ヘリコプターの役目
飛行機は、いったん空中へ上がってしまえば、すばらしい速さで自由自在に飛び回ることができますが、離陸のときと着陸のときは地面を滑走しなければなりません。
とくにスピードの速い飛行機では、できるだけ空気抵抗を少なくするために翼が小さくなっています。
このような飛行機では、よほど長い距離を滑走しないと、飛び上がることができません。
そのため、ちかごろでは、滑走路の長さは2000メートルから3000メートルくらいがふつうになり、広い飛行場が必要になりました。
そこで、滑走なしで空中へ上がり、また下りるときも滑走なしですむものがいろいろ研究されています。
そのなかでもいちばん成功し、いろいろの役目に使われているのがヘリコプターです。
ヘリコプターは滑走なしで地面から垂直に上がり空中でとどまることもでき、垂直に地面に下りることもできます。
飛行機は、スピードを出すことで揚力をえているので空中に留まることはできません。
また、ヘリコプターは、空中でまえでもうしろでも横でも、自由自在に飛ぶことができます。
しかし、飛行機にくらべてスピードが遅く、遠くまで飛べない欠点もあります。
このような性質を利用して、ヘリコプターは、道のない不便なところまで人や荷物を運んだり、海上で遭難した人をつなでつりあげて助けたりビルの屋根の上から発着したり、いろいろなことに使われています。
現在、海難救助や郵便空輸によく使われているのは、小型のベル47G型やシコルスキーS55型です。
旅客や兵隊の輸送には、30人もの人を乗せることができる大型のバードルV107型やシコルスキーS61型が使われています。
ヘリコプターの飛ぶわけ
ヘリコプターは、飛行機の翼のかわりに大きなプロペラのような回転翼を、上向きにつけています。
エンジンによってこの回転翼をまおすと、この回転翼には、上向きの揚力が起こり、これでヘリコプターの重さを支えます。
回転翼に揚力が起こるのは、プロペラに推力が起こるのと、まったく同じわけです。
プロペラのうしろに立つと、強い風が吹いてくるのと同じようにヘリコプターの回転翼の下に立つと、強い風が吹き付けてきます。
ヘリコプターには、翼のかわりになる大きな回転翼のほかに尾部に小さな回転翼が横向きについているのがふつうです。
これを補助回転翼と言います。
エンジンで大きな回転翼をまわそうとするとその反動でヘリコプターの機体が逆にまわされてしまいます。
それをふせぐために、この小さい回転翼を使っているのです。
また、ヘリコプターには、大きな回転翼を胴体のまえとうしろにつけて反対の方向にまわしているものもあります。
このようなものでは、まえの回転翼とうしろの回転翼とが胴体をまわす反動を消し合うので、補助回転翼はいりません。
ヘリコプターは、飛行機と違って、まえ向きのプロペラもジェットエンジンもつけていません。
それでいて、まえにもうしろにも進むことができるのは、上向きの大きな回転翼をまえやうしろに少し傾けることができるからです。
たとえば、回転翼をまえに傾けると、回転翼にはたらく上向きの力が、少しまえに傾きます。
このまえ向きの力で前進することができるのです。
うしろに傾ければうしろに、横に傾ければ横に進みます。
ふつうは回転翼のつけ根を蝶番にして、自動的に翼の角度をかえられるようになっています。
垂直離着陸機と短距離離着陸機
垂直に離陸や着陸ができる飛行機を垂直離着陸機(VTOL・ブイトール)と言います。
ヘリコプターでも、滑走なしで離着陸でき、空中で止まることもできますが水平に飛ぶときの性能は、ふつうの飛行機には適いません。
スピードも、時速200キロくらいで、同じ距離を飛ぶのに、燃料をたくさん使ってしまうからです。
そこで、離着陸はヘリコプターのように滑走なしでおこない水平に飛ぶときは飛行機と同じように飛ぶものが開発されてきました。
このなかにはジェットエンジンを垂直につけ、その上向きの推力で離陸上昇し、ある高さまでいったらエンジンを水平にむけ、そのまえ向きの推力と翼の揚力で飛行機と同じように飛ばすものがあります。
また、世界ではじめて実用化された、イギリスのホーカーシドレー1ハリアーはジェッ卜噴流の向きをかえて垂直に離着陸できるようになっています。
そのほか、離着陸には、大きなプロペラをヘリコプターのようにまわし水平飛行のときは、プロペラをまえ向きにして飛ぶものもあります。
短距離離着陸機は、STOL(エストール)とも言いふつうの飛行機が離着陸するときの滑走距離より、ずっと短い距離で離着陸できるものを言います。
ホーカーシドレー1ハリアーは、VTOLであるとともにSTOLでもあります。
また、アメリカのグラマンOV-1モホークも、すぐれたSTOL機です。