日本のエレクトロニクスが進歩し始めたのはいつ頃?

科学の進歩

日本の科学者・技術者たちは、エレクトロニクスの世界でどんな新しいものをうみだしたでしょうか。
ここでは、基礎的な分野でとくに著しい貢献をした、2、3の例を挙げておきましょう。

東京大学の後藤英一博士が1955年に発明したパラメトロンというのがあります。

これは、フェライト(酸化鉄に、いろいろな金属の酸化物を結合させたものでつくった環状の磁心を主体にし、これにコイルとコンデンサーをくみあわせたもの)これは増幅作用もありますし、記憶させることもできトランジスタと同じように電子計算機にも利用できます。


また、電話交換機や電信機、工業用制御機などにも広く利用されています。

つぎはエサキダイオードです。

これはソニーの研究員だった江崎玲於奈博士が1959年に発明したダイオードです。

ダイオードというのは、もともとは陰極とプレート(陽極)だけをもつ二極真空管にたいして名づけられた名前なのですがそれと同じはたらきをする半導体をもダイオードと呼ぶようになりました。

いろいろな種類のダイオードがあるのですがエサキダイオードは電圧をあげると、ふつうの場合とは逆に電流が流れにくくなるという特性(負性抵抗)をもっています。

ダイオードもトランジスタと同じように非常に純度の高い半導体(ゲルマニウムとかシリコン)を材料にしてつくります。

そこでふつうは純度を高くすることばかりに目を奪われるのですが江崎博土は逆に、不純物を多くしたらどんな結果がでるか実験してみたのです。

すると驚くべきことに、さきに述べた負性抵抗という特性があらわれたのです。

江崎博士は卜ンネル効果という理論を引用しました。
その説明はたいへん難しくなりますから、ここでは省きますが江崎博士の偉いところは、新しく見つかった減少にたいして立派な理論づけもしたということです。

トランジスタの発明者ショックリー博士もエサキダイオードをほめたたえていたということです。

その応用面ですが、非常に高速のスイッチ作用(回路を切ったりつないだりする作用)をもっていますので、電子計算機の論理回路や記憶回路にくみこむのがいちばんの利用面でしょう。



もう1つソニーの例をあげますが、1968年、山田敏之という29才の研究員がマグネット=ダイオードというすばらしい半導体の開発に成功しました。

これは磁気に感じるダイオード、すなわち磁界のかけかたでその中を通る電流の量を調節することができまた磁極の置き方で電流を流したりせき止めたりすることができるものです。

磁気に感じるダイオードはすでに1880年アメリカの物理学者ニドウィン・ハーバード・ホールが発明していますがソニーのマグネット=ダイオードはこれよりも1000倍も感度が良い上に非常に安くつくることができるということです。

ラジオ・テレビ・電気洗濯機・掃除機・冷蔵庫・ドライヤー・発電機にまで広く利用することができるでしょう。

最後に、松下電器産業の若い研究者グループが1968年に開発した感圧素子というのがあります。

これは圧力によって電流を調節できるダイオードです。
これも、機械的な接点のないスイッチご利用できますし重量計や血圧計、マイクロホンやピックアップにも使えるでしょう。

とにかく、最近ようやく日本のエレクトロニクスが世界のエレクトロニクスになりはじめたことをうなずかせる、うれしい発明の数々です。




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