電気を使うメッキのことはわかりましたが電気を使わないでメッキする方法があります。
それには、金属イオンの性質をよく理解しなければなりません。
これから、金属イオンの性質と、その利用法などについて、考えることにしましょう。
電気分解によらないメッキ
3パーセントぐらいの硫酸銅の水溶液に、よくみがいた鉄くぎをつるしてしばらくそのままにしておくと、鉄くぎの表面が赤みを帯び金属の銅がくっついたことがわかります。
また、2パーセントの硝酸銀の水溶液によくみがいた銅線をつるしておくと、銅の表面に銀が析出します。
これらのことは、次のように考えるとうまく説明することができます。
硫酸銀の水溶液には、銀イオンがふくまれています。
これに銅を入れると、銅は電子を失って銅イオンとなって溶けだし溶液中の銀イオンは電子を受け取り、金属の表面につくのです。
その証拠には、長くおいた駅の色を見るとうすく銅イオンの青い色がついています。
したがって、銀よりも銅が、銅よりも鉄がイオンになりやすいことになります。
金属と水や酸
ナトリウムを水に入れると水素を発生して水酸化ナトリウムの水溶液ができますが、このことも同じように考えてよいのです。
水には水が電離して生じた水素イオンがわずかながらあります。
これにナトリウムを入れるとナトリウムのほうがイオンになりやすいためナトリウムイオンとなって溶け込み水素イオンは電子を受け取って水素原子となり、さらに、水素分子となって水素の気体を生じるわけです。
亜鉛はナトリウムイオンになりにくいため亜鉛に水を入れただけでは、水素がほとんどでません。
しかし、塩酸や硫酸のような酸だと、水素イオンが液中にたくさんあります。
亜鉛は水素より少しばかりイオンになりやすいので酸の中に浸すと、たくさんある水素イオンとの作用によって、水素を生じるわけです。
銅や銀の金属は、水の中はもちろん塩酸や硫酸の中に浸しても水素を発生しません。
このことは、銅や銀が水素イオンよりもイオンになりにくいためであると考えれげよいことになります。
イオン化列
イタリアのボルタは、多くの金属についてこのようなイオンになりやすさを研究し、1800年にその成果を発表しました。
下の表は、主な金属について、イオンになりやすいものから順に左から右にならべたものです。
これは、イオン化列とよばれています。
金属イオンになりやすいかどうかを水素を基準にして、0としてあらわした数値もこのなかにしめしておきました。
+の記号のついたものが水素よりイオンになりやすく-の記号のついたものがイオンになりにくいわけです。
この表で、+の数値の大きい金属は電気分解で金属メッキをするのがたいへんむずかしくなります。