金属イオンの分離とは? わかりやすく解説!

実際に金属イオンを検出するときは、いろいろなイオンをふくむ試料(調べようとするもの)から、それぞれのイオンを分離しなければなりません。

銀イオン・銅イオン・アルミニウムイオン・第二鉄イオン・バリウムイオンを
ふくむ溶液を用意して、それからそれぞれのイオンを検出してみましょう。


銀イオンの分離

溶液にうすい塩酸をくわえると塩化銀が沈殿します。
これをろ過し、うすい塩酸で洗うと銀イオンを塩化銀の形で分離することができます。

これをビーカーにうつして銀イオンの反応のところで述べた①の実験をすると、銀イオンを確認することができます。

バリウムイオンの分離

塩化銀をろ過したろ液に、うすい塩酸を一滴くわえもはや沈殿ができないことを確かめてからうすい硫酸をくわえると硫酸バリウムが沈殿します。

加熱して、沈殿の粒子を大きくしてからろ過すると硫酸バリウムが分離します。
この沈殿が、うすい酸や塩基の溶液に溶けないことを確かめます。

銅イオンの分離

硫酸バリウムをろ過したろ液に、うすい硫酸を一滴くわえて沈殿ができないことを確かめてから、塩化アンモニウム溶液をくわえつぎに上澄み液が銅アンモニア錯イオンの青色になるまでうすいアンモニア水をくわえます。

このとき、鉄とアルミニウムは水酸化物の形で沈殿し、ろ過すると、ろ液のほうに銅イオンをとりだすことができます。

このろ液を用いて、銅イオンの反応をおこなわせ、銅イオンを確認します。

アルミニウムイオンの分離

水酸化アルミニウムと水酸化第二鉄のまざった沈殿を水でよく洗ってからビーカーにうつします。

これに、うすい水酸化ナトリウム溶液を、いちどできた沈殿がまた溶けて赤褐色の水酸化第二鉄の沈殿だけになるまでくわえます。

水酸化アルミニウムは、アルミン酸イオンになり溶けますからろ過して、アルミニウムイオソはろ液に鉄イオンは沈殿に分離することができます。

アルミニウムイオンは酸で中和して沈殿をつくることによってまた鉄イオンはフェロシアン化カリウムで、それぞれ確認することができます。



アンモニアの製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

アンモニア水の製法

アンモニア水をつくるには、アンモニアを水に溶かせばよいわけです。
アンモニアは、純粋な窒素と水素に、触媒を通して合成します。


市販の濃アンモニア水は約28パーセント、比重は0.9ぐらいです。
瓶のフタを開けると、アンモニアの刺激の強いにおいがします。

瓶の内側は、アンモニアの蒸気で高い圧力になっていますから
瓶を開けるときには、注意が必要です。

ふたを開けた瓶の口に、塩酸をつけたガラス棒を近づけると
塩化アンモニウムの白煙を生じます。

実験室ではこの濃いアンモニア水を、10倍の容積の水でうすめて使います。

アンモニア水には、アンモニウムイオンと水酸イオンが溶けていますが
アンモニア水は、電離がわりあい少ないので
塩基としては、弱い性質しかしめしません。

アンモニアは、金属の陽イオンとむすびついて
陽イオンを沈殿しにくくする性質があります。

たとえば、塩化銀は、水に溶けにくいため沈殿しますが
アンモニア水をくわえると、上の式のように塩化銀とアンモニアが反応して
銀アンモニア錯イオンができ、溶けてしまいます。

このようにイオンにほかの分子などが結びついてできているイオンを
錯イオンといいます。

アンモニアは塩基のアンモニア水として使われることは少なく
アンモニアガスとして使われ、重要な工業原料になっています。

アンモニアを酸で中和すると、酸の種類によって
硫酸アンモニウム(硫安)・硝酸アンモニウム(硝安)・塩化アンモニウム(塩安)などの塩ができます。

これらは窒素肥料として使われていますが
それぞれの成分を調べてみると
硫安塩安にくらべて硝安窒素のふくまれ方が多いので
窒素肥料としてすぐれていることがわかります。

また、アンモニアと空気から硝酸、アンモニアと二酸化炭素から
尿素をつくることができます。

尿素は窒素肥料として使われるほか、合成樹脂の原料としても重要です。
アンモニアはこのほかにも染色や氷の製造、冷凍用に使われています。



水酸化カルシウムの製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

水酸化カルシウムの製法

水酸化カルシウムは、石灰石を原料としてつくります。
石灰石は天然に産出する炭酸カルシウムで、これを焼くと二酸化炭素にをだしてつぎの①式のように酸化カルシウムになります。


生石灰ともよばれる白色のかたまりです。

酸化カルシウムの固まりに水をかけると熱をだしてこなごなにくずれ上の②式のように変化して水酸化カルシウムができます。

この変化を消化といい、水酸化カルシウムを消石灰ともいいます。

水酸化カルシウムの性質

水酸化カルシウムは、水に溶ける量が非常に少なくふつうの温度では、約0.2パーセントしか溶けません。

そのため、塩基性が非常に弱いのです。

水酸化カルシウムを水に溶かした溶液を石灰水といいます。
石灰水に、さらに水酸化カルシウムをまぜると白くにごって、牛乳状になります。

これを石灰乳といいます。石灰水は塩基性が弱く酸の中和などの化学反応に使われることがあります。



石灰水に、二酸化炭素を通すと、だんだん白くにごってきます。
これは、水酸化カルシウムと二酸化炭素が作用して、つぎの①式のように、水に溶けない炭酸カルシウムの細かい結晶ができたからです。

この反応は、二酸化炭素の検出に使われています。

水酸化カルシウムがすべて炭酸カルシウムにかわっても二酸化炭素を通し続けると、炭酸カルシウムが溶けて再びすんだ溶液になります。

これは余分な二酸化炭素が水に溶けて、炭酸ができ②式のように炭酸カルシウムに作用して、水に溶けやすい炭酸水素カルシウムをつくるからです。

水酸化カルシウムの用途

水酸化カルシウムは、固体のままでも、空気中の二酸化炭素を吸って固くなる性質かわります。

その性質を利用して、しっくい・モルタルなどに使われています。
水酸化カルシウムは、塩基としては非常に値段が安いので工業原料として使われるほか皮をなめすときや消毒用、肥料にまぜて使うなど広い用途があります。



水酸化ナトリウムの性質・用途とは? わかりやすく解説!

水酸化ナトリウムの性質

水酸化ナトリウムは、白色のもろい固体で比重2.13、融点は318.4℃です。
水に非常によく溶けて、そのとき熱をだします。


水溶液は強い塩基性をしめしますがこれは、水に溶けた水酸化ナトリウムが水の中ではナトリウムイオンと水酸イオンとに、ほぼ完全に電離しているからです。

また水酸化ナトリウムは空気中の水分を吸ってべとべとになる性質があります(潮解性)。

さらに、空気中の二酸化炭素をよく吸い炭酸ナトリウムになる性質があります。

それで、固体の水酸化ナトリウムをつめた瓶に空気などの気体を通すとその気体にふくまれる水分や二酸化炭素を取り除くことができます。

水酸化ナトリウムの水溶液は、酸と中和反応をおこすほかアルミニウムや亜鉛などの金属を溶かして、水素を発生します。

このときの溶け方は、酸の場合とは少し違っています。

アルミニウムや亜鉛は、そのままイオンになってとけるのではなく上の式のようにそれぞれアルミン酸イオンや亜鉛酸イオンなどになって溶けるのです。



また水酸化ナトリウムは、たんぱく質を溶かします。
そのため、毛や毛糸につくとこれを傷めます。

また、皮膚につくとぬるぬるとした感じがするのも、このためです。

水酸化ナトリウムが毛や毛糸・皮ふなどについたときには酢酸など弱酸のうすい水溶液で洗うとよいでしょう。

油に水酸化ナトリウムを作用させるとふつうでは水に溶けない油が、水に溶けるようになります。

これは、水酸化ナトリウムの作用で油がセッケンにかわったためです。

このように、水酸化ナトリウムと油脂とからセッケンができる作用をケン化作用といいます。

水酸化ナトリウムの用途

水酸化ナトリウムは、非常に重要な工業薬品で水酸化ナトリウムを使わない化学工業はないといってもよいほどです。

レーヨン(人造絹糸)の製造に多量に使われるほか製紙・アルミニウムの製造、染料・セッケンの製造および石油精製に使われています。



水酸化ナトリウムの製法・作り方とは? わかりやすく解説!

水酸化ナトリウムの工業的製法

水酸化ナトリウムは、工業的には、食塩(塩化ナトリウム)を原料としてつくります。

その方法には、食塩水を電気分解し直接水酸化ナトリウムにかえる電解法と食塩から炭酸ナトリウムをつくってそれを水酸化ナトリムにかえるアンモニアソーダ法とがあります。

電解法は、さらに隔膜法と水銀法とに分けられます。


隔膜法

隔膜法は図のような電界そうを使っておこないます。
濃い食塩水を上から流しこむと、食塩水は電気分解を受けながら底に張った石綿の隔膜を通り抜けて下に落ちます。

黒鉛の陽極からは、塩素ガスが発生し隔膜の下にはった穴のある鉄板の陰極からは水素ガスが発生します。

鉄板の穴を通り抜けた食塩水は、水酸化ナトリウムをふくむようになります。

この液をに詰めると、食塩が結晶になってでてきますからそれをろ過して取り除き、残りの液を冷やすと水酸化ナトリウムの固まりができます。

水銀法

水銀法では、下の図のように、電解槽に隔膜はなく底に水銀がうすく流れていて、これが陰極になっています。
そのほかは、隔膜法とよく似ていて黒鉛の陽極からは塩素が発生します。

いっぽう、水銀の陰極ではナトリウムイオンが放電してナトリウム原子となり、水銀に溶け込みます。

これをナトリウムアマルガムといいます。

ナトリウムアマルガムは、横から流れだし別の水槽(解こう塔)に導かれそこで、ナトリウムと水が反応して水素を発生し水酸化ナトリウムができます。

ナトリウムをはなした水銀は、また電解槽に導かれて使われ解こう塔にできた水酸化ナトリウムをふくんだ水は取り出して煮詰められ、水酸化ナトリウムがつくられます。

隔膜法でつくられた水酸化ナトリウムは、食塩がまざって不純になりますが
水銀法でつくられたものは非常に純粋な水酸化ナトリウムです。

また、隔膜法でも水銀法でも水素と塩素が気体としてえられますがこれからは、塩酸がつくられます。

水酸化ナトリウムの実験室的製法

実験室では、アンモニアソーダ法と同じように炭酸ナトリウムから水酸化ナトリウムをつくります。

炭酸ナトリウム・水酸化カルシウム・水をまぜると炭酸カルシウムの白い沈殿ができます。

この沈殿を取り除いて液を煮詰めると、水酸化ナトリウムができます。
この方法でも、水銀法と同じように純粋な水酸化ナトリウムをつくることができます。

複分解

炭酸ナトリウムに水酸化カルシウムが作用するときの反応式をよく見るとナトリウムとカルシウムとが入れかわっていることがわかります。

このような反応を、複分解といいます。



弱塩基と強塩基とは? 一酸塩基と多酸塩基とは?

弱塩基と強塩基

酸に弱酸と強酸があるように、塩基にも弱塩基と強塩基とがあります。 

アンモニア水のように、一部分しか電離をおこさない塩基は水酸イオンを少ししかつくらないために塩基性が弱く弱塩基とよばれます。

水酸化ナトリウムのように、ほとんど全部が電離する塩基は水酸イオンをたくさんつくるために塩基性が強く、強塩基とよばれます。

強塩基には、水酸化ナトリウムのほか水酸化カリウム・水酸化バリウムなどがあります。

水酸化カルシウムは水に溶けにくいのでその水溶液は弱い塩基性しかしめしません。

一酸塩基と多酸塩基

塩基は、化学式の中にふくまれる水酸基の数によって酸と同じように一酸塩基と多酸塩基に分けられます。

また、多酸塩基は、水酸基の数によって二酸塩基、三酸塩基に分けられます。

二酸塩基は水酸基が1つのもので水酸化ナトリウム・水酸化カリウムなどがあります。

多酸塩基は、水酸基を2つ以上もつもので水酸化バリウム・水酸化カルシウムのは二酸塩基です。



濃い酸のはたらきとは? 王水とは? わかりやすく解説!

濃い酸のはたらき

うすい酸のはたらきを調べたときと同じようにして濃硫酸や濃塩酸のはたらきを調べてみましょう。 


濃硫酸と濃塩酸は、どちらも取扱いには、充分注意しましょう。

亜鉛・鉄・スズ・銅を濃い酸に入れた場合いの結果をまとめるとつぎのようになります。

① 亜鉛・鉄・スズは、水素を発生して濃塩酸に溶けます。
スズは、濃硫酸にほとんど溶けません。

② 銅は、濃塩酸には溶けませんが、濃硫酸にはゆっくり溶けます。
亜鉛・鉄も溶けます。

このとき発生する気体には、刺激臭があります。
それは、この気体に二酸化硫黄がふくまれているからです。

濃硫酸との反応は、温度が低いとはっきりしませんが加熱するとよくわかります。

いっぽう、銅は、濃塩酸には溶けませんが濃硫酸には、二酸化硫黄を発生して溶けます。

濃塩酸の場合の反応は、希塩酸のときとまったく同じですが、濃硫酸の場合に、反応のしかたが少し違います。

まえに述べたように、硫酸は強い酸化力をもっています。
その性質は希硫酸ではあまりあらわれませんが濃硫酸では強くあらわれてきます。

たとえば、銅を濃硫酸に入れると銅の表面はすぐに酸化されて、図の①式のように酸化第二銅になります。

このとき、硫酸自身も変化して、二酸化硫黄を発生します。

こうしてできた酸化第二銅は、すぐに酸が電離してできている水素イオンと作用して、②式のように第二銅イオンとなって水に溶けます。

硝酸も.硫酸と同じように、非常に酸化力が強いのでもともと酸に溶けない銅や銀などの金属を酸化銅や酸化銀などの酸化物にかえて溶かしてしまう性質をもっています。


王水

銅や銀は、濃硝酸を使って酸化物にして溶かすことができますが金や白金は、硝酸の酸化力では酸化することができません。

ところが、濃硝酸と濃塩酸を1対3の割合でまぜた液を使うと金や白金も溶かすことができます。

この混合液を王水といいます。
王水の中には、硝酸と塩酸が化合して塩化ニトロシルという、非常に酸化力の強い化合物ができこれが、金や白金を塩化物にかえるはたらきをしてこの塩化物が塩酸に溶けるのです。

金属酸化物への酸のはたらき

濃い酸のはたらきで調べたように、イオン化傾向が小さくてそのままでは酸に溶けない金属でも、酸化剤で酸化物にかえると溶けるようになります。

つまり、金属の酸化物は、金属そのものよりも水素イオンと反応しやすいわけです。

この金属の酸化物と酸の反応について、もう少しくわしく調べてみましょう。

酸化第二銅に硫酸が作用する場合を考えてみます。
酸化第二銅は.硫酸が電離してできた水素イオンと反応して、上の①式のように、第二銅イオンになります。

硫酸は完全に電離して、水素イオンと硫酸水素イオンになりさらに硫酸水素イオンの一部は水素イオンと硫酸イオンとに電離しています。

酸化第二銅と硫酸との反応をまとめると②式のようにあらわすことができます。

この溶液をに詰めると、銅イオンと硫酸イオンとがむすびついて、硫酸銅の結晶ができます。

酸化第二銅は、塩基ではありませんが、この変化は酸と塩基の中和反応によくにています。

それで、中和反応でできる物質を塩というように硫酸銅を銅の硫酸塩といいます。

このように、金属の酸化物を酸に溶かすと金属とその酸の塩ができます。



薄い酸のはたらきとは? イオン化列とは? わかりやすく解説!

これまで、いろいろな酸についてその製法や性質・用途などについて調べてきましたが、これらの酸は金属にたいして、いろいろなはたらきをします。 


薄い酸のはたらき

薄い酸が、金属にたいして、どのようなはたらきをするか調べてみましょう。

実験

亜鉛・鉄・スズ・銅のくずを用意します。
銅のくずは、塩酸で洗って、きれいにさびを落としておきます。

つぎに8本の試験管を用意し4本の試験管には希塩酸を5立方センチずつ残りの4本の試験管には、希硫酸を5立方センチずつ入れます。

そして、まえに用意した金属をそれぞれ希塩酸と希硫酸両方の試験管に入れそれぞれの金属が酸とどのように反応するかを観察します。

この実験の結果をまとめると、つぎのようになります。

① 亜鉛・鉄は、水素を発生して、どちらの酸にも溶けます。
② 銅とスズはどちらの酸にも溶けません。



このように、酸には、亜鉛・鉄などを溶かすはたらきがあります。
しかし、銅やスズが溶けないことからもわかるようにどの金属でも同じように溶かすわけではありません。

亜鉛・鉄などが酸に溶けるのは酸が電離してできる水素イオンのはたらきによります。
ですから、どの酸も同じようなはたらきをするのです。

つまり、水素イオンは金属に作用して、金属を陽イオンにかえ水に溶けるようにするはたらきをします。

この反応は、亜鉛を例にすると、図の式のようにあらわされます。

また、酸に溶ける金属ならどの酸を使っても反応は同じになるはずです。

このように、亜鉛が酸に溶けやすいのは亜鉛が水素よりイオンになりやすいということです。

逆に、銅が酸に溶けにくいのは銅が水素よりイオンになりにくいからです。

イオンになりやすい金属をイオン化傾向が大きいといい、イオンになりにくい金属をイオン化傾向が小さいといいます。

ふつうの金属をイオン化傾向の大きい順にならべると前ページの表のようになります。

これをイオン化列といいます。

この表で、鉛と銅のあいだに、水素が入っています。
つまり、鉛よりイオン化傾向の大きい金属は酸に溶け、銅よりイオン化傾向の小さい金属は、酸に溶けないわけです。(スズは、熱すると酸に溶けます)



酢酸の性質・用途とは? わかりやすく解説!

酢酸の工業的製法

酢酸は、アセチレンガスと水を作用させるかニチレソガスからアセトアルデヒドをつくりさらに、マンガン塩を触媒として、空気中の酸素で酸化させてつくります。

私たちが、調味料として使っている食酢には数パーセントの酢酸がふくまれています。

食酢をつくるには、酢酸発酵法という方法を使います。
酢酸発酵法は、穀類や果実類からアルコールをつくり
このアルコールを酢酸菌のはたらきで、酢酸にかえる方法です。

酒が古くなると、すっぱくなることがありますが
これも酢酸菌のはたらきで、酢酸ができたためです。


酢酸の実験室的製法

実験室では、ふつう、アセトアルデヒドやエチルアルコールを酸化して
酢酸をつくっています。

そのほか、木材を蒸し焼きして木炭をつくるときに
木酢液としてえられます。

酢酸の性質

純粋な酢酸は、融点が16.7℃、無色の刺激臭のある液体で
水・アルコールーエーテルなどと、どんな割合にでもまざります。

水分を少量ふくんだ酢酸も融点が低く
わりあい低い温度で固体になります。

このような濃い酢酸を、とくに氷酢酸といいます。

酢酸は、電離がごくわずかしかおこらないので弱い酸です。
そのため、酸としては、塩酸や硫酸ほど強酸ではありませんが
工業原料としては非常に大切です。

濃い酢酸には、いろいろな有機化合物に作用する性質があります。
この作用を、酢酸化作用、またはアセチル化作用といいます。

たとえば、繊維素(セルロース)に作用させると
アセテート繊維の原料になる酢酸繊維素ができます。

酢酸の用途

酢酸は、アセテート繊維の原料になるだけでなく
日本で発明されたビエロンや写真の不燃性フィルムの
原料として使われます。

そのほか、染料・医薬品・香料の製造にも使われています。



硝酸の性質と用途とは? わかりやすく解説!

硝酸の工業的製法

硝酸は、アンモニアを空気とまぜ約800℃に熱した白金触媒の上で燃やしたものを水に溶かしてつくります。


このときの化学変化は、非常に複雑ですがまとめると図の式のようになります。

この方法でつくった硝酸は、純粋で濃いすぐれたものです。

現在では、ほとんどの硝酸がこの方法で製造されていますがむかしは、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムに硫酸をくわえそれを蒸留してつくっていました。

しかし、この方法はアンモニアから製造するのにくらべて原料や費用の点ではるかに劣るので現在では行われていません。

硝酸の実験室的製法

実験室では、ふつう硝酸カリウムや硝酸ナトリウムに硫酸を注ぐ方法で硝酸をつくっています。

レトルトに、粉にした硝酸カリウムを30グラムほど入れこれに濃硫酸20立方センチをくわえます。

レトルトは石綿金網か砂ざらの上におきその先を冷たい水で冷やした受器にさしこんでおきます。

そして。レトルトを静かに熱すると硝酸の蒸気が受器に入りそこで冷やされて液状になります。

受器には、いつも冷水がかかるようにしておかなければなりません。

このときの反応は温度が比較的低いと①式のようにすすみます。

また、温度が高いと、②式のように反応します。
硝酸ナトリウムから硝酸をつくるときの反応も硝酸カリウムからつくる場合と同じです。



硝酸の性質

純粋な硝酸は、硝酸の蒸気による刺激臭のある無色の液体で、比重は1.52です。

硝酸は、湿気を吸う性質が非常に強く空気中では煙をだします。

日本薬局方の濃硝酸は、約25パーセントのものですがこれを2倍の容積の水でうすめると、使いやすくなります。

また実験室では、ふつう濃硝酸を12倍の水でうすめた希硝酸を使っています。

濃硝酸には、いろいろな有機化合物に作用する性質があります。
この作用を硝化作用、またはニトロ化作用といいます。

繊維素(セルロース)に作用させると火薬やセルロイドの原料になるニトロセルロースができグリセリンに作用させると、火薬原料のニトログリセリンができます。

このほか、たんぱく質に作用して、黄色にする性質がありこれをキサソトプロテイン反応といいます。

硝酸がつくと、皮膚や爪などが黄色くなるのはこの反応のためです。

硝酸の用途

硝酸は、火薬・染料・セルロイドなどの製造に使われるほかアンモニアと作用させて、硝酸アンモニウム(硝安)をつくります。

硝酸アンモニウムは、非常に窒素分の多い肥料で硫酸アンモニウムにかわる窒素肥料として重要になってきています。

また、硝酸を、塩基や金属酸化物に作用させると硝酸塩ができます。
硝酸塩は大切な化学薬品で、水によく溶ける性質をもっています。



硫酸の性質と用途とは? わかりやすく解説!

硫酸の製法

硫黄や硫黄をふくんだ鉱石を、空気を通しながら焼くと二酸化硫黄(亜硫酸ガス)ができます。


硫酸は、図の式のように、二酸化硫黄を空気中の酸素で酸化して三酸化硫黄とし、さらに水を反応させてつくります。

しかし、この反応は触媒がなければうまくおこりません。
触媒というのは、化学反応を助けたりさまたげたりして、反応速度を加えるけれどもそれ自身は変化しないような物質のことです。

鉛室法

大きな鉛ばりの部屋(鉛室)の中で二酸化窒素を触媒として二酸化硫黄を硫酸にかえます。

鉛室法による硫酸はあまり純粋ではなくまた、この方法は現在、ほとんど行われなくなりました。

接触法

二酸化イオウと空気を400~550℃に熱した触媒(五酸化バナジウムまたは酸化鉄)の上を通すと、①式のように、三酸化硫黄ができます。

酸化硫黄を水に溶かすと、②式のように硫酸ができます。
三酸化硫黄は、無水硫酸ともいいます。

接触法でできた硫酸は純粋です。

したがって、接触法は、純度の高い硫酸や濃硫酸・発煙硫酸などの製造に用いられています。


硫酸の性質

水をふくまない純粋な濃硫酸はねばりけのある無色の液体で比重は1.84です。

硫酸は、どんな割合にでも水とまざります。
水にその5分の1の容積の硫酸をくわえたものは濃硫酸ほど危険ではないので、使用に便利です。

また実験室では、ふつう、この硫酸をさらに5倍の水でうすめた希硫酸を使います。

硫酸を水でうすめるときには熱が発生して温度があがり、加えた水が急に沸騰して硫酸が飛び散る危険があります。

ですから濃硫酸を水でうすめるときには硫酸の中に水をくわえてはいけません。

水の中に硫酸を少量くわえてよくかきまぜ冷えてからまた少量くわえるようにします。

濃硫酸は、水を吸う性質が非常に強いのでデシケーターに入れて、乾燥剤として使います。

硫酸は水分を吸収するだけではなく化合物の中から、酸素と水素を水の割合でうばいとるはたらきもあります。

たとえば、砂糖や紙などが濃硫酸にふれると水素と酸素が水の割合でとれてあとに炭素が残るので黒くこげたようになります。

このような硫酸が水を吸いとる性質を脱水作用といいます。
このほか、高温の硫酸には、非常に強い酸化作用があります。

硫酸の用途

硫酸は、脱水作用や酸化作用をもっている薬品のうちでは
もっとも安いので、利用範囲が非常に広く、重要な工業薬品です。

硫酸の大部分は、肥料の原料として使われます。

硫酸とアンモニアからつくる硫酸アンモニウム(硫安)は窒素肥料としてもっとも重要なものですしリン酸肥料として大切な過リン酸石灰もリン鉱石に硫酸を作用させてつくります。

硫酸はこのほかにも、いろいろな化学工業で広く使われています。

とくに、火薬・染料・医薬品などの製造には、硫酸はなくてはならないものですし、石油の精製にもぜひ必要です。

また、銅の電解精練などの冶金工業でも重要な薬品です。



塩酸の性質と用途とは? わかりやすく解説!

塩酸の工業的製法

塩酸は、塩化ナトリウム(食塩)の電気分解でできる水素と塩素から塩化水素をつくり、これを水に溶かしてつくります。


塩化水素は、黒鉛でできた耐火性の太い円筒の中で水素を塩素で燃やしてつくります。

できた塩化水素は、冷やしてから水に溶かします。
この方法を合成法といい、合成法でつくった合成塩酸といいます。

合成法は費用が安くてすみますし合成塩酸は、品質が非常にすぐれているので現在では、塩酸のほとんどがこの方法でつくられています。

合成法以前の塩酸は、塩化ナトリウムに硫酸を注いでつくっていました。

塩酸の実験室的製法

実験室で塩酸をつくる場合は、塩化ナトリウムに硫酸を注ぐ昔の方法が使われます。

塩化ナトリウムをフラスコに入れ、ろうとの口から硫酸を注いでフラスコの底を静かに熱すると塩化水素が発生します。

このとき、温度がわりあいに低いと図の①式のような反応がおこりますが温度が高いと、反応は②式まですすみます。

こうしてできた塩化水素を冷やして水に溶かし、塩酸をつくります。

この実験は危険ですから、ひとりで行ってはいけません。



塩酸の性質

約20パーセントの塩化水素をふくむ塩酸は沸点が110℃で一定です。
これ以上濃い塩酸を濃塩酸といい、これより薄い塩酸を希塩酸といいます。

日本薬局方の濃塩酸は、30パーセントで、比重が1.05ですが市販の濃塩酸は36パーセントぐらいです。

純粋な塩酸は無色の液体ですが工業用のものは塩化第二鉄をふくむので黄色です。

濃塩酸は、さかんに塩化水素の蒸気をだします。
そのために瓶詰の塩酸は瓶の内側が塩化水素の蒸気で圧力になっていて危険です。

新しい瓶をあけるときには、注意が必要です。
また、この塩化水素の蒸気は強い刺激臭がありアンモニア水をつけたガラス棒を近づけると、白煙を生じます。

この白煙は、塩化アンモニウムです。濃塩駿は、ふつう水でうすめて使います。

実験室で使うには、10倍の容積の水で薄めた希塩酸がよいでしょう。

塩酸の用途

塩酸や塩化水素はアミノ酸醤油などの調味料の製造や塩化アソモニウムなどの薬品の製造に使われています。

また、塩酸は、金属のさびを溶かすのにも利用されますが最近では、合成繊維や合成樹脂の原料として重要な塩化ビニルなどの製造にも、多量に使われています。

塩化ビニルは、アセチレンに塩化水素を作用させてつくったものです。

塩化アンモニウムは、窒素肥料として使われます。
また、純粋塩化アンモニウムは、乾電池の中の薬として使われます。



弱酸と強酸とは? 一塩基酸と多塩基酸とは? わかりやすく解説!

酸・塩基について、いろいろなことを調べてきましたが酸にはどのような種類があり、また、それぞれどのような性質があるか調べてみましょう。


弱酸と強酸

炭酸のように、一部分しか電離をおこさない酸は水素イオンを少ししかつくらないために酸性か弱く弱酸とよばれます。

弱酸には、炭酸のほか、酢酸などがあります。
いっぽう、塩酸のように、ほとんど全部が電離をおこす酸は水素イオンをたくさんつくるために酸性が強く、強酸とよばれます。

強酸には、塩酸のほかに、硝酸・硫酸などがあります。

一塩基酸と多塩基酸

硫酸の電離は、塩酸の場合と違って、つぎのように二段階でおこります。

このうち第一段の電離は、ほとんど完全に進みますが第二段の電離は、一部分しかおこりません。

塩酸のように、一段で電離をおこす酸を一塩基酸というのにたいして硫酸のように、段階的に電離をおこす酸を多塩基酸といいます。

また、多塩基酸のうち硫酸のように二段階に分かれて電離する酸を二塩基酸リン酸のように三段階に分かれて電離する酸を三塩基酸としいます。

酸化性の酸

硝酸や硫酸には、酸としてのふつうのはたらきのほかに強い酸化があります。

これは、酸の中にふくまれる酸素のはたらきで、このようなはたらきをもつ酸をとくに酸化性の酸といいます。



酸・塩基の指示薬とは? リトマス・フェノールフタレインとは?

水素イオン濃度が違えば、同じ液でも非常に性質がかわってきます。
そのため、いろいろな溶液の水素イオン濃度を調べることは非常に大切です。


指示薬

溶液が酸性か塩基性かを調べるいちばん簡単な方法は、なめてみることです。
もし酸味があれば酸ですし、舌を刺すような味ならば塩基です。

しかし、なめるのは、たいへん危険なだけでなく不正確です。
そこで、水素イオン濃度を詳しく調べるときには指素イオン濃度の小さいときにしめす色を塩基性の色といいます。

例えばリトマスの酸性の色は赤、塩基性の色は青です。
この、酸性の色から塩基性の色にかわるときの水素イオン濃度の範囲を変色域といいます。

例えば、リトマスはpH4.4からpH8.3までの間で酸性の色から塩基pH5~pH8ということになります。

リトマス

リトマスは、水素イオン濃度が大きいときには酸性の色である赤をしめしますが、中性の近くになるにしたがってだんだん紫色になります。

水素イオン濃度が中性よりさらに小さくなって水酸イオン濃度より小さくなるとこんどは塩基性の色である青をしめします。

リトマスをアルコールに溶かした液に希塩酸を少量加えると赤色になりアンモニア水を少量加えると青色になります。

この赤色と青色の液を、それぞれろ紙にふくませて乾かしたものが赤色リトマス紙と青色リトマス紙です。

もし、調べる液が酸性ならば、青色リトマス紙の色が酸性の色である赤にかわります。

液が塩基性ならば、赤色リトマス紙の色が塩基性の色である青にかわります。



フェノールフタレイン

フェノールフタレインは無色の結晶で水にはごくわずかしか溶けませんがアルコールにはよく溶けます。

それで、指示薬としてはフェノールフタレインをアルコール溶液にして使います。

フェノールフタレインは、酸性や中性の溶液では無色ですが塩基性の液では赤色になります。
つまり、変色域が中性よりやや塩基性によっているのです。

ですから、フェノールフタレインを赤色にする液は必ず塩基性です。

フェノールフタレインは、液が塩基性かどうかを試すのに使われます。

また、酸を塩基で中和する反応のとき中和が完全に行われたかどうかを調べるのにも使われます。

メチルオレンジ

メチルオレンジの酸性の色は赤色、塩基性の色は黄色です。
メチルオレンジは、フェノールフタレインと同じように中和を調べる中和指示薬として使われます。

とくに、塩酸とアンモニア水のような強酸とか弱塩基の中和のときに多く使われます。

pH試験紙

指示薬にはリトマス・フェノールフタレインのほかにもいろいろなものがあります。

指示薬によっては変色域が心中性の水素イオン濃度より大きい(pHが7より小さい)ところ、つまり酸性の側にあるものと、変色域が中性の水素イオン濃度より小さい(pHが7より大きい)ところつまり塩基性の側にあるものとがあります。

ですからいろいろな種類の指示薬の試験紙をそろえておけば水溶液の水素イオン濃度、つまりpHを調べることができます。

例えば、ある水溶液のpHを調べるときにはその水溶液をいろいろな試験紙につけてみて変色域の色をしめす試験紙をみつけだせば水溶液のpHは、その試験紙の変色域の範囲にあることがわかります。

また、変色域でしめす色の調子をくわしく調べるともっとくわしいpHを決めることができます。

このように、pHを測定するためにいろいろな試験紙を組みにしたものをpH試験紙といいます。

pH試験紙には、それぞれの試験紙の変色域の色の変化を色ずりにした見本がついています。



酸と塩基の関係とは? 水素イオン濃度と水酸イオン濃度の関係とは?

純水の電離

純粋な水も、ごくわずかですが水素イオンと水酸イオンとに電離しています。


この場合、水1分子から水素イオンと水酸イオンが1つずつできるので水素イオンと水酸イオンの数は等しくなります。

このことを、水素イオンの濃度と水酸イオンの濃度が等しいといいます。

水素イオンの濃度と水酸イオンの濃度とが等しいときには酸性と塩基性が、互いに打ち消しあうのでどちらの性質もあらわれません。

ところが、純粋な水に酸を加えると酸の電離によって、水素イオンが増えるので水素イオンの濃度が水酸イオンの濃度より大きくなります。

そのため、溶液は酸性をしめすようになります。
また、純粋な水に塩基を加えると逆に、水酸イオンの濃度が水素イオンの濃度より大きくなって溶液は塩基性をしめすようになります。



水素イオン濃度と水酸イオン濃度の関係

水素イオン濃度と水酸イオン濃度とのあいだにはいっぽうが増えるるといっぽうは減るという関係があります。

そして、その関係は、いっぽうが倍になるといっぽうは半分になるという、規則正しいものです。

つまり、水素イオン濃度と水酸イオン濃度をかけあわせたものはいつも一定になるわけです。

このことは、水素イオン濃度を「H+]、水酸イオン濃度をOH]であらわすと上の式のようになります。

この式からもわかるように、水素イオン濃度が決まるとひとりでに水酸イオン濃度も決まっててしまい
どちらかいっぽうの濃度だけをかえることはできません。

つまり、酸性・塩基性の強さは、水素イオン濃度だけであらわすことができます。



塩基と塩基性とは? 塩基の電離や性質とは? わかりやすく解説!

アンモニアの水溶液

アンモニアは、20℃での水に、水の700倍ぐらいの体積が溶けます。

アンモニアの水溶液に、青色リトマス紙と赤色リトマス紙を入れると二酸化炭素の水溶液の場合と違って赤色リトマス紙は青くなりますが青色リトマス紙は色がかわりません。


一方、乾いたアンモニアの気体の中に青色リトマス紙と赤色リトマス紙を入れてみるとどちらも色がかわりません。

しかし、この場合でも、リトマス紙が水分を吸っていたりアンモニアがよく乾いていないで、水分をふくんでいたりするとアンモニアの水溶液のときと同じように赤色リトマス紙の色が青くかわります。

これは、アンモニアの気体がアンモニアやリトマス紙にふくまれる水分といっしょになってアンモニアの水溶液と同じはたらきをするからです。

アンモニアは水に溶けると、水と反応して、下の式のように、アンモニア水ができるのです。

この実験で乾いたアンモニア(水酸化ナトリウムか水酸化カリウムを詰めた瓶の中を通す)には、乾いたリトマス紙の色をかえるはたらきがなく水に溶けてアンモニア水になると、赤色リトマス紙の色を青色にかえるはたらきをもつようになることがわかりました。

アンモニア水のよに、赤色リトマス紙の色を青色にかえる物質を塩基またはアルカリといいます。

また、塩基のもっている性質を塩基性といいます。



塩基の電離

アンモニアが水に溶けると、アンモニア水ができ塩基のはたらきをしますがアンモニア水そのものが塩基のはたらきをしめしているのではありません。

アンモニア水の一部は、左の①式のように変化しアンモニウムイオンと水酸イオンとに分かれています。

同じように、水酸化ナトリウムが水に溶けるとそのほとんどが上の②式のようにナトリウムイオンと水酸イオンとに分かれます。

このように、塩基がアンモニウムイオンやナトリウムイオンのような陽イオンと陰イオンである水酸イオンとに分かれることを、塩基の電離といいます。

塩基のはたらきをするのはアンモニア水や水酸化ナトリウムのものではなくてこれらが電離してできる水酸イオンなのです。

電離してできる陽イオンは、塩基のはたらきには直接関係しません。

したがって、塩基と塩基性ということを水酸イオンを使っていいあらわすと塩基というのは、電離によって水酸イオンをだす物質のことで塩基性とは、水酸イオンのもつ性質であるということができます。

塩基とアルカリ

水溶液の中で電離して、水酸イオンをだす物質を塩基といいましたが、アルカリともいいます。

アルカリというのは、塩基のなかでもよく水に溶け強い塩基性(アルカリ性)をしめす物質をさします。

ふつう、ナトリウム・カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物やカルシウム・バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物例えば水酸化ナトリウムや水酸化バリウムなどを、アルカリといっています。

突然には、アルカリ・アルカリ性というかわりに塩基・塩基性という言葉を使います。

塩基の性質

塩基は、水酸イオンをだす物質です。
ですから、いろいろな塩基は水酸イオンの性質を共通にもっているわけです。
つまり塩基に共通した性質は、水酸イオンの性質ということになります。

水酸イオンのおもな性質は、つぎのとおりです。

① 塩化鉄・硫酸銅のような重金属の塩の水溶液から
よく水酸化物をつくります。

これは、水酸イオンが、金属の陽イオンと反応して水に溶けにくい水酸化物をつくるからです。

② リトマスのような指示薬に、塩基性特有の色をつけます。

③ 酸と中和反応をおこします。



酸と酸性とは? 酸の性質とは? わかりやすく解説!

アサガオの花やシソの葉からしぼりとった色水に酢やナツミカンの汁を入れると色が赤くなります。

一方、この色水に、灰じるのうわずみ液を入れると色が青くなります。

また、酢のかわりに塩酸を灰じるのかわりに水酸化ナトリウムの水溶液を使っても、同じ実験ができます。
酢や塩酸は酸とよばれ、水酸化ナトリウムは塩基とよばれます。

酢や塩酸と、灰じるや水酸化ナトリウムの水溶液とでは花の色水のかえ方が違います。

この酸や塩基は、どのような性質をもっているか調べてみましょう。


二酸化炭素の水溶液

二酸化炭素は、15℃の水に、水と同じくらいの体積が溶けこみます。

二酸化炭素の水溶液に、青色リトマス紙と赤色リトマス紙を入れると青色リトマス紙は赤くなりますが赤色リトマス紙は色がかわりません。

一方、乾いた二酸化炭素の気体の中に青色リトマス紙と赤色リトマス紙を入れてみるとどちらも色がかわりません。

しかし、この場合でも、リトマス紙が水分を吸っていたり二酸化炭素がよく乾いていないで水分をふくんでいたりすると二酸化炭素の水溶液のときと同じよう青色リトマス紙の色が赤くかわります。

これは、二酸化炭素の気体が二酸化炭素やリトマス紙にふくまれる水分といっしょになって二酸化炭素の水溶液と同じはたらきをするからです。

二酸化炭素は、水に溶けると、水と反応して図の式のように炭酸ができるのです。

この実験によって、乾いた二酸化炭素(濃硫酸を通す)は乾いたリトマス紙(塩化カルシウムデシケーターに入れる)の色をかえるはたらきがなく、水に溶けて炭酸になること青色リトマス紙の色を赤色にかえるはたらきをもつことがわかりました。

炭酸のように、青色リトマス紙の色を赤色にかえる物質を酸といいます。
また、酸のもっている性質を酸性といいます。

酸の電離

二酸化炭素が水に溶けた炭酸は、酸のはたらきをしますが炭酸そのものが酸のはたらきをするのではありません。

炭酸の一部に水とはたらきあって、左の①式のように変化しヒドロニウムイオンH3O+と炭酸水素イオンHCO3とに分かれています。

同じように、塩化水素が水に溶けると塩酸という酸になりますが塩酸では、そのすべてが水とはたらきあって上の②式のように、ヒドフニウムイオンと塩素イオンとに分かれています。

このように、酸が、ヒドロニウムイオンと炭酸水素イオンや塩素イオンのような陰イオンとに分かれることを酸の電離といいます。

酸のはたらきをするのは、炭酸や塩酸そのものでけなくて、これらが電離してできるヒドロニウムイオンH3O+なのです。

電離によってできる陰イオンは、酸のはたらきには直接関係しません。



水素イオン

酸の電離によってできるヒドロニウムイオンは酸からでる水素イオンが水の分子とむすびついてできたものです。

つまり、酸からでる水素イオンは、水中ではそのままで入れなくて必ず水の分子とむすびつき、ヒドロニウムイオンになっているのです。

しかし、ふつうは、ヒドロニウムイオンを水中の水素イオンという意味でたんに、水素イオンといっています。

ですから、ここでも、とくにヒドロニウムイオンと水素イオンH+を区別しないで、両方とも、水素イオンH+と書きあらわすことにします。

したがって.いま述べた意味での水素イオンを使って酸と酸性をいいあらわすと酸というのは電離によって水素イオンH+をつくりだす物質のことであり酸性とは、水素イオンH+のもっている性質であるということができるのです。

酸の性質

酸は、水素イオンH+をつくりだす物質ですからいろいろな酸は、水素イオンの性質を共通にもっているわけです。

つまり、酸に共通な性質は、水素イオンの性質ということになります。
水素イオンのおもな性質は、つぎのとおりです。

① 酸味をもっています。
これは、水素イオンの刺激による味です。

② 亜鉛・スズなどの金属とはたらきあって水素を発生します。
これは、これらの金属原子が、酸の中の水素イオンに電子をあたえ水素ガスにするからです。

金属は、イオンになって、水に溶けるのです。

③ リトマスのような指示薬に、酸性に特有な色をつけます。

④ 塩基と中和反応をおこします。



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