栄養段階
食物連鎖の源は、まえにも述べた通り、必ず植物になります。
それは、植物が、生物の生活に必要な栄養物質、つまり有機物をつくるはたらきをもっているからです。
そこで、植物を(有機物の)生産者と呼ぶことができます。
動物は植物を食べ、植物の体をつくる有機物の一部をつくりかえて自分の体とし一部を生活のためのエネルギー源に使います。
ブタやウシの肉も、もとは植物にふくまれているたんぱく質・アミノ酸や脂肪や炭水化物を自分の肉につくりかたもので植物のように無機物からつくったものではありません。
そこで、植物の生産者に対して、動物を(有機物の)消費者とよびます。
草食動物・肉食動物は、植物を直接に食べるものから順々に、一次消費者・二次消費者などと呼んで区別します。
そして、このようにわけることを栄養段階によってわけると言います。
また、動物・植物の死体や排出物にふくまれる有機物はカビ・バクテリアなどの微生物によって分解されて水・二酸化炭素・アンモニウム塩・硝酸塩などの無機物になって後に再び植物に利用されます。
そこで微生物は分解者ということになります。
生物の生活は、生物体の材料ともなり生物のエネルギー源ともなっている有機物があって、はじめて成り立つわけですから生物の世界を、生産者・消費者・分解者にわけてみることは生物の世界のつりあいの様子を物質やエネルギーの面から知るうえにたいへん役に立ちます。
生態ピラミッド
湖とか、森林とか、草原を頭に描いてみましょう。
そこでは動物・植物の個体群のあいだに、あるつりあいがあると仮定します。
つまり、そこにいるすべての生物に必要な有機物は、そこにはえている植物(生産者)がつくりだし植物から一次消費者へ、ついで二次消費者へと有機物がおくられている、ということです。
さらにまた、分解者が死体や排出物をどんどん分解して、そんなものが年々たまらないように掃除をするとともに植物の生産に必要な無機物を、まわりの無生物界にもどしています。
そして、環境から生産者へ、生産者から消費者へ生産者および消費者から分解者へ、分解者から環境へというように、いろいろな物質の流れがあるつりあいを持ちながら進んでいるのです。
こんな仮定にぴったりの自然はなかなか見当たりませんが、これに近い例はいくらか知られています。
そのような地域で、栄養段階の数量を調べてみると、どんな場合でも、生産者にくらべて一次消費者はぐっと少なく二次消費者はさらにずっと少ない、ということがわかります。
生産者の数量をいちばん下に、その上に一次消費者さらにその上に二次消費者、という具合に積み上げてみると上にいくにしたがって、急激に小さくなるピラミッド形になります。
これを生態ピラミッドと言います。
生態ピラミッドは、栄養段階の上の動物の生活を支えるためには段階を下にくだるほど、莫大な生物が必要であることをしめしています。
つまり、動物は無制限に食物の生物を食べているのではなく食物の生物がかなりの年月にわたって減らない程度にしか食べていないことをしめしています。
この生態ピラミッドが、いろいろな場所について明らかにされれば、つりあいを保つのに具合のよい動物や植物の数とか、つりあいのしくみなどが、もっとよくわかるでしょう。
その知識は、自然を保護するうえで、たいへん重要なのです。