人工衛星が飛び続けるわけ
いちど、秒速約8キロメー卜ルというスピードでうちあげた人工衛星に地球をまわるようになり、もう地表には落ちてきません。
実際には地上何百キロメートルという上空にもわずかな空気があるので、長いあいだには、少しずつスピードが落ちて落下しはじめ、ついには空気の濃いところに突入して燃えてしまいます。
しかし、この空気抵抗がなければ、衛星はいつまでも飛び続けます。
それは衛星の遠心力と地球の引力とがつりあって運動を続けるためです。
いいかえれば、衛星が地球と万万引力で引きあって引力にまかせて運動しているわけです。
この様子は、地上で投げられたボールが落ちてくる途中の状態と同じことです。
自由に落下してくる物体は、引力にまかせて動いていて少しもさからいません。
したがって、その物体の中では、もう地球に引かれているという感じつまり、重さは感じられないはずです。
もし、エレベーターのひもが切れて落ちたら中にいる人は、宙に浮いたように感じます。
このように、あとで述べる人間衛星などの場合衛星の中では人間の体も宙に浮いてしまいまったく重さを感じなくなります。
いわゆる無重量状態がおこるわけです。
人工衛星を回収するには
いっぽう、こうして飛んでいる衛星を地上に帰そうとか衛星から出て、地上に帰ってこようとなるとまた、1つの大きな問題があります。
衛星は、いま述べたように、引力にまかせて飛んでいるのですからそれ以上落ちるというこはありません。
仮に衛星に乗っている人が衛生から飛び降りたとしてもその人自身も衛星と同じスピードで引力とつりあって飛んでいるのですから、下へ落ちるということはなく、衛星とならんで飛び続けるだけです。
これがいわゆる宇宙遊泳ということになるわけです。
そこで、衛星を地上にかえそうとすればその軌道を地面と交わるようにするほかはありません。
つまり、衛星のスピードを少し遅くしてやればよいわけです。
衛星のスピードを遅くするには進行方向にロケットをふかしてブレーキをかける方法しかありません。
こうして、いわゆる逆口ケットを噴射してスピードを落としてやれば衛星の軌道は少しずつ小さくなって地表と交わるようになります。
これが衛星を地上に回収する原理ですがちょうど適当な場所に安全に回収するにはロケットの噴射を弱くして原則することロケットの向きを正しくすることそれに大気の濃いところに突入したときに生じる何千度という高い温度にたえる工夫をすることなどいろいろな難しい問題があります。
しかし、こうしたことがらが解決したおかげで人間衛星なども実現するようになったのです。
多段四季ロケットと人工衛星
ところで素晴らしく速いスピードをあたえて地球のまわりに、重い人工衛星を飛ばせることができたのはいうまでもなく、ロケットの進歩のおかげです。
とくに、三段ロケットとか四段ロケットというような多段式ロケットが工夫されたことが、成功した大きな鍵でした。
というのは、ただ1つのロケットでは、現在でも秒速3~4キロメートル出すのがせいぜいです。
ところが、ロケッ卜を、親・子・孫というようにつぎつぎに重ねた形にしていくとはじめ、親ロケッ卜が火をふいて飛び上がり、それから燃えつきると切り離して、子・孫ロケットの順に火をふくようになります。
このようにしておけば、子・孫のロケットは、それぞれ、その前までのロケットで得た、速さを受け継いでその上に、さらに大きな速さを、得るようになります。
そして最後には、人工衛星になれるような速さにすることができるのです。
しかし、親・子・孫ロケットと、つぎつぎに小さくしなければならずはじめのロケット全体の重さは、最後に衛星になる重さの100倍も1000倍も重いものが必要になります。
ですから、何十キロ、何百キロ、あるいは何トンというような大きな人工衛星をうちあげることは、たいへんな仕事になるわけです。