酸性・塩基性の強さと酸・塩基の濃度とは? わかりやすく解説!

酸性・塩基性の強さと、酸・塩基の濃度とは、ぜんぜん別のことです。ここでは酸性・塩基性の強さと、酸・塩基の濃度ということについて、くわしく調べてみましょう。


酸・塩基の濃度

酸・塩基の濃度は、溶液中に溶けている酸・塩基の量によって決まります。したがって、溶液の中に、たくさんの酸がふくまれていればその溶液は濃い酸ということになります。

塩基の場合も、まったく同じです。

つまり、酸・塩基の濃度という場合はふつうの溶液の濃度と同じようにして決められるわけです。

酸性・塩基性の強さ

酸が酸性をしめすのは、酸そのものによるのではなくて酸が電離してできる水素イオンのはたらきによるのです。

したがって、酸性の強さは、水素イオンの濃度によってきまります。
ですから、わずかし電離しない酸の濃い溶液がよく電離する酸のうすい溶液よりも酸性が弱いことがあります。

たとえば、濃い酢酸のほうが、うすい塩酸より酸性か弱いことがあるのです。

また、塩基性は、塩基そのものがしめす性質ではなくて塩基が電離してできる水酸イオンがしめす性質です。

したがって、塩基の強さは塩基が電離してできる水酸イオンの濃度によって決まります。

ですから、塩基の濃い溶液でも、わずかしか電離しないものはよく電離するうすい塩基よりも塩基性か弱いことがあります。

たとえば濃いアンモニア水のほうがうすい水酸化ナトリウムの水溶液よりも
塩基性か弱いということがありうるわけです。

このように、酸性の強さは、酸の濃度ではなく水素イオンの濃度によって決まり塩基性の強さは、塩基の濃度ではなく水酸イオンの濃度によってきまります。

いっぽう、水素イオンの濃度と水酸イオンの濃度の間には決まった関係があって、水素イオンの濃度だけで酸の強さも塩基の強さもあらわすことができます。

そのため、酸性や塩基性の強さをしめすのに水素イオン濃度や水素イオン濃度指数pHが使われるのです。


中和と酸・塩基の濃度

酸や塩基の濃度は、中和のときに大切です。
中和は水素イオンと水酸イオンとから、水ができる反応ですから水素イオンや水酸イオンの濃度が大切なように思われます。

しかし、電離しにくい酸で、水素イオンの濃度が小さくても中和によって水素イオンが使われると酸が電離をおこして、つぎからつぎに水素イオンをつくりだします。

同じように、電離しにくい塩基で水酸イオンの濃度が小さくても中和によって水酸イオンが使われると塩基が電離をおこして水酸イオンをつくりだします。

したがって、中和のときに大切なのは水素イオンや水酸イオンをつくりだすもの。いいかえれば、酸や塩基がどれだけあるかということなのです。

そのため、中和のように酸や塩基がどれだけそれぞれの相手を変化させることができるかということを考えるときには酸と塩基そのものの分量や濃度が大切になってくるわけです。

酸・塩基の濃度や強さのはかリ方

酸や塩基の濃度は、中和滴定法によってはかることができます。

酸や塩基の強さは水素イオンの濃度をはかって決めるのであって中和滴定法ではかるわけにはいきません。

そこで、pH試験紙やそのほかのpH測定器を使ってpHとして測定しています。

酸や塩基の強さが、中和滴定法で決められないように酸や塩基の濃度は、水素イオンの濃度を測定しても含めることができません。

このように、酸・塩基の濃度ということと、水素イオンの濃度とは、たいへんに意味が違います。

つまり、濃い酸や塩基がそのまま強い酸や塩基ということにはならないわけです。

酸・塩基の濃度と強さを、間違えないように注意しましょう。



塩のいろいろなでき方とは? わかりやすく解説!

塩酸に水酸化ナトリウムの水溶液をくわえて中和させると塩として、塩化ナトリウム(食塩)ができることがわかりました。

この塩のでき方について、もう少しくわしく調べてみます。


中和によってできる塩

酸の水素イオンと塩基の水酸イオンがむすびついて中和反応をおこすときに酸の陰イオンと塩基の陽イオンとから塩ができます。

したがって、中和する酸と塩基の種類によってできる塩の種類は違ってきます。

塩酸と水酸化ナトリウムから塩化ナトリウムができるほか硝酸と水酸化カリウムから硝酸カリウムが硫酸と水酸化ナトリウムから硫酸水素ナトリウムや硫酸ナトリウムができます。

これらの塩は、中和のときに残された陽イオンと陰イオンが組みあわさってできるのです。

したがって、塩とは、酸の水素イオンをほかの陽イオンでおきかえた物質、または塩基の水酸イオンをほかの陰イオンでおきかえた物質ということもできます。

塩のいろいろなでき方

私たちの身の周りには、たくさんの塩がみられます。
たとえば、海水中には塩化ナトリウムをはじめ塩化マグネシウム・硫酸マグネシウムなどの塩がふくまれています。

中和のときの塩は残された陽イオンと陰イオンのむすびつきによってできることがわかりました。

ところが、中和でできた物質ではなくて成分や性質が塩とよくにた物がたくさんあります。

このような物質も、広い意味で塩とよんでいます。
この広い意味での塩について、でき方を調べてみましょう。

酸性酸化物と塩基性酸化物

二駿化炭素を水に溶かすと、炭酸ができます。
また、三酸化イオウを水に溶かすと、硫酸ができます。
同じように、酸化物の中には水に溶けて酸になる物がいろいろあります。

このような、水に溶けると酸になる酸化物を、無水酸といいます。

いっぽう、酸化ナトリウムを水に溶かすと水酸化ナトリウムができ酸化カルシウムを水に溶かすと水酸化カルシウムができます。

このような、水に溶けると塩基になる酸化物を、無水塩基といいます。

酸や塩基のかわりに、これらの無水酸や無水塩基を使っても、塩ができます。

たとえば、左の式のように、酸と無水塩基、無水酸と塩基無水酸と無水塩基からも、それぞれ塩ができます。

酸化物のなかには、水に溶けにくいため酸にはならないけれど、②、③式の三酸化イオウと同じはたらきをもっものがあります。

このような酸化物と三酸化イオウのような無水酸を、まとめて酸性酸化物といいます。

酸性酸化物には、三酸化イオウのほかに、二酸化炭素のに・五酸化リン・二酸化ケイ素などがあります。

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同じように、①、③式の酸化ナトリウムのようなはたらきをする酸化物や無水塩基を、塩基性酸化物といいます。

これには、酸化ナトリウムのほかに酸化カルシウム・酸化第一鉄・酸化マグネシウムなどがあります。

また、酸化物の中には、酸性酸化物としてはたらいたり塩基性酸化物としてはたらいたりする物質があります。

このような酸化物を、とくに両性酸化物といいます。
酸化アルミニウムはこの例で上の式①は酸性酸化物としてはたらいた例、②式は塩基性酸化物としてはたらいた例です。

このような物には、酸化アルミニウムとのほかに酸化亜鉛・酸化第二鉄などがあります。

このように、塩は、いろいろな酸化物の組みあわせとしてもえられます。

ほとんどの岩石やガラス・セメソトなどはこのような酸化物の組みあわせでできた塩です。


酸と金属

酸は、金属にたいしてもはたらいて反応します。
この場合は、金属の陽イオンと酸の陰イオンが残ります。

たとえば、亜鉛と塩酸の場合には溶液中に、亜鉛イオンと塩素イオンとが残り、銅と硫酸の場合には銅イオンと硫酸イオンが残ります。

これは、酸の水素イオンに、金属の陽イオンがおきかわったということつまり塩ができたことです。

このように、酸と金属からも、いろいろな塩ができます。

塩基と金属

アルミニウムや亜鉛は、水酸化ナトリウムの水溶液に水素を発生してとけます。

このときできるアルミン酸イオンや亜鉛酸イオンはナトリウムイオンといっしょになってアルミン酸ナトリウムや亜鉛酸ナトリウムなどの塩をつくります。

このように、塩基と金属とからも、いろいろな塩ができます。

塩の複分解

複分解は、塩と塩とから新しい塩ができる反応です。
つまり、塩と塩とからも塩ができるのです。

たとえば、上の式のように、炭酸水素アンモニウムと塩化ナトリウムとから、ナトリウムとアンモニウムが入れかわる複分解がおきて、炭酸水素ナトリウムと塩化アンモニウムができます。

この反応は、アンモニアソーダ法によって、炭酸水素ナトリウムをつくるときに使われています。



中和と指示薬・中和滴定法とは? わかりやすく解説!

中和と指示薬

水酸化ナトリウムの水溶液に、塩酸を少しずっくわえていったときに当量の中和がおこったかどうかを調べには指示薬を使います。

このような中和の進み方を調べるときに使う指示薬を中和指示薬といいます。

たとえば、中和指示薬にリトマスを使った場合当量の中和がおこったときには
リトマスの酸性の色(赤)と塩基性の色(青)との中間の色(紫)をしめします。


中和滴定法

酸や塩基の濃度がわからないときには濃度の決まった塩基や酸を使って濃度を調べることができます。

たとえば、酸の濃度がわからないときこの酸をある分量だけとり、これを濃度の決まった塩基で中和指示薬を使って当量の中和をおこせます。

当量の中和がおこったら、塩基を加えるのを止めそれまでに加えた塩基の量を調べます。

このようにして、とった酸の量と、使った塩基の濃度と量から酸の濃度をもとめることができます。

この方法を、中和滴定法といいます。

中和滴定法で中和を調べるときに塩酸と水酸化ナトリウムのように強酸と強塩基の場合には中和指示薬として、リトマス・フェノールフタレイン・メチルオレンジのどれを使ってもかまいません。

しかし、塩酸とアンモニア水のように強酸とか弱塩基の場合や、酢酸と水酸化ナトリウムのように弱酸と強塩塩基の場合は、使える中和指示薬の種類がきまってくるので注意しなければなりません。

たとえば、弱塩基を強酸で中和する場合にはメチルオレンジのように、変色域がpHから7のあいだの指示薬が使われます。

また、弱酸を強塩基で滴定する場合は変色域がpH7~11ぐらいの指示薬を使います。

弱塩基や弱酸を使って、中和滴定をすると中和する点がわかりにくいので、あまり行いません。

中和滴定法では、指示薬を選ぶのが非常に大切でこれを間違えると滴定の結果が違ってくることがあります。

充分注意して、適当な指示薬を選ぶようにしましょう。




中和とは? 中和のしかたとは? わかりやすく解説!

これまで、いろいろな酸や塩基についてその性質や用途を調べてきましたがここでは、酸と塩基がおこす中和反応や中和によってできる塩についてもっとくわしく調べてみましょう。


塩酸と水酸化ナトリウムの中和

うすい塩酸とうすい水酸化ナトリウム水溶液でつぎのような実験をしてみましょう。

実験

まずビーカーにうすい塩酸を10立方センチぐらい入れこれにうすい水酸化ナトリウム水溶液を少しずつくわえていきます。

水酸化ナトリウム水溶液を少し入れるたびに、青色リトマス紙を使ってこの液が酸性か塩基性かを調べます。

この液は、水酸化ナトリウム水溶液をくわえるにしたがってだんだん酸性が弱くなり、ついには、青色リトマス紙では、色がかわらなくなり赤色リトマス紙が青くかわるようになります。

今度は、うすい塩酸を少しずつくわえながら赤色リトマス紙で試します。
赤色リトマス紙を使っても、青色リトマス紙を使っても紙の色がかわらなくなったら液が酸性でも塩基性でもなくなったわけです。

この実験で、塩酸と水酸化ナトリウムの順序を加えても結果は同じです。

このように、酸と塩基が作用しあってお互いの性質を打消しあうような反応を中和反応といいます。

中和反応は、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の場合だけでなくいろいろな酸と塩基のあいだでもおこります。



中和の仕方

中和について考えるまえに、もういちど酸と塩基の性質を思いだしてみましょう。

酸とは、水素イオンをつくりだす物質であり酸性とは、水素イオンがもっている性質です。

塩基とは、電離によって水酸イオンをつくりだす物質であり塩基性とは、水酸イオンのもっている性質です。

塩酸は、水とはたらきあって、左の①式のように、完全に電離して水素イオンと塩素イオンに分かれています。

また、水酸化ナトリウムも、水の中ではほぼ完全に電離して②式のようにナトリウムイオンと水酸イオンとに分かれています。

そして、塩酸に水酸化ナトリウム水溶液をくわえていると塩酸が電離してできている水素イオンと水酸化ナトリウムが電離してできている水酸イオンがむすびついて上の式のように水ができます。

ですから塩酸の中の水素イオンは水酸化ナトリウム水溶液によってできた水酸イオンの数だけ減り溶液の酸性は、だんだん弱められていきます。

もし水酸化ナトリウムの溶液をさらにくわえていくと水素イオンよりも水酸イオンの数のほうが多くなって水素イオンの性質はうちけされ、水酸イオンの性質だけか残ります。

そのため、溶液は塩基性をしめすようになります。

水酸化ナトリウムの溶液に、塩酸を入れていく場合にも水酸イオンと水素イオンの反応によって水ができます。

水酸化ナトリウム水溶液の水酸イオンは塩酸の水素イオンの数だけ減って、塩基性は弱められついには、水素イオンの数のほうが多くなって酸性をしめすようになります。

したがって中和ということは、つぎのようにいいあらわすこともできます。

中和とは、酸と塩基がはたらきあい水素イオンと水酸イオンがむすびついて水にかわるために、お互いの性質を打消しあうことです。

つまり、中和は、酸と塩基とが、直接はたらきあうのではなく酸が電離してできた水素イオンと塩基が電離してできた水酸イオンが反応して水になる変化なのです。

このとき、水素イオソの相手だった酸の陰イオン(塩酸の場合には塩素イオン)と水酸イオソの相手だった塩基の陽イオン(水酸化ナトリウムの場合にはナトリウムイオン)は、そのままなんの変化もせずに、水溶液中に残ります。

つまり、中和が進むにつれて、この溶液は塩化ナトリウム(食塩)の水溶液と同じ成分になっていくわけです。

ですから、塩酸と水酸化ナトリウムの水溶液とを塩素イオンとナトリウムイオンとがちょうど同じ数だけ残るようにまぜあわせると塩化ナトリウムの水溶液になってしまいます。

このように混ぜ合わせることを塩酸と水酸化ナトリウムを当量に使って中和したといいできた塩化ナトリウムを塩といいます。



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