脂肪とは? 脂肪のはたらきとは? わかりやすく解説!

脂肪は、ふつう、あぶらといわれているもののことです。
ふつうの温度では、固体のもの(肉のあぶらやバターなど)と液体のもの(なたねあぶらなど)とがあります。


しかし、固体のものでも、すこし温めると、どろどろしてきます。

脂肪をたくさんふくんだ食べ物には大豆・落花生・クルミ・バター・マーガリン・肉・イワシ・コイ・サンマなどがあります。

私たもの体では、内臓・筋肉にたくさんふくまれています。
また皮下脂肪として、たくわえられています。

秋から冬にかけて、鳥などの体には、だんだんあぶらがのってきます。
これは、寒さを防ぐ用意なのです。

増える脂肪は、だいたい、皮下脂肪としてたくわえられます。
外の寒さに体温を奪われないように、この皮下脂肪が壁をつくるのです。

私たちの体も、鳥と同じことです。

脂肪のはたらき

体の中に取り入れられた脂肪はすい液や腸液にふくまれているリパーゼのはたらきで消化され脂肪酸とグリセリンとになります。

これが腸で吸収されると、すぐにまた結びついて、脂肪になります。

吸収された脂肪は、リンパ管を通って、大静脈に運ばれます。
つぎに血液が、脂肪組織まで運んでいくのです。

脂肪は、脂肪組織としてたくわえられるほか炭水化物と同じように、熱や力のもとになります。

このとき、脂肪は酸素と結びついて、二酸化炭素と水ができ1グラムにつき、9カロリーの熱をだします。

ですから、同じカロリーがほしいときには炭水化物のかわりに脂肪をとれば、量が少なくてすみます。

そのほうが、胃や腸を疲れさせず、体のためにもよいのです。
しかし、あまりとりすぎると、消化がうまく行われないで、下痢を起こしたりします。




脂肪の消化とは? 脂肪の消化酵素とは? わかりやすく解説!

脂肪は、水に溶けにくく、水の中ではお互いに集まりあって大小さまざまな粒になっています。

このような脂肪が、腸の壁から吸収されるためには非常に小さな粒になるか、または分解をうけて水に溶けやすい形にならなければならないのです。


脂肪の消化酵素

脂肪の消化酵素は、リパーゼというものです。
リパーゼは、すい臓から分泌されるすい液や小腸の壁から分泌される腸液、胃の壁から分泌される胃液の中にふくまれています。

そのほかに、消化酵素ではありませんが肝臓でつくられるたん液が消化酵素のはたらきを助けています。

胆液は十二指腸に分泌される物質でこの中には、脂肪の粒を小さく分散する作用をもった胆汁酸という物質をふくんでいて脂肪がリパーゼのはたらきをうけやすくしたり吸収されやすくするのに役に立っています。

リパーゼのはたらき

脂肪は、グリセリンという水に溶けやすい一種のアルコールと脂肪酸という水に溶けにくい一種の酸が結合したものです。

脂肪が吸収されるためには、これが水に溶けやすい形にかわらなければなりません。リパーゼは、脂肪を分解して脂肪酸を切りはなしその成分であるグリセリンと脂肪酸にかえるはたらきをしています。

脂肪酸は、そのままでは水に溶けませんがナトリウム塩になると、水によく溶けるようになります。

胃・十二指腸・小腸で、リパーゼによって切りはなされたグリセリンと脂肪酸は、腸の壁から吸収されていくのです。




脂肪の用途とは? 石鹸とマーガリンの作り方とは?

石鹸

ふつう、私たちが使っている石鹸は、脂肪のケン化によってできる脂肪酸のアルカリ金属塩が主成分となっています。

石鹸には、硬石鹸と軟石鹸とがあります。

これは、石鹸をつくるときに使う脂肪の種類とアルカリの種類によって、かたい石鹸と柔らかい石鹸ができるところから名づけられたものです。


柔らかい石鹸は、脂肪酸の分子の小さいものからなる脂肪あるいは不飽和脂肪酸を多くふくむ脂肪からつくられます。

硬い石鹸は、分子の大きい飽和脂肪酸を多くふくむ脂肪を原料としたときにできます。
また、アルカリ金属塩をつくるため水酸化ナトリウムを使った石鹸はソーダセッケンとよばれ硬い石鹸となります。

これにたいして、水酸化カリウムを使ってできる石鹸はカリセッケンとよばれ、柔らかくて水によく溶けます。

これは、ひげそりクリームや液体石鹸など、特別なものに使われます。
石鹸をつくる場合の原料として、羊や牛の貯蔵脂肪が重要とされています。

これらの脂肪だけからつくられたものは石鹸として非常にすぐれた性質をもっていますが、水に少ししか溶けないために熱湯を使わなければならないという、欠点をもっています。

これは、牛や羊の脂肪をつくっている脂肪酸の性質によるためです。
そこで、この性質を改良するために、牛や羊の脂肪に植物の実からとった脂肪をまぜて、石鹸をつくります。

魚油のように、不飽和脂肪酸を多くふくむ脂肪は酸化されやすく、いやなにおいも強いので石鹸の原料としてはそのままでは使えません。

しかし、このように不飽和脂肪酸を多くふくむ脂肪は触媒を使い水素と化合させて硬化油にすれば、石鹸の原料として使えるようになります。

硬化油にすると、それまで常温で液体であったものが、固体の脂肪にかわります。

硬化油をつくることは、石鹸のほかマーガリンの原料をつくるためにも、工業的にたいへん重要なことなのです。

石鹸のつくり方

まず、天然の脂肪、あるいは硬化油に、水酸化ナトリウムをくわえケン化します。
この水酸化ナトリウムの量は、その脂肪がケン化するのに必要な量よりも、わずかに多くします。

これは、塩基がわずかに多いとケン化が速やかにおこなわれるからです。

ケン化が終わったら、塩化ナトリウム(食塩)をくわえて冷えないようにしておいておきます。
すると、石鹸は、濃い食塩水には溶けないので上のほうに浮かび上がり、グリセリンをふくんだ食塩水は下のほうに残ります。

このように、塩類をくわえて析出させることを、塩析といいます。
つぎに、このセッケンを分けとりますが、このときのセッケンはカードとよばれ、まだグリセリン・食塩のほか塩基などがいくらかまじっているので、水を充分にくわえて、煮て溶かしこれにさらに食塩をくわえて、ふたたび石鹸を固まらせます。

これを何回もくり返しておこない、不純物を取り除きます。
こうしてつくったセッケンは香料でにおいをつけたり染料できれいな色をつけたりしてから、家庭用として使われるのです。

また、薬用石鹸には、クレゾールや、そのほかの殺菌剤などがくわえられます。
なお、石鹸をつくるときにできるグリセリンは、別に集められて精製されます。



石鹸のはたらき

石鹸は、汚れを落とす力をもっています。
これは、つぎのような石鹸の性質によるためだと考えられています。

石鹸をつくっている分子はちょうど正反対の性質をもった2つの部分からできています。

その1つは、水の分子となじむ力の強いカルボキシル基でもう1つは水の分子となじむ力はないが炭化水素や油(あかや汚れの中にはこのような水に溶けにくい物質が多くふくまれている)となじむ力の強いアルキル基(炭化水素がくさりのようにつながったもの)の部分です。

このようなつくりのため、セッケツを水に溶かすと石鹸分子は、カルボキシル基を下にして水の表面に並ぼうとするので水の表面張力(表面が縮もうとする力)を小さくさせます。

このため、石鹸水は浸透作用が強く布の繊維の中にまで染み透るのです。

水の中に油があったり、布にあかや油がついていると水になじみやすいカルボキシル基を外側にしてアルキル基のほうが油やあかにくっつき、その表面を包みます。

その結果、油やあかの粒は細かく水中に分かれてちょうど水に溶けたようになって洗い落されるのです。

石鹸分子によって囲まれながら細かい粒になって分散するものが液体のときは乳濁液といい固体のときは懸濁液といいます。

洗濯をするときには、約40℃の水(軟水)に0.5パーセントの濃さに石鹸を溶かすのがよいとされています。

石鹸のように、分子の中に水となじみやすい部分とその反対の性質の部分とをもっ化合物は水に溶けて表面に集まり表面張力を小さくする性質があるので、表面活性剤といいます。

表面活性剤は、いっぱんに油を乳濁させ細かい固体の粒を懸濁させる力をもっています。

実験1

2本の試験管に、蒸留水を少し入れ、その各々に2、3滴の油をくわえます。
そして、いっぽうの試験管だけに、さらに数滴のセッケン水をくわえ両方の試験管を振って比べてみましょう。

石鹸水を入れたほうの試験管は油が水の中に溶けこんだようになって区別できず、白くにごって見えます。

これは石鹸の乳濁作用によるものです。

実験2

2本の試験管に蒸留水を少し入れ、それにススを浮かべます。
いっぽうには、粉石鹸を少しくわえ、両方の試験管をよく振ってからろ紙を使ってろ過してみましょう。

石鹸をくわえない試験管のほうはススがろ紙の上に残りますが石鹸をくわえたほうは、ススが細かい粒に分けられてろ紙のめを通り抜けてしまい、下ににごった水がたまります。

これは、石鹸の懸濁作用によるものです。

実験3

毛織物を、水と石鹸水の上に落として、ぬれ方を調べましょう。
石鹸水に落としたほうは、ぬれてしまいますが水に落としたほうは、水をはじいてぬれません。

これは、石鹸水が、水の表面張力を小さくしてしまうので水が玉にならず、織物のすきまに入っていくからです。

これが石鹸の浸透作用です。

マーガリン

マーガリンは、バターの代用品で植物油やその硬化油、および動物油などをおもな原料としてつくった食品です。

人造バターともよばれています。

工場では、つぎのようにしてマーガリンをつくっています。

まず、原料の脂肪を中和タンクの中に入れ、水酸化ナトリウムで中和します。
つぎに、今までついていた色をなくしたり、汚いものを除くため脱色タンクにうつし、白土を使って脱色します。

白土というのは、ケイ酸とアルミナを主成分とした粘土でその粒は、水分や油の中の不純物を吸いつける性質があります。

このようにした脂肪を、ニッケルを触媒として水素を添加し硬化油にします。

つぎに、この硬化油をろ過し、においをぬくところにおくります。
ここで蒸気をふきこんで、においを除きます。

そして、もう一回ろ過機でこして、配合タンクに入れます。
この配合タンクでは、いろいろな硬化油を適当にまぜあわせます。

このようにした脂肪を乳化機で食塩・発酵乳・香料・色素などと乳化させよくこねまぜるとマーガリンになります。



脂肪の性質とは?脂肪の検出法とは? わかりやすく解説!

脂肪の性質

①きれいな脂肪は無色で、味もにおいもありません。
しかし動植物からとったままの、天然の脂肪はたいていうす黄色で特有のにおいと味をもっています。


これは、天然の脂肪の中に脂肪が酸化されて壊れたものや脂肪に溶けやすい色素などがまじっているためです。

②いっぱんに脂肪は水に溶けませんがニーテル・ベンゼン・クロロホルムにはよく溶けます。

また、アセトン・アルコールにもかなりよく溶けます。
脂肪は水に溶けないので動物の血液中やリンパ液中ではたんぱく質と結合して非常に小さな粒になってまじっています。

③脂肪は水よりも軽く、水にうきます。
水は4℃のとき 1立方センチが1グラムですが1立方センチの脂肪は、平均0.93グラムです。
したがって、水の上に浮くわけです。

④脂肪はよく燃えます。脂肪が燃えるとススが多くでるのは、炭素にくらべて酸素を少ししかふくんでいないため完全に酸化されずに一部が炭素のままで残り、これがススとなるからです。

脂肪の分子は炭素のほかに、酸素と水素とからつくられていますから純粋な脂肪が完全に燃えるとすべて二酸化炭素と水とになってしまい残りかすはでません。

⑤脂肪を水酸化ナトリウム水溶液と煮ると、ケン化します。

⑥脂肪を長くほうっておくと、酸敗します。
たとえば、バターなどを長く空気中にほうっておくと嫌なにおいや味がしたり、色がかおったりします。

このうち、酸っぱくなった原因は、脂肪が壊れて脂肪酸が生じたためです。
また、嫌なにおいがでるのは脂肪の中の不飽和脂肪酸が空気中の酸素と水分などによって壊されアルデヒドやケトンなどというものをつくるためです。

これを脂肪の酸敗といいます。
このとき銅や鉄などの金属イオンがそばにあると酸敗が早く進みます。
また、不飽和脂肪酸の多い脂肪のほうが酸敗しやすいようです。

脂肪の酸敗をふせぐためには、脂肪を触媒といっしょに水素で処理することが多くおこなわれています。
このように処理したものは融点があがり、常温で固体になります。

これを硬化油といいます。



脂肪の検出法

脂肪の存在はつぎのような方法で調べられます。

においによる調べ方

① 粉末の硫酸水素カリウムを試験管に少し入れそれに3,4滴のオリーブ油をくわえます。

そして、試験管の底を注意しながら、はじめはゆっくりと熱しだんだん火を強くしていくと、やがて、鼻をつくようなにおいのある気体が出てきます。

これは、オリーブ油の分子の中のグリセリンの部分が熱によって壊されグリセリン一分子から、水二分子がぬけて、アクロレインという物質にかわったからです。

油のかわりに、グリセリンを使っても同じようなにおいがします。

② 日本ろうそくの火をふきけして、においをかぐと鼻をつくようなにおいがします。
これは、日本ろうそくが、脂肪の一種である木ロウを原料にしているからです。このにおいも、アクロレインのためです。

ヨウ素液による調べ方

試験管にオリーブ油を0.5グラムとりクロロホルム20立方センチをくわえて、よく溶かします。

これに、ヨウ素のアルコール溶液を一滴くわえるとかっ色をしたヨウ素の色が消えてしまいます。
これは、オリーブ油の成分の不飽和脂肪酸が、ヨウ素と結合したからです。




脂肪のつくりと性質とは? 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とは?

脂肪の成分

脂肪を過熱水蒸気などで分解すると、グリセリンと脂肪酸とに分かれます。
これは脂肪が加水分解をしたのです。

この分解によってできた脂肪酸は、一種の酸なので水酸化ナトリウムをくわえると中和され、塩をつくります。

このような脂肪の分解を、ケン化といいます。


脂肪の加水分解を反応式であらわすと、下のようになります。

この式のなかで、Rというのは、アルキル基のことでR2、R3は炭素の数の違う
いろいろのアルキル基をあらわしています。(アルキル基というのはCnH2n+1という式であらわされる炭化水素の原子団でメチル基CH3―、エチル基C2H5―などがあります。

さて、動植物体に貯蔵されている脂肪の大部分はグリセリン一分子と、脂肪酸三分子とから三分子の水が分離された形の結合をしてできているのです。

これを中性脂肪ともいいます。

このグリセリンに結合している3つの脂肪酸は全部同じのものもありますが大部分の脂肪では、違った2種か3種の脂肪酸がむすびついています。

グリセリン

グリセリンは、脂肪をケン化してできたものでグリセロールともリスリンともいわれ、水やアルコールによく溶ける液体です。
甘味があり、その強さは、砂糖の6分の1ぐらいといわれています。

私たもの体の中では、グリセリンを酸化して、二酸化炭素と水にしたりぶどう糖をつくったりすることができるのでグリセリンはエネルギー源として、栄養となっていることがわかります。

グリセリンは、化粧品や医薬品の製造に利用されたりニトログリセリンをつくって、ダイナマイトの製造に使われたりしています。



脂肪酸

動植物体内では、脂肪酸がそのままの形であることはほとんどなく、グリセリンと結合して脂肪となっていたりコレステリンやアルコール類と、むすびついています。

ミツバチの巣の主成分である蜜ロウは脂肪酸と高級アルコールとが結合したものです。
脂肪酸は、炭素の原子からなる1本のくさりに水素原子がむすびついていていっぽうのはしに、カルボキシル基―COOHという酸性の原因になる原子団がついています。

天然の脂肪酸は、炭素の数が偶数のものですが炭素の数などによって、いろいろな種類の脂肪酸に分けられます。

低級脂肪酸と高級脂肪酸

酢酸CH3COOHのように、炭素の数の少ないものを、低級脂肪酸といいます。
ラク酸C3H7COOHなども、この仲間です。

また、炭素の数の多いものを、高級脂肪酸といいます。
酢酸は、水に溶けて酸性をしめしますが、炭素数の多い脂肪酸も、含水アルコールに溶けてリトマス紙を赤にかえたり塩基を中和させたりする酸の性質をもっています。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

脂肪酸には、炭素のくさりに水素が充分についているためヨウ素と結合しにくい性質をもったものと炭素のくさりにつく水素原子の数が不十分なため、ヨウ素と結合しやすい性質のものとがあります。

ヨウ素と結合しにくい脂肪酸を飽和脂肪酸といいます。
ステアリン酸・パルミチン酸などはほとんどすべての脂肪にふくまれている飽和脂肪酸です。

これにたいして、ヨウ素と結合しやすい脂肪酸を不飽和脂肪酸といいます。
オレイン酸・リノール酸・リノレン酸などがあります。

オレイン酸は、ほとんどすべての脂肪にふくまれています。
また、リノール酸、リノレン酸はすべての乾性油・半乾性油にふくまれているものです。



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