光学器械
レンズや鏡の性質を利用して、遠くの物を見たり小さな物を大きくして見たり物の長さを測ったりする器械を、光学器械と言います。
光学器械には、顕微鏡・望遠鏡・双眼鏡・カメラ・映写機・測量器械など
いろいろなものがあります。
顕微鏡
凸レンズを1枚しか使わない虫眼鏡では10倍よりずっと大きい倍率をだすことは困難です。
もっと大きな倍率にまで、物を拡大して見るには、顕微鏡を使います。
顕微鏡は、16世紀の終わりごろに考えだされ19世紀に入ってからドイツで著しく進歩しました。
このため、19世紀の終わりごろから、いろいろな病原体がつぎつぎと発見され伝染病をふせぐ方法を考えだすのに、有要な役割りをはたしてきました。
顕微鏡のしくみ
顕微鏡は、違ったはたらきをする2枚のレンズからできています。
しかも、その2枚のレンズは、それぞれ2枚以上のレンズが組みあわさってできているのがふつうです。
ここでは、しくみをかんたんに説明するため1枚ずつのレンズでできているものとして考えをすすめましょう。
調べようとする物の近くにあるのが対物レンズです。
対物レンズは、焦点からわずかに外側にある実物の大きく引き伸ばされた実像をつくります。
目に近いところにあるのが接眼レンズです。
接眼レンズは、虫眼鏡のようにはたらき対物レンズでできた大きな像をさらに大きく引き伸ばして虚像をつくり、これを目で見るのです。
対物レンズは、倒立した実像をつくり接眼レンズは、虫眼鏡としてはたらくので、正立した虚像をつくります。
したがって、顕微鏡全体としては、倒立した虚像になります。
つまり、実物とくらべて上下・左右が反対になっています。
顕微鏡の倍率
顕微鏡の倍率は対物レンズの倍率と接眼レンズの倍率をかけあわせたものになります。
たとえば、対物レンズの倍率が10倍で、接眼レンズの倍率が5倍ならば全体で50倍になります。
対物レンズと接眼レンズの倍率は、それぞれレンズの筒のところに×5とか、×10のように刻んであります。
ふつう、対物レンズの倍率は、3~40倍くらいで最高100倍くらいまで、接眼レンズの倍率は5~15倍くらいで、最高20倍くらいです。
そのため、ふつうの顕微鏡で見られる最高の倍率は、2000倍くらいです。
顕微鏡のいろいろ
顕微鏡には観察するものや、観察のしかたによって、いろいろな種類があります。
生物顕微鏡
植物や動物の細かいしくみやはたらきを観察したり細菌を観察したりするときに使われる、いちばんふつうの顕微鏡です。
金属顕微鏡
金属のしくみや、表面の様子を観察するための顕微鏡です。
金属は光を通さないので上から光をあてて反射させ、その反射光線により観察します。
そのため、接眼レンズと対物レンズの間に半透明の鏡をななめにいれておき
これに横から光をあて、その光を対物レンズを通して金属にあてます。
金属で反射された光は、ふたたび対物レンズを通って像をむすびこれを接眼レンズで大きくしてみます。
偏光顕微鏡
岩石をつくっている鉱物が、どういう鉱物からできているかを観察するための顕微鏡です。
最近では、いろいろな物の結晶を観察するときにも使われています。
光を電磁波とみたとき、ある方向だけに振動している波を、偏光と言います。
太陽や電灯の光は、いろいろな方向に振動している横波がまじっていますがこの光を電気石にあてると電気石は結晶軸の方向に振動する光だけを通すので偏光をとりだすことができます。
このような偏光を通して試料を観測すると、結品の性質がよくわかります。
位相差顕微鏡
無色透明な試料の屈折率の違いを利用して透明な試料に明暗をつけて観察する顕微鏡です。
生物顕微鏡では、試料に色がついていたり光の通り方が場所によって違うため、目で見ることができるのです。
ですから、無色透明な物は見ることができません。
しかし、無色透明な物でも、まわりの物と屈折率が違えばそのちがいを利用して明暗のある像をつくることができます。
この方法を位相差法と言い、これを利用したのが位相差顕微鏡です。
生物顕微鏡で無色透明な試料を観察するときには試料を染料につけて色をつけないと観察できません。
色をつけると生きている物を殺してしまうので生きたまま観察することはできません。
しかし位相差顕微鏡を使うと、無色透明な試料を生きたまま観察できます。
これらの顕微鏡は人間の目に見える光線(可視光線)を使った顕微鏡ですがこのほかに、赤外線を使った赤外線顕微鏡、紫外線を使った紫外線顕微鏡もあります。
赤外線顕微鏡は、半導体の結晶を調べたりするときに使われます。
紫外線顕微鏡は可視光線より波長の短い紫外線を利用するのでほかの顕微鏡よりはっきりした像をえることができます。
また、片目で長い間観察していると目が疲れるので両方の目で見るようにした双限顕微鏡もあります。
電子顕微鏡
ふつうの顕微鏡は、目に見える光を使います。
ですから生物顕微鏡や位相差顕微鏡などを、光学顕微鏡と言います。
光学顕微鏡では、光の波長(0.5ミクロンくらい)よりも小さい物ははっきり見分けることができません。
倍率をあげて2000倍くらいより大きくしても、大きなぼやけた像が見えるだけです。
これは、光が一種の波であるためにおこる、どうしてもさけられない現象です。
目に見える光より波長の短い放射線に、紫外線やエックス線・ガンマ線があります。
しかしエックス線やガンマ線を顕微鏡に使うのに適当なレンズがありません。
紫外線を使った顕微鏡だけが実際に使われていますがそれでも0.01ミクロンより小さい物は、やはり見ることができません。
このため、1920年ごろから、もっと大きな倍率でしかもはっきりした像をつくるため、光のかわりに電子の流れを利用した電子顕微鏡が考えられはじめました。
電子は、-の電気を帯びているので、走っている電子は磁界を通ると曲がります。
この性質を利用して、ちょうど光をガラスのレンズで屈折させるように電磁石を使って電子を集めたり、散らしたりすることができます。
これを、電子レンズと言います。
電子は、空気の中を走ることができないので電子顕微鏡の内側は真空にしてあります。
また、電子レンズには、数万ボルトもの高い電圧がかけてあります。
電子顕微鏡では、像を直接見ることができないので蛍光板にあてて目に見える像をつくったり、写真にうつしてみます。
電子顕微鏡で見ることができる物の大きさは、0.001ミクロンくらいまでです。