磁石でつくられる電流
釘のような軟鉄の棒に、エナメル線をまいて電流れを流すと軟鉄の棒が磁石になります。
それで、この反対に磁石で電気を起こすことができないだろうかと考えたのが、イギリスのファラデーでした。
ファラデーは、つぎのような実験をして発電機の原理である電磁誘導を、1831年に発見しました。
ファラデーの実験
ファラデーのはじめの実験は、つぎのようなものでした。
下の図のように、鉄の輪のまわりに、A・B二組みのコイル(導線を螺旋状にまいた物)をつくりました。
Aのコイルは、スイッチを通して電池にBのコイルは検流計(わずかな電流でも感じるようにした感度のよい電流計)につなぎます。
① スイッチを入れたり、切ったりするとそのたびにコイルに電流が流れて、検流計の針が動く。
② スイッチを入れたときと、切ったときとではコイルBをながれる電流の向きが、反対になる。
このことは、検流計の針の動き方でわかる。
しかし、スイッチを入れたままでは、コイルBには電流が流れない。
この実験の結果を、ファラデーは、つぎのように考えました。
「スイッチを入れるとコイルAに電流が流れ、鉄の輪の中に磁界ができる。
スイッチを切ると、磁界はなくなる。
この磁界は、コイルBの中も通っているのでスイッチを入れたり、切ったりすることによってコイルBの中の磁界もできたりなくなったりする。
しかし、コイルBに電流が流れるのは、コイルの中に磁界があるかないかによるのではなくこの磁界が変化したかしないかによる。
そして、磁界が増えたときと、減ったときとでは反対の向きの電流が流れる」
このファラデーの考え方は、まえの実験の結果を、うまく説明しています。
電磁誘導
ファラデーの実験では、コイルに電流を流して、磁界をつくりました。
しかし、電磁誘導を起こすには磁界を変化させてやればよいのですから、もっとかんたんな磁界をつくる方法に、磁石を使う方法があります。
コイルのそばに磁石をおいて、この磁石を動かしても反対に、磁石をそのままにして、コイルを動かしてもやはり同じようにコイルに電流が流れます。
また、上の図のようにしてコイルに入れる磁石の動かす速さをかえたり、コイルのまき数をかえたりしてみると、コイルに流れる電流がかわり検流計の針の動き方がかわります。
磁石を動かす速さが速いほど、またコイルのまき数が多いほどコイルに大きな電圧が起こり、多くの電流が流れます。
このように、磁界の変化でコイルに電圧ができ電流が流れることを電磁誘導と言い電磁誘導でできた電流を誘導電流と言います。
発電機は、この電磁誘導の原理を利用して電気を起こしています。
いままでの説明から、電磁誘導を起こすための磁界の変化には2つの方法があります。
その1つは、2つのコイルを用いて、1つのコイルの電流を変化させてもう1つのコイルに交わる磁界を変化させる方法でありもう1つは一定の磁界(つくり方は、永久磁石でも電磁石でもよい)のもとでコイルの位置を変化させ、コイルと交わる磁界を変化させる方法です。
電磁誘導でコイルにあらわれる電圧は、磁界の変化に比例します。
このときに流れる電流は誘導電圧に比例し誘導電流が流れる回路の抵抗に反比例します。
レンツの法則
誘導電流の流れる方向は
コイルの中の磁界の変化をさまたげるような方向になります。
これはドイツの物理学者レンツが発見したので、レンツの法則と言います。
フレミングの右手の法則
右手の人さし指・親指・中指がそれぞれ直角になるようにして人さし指が磁界の向き、親指が導線の運動の向きとすれば導線の中には、中指のさす向きに電流が流れます。
このような法則を、フレミングの右手の法則と言います。
いままでは、電磁誘導を受けるものがコイルでしたがこれが1本の導線である場合にはフレミングの右手の法則にしたがった現象が起きます。
この場合、導線に生じた電流と磁界の間には力がはたらきます。
その力は、フレミングの左手の法則によるわけで導線の動く向きと反対向きにはたらきます。
言いかえると、導線の中を流れる電流は運動をさまたげる向きに流れるということができます。
ファラデーの実験では、1つのコイルの電流を変化させるともう1つのコイルには交わっている磁界の変化をさまたげるような向きに電流が流れます。
うず電流
電磁誘導を受けるものがコイルでも導線でもなく銅板であったら、うず電流という現象が起きます。
そこで、銅板のまえで磁石を動かす場合を考えてみましょう。
図のように、S極を左へ動かすとS極がまえのほうにフレミングの右手の法則により、回転するように流れるうず電流が生じます。
このうず電流は磁石の運動方向に対してまえのほうにS極がまた、うしろのほうにN極ができるような流れ方をします。
銅版を動けるようにしておけば、磁石のS極と銅板にできる極とが反発・吸引して銅板は左に動きます。
つまり、銅板が磁石に引かれる力となるわけでこれが誘導電動機の原理です。
実験
電気の実験で、電圧があるかどうかを調べるのに便利な器械に、テスターという検流計があります。
このテスターと模型用の電動機2個を使って、発電機の実験をしてみましょう。
左の図のように電動機2個の回転軸をつないでいっしょに回転するようにします。
まず、電動機に電池をつなぎ、それぞれまわることを確かめておきます。
図のように、1つの電動機の電機子は別に電池につなぎブラシの間にテスターをつなぎます。
テスターのつまみを直流電圧の1ボルトくらいの位置におきます。
別の電動機を電池につないで回転させるとテスターの針が、わずかですが動きます。
もし、反対方向に針が動くときには、テスターのつなぎ方を反対にします。
この実験から、電動機の界磁に電流を流しておき電機子を外からの力でまわすと電圧が起きることがわかります。
発電機のしくみは、このことを応用したものです。