大気の重さ
まえに、大気は地球を約1000キロの厚さにわたってとりまいいていることを説明しました。
ですから、私たちは、ちょうど大気の海の底に住んでいるようなものです。
このため、海面と等しい高さにいる人や物体は1平方センチあたり約1キログラムの力で押されています。
この力を大気の圧力、または、大気圧と呼んでいます。
この割合で計算すると、人間の頭(横断面積約200~300平方センチ)の上には、いつも200~300キログラムもの重さがかかっていることになり。
地球の全表面積をおおう大気の圧力は5000兆トンを超える、たいへんな力になります。
実験
下の図のように、いっぽうが短いU字管を用意して長い方のAから水を注ぎ、短い方のBを指でふさいでガラス管を水でいっぱいにします。
いっぱいになったところで、①の図のようにAをガラス管に空気が入らないようにしっかり指でふさぎBをあけてみます。
あけても、水はこぼれでません。
ところが.Aをふさいでいた指をはなすと、②の図のように水はこぼれでて、Aの水面は、Bの水面と同じ高さC点まで下がります。
①の図で、水がこぼれでないのは、AからCまでにある水の重さによる圧力とBの水面で、その水面を上からおさえつける
力とがつり合っているからです。
Aをふさいでいた指をはなすとAの水面にもBと同じように上からおさえつける力がはたらきます。
この場合、Bの水面にはBを上からおさえる力と反対向きにAC間の水の重さによる圧力とAの水面を上からおさえる力とがはたらくことになります。
したがって、つり合いがとれなくなるので、水がこぼれでるわけです。
この実験で、上からおさえる力が、大気圧と呼ばれるものです。
マクデブルクの半球
大気の圧力は、同じところでは、上下・左右あらゆる方面に等しい大きさではたらいています。
この性質は、水の圧力と似ています。
むかし、ドイツのマクデブルク市の市長にゲーリケという人がいました。
ゲーリケは、直径約40センチの2つの半球を重ねあわせてその中の空気をぬき、それを引き離すのに、どれほど大きな力がいるかを、人々にわからせようとしました。
実際に16頭の馬をつないで、実験したということです。
それで、このような半球をマクデブルクの半球と呼んでいます。
マダデブルクの半球でも、中に空気が入っているとこの空気は広がろうとして、内側から押すことになります。
それで、大気の圧力がまわりから押していてもかんたんに引き離すことができるのです。
ところが半球の中の空気を抜いてしまうと外から大気の圧力が押しているだけで、それを押し返す内部の力はありません。
このため、非常に大きな力でひっぱらないと引き離すことができないのです。
マグデブルグの半球は、丈夫な鋼鉄でできているので中の空気を抜きとってしまっても大気の圧力で押し潰されることはありません。
しかし、ブリキ缶などを用いて同じことをおこなえば缶はすっかり潰されてしまいます。
実験
ドロップや食用油の空き缶を、大気の圧力で潰してみましょう。
まず、缶の中に少量の水を入れて、この水を充分に煮たてます。
すると、缶の中の空気は水蒸気といっしょにほとんど外へ出てしまいます。
つぎに、空き缶を火から遠ざけ、すぐに硬く栓をします。
そして、上から冷たい水をかけてみましょう。
すると、空き缶は冷えて、音を立てて潰れてしまいます。
これは、水蒸気が冷えて水になると、缶の中にはほとんど空気が残っていないので大気の圧力で押し潰されてしまうのです。