植物と水
種を乾いたところに閉まっておくと、いつまでたっても芽を出しません。
これは水がないからです。
反対に種を畑にまいたり、湿ったところにおくと水を吸って芽を出します。
また、花びんにさした草花や生け花なども水を入れておかなければ、すぐにしおれてしまいます。
このように、植物が生きていくためには、水が必要なのです。
これは、植物の体には、たくさんの水分がふくまれていて大部分が水でできているといってもよいほどだからです。
砂漠のような水の少ないところにある植物は、たとえばサボテンのように体のつくりが水分をたくわえておくのに都合よくできています。
そのうえ、葉がとげにかわっていて水分が体の外に逃げ出さないようになっています。
植物にふくまれている水
植物の体の水分の量は、植物の種類やはえている場所によって違います。
また、同じ植物でも、体の部分によって、また時期によって、たいへん違いがあります。
水中で暮らしているものは、陸上のものより水分が多く陸上の植物でも、日かげにはえているものは日なたのものより水分を多くふくんでいます。
花の咲く植物(種子植物)では実・葉・根などに水分を多くふくんでいます。
実には、およそ95パーセントもふくまれています。
種には、水分がずっと少なく、10パーセントくらいです。
また、わかい芽や根の先などのような、はたらきのさかんなところにはとくに多くの水分がふくまれています。
植物と養分
植物の体をつくっている元素を調べてみると、ほとんど炭素(C)・水素(H)・酸素(O)の3つの元素からできています。
これらのものは植物が生長するにつれて、みな外から取り入れたものです。
水素は、根から吸いあげた水(H2O)から取り入れられ、また、酸素や炭素は光合成によって空気中の二酸化炭素(CO2)から取り入れられています。
これからわかるように、植物にとっては水のほかに空気もたいへん大切な役割りをしているのです。
しかし、植物は、これだけでは生きていくことができません。
いまでは、いろいろな実験によってふつうの植物は、炭素・酸素・水素のほかに窒素・硫黄・りん・カリウム・カルシウム・マグネシウム・鉄などの元素が必要であることがわかりました。
植物は、これらの養分を根のはたらきによって、みな地中から取り入れるのです。
農作物の肥料
田畑に肥料をやらないで農作物をつくっていると年が経つにつれて、だんだん農作物が育ちにくくなります。
これは、田畑の土の中にふくまれていた養分が、農作物に吸いとられて、だんだん少なくなっていくからです。
そこで、田畑に農作物をつくるときは肥料をあたえて農作物に必要な養分をたしてやらなければなりません。
肥料として必要な元素のうち、窒素・りん・カリウムの3つは、とくに足りなくなりやすいものです。
そのため肥料としては、おもにこの3つの元素をふくんだものをやり、これを肥料の三要素と言います。
また、作物が必要とする量はごくわずかですが作物の生育には欠くことのできない元素がいくつかありカルシウム・マグネシウム・硫黄・鉄・炭素・酸素・水素の7つの元素を肥料の7成分、マンガン・ほう素・銅・亜鉛・モリブデンの五元素を微量要素と言います。
肥料のいろいろ
肥料は、大きくわけて鉱物質を理化学的に処理してつくる無機質肥料(化学肥料)と、たい肥や魚かすのような有機質肥料とがあります。
化学肥料は工場で大量に生産され、その使用量も非常に多くなっていますが、これだけを使うと、その土地の性質を悪くするため実際に肥料をほどこすときは、化学肥料と有機質肥料とを作物や土壌の状態により、いろいろな割合で組み合わせて用いています。
おもな肥料は、つぎの通りです。
①窒素肥料(おもに窒素をふくんでいるもの)
硫酸アンモニウム・塩化アンモニウム・石灰窒素・尿素・魚かす・大豆油かすなど。
②りん酸肥料(おもにりん酸をふくんでいるもの)
過りん酸石灰・重過りん酸石灰・苦土過りん酸・よう成りん肥・骨粉類・魚かす類・鳥糞類など。
③カリ肥料(おもにカリウムをふくんでいるもの)
硫酸カリウム・塩化カリウム、草木の灰。
④下ごえ
人糞尿などをよく腐らせたもので、窒素・りん酸・カリウムの3つをふくんでいる。
肥料としてはたいへんよいが病原菌や寄生虫のたまごを殺してしまうように、気をつけなければならない。
⑤緑肥
レンゲ・ソラマメ・ダイズなど、マメ科植物の仲間を田畑に埋め腐らせて肥料にするもの。
マメ科の仲間の根には、根りゅうバクテリアが共生していて、これが空気中の窒素をとって、養分とする性質をもっているので、たいへんよい肥料となる。
⑥たい肥
草・わら・落ち葉などに、家畜の糞や尿をまぜて積み重ね腐らせたもの窒素・りん酸・カリウムの3つをふくんでいる、たいへんよい肥料である。
⑦カルシウム肥料
生石灰・しょう石灰などで、土地の酸性を中和して土の中のバクテリアのはたらきをさかんにして農作物が育ちよい土地にする。
元ごえ・追ごえ
このほかに肥料は、農作物にあたえる時期によって元ごえと追ごえにわけられます。
元ごえは、農作物の種まきや苗をうつし植えるまえにあたえる肥料のことで、たい肥のような、効き目のゆっくりあらわれるものが多く使われます。
追ごえは、農作物が少し育って元ごえのきれたころにあたえる肥料のことです。
追ごえ(追肥)には、おもに化学肥料が使われます。