これまで、いろいろな酸についてその製法や性質・用途などについて調べてきましたが、これらの酸は金属にたいして、いろいろなはたらきをします。
薄い酸のはたらき
薄い酸が、金属にたいして、どのようなはたらきをするか調べてみましょう。
実験
亜鉛・鉄・スズ・銅のくずを用意します。
銅のくずは、塩酸で洗って、きれいにさびを落としておきます。
つぎに8本の試験管を用意し4本の試験管には希塩酸を5立方センチずつ残りの4本の試験管には、希硫酸を5立方センチずつ入れます。
そして、まえに用意した金属をそれぞれ希塩酸と希硫酸両方の試験管に入れそれぞれの金属が酸とどのように反応するかを観察します。
この実験の結果をまとめると、つぎのようになります。
① 亜鉛・鉄は、水素を発生して、どちらの酸にも溶けます。
② 銅とスズはどちらの酸にも溶けません。
このように、酸には、亜鉛・鉄などを溶かすはたらきがあります。
しかし、銅やスズが溶けないことからもわかるようにどの金属でも同じように溶かすわけではありません。
亜鉛・鉄などが酸に溶けるのは酸が電離してできる水素イオンのはたらきによります。
ですから、どの酸も同じようなはたらきをするのです。
つまり、水素イオンは金属に作用して、金属を陽イオンにかえ水に溶けるようにするはたらきをします。
この反応は、亜鉛を例にすると、図の式のようにあらわされます。
また、酸に溶ける金属ならどの酸を使っても反応は同じになるはずです。
このように、亜鉛が酸に溶けやすいのは亜鉛が水素よりイオンになりやすいということです。
逆に、銅が酸に溶けにくいのは銅が水素よりイオンになりにくいからです。
イオンになりやすい金属をイオン化傾向が大きいといい、イオンになりにくい金属をイオン化傾向が小さいといいます。
ふつうの金属をイオン化傾向の大きい順にならべると前ページの表のようになります。
これをイオン化列といいます。
この表で、鉛と銅のあいだに、水素が入っています。
つまり、鉛よりイオン化傾向の大きい金属は酸に溶け、銅よりイオン化傾向の小さい金属は、酸に溶けないわけです。(スズは、熱すると酸に溶けます)