船の動力
船の推進器を動かす動力機関としては、はじめ、蒸気機関車と同じように蒸気住復機関が使われました。
これは構造がかんたんで、運転しやすく、故障も少ないので、すぐれた熱機関でした。
しかし、燃料をたくさん必要とし割り合いに大きな場所をとるので近頃では、あまり使われなくなりました。
現在おもに使われているのは、蒸気タービンとディーゼル機関の2つです。
蒸気タービン
船にそなえつけてあるボイラで重油や石炭を燃やして蒸気をつくり、この蒸気をタービンの羽根車にふきつけて回転運動を起こします。
しかし高圧蒸気の流れをそのまま使うと回転数があまりに大きくなってしまうので、歯車で減速したりしています。
また、蒸気タービンは、逆転できないので、逆転タービンを別につける必要があります。
蒸気タービンは、蒸気機関のように往復する部分がないので振動が少なく、しかも、わりあい小型で大きな力を出すことができます。
そのため、大型の客船やタンカーによく使われています。
ディーゼル機関
ディーゼル機関は、シリンダの中で重油を爆発させて、その力をピストンに伝え回転運動にかえるものです。
ディーゼル機関は、ほかの熱機関にくらべると熱が力にかわる割合が高く燃料も少なくてすむので、運転費が安くなります。
また、ガソリンと違って引火点も高いので、安全です。
ディーゼル機関は、蒸気タービンにくらべると、機械の値段が高くやかましい音がするなどの欠点はありますがボイラがいらないので、それだけ場所が少なくてすみます。
また、圧縮空気で始動でき、逆転もかんたんにできるので、たいヘん便利です。
近頃では、大馬力のディーゼル機関がつくられるようになり大型の船にもどんどん使われるようになりました。
また、高速回転のディーゼル機関では発電機をまわして電気を起こし、モーターで推進器をまわす方法があります。
そのほかの機関
小型の漁船やモーターボートでは、かんたんなやきだま機関や回転の速いガソリン機関などが使われます。
また、特別な使い道の船には小型ではあるが数十馬力から数万馬力までの大きな力をだすことのできるガスタービンを使ったものもふります。
スクリューのはたらき
推進器には、いろいろな種類がありますが、スクリューがいちばん多く使われています。
スクリューには、扇風機の羽根のようなものがついていてスクリェーをまわすと、この羽根が水を強くうしろのほうへ押しやります。
そのため、船はまえに進むことができます。
これは、ちょうど、もくねじのはたらきと同じです。
もくねじでは手の力でこれをまわしますが推進器では、機械によってまわしています。
かじのはたらき
かじは、船の進む方向をかえるとき用いられるもので自動車のハンドルと同じはたらきをする大切なものです。
ふつう、スクリェーのすぐうしろに取り付けられています。
かじにはたらく力
船が走っているとき、向きをかえるには船のいちばん高いところにあるブリッジで、だ輪(かじをとるハンドル)をまわします。
すると機械の力で、船尾の底のほうにある大きなかじが左右に動きます。
たとえば、かじを右に傾けると、船の右側の水の流れが、かじの右表面にあたります。
そのため、かじは左のほうに押され、船はその中心を軸として、右のほうへ曲がるのです。
反対に、かじを左に曲げ石と、船は左にまわります。
このように、船の方向をかえるのは、かじの表面にぶつかる水の力ですが
この力は、かじの広さや傾けた角度、かじにあたる水の速さなどが大きいほど大きな力になります。
そして、船の方向を速くかえることができます。
かじの形
かじの形は、船の方向をかえやすいようにすることが大切です。
また、スクリューでかき乱されたた水の流れを都合よく導くような形にすれば、船の速力も増します。
そのためかじには、いろいろな形かわりますが
断面が図のように流線形になっているのが、いちばん多く用いられています。
スクリューが2つある船では、一方のスクリューを前進にまわし他方を後進にまわすと、かじのはたらきと同じように、進む方向がかえられます。