫などは、下の甲板の上にあります。
かじは、スクリューのすぐうしろに取り付けてあり、これを動かすかじとり機械は、その真上の甲板に、据え付けてあります。
いかりは、船の前方(船首)にあります。
それをつなぐくさりを入れる倉庫は、船首にあります。
また、大きなタンカーでは、船の後方(船尾)にもいかりがあります。
また、いちばん高い甲板のまえのほうには、ブリッジという、船を操縦する部屋があります。
ここは、船のいちばん大切なところで、船が安全に航海するのに必要な計器が集められています。