金属イオンの分離とは? わかりやすく解説!

実際に金属イオンを検出するときは、いろいろなイオンをふくむ試料(調べようとするもの)から、それぞれのイオンを分離しなければなりません。

銀イオン・銅イオン・アルミニウムイオン・第二鉄イオン・バリウムイオンを
ふくむ溶液を用意して、それからそれぞれのイオンを検出してみましょう。


銀イオンの分離

溶液にうすい塩酸をくわえると塩化銀が沈殿します。
これをろ過し、うすい塩酸で洗うと銀イオンを塩化銀の形で分離することができます。

これをビーカーにうつして銀イオンの反応のところで述べた①の実験をすると、銀イオンを確認することができます。

バリウムイオンの分離

塩化銀をろ過したろ液に、うすい塩酸を一滴くわえもはや沈殿ができないことを確かめてからうすい硫酸をくわえると硫酸バリウムが沈殿します。

加熱して、沈殿の粒子を大きくしてからろ過すると硫酸バリウムが分離します。
この沈殿が、うすい酸や塩基の溶液に溶けないことを確かめます。

銅イオンの分離

硫酸バリウムをろ過したろ液に、うすい硫酸を一滴くわえて沈殿ができないことを確かめてから、塩化アンモニウム溶液をくわえつぎに上澄み液が銅アンモニア錯イオンの青色になるまでうすいアンモニア水をくわえます。

このとき、鉄とアルミニウムは水酸化物の形で沈殿し、ろ過すると、ろ液のほうに銅イオンをとりだすことができます。

このろ液を用いて、銅イオンの反応をおこなわせ、銅イオンを確認します。

アルミニウムイオンの分離

水酸化アルミニウムと水酸化第二鉄のまざった沈殿を水でよく洗ってからビーカーにうつします。

これに、うすい水酸化ナトリウム溶液を、いちどできた沈殿がまた溶けて赤褐色の水酸化第二鉄の沈殿だけになるまでくわえます。

水酸化アルミニウムは、アルミン酸イオンになり溶けますからろ過して、アルミニウムイオソはろ液に鉄イオンは沈殿に分離することができます。

アルミニウムイオンは酸で中和して沈殿をつくることによってまた鉄イオンはフェロシアン化カリウムで、それぞれ確認することができます。



金属イオンの反応とは? わかりやすく解説!

水溶液中に、あるイオンが溶けているときそれが何のイオンであるかを調べることを、イオンの検出といいます。

ここでは金属イオンの検出について、調べてみましょう。


イオンには、他のイオンと反応して、気体になるとか沈殿を生ずるとか色をしめすというような特有の反応があります。

イオンの検出は、このイオン特有の反応を利用しておこないます。

ふつう、検出しようとするイオンのほかにほかのイオンがまざっている場合が多いのでそれらが検出の邪魔になるときは、あらかじめ分離しておきます。

つぎに、検出しようとするイオンに特有な反応をおこなわせてそのイオンの存在を確認します。

確認のためには、沈殿をつくり、その色や性質を調べたり特有な色をしめす複雑なつくりのイオンをつくったりします。

そのイオン特有の鋭敏な反応を選べば試験管やビーカーを使わずに石紙や時計ざらの上ででも確実に、わずかな量のイオンを調べることができます。

そのほか炎色反応なども、操作がかんたんなので検出の補助手段として使われます。

金属イオンの反応

おもな金属イオンについて、それぞれの特有な反応を調べてみましょう。
実験するときは、それぞれのイオンをふくむ溶液(硝酸塩などの2パーセソト溶液)を用いておこないます。

銀イオン

Ag+ 無色のイオン。
① 塩酸や塩化ナトリウムの水溶液などのような塩素イオンをふくむ溶液をくわえると、白色の塩化銀が沈殿します。

塩化銀は光にあたると一部が分解し、細かい銀の粒ができるため紫色に変色します。
塩化銀は、アンモニア水に溶けます。
この溶けた溶液に、ヨウ化カリウム溶液をくわえると、黄色のヨウ化銀が沈殿します。

アンモニア水をくわえすぎていた場合は、白色の沈殿に見えます。

② うすいアンモニア水をくわえると褐色の酸化が沈殿しさらにアンモニア水をくわえると無色の銀アンモニア錯イオンをつくって溶けてしまいます。

酸化銀ができた溶液をそのままにしておくと、爆発性物質ができるので、注意が必要です。

③ うすい水酸化ナトリウム溶液をくわえると、酸化銀が沈殿しさらにくわえても、沈殿は溶けません。

④ ヨウ化カリウム溶液をくわえるとヨウ化銀ンの黄色沈殿ができます。
ヨウ化銀は、硝酸やアンモニア水には溶けません。

銅イオン

Cu2+ 水溶液は青色をしめします。

① うすいアンモニア水をくわえると、うすい青色の水酸化第二銅のが沈殿します。
しかし、アンモニア水をさらにくわえると濃い青色の銅アンモニア錯イオンをつくって溶けます。

② うすい水酸化ナトリウム溶液をくわえると水酸化第二銅が沈殿しますがさらにくわえても溶けません。

③ 炎色反応は、緑色をしめします。



アルミニウムイオン

Al3+ 無色。
① うすいアンモニア水をくわえると白色の寒天のような水酸化アルミニウムが沈殿します。

② うすい水酸化ナトリウム溶液をくわえると水酸化アルミニウムの沈殿ができますが、さらにくわえると、アルミン酸イオンができて溶けます。

この溶液を酸で中和すると、また水酸化アルミニウムが沈殿しますが酸を多くくわえると溶けます。

第二鉄イオン

Fe3+ 水溶液は、黄色をしめします。

① うすいアンモニア水や、水酸化ナトリウム溶液をくわえると赤褐色の水酸化第二鉄が沈殿し、さらにくわえても溶けません。

② フェロシアン化カリウム溶液をくわえると、濃い青色の沈殿をつくります。

バリウムイオン

Ba2+ 無色のイオン。

① うすい硫酸をくわえると、白色の硫酸バリウムが沈殿しこれは酸にも、塩基にも溶けません。

② 炭酸アンモニウム溶液をくわえると、炭酸イオンと反応して白色の炭酸バリウムが沈殿します。
これに、うすい酸をくわえると二酸化炭素を発生しながら溶けてしまいます。

③ 炎色反応は、うすい緑色をしめしまします。



硫酸アルミニウムとミョウバンの製法・性質・用途とは?

硫酸アルミニウムの製法

硫酸アルミニウムは、アルミニウムや水酸化アルミニウムに硫酸を作用させてつくります。
工業的には、アルミニウムの精練の中間製品である水酸化アルミニウムを原料として製造します。

硫酸アルミニウムの性質

純粋な硫酸アルミニウムは、白色の結晶で、水に溶けやすく水溶液は、加水分解して酸性をしめします。

水溶液から結品させた硫酸アルミニウムは、18水和物でこれを熱すると、結品水をなくして、白色の無水物の粉末になりさらに赤くなるまで熱すると、酸化アルミニウムになります。

ミョウバン

硫酸アルミニウムの水溶液に、硫酸カリウムを溶かし煮詰めてから冷やすと、カリウムミョウバンの結晶ができます。

この結晶が、ふつう、ミョウバンといわれているもので強く熱すると、結晶水がなくなって、白い粉末になります。

これを、焼きミョウバンといいます。

硫酸カリウムのかわりに、硫酸アンモニウムを使うとアンモニウムミョウバンの結晶ができます。

カリウムミョウバンとアンモニウムミョウバンは結晶の形が似ているのでアルミニウムミョウバン類ともいいます。

アルミニウムのかわりにクロムを使うと、クロムミョウバン類ができます。
この2種類は、結晶の形が似ているので、まとめてミョウバン類とよぶこともあります。



アルミニウム塩の用途

硫酸アルミニウムやアルミニウムミョウバンを水に溶かすと加水分解をおこして、目に見えないような細かい水酸化アルミニウムの沈殿ができます。

この沈殿は、ごみを吸いつける性質をもっているので水をすませるときに使います。

また、水酸化アルミニウムは、染料を吸いつける力をもっています。
この性質を利用して、染めにくい繊維の表面にアルミニウム塩をつけて、染めやすくしています。

このようなはたらきをする薬品を、染剤といいます。
媒染剤としては、硫酸アルミニウム・酢酸アルミニウム・アルミニウムミョウバン類などのアルミニウム塩が使われます。

紙のめをつめ、紙をなめらかにしてインキのにじむのをとめる薬品をサイズといいます。

水酸化アルミニウムは、このはたらきをするのでアルミニウム塩は、ほかのものとまぜてサイズとしても使われています。

複塩と錯塩

カリウムミョウバンは、カリウムイオン・アルミニウムイオン・硫酸イオン・水分子が1対1対2対12の割合で、規則正しくならんでできた結晶です。

この結晶を水に溶かすと、これらのイオンがばらばらになるのでカリウムイオン・アルミニウムイオン・硫酸イオンのそれぞれの性賢があらわれます。

つまり、硫酸カリウムと硫酸アルミニウムの性質をそのままもっているわけで
このような塩を複塩といいます。

いっぽう、シアン化カリウムとシアン化銀をまぜてできた銀シアン化カリウムは、もとの2つの塩と性質のまったく違った新しい塩です。

この塩は、カリウムイオンと銀シアンイオンとからできています。
この銀シアンイオンは、銀イオンにシアンイオン2個が強くむすびついたイオンで銀イオンとも、シアンイオンとも性質が違います。

このようなイオンを錯イオンといい、錯イオンをふくむ塩を錯塩といいます。



カリウム塩の製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

カリウム塩はナトリウム塩とならんで、化学工業の原料として、非常に重要な塩です。
カリウム塩には、炭酸カリウム・硝酸バリウム・塩化カリウムなど、いろいろな種類があります。

ここでは、これらのカリウム塩のうち、おもなものについて調べてみましょう。


カリウム塩の製法

カリウム塩のおもな原料は、天然にできる岩塩にふくまれている塩化カリウムです。

この塩化カリウムを原料として水酸化カリウムや炭酸カリウムがつくられ水酸化カリウムからは、さらにいろいろなカリウムがつくられます。

また、塩化カリウムと硝酸ナトリウムの複分解によって、硝酸カリウムがつくられ塩化カリウムの電気分解によって、塩素酸カリウムにや過塩素酸カリウムなどをつくることができます。

カリウム塩の性質

カリウム塩は水に溶けやすいものが多くきれいな結晶をつくる性質があります。
塩化カリウムは、透明な結晶で、ふつうの温度では、水に水の重さの3分の1の重さだけ溶けます。

また、化学的な性質は塩化ナトリウム(食塩)によく似ています。
硝酸カリウムは、白色の結晶で、水に溶ける量は温度によって非常に違い、水溶液は中性です。

高温に熱すると溶けて、亜硝酸カリウムになり酸素を発生します。

硝酸カリウムに木炭粉などをまぜたものは、ちょっとした衝撃でも
爆発する危険がありますが硝酸カリウムだけでは、その危険はありません。

塩素酸カリウムは、つやのある無色の結晶です。
水に溶けにくく分子中に酸素をわりあい多くふくんでいるので非常に強い酸化力があります。

そして、木炭・イオウ・リンなどとまぜたものは熱をくわえたり、衝撃を与えたりすると爆発します。

過塩素酸カリウムも、塩素酸カリウムに似た化学的性質をもっています。

カリウム塩の用途

カリウム塩は、カリ肥料として重要です。
植物にはカリウムがふくまれていますが、これを燃やすとカリ分は炭酸カリウムとなって、灰の中に残ります。

畑に灰をまくのは、この炭酸カリウムを肥料として利用するためです。

カリ肥料としてとくに大切なのは岩塩からとれる塩化カリウムです。
日本では、岩塩がとれないので、そのほとんどを輸入しています。

硝酸カリウムは硝石ともいい、粗製品は、カリ肥料として使われます。
木炭粉などを混ぜると激しく燃えるようになる性質を利用して黒色火薬の製造に使われます。

同じように、塩素酸カリウムはマッチの原料に過塩素酸カリウムは火薬の原料に使われています。

炭酸カリウムは、カリウム化合物を製造する原料として使われます。
そのほかカリガラスの製造やセッケンの製造に使われ、また写真の現像液の一部や医薬品として使われています。



硫酸銅と硝酸銀の製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

硫酸銅には硫酸第一銅と硫酸第二銅とがありますがふつう硫酸銅といえば、硫酸第二銅の五水和物CuSO4・5H2Oをさします。


硫酸銅の製法

硫酸銅は、濃硫酸に銅くずを溶かしててつくりますが工業的には銅の精練のときの副産物として、たくさんつくられています。

硫酸銅の性質

硫酸銅五水和物は、水をふくんだ結晶で美しい青い色をしています。
この結晶をるつぼに入れて、静かに熱すると水を失って無色の粉末になります。

この粉末は水をふくまない硫酸銅の細かい結晶で空気中にほうっておくと空気中の水分を吸って再び青色の結晶にかわります。

この性質を利用して水をふくまない無水硫酸銅の粉末は水分があるかどうかを調べるのに使われています。

硫酸銅の用途

硫酸銅は、銅のめっき液に使うほか、農薬として使われます。

硫酸銅の水溶液に水酸化カルシウムをくわえると、細かい沈殿ができます。この沈殿をふくむ液をボルドー液といい。

作物の病気の予防や消毒に使われています。
ボルトー液は、銅イオンのもつ強い殺菌力を弱めて細菌には効くが作物には無害にしたものです。

このほかにも、銅塩を原料にした、いろいろな農薬があります。



塩の結晶や水溶液の色

塩の結晶や、その水溶液には、きれいな色がついたものがあります。
これらの色について、調べてみましょう。

結晶が水をふくんでいる場合に、その水を結晶水といいます。
結晶水をもった結晶の中では、金属の陽イオンはまわりに水分子をひきつけて錯イオン (そのイオンと水分子いくつかとの集まり)をつくっていることがあります。

水溶液の中でも、これと同じことがいえます。
塩や、その水溶液の色はこの錯イオンの色なのです。

この五水和物の結晶を熱すると、水分子が逃げて、銅イオンだけが残ります。

この銅イオンには色がありませんから、無水の硫酸銅にも色がありません。

このように、塩の結晶や、その水溶液の色は、その塩をつくっているイオンそのものの色ではなく、イオンと水分子がいくつか集まってできている、錯イオンのもっている色なのです。

硝酸銀の製法

銀を硝酸に溶かすと、下の式のように一酸化窒素をだして硝酸銀をふくむ溶液ができます。

この溶液を蒸発させると右の写真のような硝酸銀の結晶ができます。

硝酸銀の性質

硝酸銀の結晶は、色がなく、透き通っています。
しかし、日光にあてると硝酸銀が分解して銀の細かい粉ができ、黒くなります。

硝酸銀の水溶液に、塩化ナトリウムの水溶液をくわえると白い沈殿ができます。

これは、銀イオンと塩素イオンが反応して左の①式のように水に溶けにくい塩化銀ができたためです。

塩化銀は、アソモニア水には、左の②式のような錯イオンをつくって溶けます。

この2つの性質は、銀イオンや塩素イオンの検出に使われます。

硝酸銀の用途

硝酸銀は、写真のフイルムや印画紙の感光材料の製造にたくさん使われるほか、銀めっき液や、銀鏡の製造などに使われています。



アンモニウム塩の製法・性質・用途とは? わかりやすく解説!

アンモニアと酸から硫酸アンモニウム・硝酸アンモニウム・塩化アンモニウムなどの塩ができます。

これらをアンモニウム塩といいます。ここでは、この3つの塩を調べてみましょう。

アンモニウム塩の製法

硫酸・硝酸・塩酸に、アンモニアを作用させてその溶液を蒸発させると、それぞれ硫酸アンモニウム・硝酸アンモニウム・塩化アンモニウムができます。

アンモニウム塩の性質

どの塩も色がなく透き通って、水によく溶けます。
水溶液は、どれも弱い酸性をしめします。

これは、塩の加水分解によります。
アンモニウムの塩、たとえば硫酸アンモニウムの水溶液に濃い水酸化ナトリウム溶液を少しくわえて静かに熱すると、変化してアンモニアが発生します。

この反応は塩がアンモニウム塩であることを確かめるのに使われています。
水酸化ナトリウムのかわりに、水酸化カルシウムを使ってもこの反応はおこります。

アンモニウム塩の用途

硫酸アンモニウム・硝酸アンモニウム・塩化アンモニウムはそれぞれ、硫安・硝安・塩安ともよばれ、窒素肥料として使われています。

このほか、塩化アンモニウムは乾電池の液や染料の製造などに硝酸アンモニウムは火薬の製造に利用されています。



炭酸水素ナトリウムの製法・性質・用途とは? わかりやすく解説! わかりやすく解説!

炭酸水素ナトリウムの製法

炭酸水素ナトリウムには、アンモニアソーダ法で炭酸ナトリウムをつくる途中でできます。

また、炭酸ナトリウムの水溶液に二酸化炭素を飽和させても炭酸水素ナトリウムをつくることができます。
医薬用の炭酸水素ナトリウムは、この方法でつくります。


炭酸水素ナトリウムの性質

炭酸水素ナトリウムは白色の粉末で、水にはあまり溶けませんがその水溶液は、弱い塩基性をしめします。

炭酸水素ナトリウムは、たいていの酸に溶け二酸化炭素を発生して、その酸のナトリウム塩をつくります。

また、炭酸水素ナトリウムの水溶液を空気中にほうっておいたり結晶を強く熱したりすると、二酸化炭素と水をだして分解し炭酸ナトリウムになります。

この熱すると二酸化炭素をたす性質を利用して炭酸水素ナトリウムは、ふくらし粉としても使われます。

炭酸水素ナトリウムが、炭酸ナトリウムにくらべて塩基性が弱いのは炭酸ナトリウムより加水分解のしかたが弱く水酸イオンのできる割合が少ないためです。



炭酸水素ナトリウムの用途

炭酸水素ナトリウムは、酸との作用が炭酸ナトリウムに似ていて性質がいっそう穏やかなので、医薬品に使われます。

その穏やかな性質を利用して、胃液中の塩酸の中和に使われるのです。

そのほか、消火器・ラムネ・ベーキングパウダーなどをつくるのに利用されます。

ベーキングパウダー

パンなどを焼くとき、ふくらし粉として炭酸水素ナトリウムだけを使うことがあります。

このときは、下の①式のような熱分解でできる二酸化炭素がふくらます役目をします。

この場合、炭酸ナトリウムができるので、少し苦味が残ります。

それで、菓子などをつくるときにふくらし粉として使うベーキングパウダーでは炭酸水素ナトリウムに①式でできる炭酸ナトリウムを分解するための酸をくわえたものです。

ふつう、酸としては酒石酸などが使われます。
この場合は。①式につづいて②式の反応がおこり、炭酸ナトリウムは酒石酸ナトリウムのような苦味の少ない塩にかわるので味がたいへんよくなります。

また。この②式の反応でも二酸化炭素ができるのでふくらますはたらきも、2倍になるわけです。



炭酸ナトリウムの性質・用途とは? わかりやすく解説!

炭酸ナトリウムの性質

アンモニアソーダ法でつくった炭酸ナトリウムは白色の粉末で水分の少ない細かい結晶になっています。


この炭酸ナトリウムは、ソーダ灰ともよばれます。

ソーダ灰を熱湯に溶かしてから、溶液をしだいに冷やすと大きい透明な結晶ができます。

これは分子中に水をふくむ、炭酸ナトリウム10水和物の結晶です。
炭酸ナトリウム10水和物は、洗濯ソーダともよばれ、洗濯に使われます。

ソーダ灰も洗濯ソーダも、水に溶かすと加水分解によって強い塩基性をしめし(水酸化ナトリウムよりは弱い)どちらも化学的には同じ性質をもっています。

洗濯ソーダを空気中におくと、結晶の表面に、だんだん白い粉ができます。
これは、洗濯ソーダの結晶の中の水が逃げて水分の少ない炭酸ナトリウムができたり(風解)空気中の二酸化炭素を吸って、炭酸水素ナトリウムができたりするためです。

白い粉末はこうしてできたソーダ灰や炭酸水素ナトリウムなどです。

炭酸ナトリウムの水溶液に、二酸化炭素を圧力をかけながら溶かすと炭酸水素ナトリウムが沈殿します。

この方法は、医薬用の純粋な炭酸水素ナトリウムを製造するのに使われます。

炭酸ナトリウムは、たいていの酸によく溶け二酸化炭素を発生して、その酸のナトリウム塩をつくります。

たとえば、酸が硫酸ならば硫酸ナトリウムが酸が塩酸ならば塩化ナトリウム、ができるわけです。

また、ふつうの炭酸塩は強く熱すると二酸化炭素を発生して分解しますが、炭酸ナトリウムは分解しません。

炭酸ナトリウムの用途

炭酸ナトリウムは、ガラスの原料として、ガラス製造に多量に使われています。

また、酸との作用は水酸化ナトリウムに似ていますが性質は水酸化ナトリウムよりも穏やかなので、取扱いに便利です。

そのため、化学工業の原料薬品としておおいに使われています。
また、調味料・セッケンなどの製造にはなくてはならない重要なものです。



炭酸ナトリウムの製法とは? わかりやすく解説!

塩の代表的なものは塩化ナトリウム(食塩)です。
塩化ナトリウムは海水中に無尽蔵といってもよいほどふくまれています。


それで塩化ナトリウムを原料としていろいろなナトリウム塩や薬品が製造されています。

そのうち、水酸化ナトリウム・炭酸ナトリウム・炭酸水素ナトリウムはとくに重要でこの3つをソーダとよびこれらを製造する工業をソーダ工業とよんでいます。

ここでは、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムについてその製法や性質などを調べてみましょう。

炭酸ナトリウムの製法

炭酸ナトリウムの製法には、18世紀の終わり頃にフランスのルブランが考え出したルブラン法と19世紀の中頃にベルギーのソルベーが発明したアンモニアソーダ法とがあります。

ルブラン法は、歴史的に有名なだけで今では使われていません。
現在では、アンモニアソーダ法が重要な方法として使われています。

アンモニアソーダ法は、図のような装置で行われます。

まず、石灰炉に石灰石とコークスを入れコークスを燃やして石灰石を強く熱するとつぎの①式のように生石灰と二酸化炭素とができます。

でてきた二酸化炭素は、炉の上部からパイプで導き出してソルベー塔に送ります。
また、生石灰は炉の下部から取り出し水を加えて石灰乳をつくります。

いっぽう、アンモニア吸収塔に濃い食塩水を入れこれにアンモニア発生塔でつくったアンモニアガスを通し食塩水に充分吸収させて飽和させます。

このアンモニアを飽和した濃い食塩水をソルベー塔に入れます。



この中では上からアンモニアをふくんだ食塩水をおりてきて下から上がってきた二酸化炭素と反応して、まず②式のように、炭酸水素アンモニウムができます。

つぎに、この炭酸水素アンモニウムが食塩水と反応して③式のように、炭酸水素ナトリウムと塩化アソモニウムができます。

炭酸水素ナトリウムは、食塩水に非常に溶けにくいので、この反応でできた炭酸水素ナトリウムは、ほとんど全部が析出します。

これをろ過して分け、よくかわかして強く熱すると下の④式のように反応し、二酸化炭素を発生して炭酸ナトリウムになります。

このとき、ろ液の中には塩化アンモニウムや炭酸水素ナトリウム・食塩などがふくまれています。

これをアンモニア発生塔におくり石灰炉からくる石灰乳と反応させると、アンモニアが分離します。

このアンモニアをアンモニア吸収塔におくります。

また①式で、炭酸水素ナトリウムから炭酸ナトリウムをつくるときに発生する二酸化炭素は石灰炉からでる二酸化炭素といっしょにして、ソルベー塔におくります。

このようにアンモニアソーダ法では反応の途中でできた副産物を工程にもどして利用することができるので、非常に経済的です。

そのうえ、できた炭酸ナトリウムは、ほとんど純粋です。
上の図は、アンモニアソーダ法の工程をくわしくしめしたものです。

この図からもわかるように、種類の少ない原料から炭酸ナトリウムのほかにも、炭酸水素ナトリウム・水酸化ナトリウムのソーダ類、塩化アンモニウム・塩化カルシウムの塩類など、たくさんの製品ができます。

そのため、アンモニアソーダ法は化学工業にとって重要な方法です。



正塩・酸性塩・塩基性塩とは? わかりやすく解説!

酸と塩基が中和反応によって塩をつくることがわかりました。
また、塩は中和反応以外の方法でもできることがわかりました。

ここでは塩にはどのような種類があるかまた、おもな塩にはどのような性質があるかを調べましょう。


塩は、そのでき方によって、いくつかの種類に分けられます。

正塩

一塩基酸と一酸塩基とからは、ただ1つの塩しかできません。
たとえば、塩酸と水酸化ナトリウムからは下の①式のように、塩化ナトリウムだけしかできません。

多塩基酸や多酸塩基の場合は、いろいろな塩ができますが多塩基酸の水素全部が陽イオンでおきかわると下の②式のような塩ができます。

また、多酸塩基の水酸イオン全部が陰イオンでおきかわると③式のような塩ができます。

このようにしてできた塩化ナトリウム・硫酸ナトリウム・塩化カルシウムなどの塩は分子の中に水素や水酸基をふくんでいない塩です。

このような塩を正塩といいます。

正塩は、酸性塩や塩基性塩にたいして中性塩とよばれることもありますがリトマスにたいして必ず中性をしめすとはかぎりません。

それは、塩をつくる酸や塩基の強弱によって加水分解をおこすことがあるからです。



酸性塩

多塩基酸の水素の一部分が、陽イオンでおきかえられていてまだ陽イオンでおきかえることのできる水素がの素塩といいます。

たとえば、硫酸と水酸化ナトリウムの中和のとき水酸化ナトリウムを少量くわえた状態では下の①式のような硫酸の第一段の電離でできる水素イオンだけが中和されて②式のように、硫酸水素ナトリウムのような酸性塩ができます。

酸性塩の水溶液は、酸性をしめすとはかぎりません。
たとえば、炭酸水素ナトリウムの水溶液は塩基性をしめします。

塩基性塩

多酸塩基を中和するとき、多酸塩基の水酸基の一部分だけが陰イオンでおきかえられていてまだ、陰イオンでおきかえることのできる水酸基が残っているような塩ができることがあります。

このような塩を、塩基性塩といいます。
塩基性塩の水溶液も、必ず塩基性をしめすとはかぎりません。



酸性・塩基性の強さと酸・塩基の濃度とは? わかりやすく解説!

酸性・塩基性の強さと、酸・塩基の濃度とは、ぜんぜん別のことです。ここでは酸性・塩基性の強さと、酸・塩基の濃度ということについて、くわしく調べてみましょう。


酸・塩基の濃度

酸・塩基の濃度は、溶液中に溶けている酸・塩基の量によって決まります。したがって、溶液の中に、たくさんの酸がふくまれていればその溶液は濃い酸ということになります。

塩基の場合も、まったく同じです。

つまり、酸・塩基の濃度という場合はふつうの溶液の濃度と同じようにして決められるわけです。

酸性・塩基性の強さ

酸が酸性をしめすのは、酸そのものによるのではなくて酸が電離してできる水素イオンのはたらきによるのです。

したがって、酸性の強さは、水素イオンの濃度によってきまります。
ですから、わずかし電離しない酸の濃い溶液がよく電離する酸のうすい溶液よりも酸性が弱いことがあります。

たとえば、濃い酢酸のほうが、うすい塩酸より酸性か弱いことがあるのです。

また、塩基性は、塩基そのものがしめす性質ではなくて塩基が電離してできる水酸イオンがしめす性質です。

したがって、塩基の強さは塩基が電離してできる水酸イオンの濃度によって決まります。

ですから、塩基の濃い溶液でも、わずかしか電離しないものはよく電離するうすい塩基よりも塩基性か弱いことがあります。

たとえば濃いアンモニア水のほうがうすい水酸化ナトリウムの水溶液よりも
塩基性か弱いということがありうるわけです。

このように、酸性の強さは、酸の濃度ではなく水素イオンの濃度によって決まり塩基性の強さは、塩基の濃度ではなく水酸イオンの濃度によってきまります。

いっぽう、水素イオンの濃度と水酸イオンの濃度の間には決まった関係があって、水素イオンの濃度だけで酸の強さも塩基の強さもあらわすことができます。

そのため、酸性や塩基性の強さをしめすのに水素イオン濃度や水素イオン濃度指数pHが使われるのです。


中和と酸・塩基の濃度

酸や塩基の濃度は、中和のときに大切です。
中和は水素イオンと水酸イオンとから、水ができる反応ですから水素イオンや水酸イオンの濃度が大切なように思われます。

しかし、電離しにくい酸で、水素イオンの濃度が小さくても中和によって水素イオンが使われると酸が電離をおこして、つぎからつぎに水素イオンをつくりだします。

同じように、電離しにくい塩基で水酸イオンの濃度が小さくても中和によって水酸イオンが使われると塩基が電離をおこして水酸イオンをつくりだします。

したがって、中和のときに大切なのは水素イオンや水酸イオンをつくりだすもの。いいかえれば、酸や塩基がどれだけあるかということなのです。

そのため、中和のように酸や塩基がどれだけそれぞれの相手を変化させることができるかということを考えるときには酸と塩基そのものの分量や濃度が大切になってくるわけです。

酸・塩基の濃度や強さのはかリ方

酸や塩基の濃度は、中和滴定法によってはかることができます。

酸や塩基の強さは水素イオンの濃度をはかって決めるのであって中和滴定法ではかるわけにはいきません。

そこで、pH試験紙やそのほかのpH測定器を使ってpHとして測定しています。

酸や塩基の強さが、中和滴定法で決められないように酸や塩基の濃度は、水素イオンの濃度を測定しても含めることができません。

このように、酸・塩基の濃度ということと、水素イオンの濃度とは、たいへんに意味が違います。

つまり、濃い酸や塩基がそのまま強い酸や塩基ということにはならないわけです。

酸・塩基の濃度と強さを、間違えないように注意しましょう。



塩の加水分解とは? わかりやすく解説!

塩の加水分解

塩化ナトリウムのように、強酸と強塩基とからできて卜る塩の水溶液はリトマスにたいして中性をしめします。


しかし、塩化アンモニウムのように強酸と弱塩基とからできている塩の水溶液はリトマスにたいして酸性をしめします。

また、酢酸ナトリウムのように弱酸と強塩基とからできている塩の水溶液はリトマスにたいして塩基性をしめします。

たとえば、塩化アンモニウムを純粋な水に溶かした場合を考えてみます。

純粋な水は、ごくわずかですが、上の①式のように電離しています。
しかし、水素イオンと水酸イオンの数が同じなので、中性をしめします。

この水に塩化アンモニウムを溶かすとすぐ電離して②式のようにアンモニウムイオンをつくります。

このアンモニウムイオンは、水が電離してできた水酸イオンとむすびついて
アンモニア水をつくります。
あとには、塩素イオンと水素イオンが残ります。

このため、液の中には水酸イオンが少なくなります。
そうすると、水が電離して水素イオンと水酸イオンをだしますがこれがくりかえされると液の中の水素イオンの割合が多くなります。

つまり、液全体を考えるととうぜん液は酸性をしめすことになります。

酢酸ナトリウムが塩基性をしめすことも、同じように説明できます。
塩が水と作用して、塩基性や酸性をしめすようになることを塩の加水分解といいます。

強酸と強塩基との塩は加水分解せず中性をしめし強酸と弱塩基との塩が加水分解すると酸性をしめします。

また、弱酸と強塩基との塩が加水分解すると塩基性をしめし弱酸と弱塩基との塩が加水分解すると多くの場合中性をしめします。



塩のいろいろなでき方とは? わかりやすく解説!

塩酸に水酸化ナトリウムの水溶液をくわえて中和させると塩として、塩化ナトリウム(食塩)ができることがわかりました。

この塩のでき方について、もう少しくわしく調べてみます。


中和によってできる塩

酸の水素イオンと塩基の水酸イオンがむすびついて中和反応をおこすときに酸の陰イオンと塩基の陽イオンとから塩ができます。

したがって、中和する酸と塩基の種類によってできる塩の種類は違ってきます。

塩酸と水酸化ナトリウムから塩化ナトリウムができるほか硝酸と水酸化カリウムから硝酸カリウムが硫酸と水酸化ナトリウムから硫酸水素ナトリウムや硫酸ナトリウムができます。

これらの塩は、中和のときに残された陽イオンと陰イオンが組みあわさってできるのです。

したがって、塩とは、酸の水素イオンをほかの陽イオンでおきかえた物質、または塩基の水酸イオンをほかの陰イオンでおきかえた物質ということもできます。

塩のいろいろなでき方

私たちの身の周りには、たくさんの塩がみられます。
たとえば、海水中には塩化ナトリウムをはじめ塩化マグネシウム・硫酸マグネシウムなどの塩がふくまれています。

中和のときの塩は残された陽イオンと陰イオンのむすびつきによってできることがわかりました。

ところが、中和でできた物質ではなくて成分や性質が塩とよくにた物がたくさんあります。

このような物質も、広い意味で塩とよんでいます。
この広い意味での塩について、でき方を調べてみましょう。

酸性酸化物と塩基性酸化物

二駿化炭素を水に溶かすと、炭酸ができます。
また、三酸化イオウを水に溶かすと、硫酸ができます。
同じように、酸化物の中には水に溶けて酸になる物がいろいろあります。

このような、水に溶けると酸になる酸化物を、無水酸といいます。

いっぽう、酸化ナトリウムを水に溶かすと水酸化ナトリウムができ酸化カルシウムを水に溶かすと水酸化カルシウムができます。

このような、水に溶けると塩基になる酸化物を、無水塩基といいます。

酸や塩基のかわりに、これらの無水酸や無水塩基を使っても、塩ができます。

たとえば、左の式のように、酸と無水塩基、無水酸と塩基無水酸と無水塩基からも、それぞれ塩ができます。

酸化物のなかには、水に溶けにくいため酸にはならないけれど、②、③式の三酸化イオウと同じはたらきをもっものがあります。

このような酸化物と三酸化イオウのような無水酸を、まとめて酸性酸化物といいます。

酸性酸化物には、三酸化イオウのほかに、二酸化炭素のに・五酸化リン・二酸化ケイ素などがあります。

同じように、①、③式の酸化ナトリウムのようなはたらきをする酸化物や無水塩基を、塩基性酸化物といいます。

これには、酸化ナトリウムのほかに酸化カルシウム・酸化第一鉄・酸化マグネシウムなどがあります。

また、酸化物の中には、酸性酸化物としてはたらいたり塩基性酸化物としてはたらいたりする物質があります。

このような酸化物を、とくに両性酸化物といいます。
酸化アルミニウムはこの例で上の式①は酸性酸化物としてはたらいた例、②式は塩基性酸化物としてはたらいた例です。

このような物には、酸化アルミニウムとのほかに酸化亜鉛・酸化第二鉄などがあります。

このように、塩は、いろいろな酸化物の組みあわせとしてもえられます。

ほとんどの岩石やガラス・セメソトなどはこのような酸化物の組みあわせでできた塩です。


酸と金属

酸は、金属にたいしてもはたらいて反応します。
この場合は、金属の陽イオンと酸の陰イオンが残ります。

たとえば、亜鉛と塩酸の場合には溶液中に、亜鉛イオンと塩素イオンとが残り、銅と硫酸の場合には銅イオンと硫酸イオンが残ります。

これは、酸の水素イオンに、金属の陽イオンがおきかわったということつまり塩ができたことです。

このように、酸と金属からも、いろいろな塩ができます。

塩基と金属

アルミニウムや亜鉛は、水酸化ナトリウムの水溶液に水素を発生してとけます。

このときできるアルミン酸イオンや亜鉛酸イオンはナトリウムイオンといっしょになってアルミン酸ナトリウムや亜鉛酸ナトリウムなどの塩をつくります。

このように、塩基と金属とからも、いろいろな塩ができます。

塩の複分解

複分解は、塩と塩とから新しい塩ができる反応です。
つまり、塩と塩とからも塩ができるのです。

たとえば、上の式のように、炭酸水素アンモニウムと塩化ナトリウムとから、ナトリウムとアンモニウムが入れかわる複分解がおきて、炭酸水素ナトリウムと塩化アンモニウムができます。

この反応は、アンモニアソーダ法によって、炭酸水素ナトリウムをつくるときに使われています。



中和と指示薬・中和滴定法とは? わかりやすく解説!

中和と指示薬

水酸化ナトリウムの水溶液に、塩酸を少しずっくわえていったときに当量の中和がおこったかどうかを調べには指示薬を使います。

このような中和の進み方を調べるときに使う指示薬を中和指示薬といいます。

たとえば、中和指示薬にリトマスを使った場合当量の中和がおこったときには
リトマスの酸性の色(赤)と塩基性の色(青)との中間の色(紫)をしめします。


中和滴定法

酸や塩基の濃度がわからないときには濃度の決まった塩基や酸を使って濃度を調べることができます。

たとえば、酸の濃度がわからないときこの酸をある分量だけとり、これを濃度の決まった塩基で中和指示薬を使って当量の中和をおこせます。

当量の中和がおこったら、塩基を加えるのを止めそれまでに加えた塩基の量を調べます。

このようにして、とった酸の量と、使った塩基の濃度と量から酸の濃度をもとめることができます。

この方法を、中和滴定法といいます。

中和滴定法で中和を調べるときに塩酸と水酸化ナトリウムのように強酸と強塩基の場合には中和指示薬として、リトマス・フェノールフタレイン・メチルオレンジのどれを使ってもかまいません。

しかし、塩酸とアンモニア水のように強酸とか弱塩基の場合や、酢酸と水酸化ナトリウムのように弱酸と強塩塩基の場合は、使える中和指示薬の種類がきまってくるので注意しなければなりません。

たとえば、弱塩基を強酸で中和する場合にはメチルオレンジのように、変色域がpHから7のあいだの指示薬が使われます。

また、弱酸を強塩基で滴定する場合は変色域がpH7~11ぐらいの指示薬を使います。

弱塩基や弱酸を使って、中和滴定をすると中和する点がわかりにくいので、あまり行いません。

中和滴定法では、指示薬を選ぶのが非常に大切でこれを間違えると滴定の結果が違ってくることがあります。

充分注意して、適当な指示薬を選ぶようにしましょう。




中和とは? 中和のしかたとは? わかりやすく解説!

これまで、いろいろな酸や塩基についてその性質や用途を調べてきましたがここでは、酸と塩基がおこす中和反応や中和によってできる塩についてもっとくわしく調べてみましょう。


塩酸と水酸化ナトリウムの中和

うすい塩酸とうすい水酸化ナトリウム水溶液でつぎのような実験をしてみましょう。

実験

まずビーカーにうすい塩酸を10立方センチぐらい入れこれにうすい水酸化ナトリウム水溶液を少しずつくわえていきます。

水酸化ナトリウム水溶液を少し入れるたびに、青色リトマス紙を使ってこの液が酸性か塩基性かを調べます。

この液は、水酸化ナトリウム水溶液をくわえるにしたがってだんだん酸性が弱くなり、ついには、青色リトマス紙では、色がかわらなくなり赤色リトマス紙が青くかわるようになります。

今度は、うすい塩酸を少しずつくわえながら赤色リトマス紙で試します。
赤色リトマス紙を使っても、青色リトマス紙を使っても紙の色がかわらなくなったら液が酸性でも塩基性でもなくなったわけです。

この実験で、塩酸と水酸化ナトリウムの順序を加えても結果は同じです。

このように、酸と塩基が作用しあってお互いの性質を打消しあうような反応を中和反応といいます。

中和反応は、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の場合だけでなくいろいろな酸と塩基のあいだでもおこります。



中和の仕方

中和について考えるまえに、もういちど酸と塩基の性質を思いだしてみましょう。

酸とは、水素イオンをつくりだす物質であり酸性とは、水素イオンがもっている性質です。

塩基とは、電離によって水酸イオンをつくりだす物質であり塩基性とは、水酸イオンのもっている性質です。

塩酸は、水とはたらきあって、左の①式のように、完全に電離して水素イオンと塩素イオンに分かれています。

また、水酸化ナトリウムも、水の中ではほぼ完全に電離して②式のようにナトリウムイオンと水酸イオンとに分かれています。

そして、塩酸に水酸化ナトリウム水溶液をくわえていると塩酸が電離してできている水素イオンと水酸化ナトリウムが電離してできている水酸イオンがむすびついて上の式のように水ができます。

ですから塩酸の中の水素イオンは水酸化ナトリウム水溶液によってできた水酸イオンの数だけ減り溶液の酸性は、だんだん弱められていきます。

もし水酸化ナトリウムの溶液をさらにくわえていくと水素イオンよりも水酸イオンの数のほうが多くなって水素イオンの性質はうちけされ、水酸イオンの性質だけか残ります。

そのため、溶液は塩基性をしめすようになります。

水酸化ナトリウムの溶液に、塩酸を入れていく場合にも水酸イオンと水素イオンの反応によって水ができます。

水酸化ナトリウム水溶液の水酸イオンは塩酸の水素イオンの数だけ減って、塩基性は弱められついには、水素イオンの数のほうが多くなって酸性をしめすようになります。

したがって中和ということは、つぎのようにいいあらわすこともできます。

中和とは、酸と塩基がはたらきあい水素イオンと水酸イオンがむすびついて水にかわるために、お互いの性質を打消しあうことです。

つまり、中和は、酸と塩基とが、直接はたらきあうのではなく酸が電離してできた水素イオンと塩基が電離してできた水酸イオンが反応して水になる変化なのです。

このとき、水素イオソの相手だった酸の陰イオン(塩酸の場合には塩素イオン)と水酸イオソの相手だった塩基の陽イオン(水酸化ナトリウムの場合にはナトリウムイオン)は、そのままなんの変化もせずに、水溶液中に残ります。

つまり、中和が進むにつれて、この溶液は塩化ナトリウム(食塩)の水溶液と同じ成分になっていくわけです。

ですから、塩酸と水酸化ナトリウムの水溶液とを塩素イオンとナトリウムイオンとがちょうど同じ数だけ残るようにまぜあわせると塩化ナトリウムの水溶液になってしまいます。

このように混ぜ合わせることを塩酸と水酸化ナトリウムを当量に使って中和したといいできた塩化ナトリウムを塩といいます。



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