磁石の謎
電気は、音や光のように、見たり聞いたりすることができないのでいまでも、気味悪く思う人がいます。
まして、昔の人にとって電気の研究といえば、たいへんな勇気がいることでした。
電気と人間との関係は、琥珀からはじまりました。
この宝石を、乾いた布でこすると、ちりのような軽いものを引き付けます。
鉱石の中には、こすらなくても鉄片を引き付けるものがあります。
これは磁鉄鉱です。
琥珀や磁鉄鉱が、ものを引き付けることは古代の人々にとって、たいへん不思議なことでした。
それでも、磁石が南北を指すことから、航海に使う羅針盤に利用していました。
電気手品
アメリカ大陸が発見され、貿易や航海がさかんになるころ昔からの琥珀や磁石の謎も、少しずつ溶けるようになりました。
いまからおよそ370年まえのことです。
イギリスのギルバートは、外国から来たいろいろなものを調べているうちに琥珀だけでなく、ほかにも物を引き付ける物があることを発見しました。
また、地球が1つの大きな磁石になっていることも、明らかにしました。
やがて、硫黄の球をまわし、電気をおこす器械(起電機)が発明されました。
またライデン瓶とよばれる、電気をたくわえるしくみも工夫されました。
電気に触れさせて、人や動物を驚かす、電気手品師という商売さえうまれました。
1752年、アメリカのフランクリンは、大きなたこを上げて雷を調べ「雷は電気の仕業である」ということをはっきりさせたのです。
そして彼は避雷針のしくみを発明しました。
科学の仲間入りをした電気
電気の奇妙な性質に心を奪われ、電気遊びをしていた時代が長く続きました。
そのうちに、紡績機械や蒸気機関が発明され18世紀の終わりには、イギリスに産業革命がおこって物体の力や熱を研究する学問が、急にすすみました。
そして電気の研究も、科学の仲間に入るときが来たのです。
それは、いまから、わずか180年ばかり前のことです。
電気の力をはかる
電気を帯びたもののあいだには、吸いつける力や、跳ね返す力がはたらきます。
科学の研究の第一歩は、電気が持っている、いろいろな性質を確かめることです。
そのつぎは、この力について、どのような関係がありどれほどの大きさがあるかをはかってみることです。
電気を、このように研究することができるようになったとき電気についての学問は、はじめて科学の仲間入りをすることができるのです。
電気を学問として研究する学者が、イギリスやフランスにあらわれてきました。
中でも、とくにすぐれた研究をしたのはフランスの土木技師、クーロンです。
クーロンは、電気の力を詳しくはかりました。
そして、「電気を持った物体どうしが引き付け合う力や、跳ね返す力はその物体のおのおのが持っている電気の量をかけ合わせたものに比例し物体同士の距離に反比例する。
これはニュートンの万有引力と、まったく同じ形であらわすことができる」
と発表しました。
これはクーロンの法則とよばれ、発見されたのは、1785年のことです。
クーロンはまだ、この法則が、磁気にもあてはまることを発見しました。
そのころフランスでは、大革命がはじまろうとしていました。
このような新しい時代の息吹の中で、電気の学問は、科学の仲間入りをしたのです。