鳥の渡り
ツバメ・ガン・カモ・ツグミなどは毎年決まった季節になると群れをつくって日本にやってきます。
そして何か月か過ぎると、また、いっせいに姿を消します。
このような鳥の旅を渡りと言い、渡りをする鳥を渡り鳥と呼んでいます。
渡りをするわけ
鳥がなぜ渡りをするのかは、まだよくわかっていませんが、ふつう、つぎのように考えられています。
寒帯や冷帯地方は、冬が長く、春と夏がほとんど同時にやってきます。
昆虫なども、たくさんの種類がいっせいに増え花も咲き実もたくさんなります。
鳥たちが食物をとり繁殖するのに、こんな都合のよいことはありません。
しかし、秋の訪れが早いので、すぐにえさも少なくなり急に温度が下がって雪が降りはじめます。
それで、鳥たちは、また南のほうのあたたかい、えさもたくさんある地方に移っていくのです。
この鳥たちも春から夏のはじめには、また、同じところにもどってきます。
渡り鳥は、もとの繁殖地にもどる性質があるからです。
1年が、雨期と乾期とにはっきりわかれている熱帯地方では乾期は植物が育たず、えさも少なくなるので、ほかの土地に移る鳥がたくさんいます。
マダガスカル島で繁殖する鳥のなかには、乾期になると中央アフリカの雨の多い地方にうつるものがあります。
熱帯地方でも、雨期や乾期がないところでは、いつもえさが豊かなので、そこに住む鳥は、たいてい渡りをしません。
渡り鳥は、このようにして、毎年渡りを繰り返しているうちに渡りをする性質が、だんだん身についてしまったのです。
そしてとうとう、えさが乏しくなるとか寒さが厳しいということがなくても、ある決まった時期がくると必ず渡りをするようになったのだと考えられています。
留鳥
1年中、だいたい同じところに住んでいて渡りをしない鳥を留鳥と言います。
日本にいる留鳥はスズメ・カラス・キジ・ゴイサギ・ヤマドリ・コジュケイなどで、あまり種類は多くありません。
これらの鳥のなかでも季節によっては、いくらか住む場所をかえるものがあります。
漂鳥
漂鳥というのは、冬をあたたかい平地で過ごし夏は近くの山の中に入る鳥のことです。
季節によって留鳥よりも、ずっと広い範囲を移動します。
おもな漂鳥には、ムクドリ・セキレイ・ヒバリ・ウグイスなどがあります。
ウズラは冬になると本州の北から東海地方や、もっと西のほうまでうつります。
このように、季節によって旅をする範囲が広くなると原鳥ではなく、もう渡り鳥の仲間です。
渡り鳥
渡り鳥は、候鳥とも言いますが冬鳥・夏鳥・旅鳥・迷鳥などにわけて考えることができます。
冬鳥
日本で冬を越す渡り鳥のことです。
日本より、もっと北のほうで繁殖し秋に日本にやってきて冬を過ごします。
そして、翌年の春に、またもとの繁殖地にもどっていきます。
ツル・カモ・ガン・ハクチョウ・ツグミ・アトリ・ジョウビタキなどは、みな冬鳥です。
夏鳥
春から夏のあいだに日本で繁殖し、夏の終わりごろから秋にかけて南の国へかえっていく鳥を、夏鳥と言います。
ツバメ・ホトトギス・ブッポウソウ・サンコウチョウ・カッコウ・アオバズク・オオヨシキリなどは、夏鳥です。
旅鳥
渡り鳥のなかには、夏に日本よりもっと北のほうで繁殖し冬を日本より南方で過ごす鳥たちがあります。
これらの鳥の旅は、たいへん長いので、とても続けて飛ぶことはできません。
それで、1年に1回か2回、通り道にあたる日本のどこかで、しばらく羽根を休め、また旅を続けます。こういう鳥を、旅鳥と言います。
ですから、日本は旅鳥にとっては冬越しの場所でも繁殖地でもなく、ただの休憩所なのです。
シギやチドリの仲間は、ほとんど旅鳥です。
迷鳥
渡りの途中で、仲間にはぐれた鳥が、1、2羽、ひょっこり日本にやってくることがあります。
こういう鳥を迷鳥と言います。
ヒゲガラ・ヤマショウビンなどが、よく迷鳥としてやってきます。