表面張力
容器に入っている水の面は、いつでも水平ですが毛布やほこりの積もった床などに落とした水滴は、ほぼ球形になっています。
また、スイレンやイモの葉の上にある水滴も、丸い玉になっています。
水道管からぼたぼた垂れている水や雨粒も空中ではだいたい球形になっています。
また、コップに水を静かに注いでいっぱいにしてからなお水を加えていくと水はこぼれないで、水の山もりができます。
このほかにも、私たちの身のまわりにはこれに似た現象がいろいろ見られますがいずれも水の表面の性質によるのです。
水には、その表面積を、できるだけ小さくしようとする性質があります。
この性質のために、水の表面には、力がはたらいているのです。
水ばかりでなく、どんな液体にも、このような性質があってその裏面に力がはたらいています。
そこで、この力を液体の表面張力と呼んでいます。
この力があるために、液体の表面にはうすい膜があってその膜が、いつも小さく縮もうとしています。
小さな水の粒が球形になろうとするのも、表面張力のためです。
まるい球の形は、体積が一定であるときいちばん小さい表面積をもった形なのです。
コップの水がこぼれでるには、水がいっぱしになったうえにもっと表面が広くならなくてはなりません。
ですから表面張力のほうが、横に流れでる力よりも強いあいだは水の山もりができるのです。
実験1
鉄は水に沈みます。
ところが、油をぬった針を静かに水面におくと水に浮かべることかできます。
針の置き方は、図のように、ろ紙を使うのがよい方法です。
水にぬれない針は、まず自分の重みで、水面の膜をくぼまします。
そのために表面がわずかに広くなるので、表面張力はそのくぼんだ面をもとにもどそうとはたらきます。
この力が、針を支えているのです。
これとまったく同じ原理で、水面を運動する動物がいます。
それは、池などにいるアメンボやミズスマシの仲間です。
ちょうど、水面のうすい膜の上を氷すべりでもしているように走っていきます。
実験2
一方のガラス管が短いU字管を用意して長いガラス管のほうから、静かに水を入れてやります。
短い管が水でいっぱいになっても、なお水を加えると、水はこぼれないで、図のように管の水面が違ったままでつりあっています。
このとき、短い管の水面は、半球状にもりあがっています。
これも、表面張力のはたらきです。
短い管の水面が半球状にもりあがっているので平らな場合よりも、表面が広くなっています。
そのため、表面張力は球面を下げるようにはたらくので長い管の水面はその力につりあう分だけ、高くあがることができるわけです。
実験3
針金で、コの字形のわくをつくり、2本の針金の先を図のように曲げて、それに針金(A)をわたしておきます。
これを石鹸液に入れて静かに鉛直に引き出すとわくにうすい石鹸の膜ができます。
さらに、わくを静かに傾けて、水平に近づけていくと針金が膜でひきあげられるようになります。
この場合、石鹸液にも、表面張力があります。
そのため、石鹸の膜はできるだけ表面積を小さくしようとして針金を内側に引いているのです。
ところが動くのは針金だけですが、針金(A)には重力が別にはたらいているので、その重力よりも大きくなければ動かすことはできません。
わくを傾けると、針金にはたらく重力は図のようにわけて考えられます。
そして、しまいには表面張力のほうが大きくなって針金を引き上げるのです。
走る小舟
表面張力を利用したおもしろいおもちゃがあります。
夏の夕方、えん日などで見かけるセルロイドの小さな船です。
この船のうしろに、しょうのうの小さな白いかたまりを1つつけて水に放すと小舟は生きてでもいるように、いつまでも水面を走りつづけます。
この小舟の動力が、実は表面張力なのです。
しょうのうが水に溶けると、溶けた水の表面張力が小さくなります。
そのために、小舟のまえとうしろでは、表面張力の違いができ小舟は大きな表面張力のはたらく方向へ動きだすのです。
散弾の製造
ウサギや小鳥をうつのに使われる猟銃弾は散弾といって、小さな鉛の玉がたくさん入ったものです。
この鉛の玉の製造には表面張力が上手に利用されています。
はじめ、高温に熱して溶かした液状の鉛を適当な大きさの穴の開いたふるいのようなものから下の水の中へふるい落とします。
穴からふるい落とされた液状の鉛は空中を落ちているあいだに表面張力のはたらきで小さな球形になります。
これがそのまま水におちこんで、急に冷やされ、鉛の玉になるのです。
この場合、ふるいの位置があまりに低すぎるときれいな球形の玉ができません。
シャボン玉
シャボン玉とゴム風船はよく似ていますがこの玉が縮もうとする力はゴム風船ではゴムの弾力ですがシャボン玉では石鹸の膜にはたらく表面張力です。
いま、ここに、大きさも厚さも同じ2つのゴム風船を用意して一方を大きく、他方を小さくふくらませます。
それを図のように、ガラス管の両はしにとりつけます。
すると、大きいほうから、小さいほうのゴム風船に空気が流れて同じ大きさになってつりあいます。
ところが、図のように、シャボン玉で同じような実験をしてみると小さいほうから大きいほうのシャボン玉に空気が流れて小さいほうは、ますます小さくなってしまいます。
この実験からわかることは表面張力はゴムの弾力とは違うということです。
ゴム風船の場合には、大きくふくらんだほうがもとにもどろうとする弾力が強くなります。
しかし、シャボン玉では、面の曲がり方が大きいほどつまり、小さいシャボン玉ほど、表面張力の効果が大きくなるのです。
容器の壁と液体
ガラスの容器に入れられた水の面はガラスの壁の近くでは水平になっていません。
ガラスの壁がきれいで、水に濡れやすくなっているとその面は、図のように、上に曲がっています。
また、もし、ガラスの壁に油をぬって、水に濡れないようにしておくとこんどは反対に下に曲がります。
水がガラスの壁を濡らす場合には、ガラスの壁は水を持ち上げて図の下のような実線でしめす形の水面になります。
これでは、水の表面が広くなるので、表面張力のはたらきによって図の点線の形にして安定を測るのです。
反対にガラスの壁が濡れない場合には、はじめ実線の形をとろうとしますが、これも表面張力のはたらきで、図の点線の形になります。
また水銀は、ガラスを濡らさないのでガラスの容器に入れられた水声にガラスの壁の近くでは、いつでも下に曲がった面になります。