腐敗とは? 脂肪とたんぱく質の腐敗とは? わかりやすく解説!

腐敗というのは、発酵と同じように、微生物のはたらきによってもっとくわしくいえば、微生物のもつ酵素のはたらきによって物質が変化することです。

しかし、その変化が、有害なものや、いやなにおいを発するなどいっぱん的に品質を悪くする方向に向かっておこなわれる場合を、とくに腐敗といいます。


パスツールの実験

腐敗が、そこに繁殖する微生物の生活の営みによっておこることをはじめて証明したのも、やはりパスツールです。

パスツールは、肉の汁をフラスコに入れたのちフラスコのくびを細く曲げて引きのばしたものをいったんよく煮沸しておいてからほうっておいたものは腐敗しないがくびを引きのばさないでほうっておいたものはやがて腐敗していくことをしめしました。

これは、空中のごみといっしよに細菌がフラスコの中におちて繁殖したからです。
つまり、細長く、まがりくねったくびをもつフラスコの中にはこのような空気中の細菌をふくんだごみがおちにくいからです。

もちろん顕微鏡でみれば、腐敗した肉の汁には細菌がたくさん観察されます。

腐敗のときの変化

ミカンなどを、温かい部屋においておくとよく皮がべとべとになって、くずれるようになります。

それは微生物が繁殖し、それがつくりだす酵素のはたらきでミカンの皮をつくっているペクチン質などがおかされていくからです。

生のジャガイモなどが腐るのも同じ理屈です。
このとき、べっとりした、ねばっこいものが同時にできることがあります。

これはちょうど、納豆の場合と同じことで微生物のはたらきによって、水に溶けてねばっこい性質をしめすような物質(おもに、たくさんの糖からできている大きな分子からなるもの)がつくりだされたからです。

腐敗と納豆

納豆の場合には、納豆菌という一種の細菌が蒸した大豆に繁殖して大豆のたんぱく質を分解すると同時に納豆菌特有の粘質物を分泌してできたものです。

しかし、納豆はこれによって、味も風味もよくなるものですから別に腐敗とはいいません。

脂肪の腐敗

脂肪、とくに魚の油は長くほうっておくと生ぐさい嫌なにおいをはなつようになります。

この変化は、空気中で、酸素や日光のはたらきでもゆっくりおこりますが、微生物の繁殖によって非常に早くおこります。

これは、脂肪の中にふくまれる脂肪酸のうちのことに不飽和脂肪酸といって、いろいろの反応性にとむ脂肪酸が酸化されてアルデヒドのような物質にかわるからです。

また、このような、酸化の途中で脂肪酸は、分子が多数結合しあって、かっ色に着色したりかたまったりすることもあります。

微生物のはたらきによって、脂肪が分解するときはおもに微生物のもつリポキシダーゼという不飽和脂肪酸を酸化する酵素が関係しているのです。

このような酸化は、ビタミンEなどの酸化防止剤を添加することによってもある程度ふせぐことができます。



たんぱく質の腐敗

よく、くさった魚肉などで中毒することがあります。
これは魚肉の中のたんぱく質が、微生物によって分解されアミノ酸を生じこれがさらに変化をうけて、いろいろ有毒な物質を生じるからです。

アミノ酸から二酸化炭素がとれてできるいろいろの物質は激しい生理作用をもつものが多くその中にはプトレシン・カダペリンのような猛毒のあるものが知られています。

また、たんぱく質がくさるといやなにおいをだしますがこれは、アミノ酸が分解してできる。

硫化水素・メルカプタン・イソドール・スカトール・アソモニアなどによるのです。
たまごが腐ると黒くなりますが、これは硫化水素と鉄分が反応して硫化鉄ができるからです。

食物の保存

食物が腐敗する一つの原因は、細菌・酵母・カビなどの微生物が繁殖しこれらのもついろいろな酵素によって、食品の成分が変化をうけるからです。

それで、微生物が繁殖しにくいような条件にしてやればなかなか腐敗しないことになります。

このためには、いろいろな工夫がなされています。

たとえば、冷凍にしたり、冷蔵庫に入れたりして低い温度で食物をたもっておく方法が、よく使われます。
これは、微生物が、低い温度では繁殖しにくいからです。

このほか、微生物が、よく繁殖するためには適当な水分が必要です。

それで、食品をよく乾燥して水分を少なくしておくこともよい方法です。
乾物・あるいは乾燥食品というのがこれです。

また、防腐剤として、わりあい人体に害が少なくて微生物の発育をおさえ、これを殺すような薬品をくわえる方法も使われています。
防腐剤には、サリチル酸エステルや、抗生物質などが用いられます。

缶詰や瓶詰のようにして、あらかじめ、加熱して殺菌したあと食物を外気から遮断して微生物が入らないようにする方法もあります。

また、特別な微生物を除いては、非常に高い濃度の食塩や砂糖の溶液酸性の強い液中では、繁殖しにくいので、塩漬けや砂糖づけにしたり酢につけたりして保存することもあります。

ミルクやビール・清酒などの滅菌操作としては、火入れをおこないます。
これは微生物は、ある温度以上では、死んでしまうからです。

これは、パスツールによって有害な微生物を殺して腐敗をふせぐ方法として発見されたものですから今日でも、パスツーリゼイションとよんでいます。

残った食物でも、ときどき煮ておくとかなり長いあいだ保存できることは、家庭でもよく知られ、行われていることです。




味噌・醤油発酵とは? わかりやすく解説!

味噌・醤油発酵

味噌も醤油も、大豆や小麦、米などに、カビを繁殖させそのカビのだす酵素のはたらきによって発酵させた調味料です。


醤油

蒸した大豆といった小麦をまぜたものに、醤油種こうじ菌を繁殖させまず醤油こうじをつくります。

このこうじは、強力なでんぷん分解酵素やたんぱく質分解酵素をふくんでいます。
この醤油こうじに、18パーセントの食塩水を同量くわえてよくこねあわせておくと、醤油もろみができます。

このようにしてつくった、醤油もろみは一年以上も、ときどきかきまぜながらほうっておきます。

そのあいだに、こうじの中にふくまれる酵素のはたらきによってでんぷんからは糖ができて甘みをましまた、たんぱく質からはペプチドやアミノ酸ができて、うまみをまします。

このような分解作用は、濃い食塩水の中でも生きていけるような特別な微生物のはたらきによっても、助けられます。

このようにして、充分に分解のすすんだ熟成したもろみをしぼると、生醤油ができます。
これを火入れして、殺菌し樽や瓶などにつめて、市場へだすのです。

味噌も、そのつくり方は、醤油とだいたい同じですがこうじに、大豆と小麦のほかに、米などをくわえて甘みを強くし仕こみのとき、水分を少なくするのです。醤油にくらべると熟成の期間は、そう長くありません。

チーズ

チーズは、牛乳に酵素をはたらかせ、たんぱく質を分解した食品です。

牛乳は、多量のたんぱく質(カゼインなど)や、脂肪・糖分をふくんでいます。
この牛乳に、レンネットという酵素をくわえるとカゼインは水に溶けなくなって、脂肪といっしょに沈殿します。

これをカードといいます。

これを布でこして、水分を分離したのちそのままか、いちど加熱し、さらに加圧して一定の形にします。

これに細菌やカビ(アオカビ)をはたらかせるとしだいにその中のたんぱく質が分解し、風味とうまみをもったものにかわります。
これがチーズです。




アルコール発酵とは? わかりやすく解説!

アルコール発酵

アルコールをつくる目的で、でんぷんや糖蜜などの糖分を微生物のはたらきでアルコールにかえる発酵のことですがその目的によって、原料や仕こみの方法などが、いろいろと違ってきます。


清酒(日本酒)

清酒をつくるには、まず、よく精白した白米にアスペルギルス=オリジエというカビを繁殖させた米こうじというものをつくります。

この場合、白米は米の外側に多いたんぱく質を、できるだけ取り除いておきます。

このようにしてつくったこうじにはカビによってつくられたいろいろな種類の酵素(アミラーゼーマルターゼなど)がたくさんふくまれています。

このこうじと蒸米(蒸した米)、酵母、適当な量の水とをまぜあわせておくと蒸米のでんぷんはしだいに分解されて、麦芽糖などの糖類にかわります。

こうじによって分解された糖類は酵母の中にとりこまれて、いろいろな酵素の作用によりついに二酸化炭素とアルコールにまで分解されてしまいます。

こうしてできたものを酒母といいます。
酒母に蒸米・水をくわえて、さらに発酵をつづけます。

アルコール濃度が15パーセントぐらいになると酵母の発育はとまり、発酵もだいたい終わりになります。
こうしてできたものを熟成もろみといいますがこれをしぼると、清酒ができます。

清酒は保存のために、火入れをし適当なアルコール濃度に調節して市販清酒ができあがります。

日本酒以外の酒、たとえばビールの場合には米こうじのかわりに麦芽を使います。

麦芽の中には、強力なアミラーゼがふくまれています。

このアミラーゼで、麦芽の中のでんぷんやいっしょにくわえたでんぷんを糖化したのちさらにビール酵母をくわえて発酵させます。

また、このとき、風味をたかめる目的でホップをくわえます。

原料として糖蜜のようなものや、ブドウの果汁などを用いた場合はアミラーゼででんぷんを麦芽糖にかえる
いわゆる糖化の工程がはぶけるので酵母で、ただちに発酵させます。

このあと、蒸留して、アルコールなどのき発分を集めたものにはラム酒などがあります。

焼酎は、穀類やイモ類を糖化し、発酵させたあと揮発分を蒸留してつくったものです。



実験

ブドウの果実を、水であまり洗わないで、よくすりつぶしこれを、皮ごと、ビール瓶のようなものに3分の2ほどつめておきます。

数日経つと瓶の中で、さかんに泡がでてくるのが観察されます。
このときゴム栓の中央に、細いガラス管を通したものをとりつけて栓をします。

ガラス管のはしは、瓶の中の液面より少し上にはなしておきます。
つぎに、このガラス管の上のはしに、ゴム管をつなぎこのゴム管のいっぽうを別なガラス管につないでおきます。

このようにしたガラス管を新しくつくった水酸化バリウム(消石灰の水溶液でもよい)の水溶液に近づけるか少しつけるようにします。

すると、水酸化バリウムの水溶液が、白い膜に包まれたり中に白い沈殿ができたりするのが観察されます。

これは、ブドウの実についている酵素によってブドウの中の糖分が分解され、発酵して二酸化炭素ができた証拠です。

つまり、ブドウの中の糖分が一部発酵してアルコールと二酸化炭素になったのです。

水酸化バリウムは、二酸化炭素にあうと水に溶けない白色の炭酸バリウムを生じるので、二酸化炭素の存在を確かめるのに使われます。




発酵とは? 発酵に使われる材料とは? わかりやすく解説!

ブドウのしぼり汁を、かめに入れて密閉し、そのままにしておくとしだいに泡がではじめて、ぶどう酒のにおいがするアルコール分ができます。

これが昔から知られていた、もっともかんたんな発酵によってアルコール飲料をつくる例です。


また、食物をほうっておくと、ことに夏のあついときなどはべとべとしたり、いやなにおいや味をもつようになります。

これは食物が腐敗したのです。

発酵も腐敗も、微生物のはたらきによっておこる物質の変化ですが発酵はどちらかというと、ある原料から有用な目的で決まった物質を集めようとしておこなわれるものです。

これにたいして、腐敗は、品質や外観が悪くなって値打ちが下がるような方向に、食物などが変化した場合をいいます。

つまり発酵は、私たちの生活に役立ちますが、腐敗はこの反対なのです。

発酵

人間は、大昔から、それぞれの地方で、果物や麦や米などでんぷんや糖分の多い材料を使って、アルコール飲料をつくる方法を知っていました。

この場合、その材料の中にふくまれているでんぷんや糖分は最後には二酸化炭素とアルコールになっていくのだということだけはわかっていたのです。

しかし、これが、酵母という微生物によっておこなわれていることがわかったのは19世紀のフランスの科学者、パスツールの研究の結果なのです。



発酵のいろいろ

ぶどう酒やビールや清酒のように、アルコールをつくる目的で糖分を酵母のはたらきによって変化させることをアルコール発酵といいます。

しかし、アルコール以外のものをつくる場合にも、微生物はさかんに利用されます。

たとえば、アルコール酵母のかわりに、乳酸菌を使って糖分を乳酸にかえることもできます。

この場合は乳酸発酵とよんでいます。

このほかにも、酢酸をつくったり、アセトンやブタノールをつくったりそのほか人間の生活に役立つ、いろいろの物質をそれぞれ適当な酵母やカビ・細菌などを用いてつくらせることができこのための工業がさかんになってきました。

発酵の材料

発酵に使われる材料は、別に糖分とはかぎりません。
その目的によって、たんぱく質や、そのほかのものもいろいろと利用されています。

たとえば、我が国で調味料として欠くことのできない醤油や味噌などは、大豆や麦の中にふくまれている糖分のほかにたんぱく質が分解してできるアミノ酸やそのほか微生物のはたらきによってつくられたかおり・風味をあたえるようなものをふくんでいます。

このように、微生物や酵素を利用していろいろと役に立つものをつくる方法を、釀造とよんでいます。




たんぱく質の消化とは? たんぱく質の消化酵素とは?

たんぱく質は、たくさんの、しかもいろいろなアミノ酸がつながってできている大きな分子の栄養素です。


このような大きい分子は、そのままでは吸収されません。
また自分の体をつくっているたんぱく質とは、違ったたんぱく質がそのままの形で何かの原因で(たとえば注射などによって)体内に入るとアレルギーやショックなどをおこす危険があります。

この場合、体内というのは、胃や腸の中はふくまれません。

それは、胃や腸のような消化管は、口から肛門につながる体の中を通り抜けているトンネルのようなものなので厳密な意味では、体内といえないのです。

このようなわけで、私たちの体をつくるために必要なたんぱく質はいったん、アミノ酸にまで小さく分解されて、はじめて腸で吸収されます。

吸収されたアミノ酸は、血液によって、いろいろな部分に運ばれ私たもの体をつくるたんぱく質につくりかえられるわけです。

たんぱく質の消化酵素

たんぱく質の消化酵素には、ペプシン・トリプシン・キモトリプシン・ペプチダーゼなどがあります。

ペプシンは胃液にトリプシンやキモトリプシンはすい液にベプチダーゼはすい液や腸液にふくまれる消化酵素です。



ペプシンのはたらき

ペプシンは、胃の中で、たんぱく質のアミノ酸のくさりのところどころを切りはなして、ペプトンというものにかえるはたらきをします。

このペプトンは、まだかなり多くのアミノ酸のつながった物質です。
ペプシンという酵素は、胃液の中にふくまれる塩酸の酸性によってそのはたらきが助けられています。

トリプシン・キモトリプシンのはたらき

ペプトンは、やがて十二指腸に運ばれていきますが十二指腸には、すい臓からの消化酵素が流れこんでいます。

その中のトリプシンやキモトリプシンという酵素によってこのペプトンは、また細かくばらばらに壊されさらに小さいオリゴペプチッドといわれるアミノ酸が数個ずつむすびついた程度のものにまで、切られていきます。

ペプチダーゼのはたらき

ペプチダーゼというのは、やはりすい液にふくまれる数種類の消化酵素の総称です。

この酵素によって、オリゴペプチッドは再びくさりのはしからアミノ酸を切りはなしていってとうとう最後に、完全にアミノ酸にまで分解してしまいます。

アミノ酸は、そこではじめて、腸の壁から吸収されていくわけです。




脂肪の消化とは? 脂肪の消化酵素とは? わかりやすく解説!

脂肪は、水に溶けにくく、水の中ではお互いに集まりあって大小さまざまな粒になっています。

このような脂肪が、腸の壁から吸収されるためには非常に小さな粒になるか、または分解をうけて水に溶けやすい形にならなければならないのです。


脂肪の消化酵素

脂肪の消化酵素は、リパーゼというものです。
リパーゼは、すい臓から分泌されるすい液や小腸の壁から分泌される腸液、胃の壁から分泌される胃液の中にふくまれています。

そのほかに、消化酵素ではありませんが肝臓でつくられるたん液が消化酵素のはたらきを助けています。

胆液は十二指腸に分泌される物質でこの中には、脂肪の粒を小さく分散する作用をもった胆汁酸という物質をふくんでいて脂肪がリパーゼのはたらきをうけやすくしたり吸収されやすくするのに役に立っています。

リパーゼのはたらき

脂肪は、グリセリンという水に溶けやすい一種のアルコールと脂肪酸という水に溶けにくい一種の酸が結合したものです。

脂肪が吸収されるためには、これが水に溶けやすい形にかわらなければなりません。リパーゼは、脂肪を分解して脂肪酸を切りはなしその成分であるグリセリンと脂肪酸にかえるはたらきをしています。

脂肪酸は、そのままでは水に溶けませんがナトリウム塩になると、水によく溶けるようになります。

胃・十二指腸・小腸で、リパーゼによって切りはなされたグリセリンと脂肪酸は、腸の壁から吸収されていくのです。




でんぷんの消化とは? てんぷんの消化酵素とは?

食物の中にふくまれる、でんぷんや脂肪、たんぱく質は非常に大きな分子であったり、また分子どうしがたくさん集まって大きい粒子をつくったりする性質が強くてそのままでは、すぐに腸の壁から吸収されません。

そこで、食物が口から胃をとおっていく間にいろいろな消化酵素のはたらきでより小さい、より吸収されやすい形に変化されます。


でんぷんの消化

でんぷんはぶどう糖が、ちょうどくさりをつくるようにたくさんむすびついてできあがった、たいへん細長い大きい分子からできています。

でんぷんが体の中に栄養分として吸収されるためにはぶどう糖にまで分解されなければならないのです。

てんぷんの消化酵素

でんぷんを消化するはたらきをもつ酵素に、アミラーゼとマルターゼがあります。
アミラーゼは、さらにそのはたらきの違いによってαアミラーゼと、βアミラーゼの2つに分けられます。

これらは、でんぷんを麦芽糖にまで分解するはたらきをします。
このうちαアミラーゼは、おもにだ液中にふくまれています。

また、すい臓からでるすい液の中にはαアミラーゼとβアミラーゼがふくまれていて十二指腸ででんぷんにはたらきます。

マルターゼは、アミラーゼが分解した麦芽糖をさらにぶどう糖にまで分解し、腸の壁から吸収されやすいようにする酵素です。
マルターゼは、腸の壁から分泌される腸液中にふくまれています。

アミラーゼのはたらき

でんぷんが消化される第一段階では、このでんぷんをつくっている300個あるいはそれ以上たくさんの、ぶどう糖とぶどう糖の間のむすびめが切られて、小さくなっていきます。

このはたらきをするのがアミラーゼですがこの切り方には2種類の方法があります。

1つは細長いくさりをでたらめに、ばらばらに怖していくやり方でもう1つは、くさりのはしから、きちんと一定の間隔をおいて切っていくやり方です。

第一の方法で切られた場合、最初にできるものはなおぶどう糖がたくさんつながった形をしています。

これをデキストリンといいますが、このデキストリンはそのままでは、まだ吸収されません。

第二の方法では、でんぷんは2個のぶどう糖が結合したものとして順々に切りはなされながら、どんどん小さいものになっていきます。
この場合できるものは、ぶどう糖2個が結合した糖、すなわち麦芽糖です。



第一の方法で、でんぷんを壊していくはたらきをもったアミラーゼをαアミラーゼ。

第二の方法で、でんぷんを壊していくアミラーゼをβアミラーゼといいます。

αおよびβアミラーゼはもちろん、デキストリンにもはたらいて麦芽糖をつくるはたらきをします。

私たちが、でんぷんをたくさんふくんでいる食物をよくかんでいるとしだいに甘さがましてくることに気がつくでしょう。

これは、だ液の中のアミラーゼによってでんぷんから、おもにデキストリンができさらに、しだいに麦芽糖ができるからです。

だ液にふくまれているアミラドセ(おもにα アミラーゼで、プチアリンとよばれることもある)によって充分に分解をうけなかったでんぷんやデキストリンは
胃の中では、ほとんど酵素のはたらきをうけません。

それは、胃液の酸性が強いのでだ液のアミラーゼの活動がとめられてしまうからです。

しかし、胃に入ったものがしだいに十二指腸に入っていくにつれてふたたびアミラーゼのはたらきをうけるようになります。

それは、すい臓から腸の中にだされている塩基性のすい液の中にいろいろな消化酵素がふくまれ、その中にアミラーゼもあるからです。

マルターゼのはたらき

アミラーゼによってでんぷんは腸の中で二分子のぶどう糖からなる麦芽糖にまで完全に分解されていきますが、これはまだ吸収できる形ではありません。

でんぷんが栄養分として、腸から吸収されるためにはぶどう糖の形にならなければならないのです。

小腸の壁からはマルターゼをふくんだ腸液が分泌されここで、麦芽糖はさらに分解をうけて、完全にぶどう糖にまで壊されやがて小腸の壁から血液中に吸収されていくのです。




ビタミンとは? ビタミンの発見はいつ頃? わかりやすく解説!

ビタミンの発見

「航海病」といわれた壊血病が、新鮮な野菜の欠乏のためにおこることがわかったのは、18世紀のことです。

しかし壊血病や、かっけなど、いろいろな病気がある栄養素が不足するためにおこるのだという考え方がはっきりしたのは20世紀になってからです。


1897年、オランダのアイクマンという学者は白米ばかり食べているニワトリが、かっけにかかっていることを知り餌に玄米やぬかをくわえると、これが治ることを発見しました。

これは、動物にビタミン欠乏症をおこさせた最初の実験でそれからビタミンを研究するうえで大切な研究方法となったのです。

1910年には、日本の鈴木梅太郎博士がかっけを予防する物質を米ぬかからとりだし、翌年この物質をオリザニンと名づけました。

これは、ニワトリの白米病にきく成分をもったもので今日でいう、ビタミンB1です。

1911年には、ポーランド人のフンクが鳥の白米病に効く成分を、米ぬかからとりだし翌年この物質に「生命に必要なアミン」という意味で、ビタミンと名づけたのです。

その後、アメリカのマッカラムという学者によってビタミンにも油に溶けるものや、水に溶けるものなどかおることが確かめられいろいろなビタミンが、数多く発見されるようになりました。

ビタミンA

油に溶ける性質のビタミンで成長を促進する物質としてバターや肝油の中に認められたものです。

このビタミンが不足すると、とり目(夜盲症)になります。
とり目というのは、夕方少し暗くなるともう物の見分けがつかなくなる病気です。

目の網膜にはビタミンAがふくまれていて網膜が光に感じるはたらきに関係しているのでビタミンAをとらないと網膜中のビタミンAが不足し感光作用が鈍るのだろうと考えられています。

ビタミンAは肝臓(レバー)、バター、色のついた野菜類に多くふくまれていますが空気中の酸素によって、だんだん壊されていく性質をもっています。



ビタミンB

かっけを予防し、成長を促す因子(その原因となる物質)として名づけられたものです。

ビタミンB1

現在チアミンとよばれているビタミンで水に溶けます。
これが不足すると、かっけの症状がおきます。

また、炭水化物が私たちの体の中で二酸化炭素にまで分解されるときこの変化に関係している1つの酵素が、このチアミンを必要としています。

チアミンは加熱すると、とくに塩基性液中で加熱すると速やかに壊れるので、豆を煮たり、パンをつくるときに炭酸水素ナトリウム(重曹)を使うと、その大部分は壊れてしまいます。

チアミンは、穀類・豆類などにふくまれます。

ビタミンB2

成長を促進するビタミンで、リボフラビンとよばれやはり水に溶ける性質があります。

このビタミンは、炭水化物が体の中で酸化してエネルギーを生じるときの反応の仲立ちをしています。

牛乳にとくに多く、また肝臓や酵母にもふくまれています。

二コチン酸とその他のビタミンB

体の中でおこる酸化還元反応の多くは二コチン酸をふくんだ化合物が仲立ちをしています。

私たちにこのビタミンが不足するとペラグラ(全身の皮膚に発疹がおきる病気)にかかります。

そのほか、ビタミンB群に入るものにはピリドキシンとよばれるビタミンB6(シロネズミでは不足すると皮膚炎になる)パントテン酸(ニワトリでは皮膚炎)・ビオチン(シロネズミでは皮膚炎)コリン・イノシット(シロネズミでは脂肪肝)・パラアミノ安息香酸(ニワトリでは成長不良)・葉酸・ビタミンB2(貧血になる)などが有名です。

ビタミンC

水に溶けるビタミンでアスコルビン酸ともよばれます。
このビタミンは空気、とくにあついときに空気にあうと壊れる性質をもっています。

また、銅などのイオンによっても、非常に早く壊れます。

このビタミンが欠乏すると細胞と細胞をつなぎあわせている物質が不足し血管をつくっている細胞のつながり方が悪くなって出血しやすくなります。
これが壊血病です。

ビタミンCは、野菜や果物に多くふくまれています。

ビタミンD

油に溶けるビタミンです。
プロビタミンDという物質からできるものですがこの変化は紫外線のはたらきでおこります。

肝油や牛乳には、このプロビタミンDがふくまれています。

このビタミンが不足すると、骨の成長が悪くなり、くる病にかかりやすくなります。
植物にはあまりふくまれていませんがシイタケには例外的に多くふくまれています。



無機質とは? 食塩・カルシウム・鉄・ヨウ素の特徴とは?

食物の成分のうち三大栄養素といわれる有機質(炭水化物・脂肪・たんぱく質)を除いた残りのものが、水分や塩分などの無機質(灰分)です。

無機質は私たちの体をつくる材料として、なくてはならない大切なものなのです。

また、これらの成分のほかに、ごく少量ですが食物としてとらないと、体にいろいろな障害がおこるような有機質があります。

これがビタミンです。


食塩

体の中で、いろいろな変化か順調におこなわれるためには血液やリンパ液が一定の種類と、一定の濃度の塩分をふくんでいなければなりません。

血液にふくまれる塩分の大部分は、ナトリウム塩です。
わたしたちが食塩(塩化ナトリウム)を相当量とらなければならないのはこのためです。
1日に必要な食塩は、ふつう10~20グラムぐらいです。

カルシウム

骨の成分は、大部分がリン酸カルシウムです。
リンは穀物にたくさんふくまれますが、カルシウムは穀物にはほとんどないのでこれを多くふくむ小魚や牛乳をとる必要があります。

とくに牛乳中のカルシウムは、吸収されやすい形で存在しています。

鉄は、赤血球の中にあるヘモグロビンという色素たんぱく質にふくまれています。
肺で血液、か空気に触れると、ヘモグロビン中の鉄が酸素と結合します。

そして、血液がめぐって、組織にまわってくると酸素をはなすのです。
組織の細胞にわたされた酸素は、炭水化物や脂肪などの酸化に使われます。

この酸化のなかだちになっているものの1つであるチトクロムという物質も、やはり鉄をふくんでいます。

鉄は、いろいろな食品中に、少量ながらふくまれています。

リン

体の中では、リンはいっぱんに、リン酸化合物の形で存在しています。
カルシウムといっしょになって、骨をつくるほかにいろいろの炭素化合物と結合して、たくさんのはたらきをしています。

なかでも大切なはたらきは、ATPとよばれるリン酸化合物でたいへん多くのエネルギーをもっていることです。
炭水化物の酸化によって生まれたエネルギーは、ひとまずATPという形になるのです。

そして、体の中で何かエネルギーを使って仕事をしなければならないときにこのATPが使われるのです。

ヨウ素

甲状腺ホルモンであるチロキシンという物質はヨウ素を多量にふくんでいます。
それでヨウ素が不足すると、このホルモンが足りなくなりいろいろな病気をおこします。

ヨウ素は、海藻中にたくさんふくまれています。




食物中の三大栄養素の割合と熱量とは? わかりやすく解説!

私たちが、毎日食べている食物中にはいろいろな栄養素がふくまれています。

口からとり入れられるこれらの栄養素は体の中で、いろいろな酵素によって消化され分解されて、だんだん形をかえながら、私たちの血となり肉となって体をつくっていきます。



これらの栄養素は、体の中で分解され体をつくっていくとともに一部のものは私たちが体温をたもったり運動したりするのに必要なエネルギーをつくるために、分解されています。

栄養素が分解して生じるエネルギーは熱量(カロリー)であらわされます。

たとえば、炭水化物1グラムは約4キロカロリー脂肪1グラムは約9キロカロリー、たんぱく質1グラムは約4キロカロリーの熱量をそれぞれ分解しながら生みだします。

栄養学では、キロカロリーのことを、たんにカロリーといいます。

表は、おもな食品にふくまれる炭水化物・脂肪・たんぱく質の割合と熱量をあらわしています。(水分や灰分などは除いてあります)

大人は、1日に2000~4000キロカロリー必要だといわれていますがこの量は、年令・体重・性別、運動や仕事の程度に応じていろいろと違ってきます。




必須アミノ酸と非必須アミノ酸とは? たんぱく質の栄養価とは?

必須アミノ酸と非必須アミノ酸

私たちの髪の毛や爪は、いつのまにかのびていきます。
また皮膚は、あかとなってむけていきます。

このほかにも、いろいろな証拠によって体のたんぱく質は
成長が止まったあとでも、たえず形づくられていることがわかります。


いっぽう、たんぱく質は、アミノ酸まで分解されて
その窒素は尿素として排出されています。
ですから、私たちが生きていくためには体のたんぱく質をつくるために
その原料になるたんぱく質やアミノ酸などを食物からとり入れる必要があるのです。

しかし、たんぱく質をつくるアミノ酸は
すべて食物としてとり入れなくても体のなかで
ほかのものから合成されるものもあるのです。

栄養学上でいう必須アミノ酸というのは体のなかではつくることができないので
どうしても外から栄養としてとり入れないと
完全な成長を続けることができないものをいいます。

人の場合はロイシンーイソロイシン・バリン・スレオニン
メチオニン・フエニルアラニン・リジン・トリプトファンの8種類が
必須アミノ酸です。

このほかのアミノ酸は体内で必須アミノ酸や
ほかの物質からつくることができるので、とくに食物としてとり入れなくても
どうにか補っていけるものです。

このようなアミノ酸を非必須アミノ酸といいます。

たんぱく質の栄養価

体内にとり入れられたたんぱく質は、消化酵素のはたらきをうけてアミノ酸にまで分解され、吸収されます。

こうしてとり入れられたアミノ酸は体の中で合成されたアミノ酸とともに酵素の助けにより新しく私たちの体をつくるたんぱく質につくりなおされます。

また余分なアミノ酸は分解されて、一部はエネルギー源になってしまいます。

ですから体のたんぱく質をつくるのに適当なアミノ酸がそのときにてそろっていなければ、それだけ利用される割合が少なくなるわけです。

このようなわけで、食物のたんぱく質の栄養価は必須アミノ酸の種類と量によって、包まることがわかります。



アミノ酸の割合をわかりやすく、おけにしてあらわすと下の図のようになります。

どのアミノ酸も必要量だけふくまれていてアミノ酸どうしのバランスがとれているものを標準たんぱく栄養おけとすることにしてこれと各食品のたんぱく質にふくまれるアミノ酸の割合を比較してみましよう。

おけの板の幅は、標準たんぱくおけの板の幅と同じで高さがいろいろとかわってくるわけです。
もし1枚の板がなげれば、このおけに水を入れることはできません。

ですから、たんよく質としての栄養価は0になるわけです。
また1枚の板が半分であれば、栄養価もおけ半分になってしまうでしょう。

このようにして、すべてのアミノ酸はもっとも不足するアミノ酸に比例して利用され残りはかなり無駄になってしまいます。
それで、おけの板のでこぼこが少ないほど、よいたんぱく質といえます。

各種の食品についてみるといっぱんに植物性たんぱく質は動物性たんぱく質にくらべてアミノ酸組成の点でも劣っていることはおけの図からもよくわかるでしょう。

ただ、大豆はよいアミノ酸組成をもっています。
現在、私たちはたんぱく質の20~30パーセントを動物性食品からとっているにすぎません。

これからは、もう少したんぱく質の量とアミノ酸のバランスを考えて、食物の組みあわせを工夫することが大切です。



たんぱく質と酸の関係とは? わかりやすく解説!

たんぱく質と酸

牛乳に酸を少しくわえるとカゼインというたんぱく質が沈殿して白いかたまりができます。
また、牛乳が古くなっても白いかたまりができます。


これは、牛乳の中にある乳糖が、乳酸菌によって乳酸にかわりこの酸のはたらきによって、カゼインが沈殿するからです。

牛乳が新しいか古いかを検査するのに乳酸の量をはかるという方法がありますが乳酸の量が多いほど、古い牛乳ということになります。

たんぱく質を、濃い酸といっしょに長い時間熱するとたんぱく質は分解して、いろいろのアミノ酸になります。

味の素の商品名で知られている化学調味料はグルタミン酸というアミノ酸のナトリウム塩でたんぱく質を、酸で分解してつくったものです。

石油から合成する方法もあります。

ビウレット反応

たんぱく質に水酸化ナトリウムと少量の硫酸銅をくわえると、紫色にかわります。
この反応をビウレッ卜反応といい、アミノ酸が3個以上つながったものならペプチドでもペプトンでも同じ反応をしめします。

実験

試験管に5~6倍の水でうすめたたまごの白身を1立方センチほどとりこれに1パーセントの硫酸銅液を一滴10パーセントの水酸化ナトリウム液を5、6滴くわえてよくふってみましょう。

液の色が紫色にかわります。これはビウレッ卜反応によるものです。



キサントプロテイン反応

たんぱく質に、濃硝酸を少量くわえて熱すると黄色の沈殿ができます。
これを冷やしたあとで、塩基性にすれば、だいだい色にかわります。

これをキサントプロテイン反応といいたんぱく質にふくまれるチロシンとかトリプトファンというアミノ酸が硝酸と反応した結果おこるものです。

実験

試験管に、5~6倍の水でうすめたたまごの白身1立方センチをとりこれに濃硝酸1立方センチをくわえて、熱すれば黄色になります。

そしてこれを冷やしてからアンモニアを少量くわえると、だいたい色になります。
このとき、指に硝酸がつかないように注意しましょう。

硝酸がつくと、皮膚は黄色になりますがこれは私たちの体がたんぱく質からできている証拠なのです。

ミロン反応

たんぱく質にミロン試薬(水銀を濃硝酸に溶かして水でうすめ、ろ過した液)を
くわえると白い沈殿ができます。

さらにこれを熱すれば、レンガ色にかわります。これをミロソ反応といいます。
これは、たんぱく質中のチロシンの存在による反応です。

実験

5~6倍の水でうすめたたまごの白身1立方センチにミロソ試薬1立方センチをくわえたのち、これを熱します。

はじめ、白い沈殿ができますが、熱するとレンガ色にかわるのがわかります。

ニンヒドリン反応

たんぱく質にニンヒドリン液をくわえて熱すると、紫色になります。
これをニンヒドリン反応といいたんぱく質中にアミノ基という窒素と水素からできている原子団があることをしめしています。

この反応はアミノ酸でもおこります。

実験

5~6倍の水でうすめたたまごの白身1立方センチに0.2パーセントのニンヒドリン液を1,2滴くわえ、強く熱します。
液が紫色にかわることを確かめましょう。



たんぱく質の成分とは? わかりやすく解説!

たんぱく質の成分

たんぱく質には、たくさんの種類がありますがその組成はお互いによく似ています。

炭素・水素・酸素のほかに、窒素と硫黄をふくむことが炭水化物や脂肪と違う点です。


髪の毛や、つめを燃やすとくさいにおいがします。
髪の毛やつめは、ケラチンというたんぱく質からできていますがこのケラチンは硫黄をふくんだシスチンというアミノ酸をたくさんふくんでいます。

くさいにおいは、硫黄が燃えてできた二酸化硫黄のにおいなのです。

また、たんぱく質に水酸化ナトリウムの固体をくわえて熱すると鼻につんとくる蒸気がでてきます。
これは、たんぱく質中のグルタミンやアスパラギンが分解してできたアンモニアのにおいです。

たんぱく質を酸や塩基などといっしょに熱したりペプシンやトリプシンのような消化酵素をはたらかせたりするとだんだん分解してペプトンやペプチドや、いろいろの種類のアミノ酸を生じます。

ペプトソやペプチドは、分解を完全におこなえば最後にはアミノ酸になります。

天然のたんぱく質の分解によってえられるアミノ酸は、20数種知られていますがこの20数種のアミノ酸のなかには動物が生きていくためにどうしても食物からとり入れなくてはならないものがあります。

これが必須アミノ酸です。
その他のアミノ酸は、動物が体の中で心須アミノ酸やその他の物質からつくることができるのでとくに食物としてとらなくても大丈夫なのです。

ここで、たんぱく質の種類によってふくまれているアミノ酸の種類と量が非常に違う、ということに注意しましょう。

たとえばゼラチンは、トリプトファンやバリンのような大事なアミノ酸をふくんでいないのでゼラチンだけを食べていると、栄養不足になります。



また、小麦にふくまれているグリアジンというたんぱく質だけでネズミを飼っていると、ネズミは成長が遅くなるしトウモロコシにふくまれているツェインというたんぱく質だけあたえているとネズミの体重は、だんだん減ってやがて死んでしまいます。

グリアジンには、リジンが少ししかふくまれていないしツェインにはリジンとトリプトファンという心須アミノ酸がふくまれていないからです。

ふつう、動物性たんぱく質は、植物性のたんぱく質にくらべて心須アミノ酸を多くふくんでいて、栄養的にすぐれています。

たんぱく質と熱

牛乳を煮ると、表面にうすい膜ができ、たまごを茹でるとかたくなります。
このように、たんぱく質には熱によって変化して、かたまってしまうものがあります。

この変化は、たんぱく質の変性とよばれ、変性をうけたたんぱく質はもう、もとのたんぱく質にもどることはありません。

ゆでたまごが、生たまごより消化がいいのはたまごが熱による変性をうけたために消化酵素のはたらきをうけやすくなっているからです。

たんぱく質の変性は、熱のほかに酸・塩基・アルコールなどによってもおこります。
変性をうけると、いっぱんに溶けにくくなってかたまったり、沈殿を生じることが知られています。




たんぱく質の種類とは? わかりやすく解説!

私たちの体をつくっている物質の中で、その量からいってもはたらきの複雑なことからいっても、いちばん大切なものは、たんぱく質です。

筋肉や皮膚など体の支えとなるものばかりでなく生理作用のうえでも、大切な役割をはたしている物質はほとんど、たんぱく質から成り立っています。


たんぱく質の性質による分け方

たんぱく質は、だいたい20種ばかりのアミノ酸が何百とつながって、たいへん大きな分子をつくっている物質です。

アミノ酸というのは、同じ分子の中に窒素と水素からなるアミノ基―NH2と炭素・酸素・水素からなるカルボキシル基―COOHとをもつ有機化合物をいうのです。

いろいろなたんぱく質の性質の違いはこれらのアミノ酸のつながり方の順序や、その種類、数によって決まります。

体の中にあるたんぱく質の種類は非常に多いのですが水や塩類溶液、その他のものにたいする溶け方などによりいろいろと分類されています。

アルブミン

水に溶け熱によって固まる性質のあるたんぱく質をアルブミンといい血清アルブミン・たまごアルブミンなどがあります。

血清アルブミンは、血清中に多くふくまれていますが人と牛と馬とでは少しずつアミノ酸の並び方に違いがあったりして細かい性質が違っています。

たまごアルブミンは、たまごの白身に多くふくまれています。

グロブリン

水に溶けにくく、食塩水によく溶け、熱によってだいたい固まる性質のたんぱく質です。
血清中や動植物の体の組織の中にふくまれています。

プロラミン

水に溶けないが、うすい酸・うすい塩基、50~80パーセントのアルコールに溶けるたんぱく質です。
植物種子に多く、グルタミン酸というアミノ酸を多くふくんでいます。

小麦に多くふくまれるグリアジンというたんぱく質は、プロラミンの一種です。

グルテリン

植物種子に多くふくまれ水に溶けないが、うすい酸・うすい塩基に溶けます。
プロラミンと同じように、グルタミン酸を多くふくみます。

グルテリンの一種であるグルテニンはグリアジンとともにグルテンという複合物をつくります。
小麦のグルテンからは、化学調味料のグルタミン酸ナトリウムがつくられます。



硬たんぱく質

動物の毛やつめ・皮ふの表皮などをつくっているケラチン、骨・軟骨・関節などに多くふくまれているコラーゲンなどのたんぱく質のことです。

水や塩類溶液・うすい酸・うすい塩基に溶けず消化されにくいので、栄養的価値はほとんどありません。

色素たんぱく質 色素と結合しているたんぱく質です。
私たちの血液中の赤血球にあって、酸素を体の組織に運んでいるヘモグロビンはヘムという色素と結合した、グロビンというたんぱく質からなりたっています。

動物性たんぱく質

動物性たんぱく質は、おもにアルブミンやグロフリン・ヒストン・プロラミンなどのような細胞内のたんぱく質と、コラーゲンやケラチンのように細胞の外側に存在しているたんぱく質の2つから成り立っています。

このうち栄養的に大切なものは、おもに細胞内のたんぱく質です。

たまご・牛肉・牛乳などの動物性食品には、たんぱく質がたくさんふくまれています。

魚には、だいたい、牛肉と同じ量のたんぱく質がふくまれています。
また、動物性たんぱく質は、質がよいので体内で無駄になることが少なく有効に利用されますから、植物性たんぱく質ほど、たくさん食べなくてもよいのです。

植物性たんぱく質

植物性たんぱく質は、おもにプロラミンやダルテリン・アルブミン・グロブリンのようなものから成り立っています。

下の表からもわかるように、植物性食品にふくまれるたんぱく質は大豆や豆腐を除いて、動物性食品にくらべて量も少なくまた、質も悪いので一定の栄養状態を保つためにはたくさん食べなければならず、胃の負担もそれだけ多くなるわけです。

けれども大豆は、たんぱく質にとみ、質もすぐれているので私たちにとっては大事なたんぱく源となる食品です。



脂肪の用途とは? 石鹸とマーガリンの作り方とは?

石鹸

ふつう、私たちが使っている石鹸は、脂肪のケン化によってできる脂肪酸のアルカリ金属塩が主成分となっています。

石鹸には、硬石鹸と軟石鹸とがあります。

これは、石鹸をつくるときに使う脂肪の種類とアルカリの種類によって、かたい石鹸と柔らかい石鹸ができるところから名づけられたものです。


柔らかい石鹸は、脂肪酸の分子の小さいものからなる脂肪あるいは不飽和脂肪酸を多くふくむ脂肪からつくられます。

硬い石鹸は、分子の大きい飽和脂肪酸を多くふくむ脂肪を原料としたときにできます。
また、アルカリ金属塩をつくるため水酸化ナトリウムを使った石鹸はソーダセッケンとよばれ硬い石鹸となります。

これにたいして、水酸化カリウムを使ってできる石鹸はカリセッケンとよばれ、柔らかくて水によく溶けます。

これは、ひげそりクリームや液体石鹸など、特別なものに使われます。
石鹸をつくる場合の原料として、羊や牛の貯蔵脂肪が重要とされています。

これらの脂肪だけからつくられたものは石鹸として非常にすぐれた性質をもっていますが、水に少ししか溶けないために熱湯を使わなければならないという、欠点をもっています。

これは、牛や羊の脂肪をつくっている脂肪酸の性質によるためです。
そこで、この性質を改良するために、牛や羊の脂肪に植物の実からとった脂肪をまぜて、石鹸をつくります。

魚油のように、不飽和脂肪酸を多くふくむ脂肪は酸化されやすく、いやなにおいも強いので石鹸の原料としてはそのままでは使えません。

しかし、このように不飽和脂肪酸を多くふくむ脂肪は触媒を使い水素と化合させて硬化油にすれば、石鹸の原料として使えるようになります。

硬化油にすると、それまで常温で液体であったものが、固体の脂肪にかわります。

硬化油をつくることは、石鹸のほかマーガリンの原料をつくるためにも、工業的にたいへん重要なことなのです。

石鹸のつくり方

まず、天然の脂肪、あるいは硬化油に、水酸化ナトリウムをくわえケン化します。
この水酸化ナトリウムの量は、その脂肪がケン化するのに必要な量よりも、わずかに多くします。

これは、塩基がわずかに多いとケン化が速やかにおこなわれるからです。

ケン化が終わったら、塩化ナトリウム(食塩)をくわえて冷えないようにしておいておきます。
すると、石鹸は、濃い食塩水には溶けないので上のほうに浮かび上がり、グリセリンをふくんだ食塩水は下のほうに残ります。

このように、塩類をくわえて析出させることを、塩析といいます。
つぎに、このセッケンを分けとりますが、このときのセッケンはカードとよばれ、まだグリセリン・食塩のほか塩基などがいくらかまじっているので、水を充分にくわえて、煮て溶かしこれにさらに食塩をくわえて、ふたたび石鹸を固まらせます。

これを何回もくり返しておこない、不純物を取り除きます。
こうしてつくったセッケンは香料でにおいをつけたり染料できれいな色をつけたりしてから、家庭用として使われるのです。

また、薬用石鹸には、クレゾールや、そのほかの殺菌剤などがくわえられます。
なお、石鹸をつくるときにできるグリセリンは、別に集められて精製されます。



石鹸のはたらき

石鹸は、汚れを落とす力をもっています。
これは、つぎのような石鹸の性質によるためだと考えられています。

石鹸をつくっている分子はちょうど正反対の性質をもった2つの部分からできています。

その1つは、水の分子となじむ力の強いカルボキシル基でもう1つは水の分子となじむ力はないが炭化水素や油(あかや汚れの中にはこのような水に溶けにくい物質が多くふくまれている)となじむ力の強いアルキル基(炭化水素がくさりのようにつながったもの)の部分です。

このようなつくりのため、セッケツを水に溶かすと石鹸分子は、カルボキシル基を下にして水の表面に並ぼうとするので水の表面張力(表面が縮もうとする力)を小さくさせます。

このため、石鹸水は浸透作用が強く布の繊維の中にまで染み透るのです。

水の中に油があったり、布にあかや油がついていると水になじみやすいカルボキシル基を外側にしてアルキル基のほうが油やあかにくっつき、その表面を包みます。

その結果、油やあかの粒は細かく水中に分かれてちょうど水に溶けたようになって洗い落されるのです。

石鹸分子によって囲まれながら細かい粒になって分散するものが液体のときは乳濁液といい固体のときは懸濁液といいます。

洗濯をするときには、約40℃の水(軟水)に0.5パーセントの濃さに石鹸を溶かすのがよいとされています。

石鹸のように、分子の中に水となじみやすい部分とその反対の性質の部分とをもっ化合物は水に溶けて表面に集まり表面張力を小さくする性質があるので、表面活性剤といいます。

表面活性剤は、いっぱんに油を乳濁させ細かい固体の粒を懸濁させる力をもっています。

実験1

2本の試験管に、蒸留水を少し入れ、その各々に2、3滴の油をくわえます。
そして、いっぽうの試験管だけに、さらに数滴のセッケン水をくわえ両方の試験管を振って比べてみましょう。

石鹸水を入れたほうの試験管は油が水の中に溶けこんだようになって区別できず、白くにごって見えます。

これは石鹸の乳濁作用によるものです。

実験2

2本の試験管に蒸留水を少し入れ、それにススを浮かべます。
いっぽうには、粉石鹸を少しくわえ、両方の試験管をよく振ってからろ紙を使ってろ過してみましょう。

石鹸をくわえない試験管のほうはススがろ紙の上に残りますが石鹸をくわえたほうは、ススが細かい粒に分けられてろ紙のめを通り抜けてしまい、下ににごった水がたまります。

これは、石鹸の懸濁作用によるものです。

実験3

毛織物を、水と石鹸水の上に落として、ぬれ方を調べましょう。
石鹸水に落としたほうは、ぬれてしまいますが水に落としたほうは、水をはじいてぬれません。

これは、石鹸水が、水の表面張力を小さくしてしまうので水が玉にならず、織物のすきまに入っていくからです。

これが石鹸の浸透作用です。

マーガリン

マーガリンは、バターの代用品で植物油やその硬化油、および動物油などをおもな原料としてつくった食品です。

人造バターともよばれています。

工場では、つぎのようにしてマーガリンをつくっています。

まず、原料の脂肪を中和タンクの中に入れ、水酸化ナトリウムで中和します。
つぎに、今までついていた色をなくしたり、汚いものを除くため脱色タンクにうつし、白土を使って脱色します。

白土というのは、ケイ酸とアルミナを主成分とした粘土でその粒は、水分や油の中の不純物を吸いつける性質があります。

このようにした脂肪を、ニッケルを触媒として水素を添加し硬化油にします。

つぎに、この硬化油をろ過し、においをぬくところにおくります。
ここで蒸気をふきこんで、においを除きます。

そして、もう一回ろ過機でこして、配合タンクに入れます。
この配合タンクでは、いろいろな硬化油を適当にまぜあわせます。

このようにした脂肪を乳化機で食塩・発酵乳・香料・色素などと乳化させよくこねまぜるとマーガリンになります。



脂肪の性質とは?脂肪の検出法とは? わかりやすく解説!

脂肪の性質

①きれいな脂肪は無色で、味もにおいもありません。
しかし動植物からとったままの、天然の脂肪はたいていうす黄色で特有のにおいと味をもっています。


これは、天然の脂肪の中に脂肪が酸化されて壊れたものや脂肪に溶けやすい色素などがまじっているためです。

②いっぱんに脂肪は水に溶けませんがニーテル・ベンゼン・クロロホルムにはよく溶けます。

また、アセトン・アルコールにもかなりよく溶けます。
脂肪は水に溶けないので動物の血液中やリンパ液中ではたんぱく質と結合して非常に小さな粒になってまじっています。

③脂肪は水よりも軽く、水にうきます。
水は4℃のとき 1立方センチが1グラムですが1立方センチの脂肪は、平均0.93グラムです。
したがって、水の上に浮くわけです。

④脂肪はよく燃えます。脂肪が燃えるとススが多くでるのは、炭素にくらべて酸素を少ししかふくんでいないため完全に酸化されずに一部が炭素のままで残り、これがススとなるからです。

脂肪の分子は炭素のほかに、酸素と水素とからつくられていますから純粋な脂肪が完全に燃えるとすべて二酸化炭素と水とになってしまい残りかすはでません。

⑤脂肪を水酸化ナトリウム水溶液と煮ると、ケン化します。

⑥脂肪を長くほうっておくと、酸敗します。
たとえば、バターなどを長く空気中にほうっておくと嫌なにおいや味がしたり、色がかおったりします。

このうち、酸っぱくなった原因は、脂肪が壊れて脂肪酸が生じたためです。
また、嫌なにおいがでるのは脂肪の中の不飽和脂肪酸が空気中の酸素と水分などによって壊されアルデヒドやケトンなどというものをつくるためです。

これを脂肪の酸敗といいます。
このとき銅や鉄などの金属イオンがそばにあると酸敗が早く進みます。
また、不飽和脂肪酸の多い脂肪のほうが酸敗しやすいようです。

脂肪の酸敗をふせぐためには、脂肪を触媒といっしょに水素で処理することが多くおこなわれています。
このように処理したものは融点があがり、常温で固体になります。

これを硬化油といいます。



脂肪の検出法

脂肪の存在はつぎのような方法で調べられます。

においによる調べ方

① 粉末の硫酸水素カリウムを試験管に少し入れそれに3,4滴のオリーブ油をくわえます。

そして、試験管の底を注意しながら、はじめはゆっくりと熱しだんだん火を強くしていくと、やがて、鼻をつくようなにおいのある気体が出てきます。

これは、オリーブ油の分子の中のグリセリンの部分が熱によって壊されグリセリン一分子から、水二分子がぬけて、アクロレインという物質にかわったからです。

油のかわりに、グリセリンを使っても同じようなにおいがします。

② 日本ろうそくの火をふきけして、においをかぐと鼻をつくようなにおいがします。
これは、日本ろうそくが、脂肪の一種である木ロウを原料にしているからです。このにおいも、アクロレインのためです。

ヨウ素液による調べ方

試験管にオリーブ油を0.5グラムとりクロロホルム20立方センチをくわえて、よく溶かします。

これに、ヨウ素のアルコール溶液を一滴くわえるとかっ色をしたヨウ素の色が消えてしまいます。
これは、オリーブ油の成分の不飽和脂肪酸が、ヨウ素と結合したからです。




脂肪のつくりと性質とは? 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とは?

脂肪の成分

脂肪を過熱水蒸気などで分解すると、グリセリンと脂肪酸とに分かれます。
これは脂肪が加水分解をしたのです。

この分解によってできた脂肪酸は、一種の酸なので水酸化ナトリウムをくわえると中和され、塩をつくります。

このような脂肪の分解を、ケン化といいます。


脂肪の加水分解を反応式であらわすと、下のようになります。

この式のなかで、Rというのは、アルキル基のことでR2、R3は炭素の数の違う
いろいろのアルキル基をあらわしています。(アルキル基というのはCnH2n+1という式であらわされる炭化水素の原子団でメチル基CH3―、エチル基C2H5―などがあります。

さて、動植物体に貯蔵されている脂肪の大部分はグリセリン一分子と、脂肪酸三分子とから三分子の水が分離された形の結合をしてできているのです。

これを中性脂肪ともいいます。

このグリセリンに結合している3つの脂肪酸は全部同じのものもありますが大部分の脂肪では、違った2種か3種の脂肪酸がむすびついています。

グリセリン

グリセリンは、脂肪をケン化してできたものでグリセロールともリスリンともいわれ、水やアルコールによく溶ける液体です。
甘味があり、その強さは、砂糖の6分の1ぐらいといわれています。

私たもの体の中では、グリセリンを酸化して、二酸化炭素と水にしたりぶどう糖をつくったりすることができるのでグリセリンはエネルギー源として、栄養となっていることがわかります。

グリセリンは、化粧品や医薬品の製造に利用されたりニトログリセリンをつくって、ダイナマイトの製造に使われたりしています。



脂肪酸

動植物体内では、脂肪酸がそのままの形であることはほとんどなく、グリセリンと結合して脂肪となっていたりコレステリンやアルコール類と、むすびついています。

ミツバチの巣の主成分である蜜ロウは脂肪酸と高級アルコールとが結合したものです。
脂肪酸は、炭素の原子からなる1本のくさりに水素原子がむすびついていていっぽうのはしに、カルボキシル基―COOHという酸性の原因になる原子団がついています。

天然の脂肪酸は、炭素の数が偶数のものですが炭素の数などによって、いろいろな種類の脂肪酸に分けられます。

低級脂肪酸と高級脂肪酸

酢酸CH3COOHのように、炭素の数の少ないものを、低級脂肪酸といいます。
ラク酸C3H7COOHなども、この仲間です。

また、炭素の数の多いものを、高級脂肪酸といいます。
酢酸は、水に溶けて酸性をしめしますが、炭素数の多い脂肪酸も、含水アルコールに溶けてリトマス紙を赤にかえたり塩基を中和させたりする酸の性質をもっています。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

脂肪酸には、炭素のくさりに水素が充分についているためヨウ素と結合しにくい性質をもったものと炭素のくさりにつく水素原子の数が不十分なため、ヨウ素と結合しやすい性質のものとがあります。

ヨウ素と結合しにくい脂肪酸を飽和脂肪酸といいます。
ステアリン酸・パルミチン酸などはほとんどすべての脂肪にふくまれている飽和脂肪酸です。

これにたいして、ヨウ素と結合しやすい脂肪酸を不飽和脂肪酸といいます。
オレイン酸・リノール酸・リノレン酸などがあります。

オレイン酸は、ほとんどすべての脂肪にふくまれています。
また、リノール酸、リノレン酸はすべての乾性油・半乾性油にふくまれているものです。



食物にふくまれる脂肪の割合とは? わかりやすく解説!

脂肪は、食物に広くふくまれていますが食物の種類や部分によって、ふくまれる割合は、非常に違っています。


植物性食品

①穀類

米・麦・アワ・キビ・豆などがあります。
これらの種子は、炭水化物を多くふくみますが豆を除いて脂肪はあまりふくまれていません。

多いものでも、カラスムギの5パーセント、コーリャンの4パーセントです。

玄米では3パーセント、白米にすると、1パーセント以下になってしまいます。
穀類では、胚乳部よりも、胚芽部に多くふくまれていて米・麦の胚芽には、全体の約50パーセント、トウモロコシの胚芽には全体の約30パーセントの脂肪がふくまれています。

②豆類

いっぱんに、たんぱく質を多くふくみますが小豆・インゲン・エンドウは、炭水化物も多くふくんでいて脂肪は1パーセント以下です。

大豆・落花生は、炭水化物のほかに、脂肪を多量にふくんでいて大豆では17パーセント、落花生では50パーセントぐらいふくんでいます。

③果実類

脂肪は、いっぱんに果肉には少なく多くのものは1パーセント以下程度ですが、種子にはかなりふくまれています。
とくに、クルミは例外的に多く60パーセントもふくんでいます。

④野菜類

脂肪のふくまれる量はいっぱんに1~5パーセント以下で皮のほうにより多くふくまれています。



動物性食品

いっぱんに、たんぱく質や脂肪にとんでいて体の成長や健康をたもつのに大切な役目をしています。

つぎのような種類に分けられます。

①獣肉類

鳥や獣にふくまれる脂肪の量は5パーセントほどですが肉の種類や品質・部分などによりだいぶ違います。

また、ふつうオスの肉よりもメスの肉、夏よりも冬、小さいものよりも成長したものに多くふくまれています。

②魚介類

魚では、だいたい数パーセントぐらいの脂肪をふくみますが季節により全体の1~20パーセントまで変化します。

イカ・カニ・貝類にふくまれる量は全体の約1パーセントで、極めて少ないものです。

③乳類

乳は脂肪をふつう3パーセントぐらいふくみごく細かい粒をなして乳化しています。

④たまご類

脂肪とたんぱく質を豊富にふくみ鳥のたまごは、全体の10パーセント魚のたまごは、3パーセント(鮭では15パーセント)ほどの脂肪をふくんでいます。

鳥のたまごの脂肪は、ほとんど全部が黄身にありふつうの脂肪のほかに、レシチンという脂肪によく似た性質の物質がとくに多くふくまれています。



脂肪と油脂とは? 植物性脂肪・動物性脂肪とは?

ふつう、動植物体から、いろいろな方法でとりだされ水に溶けず有機溶剤にかなりよく溶けるような性質をもった成分を、脂肪といいます。


脂肪と油脂

せまい意味で、脂肪というのはバターや牛脂(ヘット)、豚脂(ラード)のように、常温で固体のものをさします。

そして、ゴマ油・魚油のように常温で液体のものを脂肪油、または油として、脂肪と区別しています。

しかし、この区別は土地や季節によってその境目がはっきりしないので、あまりこだわる心要はありません。
ふつう、この両方をあわせて脂肪といっていますが正しくは、油脂とよばれます。

ここでも、脂肪というのは油脂の意味で使うことにします。
脂肪は、とりだされる材料によっていろいろな名前がつけられますが大きく分けると、つぎの2つになります。

植物性脂肪

植物からとりだされる脂肪を、植物性脂肪といいます。
植物では、脂肪はおもに種子にたくわえられています。

植物性脂肪の多くは、ふつう常温で液体になっています。
しかし、うすい層にして、空気中にさらしておくと酸素を吸収して樹脂に似た固体に変化する性質をもつものもあります。

この性質の強さによって乾性油、不乾性油、半乾性油に分けられます。
また、まれに常温で固体になっている固体油もあります。

乾性油

アマニ油・エノ油・トウ油などは、乾性油の代表的なもので空気中にさらすと酸素によって酸化され、3~6日で固体にかわります。

不乾性油

ツバキ油・オリーブ油・ラッカセイ油・ヒマシ油などは乾性油のように酸化される性質をもたず、長く液体の状態をたもっています。

半乾性油 ゴマ油・ナタネ油・ぬか油・大豆油などは乾性油と不乾性油の中間の性質をもち、半乾性油といわれます。

しかし、大豆油などは半乾性油でも乾性油にちかく酸素によって酸化され、弱い皮まくをつくります。

固体油

植物性脂肪のなかで、固体油に入るものにはヤシ油・カカオ油・木口ウなどがあります。



植物性脂肪の取り出し方

植物性脂肪をとりだす方法には、圧搾法・抽出法などがあります。

圧搾方は、大豆ー胡麻ーナタネー落花生などから油をとるときに用いられます。
これは、図のように、これらの種子を粉のように細かく砕いて水蒸気で蒸し圧搾器で押し絞って、油をとる方法です。

抽出法というのは、大豆やフタの実のようにふくまれている脂肪の量が少ない原料とか、ほかの方法で脂肪をとったかすから残っている脂肪をとりだすときなどに使われる方法です。

これは、エーテルーベンゼン・揮発油などの溶媒に細かく砕いた原料を入れる方法で、原料中の脂肪が溶媒に溶けたします。
そのあとで、蒸発しやすいこれらの溶媒を飛ばしてしまうとあとに脂肪が残るわけです。

動物性脂肪

動物では、脂肪はおもに、皮下脂肪貯蔵組織という部分ときには肝臓などにたくわえられています。

ふつう、陸産動物脂肪と海産動物脂肪の2つに分けられます。しかし、これらの性質は、かなり違っています。

陸産動物脂肪

おもに、ほ乳類の動物からとりだされます。
多くのものは、常温で固体です。また、空気中で酸化されにくい性質をもっています。

陸産動物脂肪には牛脂・豚脂・羊脂・バター・さなぎ油などがあります。

海産動物脂肪

常温では液体で、酸化されやすい脂肪です。
このままでは使いませんが、硬化油の原料として、多く用いられます。

海産動物脂肪は、魚油・肝油・海じゅう油に分けられます。

魚油には、イワシ油・ニシン油、肝油には、タラ肝油、サメ肝油、海じゅう油には鯨油などがあります。
肝油には、ビタミンAやDが多くふくまれています。

動物性脂肪のとりだし方

おもに用いられる方法は、いりとり法と、にとり法の2つです。
牛や豚のあぶら身を、なべで温めると、油が溶けてでてきます。

これはみなさんもよく台所で観察したことがあるでしょう。

いりとり法は、このように原料を熱して脂肪のまわりの組織を怖し脂肪を溶かし出す方法です。

いりとり法は、牛脂・豚脂などをとるときに使われます。
これにたいして、にとり法は、原料に水をくわえて煮だし水の上に浮いてくる脂肪をとる方法で、魚油をとるのに用いられます。



砂糖・グリコーゲン・セルロースの特徴とは? わかりやすく解説!

砂糖

サッカロース・しょ糖・かんしょ糖など、たくさんの呼び名があります。
やはり二糖類で、αぶどう糖とβ果糖から水一分子がとれて結合したものです。


砂糖にはフェーリング液を還元する性質がありませんが酸、またはサッカラーゼ(インベルターゼ)という酵素によって加水分解をうけると、還元性をしめすようになります。

また、砂糖を加水分解してえられるぶどう糖と果糖の混合物はニコルプリズムを通ってきた偏光を砂糖の場合と逆の方向に回転させるので転化糖といられます。

転化糖は、果糖をふくんでいるため砂糖より甘みが強くなります。

蜂蜜は、蜂のだ液にふくまれた酵素により砂糖が分解されて、一部が転化糖になっているものです。

砂糖は、いろいろな植物にふくまれていますがとくにテンサイ(サトウダイコン)の根やサトウキビの茎にたくさんふくまれているので、これから精製されます。

グリコーゲン

グリコーゲンは、でんぷんと同じように多糖類の炭水化物で、ぶどう糖がたくさん結合してできたものです。
グリコーゲンは、動物によってつくられ、植物ではほとんどつくられません。

でんぷんは、植物がつくったエネルギーの貯蔵庫ですがグリコーゲンは動物がつくるエネルギーのたくわえでおもに肝臓や筋肉に多く存在しています。

そこで、グリコーゲンは、動物性でんぷんともよばれることがあります。

グリコーゲンは、そのつくりがアミロペクチンとよく似ています。
しかし、分子のえだ分かれがもっと多く、ヨウ素でんぷん反応ではアミロペクチンが赤みをおびた青から紫色になるのにたいしグリコーゲンでは赤みがかったかっ色になります。



また、でんぷんと同じように、フェーリング液を還元しません。
動物体にたくわえられているグリコーゲンはエネルギーが心要になるとぶどう糖にまで壊され、血液で運ばれて、体中の細胞に入ります。

そこで、二酸化炭素と水にまで分解されるときにできるエネルギーが、利用されるのです。

また、酸素の供給が充分でないときには乳酸にまでしか分解がすすみません。
激しい運動をしたあとで、手足が痛くなるのはこうしてできた乳酸が筋肉中にたくさんたまるためなのです。

筋肉にたまった乳酸は時間が経つにつれて、またグリコーゲンにかわります。
食品のなかでは、動物の肝臓や貝類のカキなどが多量のグリコーゲンをふくんでいます。
食物100グラム中にふくまれるグリコーゲンの量は、つぎのとおりです。

肝臓では6グラム、牛肉1グラム。
たまごの黄身0.1グラム、カキ5.7グラム(2月)、0.49グラム(8月)などです。

セルロース

セルロースは、植物の細胞をとりまく壁をつくっている主成分で多糖類の一つです。衣料として使うワタは、ほとんど純粋なセルロースです。

セルロースは、水やうすい酸、うすい塩基には溶けませんが強い酸にあうと加水分解をうけ、ぶどう糖ができます。

セルロースは、私たもの体の中では消化できないので食品としては役立ちませんが牛や馬などの飼料として重要です。
この場合は、家畜の腸の中にいる微生物が食べた草のセルロースを分解して、ぶどう糖にかえるのです。

セルロースは、家畜の食物の他にパルプやレーヨンなどの原料として大切なものです。



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