森への誘い
自然というものを思い浮かべるとき、そこには、必ず生活している生物が存在しています。
自然のもっとも大きな特徴の1つに、生物の世界のつりあいがあります。
そこで、実際の自然に例をとって、このつりあいを考えてみましょう。
ここは、中部地方の海抜2000メートルぐらいの山地でモミやツガなどがおもにはえている原生林です。
そそり立つ巨大な木、もともと丈の低い木や若くて小さい木、いちめんにはえる下草やコケ、緑のコケにおおわれて横たわる木、白骨のような枯れた木など、原生林は人工林と違って雑然としています。
そして、全体にうす暗く、ところどころに光がさしこんでいます。
空気は夏の昼でもひんやりしていて、いろいろな小鳥の声を運んできます。
一羽だけの声もあれば、ひと群れが鳴きかわしながら通り過ぎることもあります。
小さな獣が顔を出すこともあります。
またブーンと羽音を立てて、ブヨや力がよってきます。
こんな森の中に立ったら、まず、こんなことを考えてみてください。
「さっきの小鳥は何羽もいっしょだった。
見渡すと、同じような木や草があちこちにあり、この小さな花は森のずっとおくまで続いている。
虫は1匹しか見えないが、きっとほかに仲間がいるのだろう。
私たちが見ているのは動物も植物も、そんな仲間の一部なのだというようなことです。
仲間の集まり
私たちが森林の中で見かける木や草や小鳥や獣や虫たちは、それぞれが同じ仲間(分類上の種)の一員として生活しています。
これを、生物の生活を調べる場合には、個体群とよびます。
草1本、虫1匹が個体です。
生物の生活は、個体群をもとにして成り立っています。
森林だけでなく、草原でも、池や沼、川や海などでも生物は個体群というまとまりをもって生活しています。
生物の世界のつりあいというのは、いろいろの種が何百年、何千年という年月のあいだでは大まかに見て、どの種も極端に増えすぎることもなければ減り過ぎもしない、ということです。
そのようなつりあいは、どんなしくみで保たれているのでしょうか。