蒸気機関が誕生したのはいつ頃? ワットの蒸気機関とは?

科学の進歩

人間の力のかわりに、自然のエネルギーを動力に利用しようという考えがおこりこれは大きな2つの流れとなって発展しました。

1つは電気エネルギーの利用です。
もう1つは、蒸気機関・内燃機関・ジェット機関のような熱機関です。


鉱山で生まれた蒸気機関

17世紀のころイギリスの鉱山では、石炭や鉱石を掘るのに忙しく竪穴は深くなるばかりでした。

そして、そこにたまった水を、どうして早くくみ出すかが大きな間題になっていました。

1698年、トーマス・バリが鉱山の水あげに実際に使える蒸気機関を発明しました。

このセーバリの蒸気機関に、ニューロンが改良を加えついに76馬力という大きな蒸気機関をつくりました。

これがどんなにすばらしい発明であるかは人間の力とくらべてみると、よくわかります。

左の表はだいたいのところですが人間や馬の力などは、蒸気機関とはくらべものになりません。
この蒸気機関をさらに改良して、鉱山の水あげだけでなくどこの工場でも使えるようにしたのが、ジェームズ・ワットでした。

ワットの発明を生んだもの

ワットは辛抱強い、熱心な発明家でした。

そしてシリンダーの片側で、蒸気を冷やしたときだけ仕事をするニューコメン機関から出発して回転式蒸気機関を発明したのは確かにすばらしいことでした。

しかし、ワットがどんなに頭をしぼってももしシリンダーの内側を平らに削ることができなかったら蒸気がもれてどうにもならなかったでしょう。

都合のよいことに、ワットの発明より先に中ぐり盤が発明されていました。

1769年、ジョン=スミートンが、水車で動く中ぐり盤を発明していたのです。
しかし、スミートンの中ぐり盤の削り方は、ずいぶん荒っぽいものでした。

ときには、シリンダーとピストンとのあいだに小指ほどの隙間ができることもあったのでその隙間に紙や古ぼうしなどをを詰めて蒸気がもれるのをふせぐという有様でした。

そこへあらわれたのが、ジョン=ウイルキンスンの中ぐり盤です。
ウイルキンスンは、ずばぬけた発明の天才で1775年、ワットの注文で精密なシリンダーを削ることができる中ぐり盤をつくりあげました。

ウイルキンスンはこのほかに蒸気ハンマー・圧延機など、たくさんの発明をしました。

ワットの発明

ワットの発明でいちばん大切なことは、つぎ2つです。
1つは、復水器をシリンダーの外側に取り付けてシリンダーの中で蒸気を冷やさないようにしたことです。

ニューコメンの機関では、シリンダーに蒸気をおくりそれを水で冷やして圧力を下げ、大気圧で、ピストンをはたらかせていました。

これは、シリンダーを温めたり、冷やしたりするために、燃料をたくさん使いました。

もう1つは、ワットの蒸気機関ではピストンの両側にかわるがわる、蒸気がおくりこまれることです。
そして、大気圧ではなく、蒸気の圧カでピストンを動かしピストンの往復運動を、回転運動にかえるようにしたことです。

この回転式蒸気機関は、たちまちイギリスから全世界に広がり産業革命がおこる大きな力の1つになったのです。



蒸気タービンの発明

蒸気が噴き出す力を利用して、羽根車をまわす蒸気タービンの考えはずっと前からありました。

紀元前210年ごろ、アレクサンドリアのヘロンが蒸気の力でまわる汽力球を考えました。
また16世紀に、イタリアのブランカは図のようなタービンを考えました。

しかし、実際に使えるタービンは中々できませんでした。
蒸気はたいへん速い速度で流れるので、蒸気タービンの羽根車や軸は高速回転にたえられるようにつくっておかなければ壊れてしまうのです。

スウェーデンのラバルは1882年、スウェーデンの質のよい鋼と精密な工作機械を利用してはじめて蒸気タービンをつくりましたが、回転が速すぎて牛乳からバターをとる、遠心分離機ぐらいにしか使えませんでした。

火力発電所や船などに使う大きなタービンをはじめてつくったのはイギリスのパーソンズです。

やがて19世紀の半ばをすぎると、ワットの蒸気機関で動かしていた全世界の工場は電気で動くようになりました。
また、船や火力発電所では蒸気タービンがワットの往復運動の蒸気機関にとってかわりました。

蒸気タービンの時代

蒸気機関で燃やされた石炭のエネルギーのうち実際に仕事に使われるのは、割り合いに少ないものです。
ワットが改良したものでも、わずか5パーセントぐらいのものでした。

これにくらべると、蒸気タービンはずっと能率のよいものです。
ふつう火力発電所などで使われているものは、20パーセント以上にもなっています。

ですから、大馬力の蒸気機関に、みな蒸気タービンにかわってきました。

機関車も電化されています。

機関車は復水器を取り付けることができないので燃やした石炭のエネルギーの5.5パーセントぐらいしか仕事に使われません。

しかし、同じ量の石炭を火力発電所で燃やして、蒸気タービンをまわし、電気をおこして、それで電気機関車を動かしてみると仕事にかわるエネルギーが10パーセント以上にもなります。

鉄道が、だんだん電化されるのは、そのためです。




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