造山運動
ヒマラヤ山脈やアルプス山脈のような高い山がつらなっている山脈はしゅう曲によってできたしゅう曲山脈です。
このようなしゅう曲山脈をつくるような大規模の地殻の変動を造山運動といいます。
山脈と地層
大きな造山運動によってできたしゅう曲山脈は、ふつう厚い堆積岩からできています。
この堆積岩は、むかし海底で堆積してできた地層で全体の厚さが何千メートルにも達することがあります。
この地層を調べてみると、中から出てくる化石はどの地層のものも、それほど深い海に住む生物ではありません。
このことから、地層は何千メートルもの深海から堆積をはじめてそれだけの厚さになったものではなく、地層が堆積するにしたがって海底がだんだん沈んでいき、その上に新しい地層ができて厚くなったものと考えられます。
地向斜と造山運動
堆積がどんどんおこなわれて、海底が沈んでいったような場所を地向斜といいます。
造山運動を起こして大山脈をつくるのは、このような地向斜のところでおもに細長い海底であったところです。
地向斜の海での厚い堆積層はその重さのために下の部分では、非常な圧力を受けて、温度も高くなります。
そのため、ついには地層を押し上げる力となって山脈をつくると考えられています。
このような造山運動によってできたしゅう曲山脈の地層をみるとしゅう曲・断層・変成作用をうけた様子がわかります。
地質時代の造山運動
地球の歴丈を調べてみると、造山運動の激しい時代とわりあいに穏やかな時代とが繰り替えされたことがわかっています。
また、造山運動の激しいところは、世界中に不規則にあるわけではなく、つながりになっています、ここを造山帯といいます。
世界の大山脈は、この造山帯にあります。
造山帯は、地殻の変動の起こりやすいところ、いわば地殻の弱い地帯にあたります。
それで、地震の多い地帯(地震帯)や火山の多い地帯(火山帯)とも、だいたい一致しています。
この造山帯の位置は造山運動の時代によって違っています。
古生代の中ごろの造山運動は、ヨーロッパ北部の、イギリスやスカンジナビア半島にかけて見られ、カレドニア造山運動と言われています。
このときは、ここに、いまのアルプス出脈ほどの山脈ができたと考えられますがその後、長いあいだ浸食をうけて、現在は、その当時の山の形をみることはできません。
古生代の終わりごろの造山運動は、ヨーロッパの中央部などでおこなわれました。
これをバリスカン造山運動といいますがここのときにできる山脈も浸食されてしまって現在は低い丘になっています。
いちばん最近の造山運動は、アルプス造山運動といわれるもっとも激しいもので現在の世界の大山脈は大部分このときにつくられました。
このときの造山帯はアルプス・ヒマラヤ造山帯と環太平洋山帯の2つにわけられます。
アルプス・ヒマラヤ造山帯はアルプス山脈から西はイベリア半島の付け根のピレネー山脈と北アフリカのアトラス山脈へ東は地中海の北側を通って、「世界の屋根」といわれるバミール高原からヒマラヤ山脈、さらにスマトラ・ジャワ島に伸びています。
ここは、ユーラシア南縁造山帯とか、地中海造山帯とも言われます。
環太平洋造山帯は、太平洋を取り囲んでいる地帯で南アメリカのアンデス山脈、北アメリカのロッキー山脈からアリューシャン・千島・日本の各列島を通ってさらにフィリピン・ニューギニア・ニュージーランドに伸びています。
縦状地と造山帯
地室時代に起きた何回かの造山帯の分布をみると古生代以後は、全く地殻変動をうけない安定した地域をとりまくように新しい造山帯が外側に分布していることがわかります。
この安定した地域を縦状地と言います。
縦状地は、古生代以前につくられたもので、地層は大乱分が結晶片岩や片麻岩の変成岩や花こう岩からできています。
北アメリカのグランドキャニオンの地層を見るとほとんど水平な地層が、古生代から新生代までみられます。
これはこの地域が楯状地であるからです。
造山運動の経過
造山運動は、一時的に起こるものではなく数億年という長い年代にかけて起こっています。
仮に、地向斜の海が1年に1センチの割合で海底が沈降しがとすれば100万年では1万メートルの深さになります。
その後、この海底に堆積した地層が隆起してしゅう曲山脈になるにも非常に長い年代がかかります。
このような、地向斜の海ができはじめてからしゅう曲山脈が完成し、安定した大陸になるまでの造山運動の経過はつぎの3つの時期にわけられます。
地向斜の時期
幅数百キロ、長さ数千キロにも及ぶ細長い帯状の地域が長いカあいだ沈降を続けその海底に厚い地層がつくられます。
この沈降の機関は、1~2億年といわれ馳走の厚さは10~20キロにも達すると言われています。
まら、この時期には海底火山の活動も活発におこなわれます。
造山運動の時期
海底に厚く堆積した地層は、しゅう曲を起こし、隆起しはじめます。
また、造山帯の中心近くでは、変成作用や大規模な花こう岩が入り込んでいるのがみられます。
この期間は、約3000~4000万年といわれます。
安定化の時期
しゅう曲して隆起した造山帯は、浸食されながらさらに隆起を続けます。
そして浸食によって削りとられた物質は新しい地向斜に堆積します。
この時期には、断層運動や溶岩の噴出も起こるがやがて浸食されて山脈は低く平らになり、安定大陸の一部となっています。
最近の造山運動の考え方
造山運動を起こすような大きなエネルギーは、どのようにして生じるのでしょうか。
イギリスのエジンバラ大学のホーム教授はいままで固体と考えられていたマントル(中間層)が実は少しずつではあるが対流をおこしているという新しい説を発表しました。
この考え方によると、地向斜の海ができるところはマントルの流れが集まるところで、そのためにくぼみを生じそのくぼみに堆積物がどんどん堆積して、厚い地層がつくられるといわれています。
そして、ここでは、地殻を押し縮める力もはたらいています。
マントル内に深くひきずりこまれた堆積物は圧縮と高い温度によってマグマができたり、変成作用などを引き起こすと考えています。
マントルの対流が1000万年~1億年ほど続くと、いままでひきずりこまれた厚い地層は、アイソスタシーの考え方によって、隆起して大山脈をつくると言われています。
このマントルの対流は、ウェゲナーの大陸漂移説にもあてはまるものです。
ウェゲナーの主張したころは充分に説明されませんでした。
しかし、大西洋両岸の大陸棚の線を大陸のへりとすると、非常によく一致します。
これは、マントルの対流によって大陸が移動して離れたものであると考えられています。