消化器
人間や獣の消化器は、食道・胃・腸に区別することができます。
胃や腸のはたらき
胃の壁からは、胃液が出て、おもに食物中のたんぱく質を水に溶けるものにかえるはたらきをします。
食物が胃液とよく混ざって、どろどろになると腸に送られます。
胃に続いた腸の部分は小腸といってわりあい細くて長い管になっています。
小腸に続いて、太くて短い大腸があります。
また、すい臓からはすい液が肝臓からは胆汁が、それぞれ小腸の中に注がれます。
胆汁は、肝臓から出て、胆のうというふくろにためられ、それから小腸に出るのです。
これらの消化液のはたらきで、食物はもっとよく消化され、でんぷん・脂肪・たんぱく質は、それぞれ、水によく溶ける物質となります。
そして、小腸の壁にあるじゅう毛という小さな突起から吸いとられ血液にまじります。
養分を吸いとられた食物の残りは、大腸に送られます。
大腸では、水分が吸いとられます。
肉食動物と草食動物の消化器の比較
肉食動物と草食動物をくらべてみると、草食動物の消化器は、ふつう、肉食動物のものよりも、こみいったしくみになっています。
これは、草食動物が食べる草や木の葉などは繊維が多くて、なかなか消化されないからです。
そのため、草食動物の腸は肉食動物のものよりも細長くて、もう腸もよく発達しています。
その腸の長さを体長にくらべてみると私たち人間の腸の長さは身長の5倍ほどですがウシでは体長の22倍、ヒツジでは34倍ぐらいもあり、ウマでは10倍、ブタでは16倍もあります。
しかし、肉食動物のライオンでは3倍、ネコでは4、5倍、イヌでは5倍ほどで、草食動物にくらべて、ずっと短くなっています。
反すう動物の胃
ウシやヒツジなどの草食動物では、胃が数室にわかれていて、いちど胃の中に入った食物を、また口の中へもどしてかみ直し、それから別の胃に入ります。
こういう消化のしかたをする動物を、反すう動物と呼んでいます。
よくヒツジやウシが食物をとっているときでなくても口をもぐもぐさせているのは、このかみ直しをしているのです。
草やわらなどのようなものは、消化されにくいし、また栄養分が少なく、たくさん食べないと、必要なだけの栄養がとれないのです。
そのため、反すう動物の胃は、特別なつくりになっているのです。
ウシの胃
ウシの胃は、4つにわかれています。第一の胃をりゅう胃といって4つの胃のうちでいちばん大きく、内側の表面には、こぶのようなものが、たくさん突き出ています。
歯で大きくかみ砕かれた食物は、ここでほどよく潤され微生物によって消化されやすくなってから第二の胃、すなわちほう巣胃に入ります。
ほう巣というにはハチの巣という意味ですが、ほう巣胃の内側には六角形のしわがあって文字通り、ハチの巣のようになっています。
ここに入った食物は、ふたたび口にもどされて、こんどは3番目の重弁胃に入ります。ここには、たくさんのしわがあります。
そして食物は、さらに4番目のしゅう胃に入ります。
このしゅう胃は、ほかの獣の胃のようになっていて胃液を出して食物を消化し、腸におくります。
なにしろ、草などのような食物は、たいへん消化されにくいものですから、4つの胃でも、まだ消化がよくおこなわれません。
それで、たいへん長い腸を通るあいだに、さらに消化され、養分が吸収されるようになっています。
また、ウシやヒツジのもう腸には、特別なバクテリアがいて、ふつうでは分解されにくい繊維質を分解しており、消化を助けています。
ラクダの胃
アジアやアフリカの砂漠にいるラクダも、ウシのような反すう動物です。
その胃は、3つの部分からできています。
そして、第一の胃と第二の胃とには20~30個の小さいふくろがついています。このふくろを貯水のうと言います。
まえには、このふくろに水をたくわえると言われていましたが、はたして水をためるふくろかどうかはわかりません。
恐らくラクダは、いく日も水を飲まないでもいられる性質があるので水をためるためのふくろだと考えられていたのでしょう。
鳥の消化器
鳥には、歯がなくて食物を丸のみにします。
そして、口に続く長い食道の途中に、えさを一時たくわえるふくろがあります。
このふくろを、そのうと言います。
そのうの中でやわらかにされた食物は、少しずつ下のほうに送られ、前胃に入ります。
前胃は、私たちの胃と同じように内側の壁から胃液を出して食物とよく混ぜ合わせるはたらきをします。
つぎに食物は、砂のうという胃に入ります。
砂のうは、硬い筋肉でできた大きなふくろです。
その内側には多くのしわがあり、中には、砂粒がたくさん入っています。
食物は、この中で砂とすりあわされて、細かくされます。
ほかの動物が、口にある歯でするしごとを鳥はこの砂のうでおこなっているのです。
そして、ここではじめて消化され、細長い小腸を通り太くて短い大腸にうつされながら、消化・吸収されるのです。
養分の使われかた
胃で消化され、小腸の壁から吸いとられた食物中の養分は血液中に入って、体の各部分に運ばれます。
こうして運ばれた養分の一部は、そのままたくわえられ、また、一部分は呼吸によって運ばれてきた酸素とむすびついて動物が活動するのに必要な力(エネルギー)を生みだしています。
このエネルギーによって動物はいろいろな運動をすることができ、また熱も出します。
人や獣・鳥の体温が、まわりの気温よりも高く、いつも一定に保たれているのはこれらの養分を使って熱を出し、そのうえ熱を体から、逃がさないようなしくみをもっているからです。
動物の中には、光や電気を出すものがいますが、これも、養分が酸素とむすびついてできるエネルギーによるのです。
動物の体が、だんだん成長し、大きくなっていくのは食物からとった養分が、血となり肉となっていくからです。