輪軸の利用
私たちの使っている道具や機械には、輪軸のはたらきを利用して小さい力で、大きな力を出すようにしたものが、たくさんあります。
自動車のハンドル・ドライバー・ラジオやテレビのつまみなどはみな軸のまわりに輪をつけたもので、輪をまわす力は小さくても軸をまわす力は、大きくなるようになっています。
しかし、輪軸のはたらきを利用した機械でも輪のかわりに、軸に長い腕をつけたものがあります。
輪がなければ、輪軸ではないと考えるのは、間違いです。
輪軸のはたらきは、てこと同じですから、輪のかわりに腕をつけてその先に力を加え、大きなモーメントを軸にあたえても、よいわけです。
腕時計のぜんまいをまく、りゅうずは輪をもった輪軸ですが柱時計や置時計のぜんまいをまくねじは、腕をつけた輪軸です。
スパナも同じように、腕を利用した輪軸です。
ナットを、指先で硬くしめつけるのは無理ですが、スパナを使って、そのはしに力をかけると、大きなモーメントになって、楽にしまります。
自転車のハンドルも、腕をつけた輪軸です。
ウィンチ
輪軸のはたらきを利用して重い物をまきあげる機械をウィンチと言います。
ウィンチでは、ハンドルが輸のはたらきをしています。
ハンドルをまわすとロープに大きな力が出て重い物でも、楽に動かすことができます。
ハンドルの力を軸に伝えるのに、歯車を組み合わせて使うと加える力がさらに小さくてすみます。
また、ハンドルをまわすのに、モーターを使うと力も大きく、仕事も早くできます。
ビルの建築工事場や、工場・港・駅などで重い物を軽々と運びあげているクレーンは、滑車のロープをこのウィンチでまきあげています。
しゃち
海辺にいくと、漁師たちが、しゃちという道具をまわして船を陸に引き上げているのを見かけます。
これも、腕をつけた、輪軸の一種です。
きり・ドライバー
きりやドライバーも、輪軸を利用したものです。
太いえのところが輪軸の輪のはたらきをし、先のところが軸のはたらきをしています。
そのため、えに加える力が小さくても、先のところに大きな力が出て大きな抵抗に打ち勝ち、穴をあけたり、ねじをまわしたりできるのです。
自転車のクランク
自転車のペダルを踏むと、クランクがまわりそれといっしょに、クランクの軸につけた大きな歯車がまわります。
この歯車の回転力は、チェーンによって後輪の歯車に伝わります。
後輪の歯車はチェーンから受けた力でまわり、その回転力を車軸に伝えます。
このように、クランクの力が後輪の車軸に伝わるまでには二度も輪軸のはたらきが利用されています。
いま、クランクとチェーンとの組み合わせを考えてみるとクランクは輪軸につけた腕にあたり、チェーンをまいた歯車は軸にあたります。
そこで、チェーンに出てくる力は、
となります。
クランクの長さが20センチ、歯車の半径が10センチとしてペダルを20キログラム重の力で踏むとするとチェーンには40キログラム重の力がでます。
鉛筆削り
鉛筆削りにも、輪軸のはたらきが、上手に利用してあります。
下の図を見てください。
ハンドルは、輪軸の輪のはたらきをしています。
ハンドルをまわすと、鉛筆を差し込むところと、刃のついた円筒が中心線ABのまわりにまわります。
また、刃のついた円筒のはしには、歯車がついていて動かない枠の内側の歯車とかみあっています。
そのため、円筒は中心線ABのまわりをまわりながら円筒の中心線CDのまわりにもまわります。
差し込んだ鉛筆は、この円筒の刃に決まった角度で触れているので、きれいに削れるのです。
しくみが込み入っているので、CDをABに重なるようにずらしまた、鉛筆の位置もずらして考えてみます。
すると、刃のついた円筒が、輪軸の軸のはたらきをしていることがよくわかります。