水銀温度計
水銀は、純粋な物がつくりやすいこと膨張のしかたが温度によってあまりかわらないこと、比熱が小さいこと熱が伝わりやすいこと、あまり蒸発しないことなど温度計に使うのにたいへん都合のよい性質をたくさんもっています。
水銀は、零下39℃で凍るので、それ以下の温度は測れません。
また、150℃以上になると、中を真空にしたふつうの水銀温度計では水銀の蒸発がさかんになるので、これ以上の温度では使えなくなります。
しかし、水銀の上部に窒素などを高い圧力で閉じ込めて水銀の蒸発や沸騰をさまたげると、700℃ぐらいまで測れるものがつくれます。
このような温度計には、石英ガラスのような丈夫なガラスを使わなければなりません。
アルコール温度計
アルコール温度計は、低い温度を測るときに便利です。
アルコールは、零下117℃までは凍りませんから、水銀温度計よりずっと低い温度が測れます。
しかし、アルコールはそのままでは、60℃以上の温度は測れません。
しかしアルコールの上に気体を閉じ込めておくと、100℃ぐらいまで測れるものがつくれます。
アルコールは、水銀よりも10倍以上も膨張率が大きいので管球の大きさとめもりの長さを水銀温度計と同じにしておけば毛管を太くして見やすくなります。
そのかわり、管球だけを熱すると正しい温度がわかりません。
アルコール温度計よりも低い温度を測るのにはアルコールのかわりにペンタンという液体を使った温度計がつくられています。
これは、零下200℃ぐらいまで使えます。
体温計
私たちの体温を測るのに便利なようにつくられた水銀温度計が体温計です。
体温計は、ふつう脇の下にはさんで使いますが、外にとりだして見るとき体温で膨張していた水銀が、冷えて下がってしまわないようになっています。
そのため、体温計の水銀だめのすぐ上の毛管が、特別に細くしてあります。
体温計を体にあてると水銀は膨張して細くなったところを通り抜けて毛管をのぼっていきます。
しかし、体から離すと、水銀だめの水銀が冷えて縮み、毛管の中の水銀は下がろうとします。
ところが、縮むときには、下の水銀が上の水銀をひっぱる力は弱いので管の細いところが通れなくなり、管の中の水銀は切れてしまいます。
それで体温をしめしたままで、止まってしまいます。この細いところを留点と言います。
体温計には、1分計・5分計とか、測る時間がわけてありますが体温を測るときには、1分計でも5分以上かけて測ったほうがよいでしょう。
また、体温を測っているあいだは、物を食べたり、動きまわったりしてはいけません。
最高温度計
1日の気温のうち、いちばん高い温度を知りたいときなどに最高温度をわかるようにした温度計が、最高温度計です。
体温計も最高温度計の1つで、気温を測る最高温度計にも同じしくみのものがあります。
ふつうの最高温度計は、下の図のようになっています。
毛管の中に、小さな鉄片(指標)と水銀が入っています。
この鉄片を、水銀の先につけておくと、温度が上がるときに水銀が膨張して鉄片を押し動かします。
温度が下がるときは水銀だけが縮んで鉄片は取り残されるので鉄片のはしのめもりを見れば、最高温度がわかります。
また、あらたに最高温度を測るときには磁石で鉄片を動かして水銀の先につけておきます。
最低温度計
最低温度を測るにはアルコール温度計を使います。
最低温度計には、両はしをまるくした細いガラス棒(指標)が毛管のアルコールの中に入っています。
ガラス棒のいっぽうのはしを、アルコールの表面にくっつけておき、水平にして使います。
温度が下がってアルコールが縮むとガラス棒はアルコールの表面にひっぱられて動きます。
温度が上がるときは、ガラス棒を、そのままおいてアルコールだけが膨張するので、ガラス棒のはしのめもりを見れば最低温度がわかります。
あらたに最低温度を測るときには温度計を傾けてガラス棒のはしをアルコールの表面にくっつけます。
気体温度計
気体は、圧力が、一定ならば、温度が上がると体積が増えるので体積を測ってその気体の温度をもとめることができます。
このようなしくみの温度計を、定圧気体温度計と言います。
また、気体は体積を一定にしておくと、温度が上がれば圧力が増えるので圧力を測って温度を知ることができます。
このしくみの温度計を定積気体温度計と言います。
しくみも定圧気体温度計よりかんたんで、気体の温度が一度上がったときの体積や圧力の増え方は、液体よりも大きくしかも、膨張の割合が一定なので、正確に温度を測ることができます。
定積気体温度計は直径3センチ、長さ8センチぐらいのガラスなどでつくった円筒に細い管をつけて中に気体を入れ、
それに、圧力を測るための水銀が入ったゴム管とガラス管をつけたものです。
気体温度計では温度計に使っている入れ物が溶けてしまわないかぎり高い温度を測ることができます。
高い温度を測るときには、白金とか磁器を使ってつくります。
また、中に入れた気体が温度が下がって液体にならないかぎり低い温度を測ることができます。
ガリレオの温度計
温度計をはじめてつくったのは、ガリレオ・ガリレイです。
よく乾いた、小さなフラスコに、25センチぐらいの長さのガラス管を通したコルクかゴム栓をつけます。
これを、逆さまにして、水を入れたビーカーの中にガラス管の先を入れます。
フラスコを手で握ってあたためると、ガラス管の先から泡が出てきます。
手を離してしばらくすると、ガラス管の中を水がのぼってきます。
気温が上がると、ガラス管の中の水柱は上にのぼります。
それでガラス管の中の水柱の高さの変化で、温度の変化を知ることができます。
これを、ガリレオの温度計、または空気温度計と言います。
この温度計は、かんたんにつくることができそのうえ、たいへん敏感で、いろいろ役に立ちます。
しかしこの温度計は、温度がかわらなくても気圧がかわると水柱の高さがかわってしまいます。
この欠点をなくしたのが、ガラス管の中に水銀やアルコールを閉じ込めてつくった温度計で気圧の影響を受けません。