四季の植物のいろいろ
日本は、南北にわたって、たいへん細長い形をしている国です。
そのため、南の地方と北の地方とでは、季節の訪れる時期や期間が、かなり違います。
また、気温も地方によって、ずいぶん違ってきます。
このため、同じ種類の値物でも、ところによって花の咲く時期などが、かなり違うのです。
ですから、ここでは、東京付近を中心にして四季の花を説明することにします。
春の花
3月になると、日差しは、日増しに強くなってきます。
そして、庭の日だまりなどでは、いろいろな草が伸びはじめます。
野山には、フキノトウやツクシが顔をだし庭ではジンチョウゲの花が強い香りを放ちはじめます。
4月になると、チューリップ・ヒヤシンス・サンシキスミレなどが花壇を色どり、野山には、ソメイヨシノやヤマザクラなどが花ざかりになります。
野原には、スミレやタンポポが咲き、畑にはムギが青々と伸びアブラナの花が黄色に咲き広がりリンゴ・ナシ・モモなども花をつけます。
田には、レンゲソウやタネツケバナが咲き乱れます。
このように、このころは1年のうちでも、いちばん花が咲きそろう美しい季節です。
5月になると、庭では、ツツジ・フジ・ボタン・バラ・アヤメなどが咲き、野山には、ノイバラ・オキナグサ・アマドコロなどの花が見られます。
また、5月は木々の新緑が、ひときわ目にさえる、すがすがしい季節でもあります。
春の七草
日本では、むかしから1月7日に7種類の草を入れたかゆをつくる習わしがあります。
これらの草は、春の七草と言ってセリ・ナズナ(ペンペングサ)・ゴギョウ(ハハコグサ)ハコベラ(ハコベ)・ホトケノザ(コオユタビラコ)・スズナ(カブ)スズシロ(ダイコン)などです。
そして、これらは、たいてい4月ごろに花を咲かせます。
夏の花
6月に入ると、まもなくつゆ(梅雨)になります。
ハナショウブは、このころ花を開きます。
梅雨があけ、太陽がじりじりと照り付ける7~8月になると海岸の砂浜では、ハマヒルガオ・ハマゴウ・ハマオモトなどが、きれいな花を開きます。
また、小川や池の水面にはヒツジグサ・ヒシ・ヒルムシロ・セキショウモ・エビモなどが見られます。
高山では、7月のはじめが平地の春にあたるので7月下旬から8月上旬にかけて、いろいろな高山植物の花が、いっせいに咲きそろいます。
また、庭では、アサガオやマツバボタンなどの花が眺められます。
秋の花
夏の熱さも峠を越し、野山に涼しい風が吹きわたる9月ともなると、まず、シュウカイドウが、日かげで薄紅色の花を開きはじめます。
マンジュシャゲは秋分(秋の彼岸)の前後に咲くのでヒガンバナとも言います。
夏の熱さに少し弱ったダリアは、秋になると元気を取戻し霜がおりるころまで咲き続けます。
コスモスは10月に花ざかりになり野山のリンドウも紫色の花をつけます。
しかし、秋の花のうちで、いちばん人目をひくのはキクです。
キクにはいろいろな種類があり、夏咲きのものもありますが、たいていは秋咲きです。
これは、秋になって、日のだんだん短くなることがキクの花を咲かすもとになるからです。
このような性質をもっている植物を、短日植物といいます。
秋はまた、紅葉の季節でもあり野山は木々の紅葉で美しくかざられます。
秋の七草
春の七草と同じように、秋にも七草があり、やはり古くから言われていたものと思われます。
山上憶良が万葉集で詠んだ歌の中に、つぎの7種が出てきます。
ハギ・オバナ(ススキ)・クズ・ナデシコ・オミナエシ・フジバカマ・アサガオ(現在のキキョウと言われる)がそれで、いずれも観賞して楽しむ草花です。
冬の花
寒さが厳しくなると、植物は、体のはたらきが衰えてしまいますが、そのあいだに、花を開く植物もないわけではありません。
ビワやヤツデの花は冬のはじめに咲きスイセンは1月前後に花を開きます。
また、ツワブキやサザンカも霜がおりてからも咲いています。
ウメも、2月の寒いころに花を咲かせます。