塩酸の工業的製法
塩酸は、塩化ナトリウム(食塩)の電気分解でできる水素と塩素から塩化水素をつくり、これを水に溶かしてつくります。
塩化水素は、黒鉛でできた耐火性の太い円筒の中で水素を塩素で燃やしてつくります。
できた塩化水素は、冷やしてから水に溶かします。
この方法を合成法といい、合成法でつくった合成塩酸といいます。
合成法は費用が安くてすみますし合成塩酸は、品質が非常にすぐれているので現在では、塩酸のほとんどがこの方法でつくられています。
合成法以前の塩酸は、塩化ナトリウムに硫酸を注いでつくっていました。
塩酸の実験室的製法
実験室で塩酸をつくる場合は、塩化ナトリウムに硫酸を注ぐ昔の方法が使われます。
塩化ナトリウムをフラスコに入れ、ろうとの口から硫酸を注いでフラスコの底を静かに熱すると塩化水素が発生します。
このとき、温度がわりあいに低いと図の①式のような反応がおこりますが温度が高いと、反応は②式まですすみます。
こうしてできた塩化水素を冷やして水に溶かし、塩酸をつくります。
この実験は危険ですから、ひとりで行ってはいけません。
塩酸の性質
約20パーセントの塩化水素をふくむ塩酸は沸点が110℃で一定です。
これ以上濃い塩酸を濃塩酸といい、これより薄い塩酸を希塩酸といいます。
日本薬局方の濃塩酸は、30パーセントで、比重が1.05ですが市販の濃塩酸は36パーセントぐらいです。
純粋な塩酸は無色の液体ですが工業用のものは塩化第二鉄をふくむので黄色です。
濃塩酸は、さかんに塩化水素の蒸気をだします。
そのために瓶詰の塩酸は瓶の内側が塩化水素の蒸気で圧力になっていて危険です。
新しい瓶をあけるときには、注意が必要です。
また、この塩化水素の蒸気は強い刺激臭がありアンモニア水をつけたガラス棒を近づけると、白煙を生じます。
この白煙は、塩化アンモニウムです。濃塩駿は、ふつう水でうすめて使います。
実験室で使うには、10倍の容積の水で薄めた希塩酸がよいでしょう。
塩酸の用途
塩酸や塩化水素はアミノ酸醤油などの調味料の製造や塩化アソモニウムなどの薬品の製造に使われています。
また、塩酸は、金属のさびを溶かすのにも利用されますが最近では、合成繊維や合成樹脂の原料として重要な塩化ビニルなどの製造にも、多量に使われています。
塩化ビニルは、アセチレンに塩化水素を作用させてつくったものです。
塩化アンモニウムは、窒素肥料として使われます。
また、純粋塩化アンモニウムは、乾電池の中の薬として使われます。