ふつう、動植物体から、いろいろな方法でとりだされ水に溶けず有機溶剤にかなりよく溶けるような性質をもった成分を、脂肪といいます。
脂肪と油脂
せまい意味で、脂肪というのはバターや牛脂(ヘット)、豚脂(ラード)のように、常温で固体のものをさします。
そして、ゴマ油・魚油のように常温で液体のものを脂肪油、または油として、脂肪と区別しています。
しかし、この区別は土地や季節によってその境目がはっきりしないので、あまりこだわる心要はありません。
ふつう、この両方をあわせて脂肪といっていますが正しくは、油脂とよばれます。
ここでも、脂肪というのは油脂の意味で使うことにします。
脂肪は、とりだされる材料によっていろいろな名前がつけられますが大きく分けると、つぎの2つになります。
植物性脂肪
植物からとりだされる脂肪を、植物性脂肪といいます。
植物では、脂肪はおもに種子にたくわえられています。
植物性脂肪の多くは、ふつう常温で液体になっています。
しかし、うすい層にして、空気中にさらしておくと酸素を吸収して樹脂に似た固体に変化する性質をもつものもあります。
この性質の強さによって乾性油、不乾性油、半乾性油に分けられます。
また、まれに常温で固体になっている固体油もあります。
乾性油
アマニ油・エノ油・トウ油などは、乾性油の代表的なもので空気中にさらすと酸素によって酸化され、3~6日で固体にかわります。
不乾性油
ツバキ油・オリーブ油・ラッカセイ油・ヒマシ油などは乾性油のように酸化される性質をもたず、長く液体の状態をたもっています。
半乾性油 ゴマ油・ナタネ油・ぬか油・大豆油などは乾性油と不乾性油の中間の性質をもち、半乾性油といわれます。
しかし、大豆油などは半乾性油でも乾性油にちかく酸素によって酸化され、弱い皮まくをつくります。
固体油
植物性脂肪のなかで、固体油に入るものにはヤシ油・カカオ油・木口ウなどがあります。
植物性脂肪の取り出し方
植物性脂肪をとりだす方法には、圧搾法・抽出法などがあります。
圧搾方は、大豆ー胡麻ーナタネー落花生などから油をとるときに用いられます。
これは、図のように、これらの種子を粉のように細かく砕いて水蒸気で蒸し圧搾器で押し絞って、油をとる方法です。
抽出法というのは、大豆やフタの実のようにふくまれている脂肪の量が少ない原料とか、ほかの方法で脂肪をとったかすから残っている脂肪をとりだすときなどに使われる方法です。
これは、エーテルーベンゼン・揮発油などの溶媒に細かく砕いた原料を入れる方法で、原料中の脂肪が溶媒に溶けたします。
そのあとで、蒸発しやすいこれらの溶媒を飛ばしてしまうとあとに脂肪が残るわけです。
動物性脂肪
動物では、脂肪はおもに、皮下脂肪貯蔵組織という部分ときには肝臓などにたくわえられています。
ふつう、陸産動物脂肪と海産動物脂肪の2つに分けられます。しかし、これらの性質は、かなり違っています。
陸産動物脂肪
おもに、ほ乳類の動物からとりだされます。
多くのものは、常温で固体です。また、空気中で酸化されにくい性質をもっています。
陸産動物脂肪には牛脂・豚脂・羊脂・バター・さなぎ油などがあります。
海産動物脂肪
常温では液体で、酸化されやすい脂肪です。
このままでは使いませんが、硬化油の原料として、多く用いられます。
海産動物脂肪は、魚油・肝油・海じゅう油に分けられます。
魚油には、イワシ油・ニシン油、肝油には、タラ肝油、サメ肝油、海じゅう油には鯨油などがあります。
肝油には、ビタミンAやDが多くふくまれています。
動物性脂肪のとりだし方
おもに用いられる方法は、いりとり法と、にとり法の2つです。
牛や豚のあぶら身を、なべで温めると、油が溶けてでてきます。
これはみなさんもよく台所で観察したことがあるでしょう。
いりとり法は、このように原料を熱して脂肪のまわりの組織を怖し脂肪を溶かし出す方法です。
いりとり法は、牛脂・豚脂などをとるときに使われます。
これにたいして、にとり法は、原料に水をくわえて煮だし水の上に浮いてくる脂肪をとる方法で、魚油をとるのに用いられます。