でんぷんの消化とは? てんぷんの消化酵素とは?

食物の中にふくまれる、でんぷんや脂肪、たんぱく質は非常に大きな分子であったり、また分子どうしがたくさん集まって大きい粒子をつくったりする性質が強くてそのままでは、すぐに腸の壁から吸収されません。

そこで、食物が口から胃をとおっていく間にいろいろな消化酵素のはたらきでより小さい、より吸収されやすい形に変化されます。


でんぷんの消化

でんぷんはぶどう糖が、ちょうどくさりをつくるようにたくさんむすびついてできあがった、たいへん細長い大きい分子からできています。

でんぷんが体の中に栄養分として吸収されるためにはぶどう糖にまで分解されなければならないのです。

てんぷんの消化酵素

でんぷんを消化するはたらきをもつ酵素に、アミラーゼとマルターゼがあります。
アミラーゼは、さらにそのはたらきの違いによってαアミラーゼと、βアミラーゼの2つに分けられます。

これらは、でんぷんを麦芽糖にまで分解するはたらきをします。
このうちαアミラーゼは、おもにだ液中にふくまれています。

また、すい臓からでるすい液の中にはαアミラーゼとβアミラーゼがふくまれていて十二指腸ででんぷんにはたらきます。

マルターゼは、アミラーゼが分解した麦芽糖をさらにぶどう糖にまで分解し、腸の壁から吸収されやすいようにする酵素です。
マルターゼは、腸の壁から分泌される腸液中にふくまれています。

アミラーゼのはたらき

でんぷんが消化される第一段階では、このでんぷんをつくっている300個あるいはそれ以上たくさんの、ぶどう糖とぶどう糖の間のむすびめが切られて、小さくなっていきます。

このはたらきをするのがアミラーゼですがこの切り方には2種類の方法があります。

1つは細長いくさりをでたらめに、ばらばらに怖していくやり方でもう1つは、くさりのはしから、きちんと一定の間隔をおいて切っていくやり方です。

第一の方法で切られた場合、最初にできるものはなおぶどう糖がたくさんつながった形をしています。

これをデキストリンといいますが、このデキストリンはそのままでは、まだ吸収されません。

第二の方法では、でんぷんは2個のぶどう糖が結合したものとして順々に切りはなされながら、どんどん小さいものになっていきます。
この場合できるものは、ぶどう糖2個が結合した糖、すなわち麦芽糖です。



第一の方法で、でんぷんを壊していくはたらきをもったアミラーゼをαアミラーゼ。

第二の方法で、でんぷんを壊していくアミラーゼをβアミラーゼといいます。

αおよびβアミラーゼはもちろん、デキストリンにもはたらいて麦芽糖をつくるはたらきをします。

私たちが、でんぷんをたくさんふくんでいる食物をよくかんでいるとしだいに甘さがましてくることに気がつくでしょう。

これは、だ液の中のアミラーゼによってでんぷんから、おもにデキストリンができさらに、しだいに麦芽糖ができるからです。

だ液にふくまれているアミラドセ(おもにα アミラーゼで、プチアリンとよばれることもある)によって充分に分解をうけなかったでんぷんやデキストリンは
胃の中では、ほとんど酵素のはたらきをうけません。

それは、胃液の酸性が強いのでだ液のアミラーゼの活動がとめられてしまうからです。

しかし、胃に入ったものがしだいに十二指腸に入っていくにつれてふたたびアミラーゼのはたらきをうけるようになります。

それは、すい臓から腸の中にだされている塩基性のすい液の中にいろいろな消化酵素がふくまれ、その中にアミラーゼもあるからです。

マルターゼのはたらき

アミラーゼによってでんぷんは腸の中で二分子のぶどう糖からなる麦芽糖にまで完全に分解されていきますが、これはまだ吸収できる形ではありません。

でんぷんが栄養分として、腸から吸収されるためにはぶどう糖の形にならなければならないのです。

小腸の壁からはマルターゼをふくんだ腸液が分泌されここで、麦芽糖はさらに分解をうけて、完全にぶどう糖にまで壊されやがて小腸の壁から血液中に吸収されていくのです。




でんぷんの性質とは? わかりやすく解説!

可溶性でんぷんとデキストリン

でんぷん粒を熱したり、あるいはうすい塩酸をはたらかせたりするとでんぷんは水に溶けやすい可溶性でんぷんになります。

可溶性でんぷんは、のりにしたり紙をすくときにまぜたり糸をつむいだりするときに利用されます。

可溶性でんぷんになると、でんぷんは少し壊れていますがこれがさらに壊されていくと、デキストリンとよばれるものになります。

デキストリンも、のりとして使われています。


でんぷんの糊化

でんぷん粒は、水をくわえただけでは、何の変化もおこしませんが
だんだんと温度を上げていくと、水を吸ってふくれはじめ
ある温度になるとふくれ方が急に激しくなり
ついにでんぷん粒が破れ、中からでんぷんがでてきます。

こうして、液はねばっこくなりのりができます。
このように、のりになることを糊化とい卜ます。

糊化温度

でんぷんからのりができるときの温度、正確には、でんぷん粒が急にふくれあがる温度を糊化温度といいます。

糊化温度は、どのでんぷんでも同じというわけではなく、そのでんぷんをふくむものによって、いろいろと違います。

糊化温度のいちばん低いのはトウモロコシのでんぷんで64~71℃いちばん高いのは、サツマイモのでんぷんで82~83℃です。

でんぷんの糖化

でんぷんに麦芽をはたらかせると、甘い水あめができます。
また、ごはんを口の中でよくかむと、だんだん甘みがついてきます。

これは、麦芽やだ液の中に、アミラーゼとよばれる酵素があってでんぷんを分解し、麦芽糖というものにかえるからです。

この反応を、でんぷんの糖化といいます。
できた麦芽糖は、砂糖によくにた物質で水によく溶け、甘みがあります。

アミラーゼは、このほかダイコン・ジャガイモなどいろいろな野菜にふくまれていますが、熱に弱いので料理のとき熱するとすぐ壊れてしまいます。

でんぷんにアミラーゼがはたらくとアミロースは完全に分解されて全部甘い麦芽糖にかわります。
ところが、アミロペクチンは、完全には分解しません。

これは、アミラーゼが、アミロペクチンのえだの分かれめに邪魔されてはたらきかけることができなくなるからです。

ヨウ素でんぷん反応

でんぷんにヨウ素をはたらかせると青くなることは19世紀のはじめからよく知られていました。

今でもこのヨウ素でんぷん反応はでんぷんを調べるときによく利用される大切な反応なのです。

ヨウ素でんぷん反応の液は、ヨウ化カリウムの20パーセント水溶液にヨウ素をくわえた、かっ色の液です。
この液の一滴をでんぷんの水溶液にくわえると、濃い青色から紫色になります。

このように着色したものを静かに温めていくと色は消えますが液を冷やすとまた色がつきます。

でんぷんには、アミロースとアミロペクチンの2つの成分かおりますがヨウ素でんぷん反応の色もそれぞれ違います。

アミロースは、この反応で青色になりますがアミロペクチンは、赤みをおびた青から紫色になります。
ヨウ素でんぷん反応は、でんぷんが分解されて麦芽糖になるともう見られなくなります。

それで、この反応を使ってでんぷんがどのくらい分解されたかを調べることができます。



実験

充分にかんで甘みのなくなったチューインガムをさらにかみでてくるだ液を集めます。
また、でんぷん1グラムを100立方センチの水とまぜて温めたでんぷん液をつくっておきます。

つぎに、何本かの試験管にでんぷん液1立方センチとだ液1立方センチをまぜ、体温くらいに温めておいて5分おきにヨウ素液を一滴ずつくわえていきます。

はじめは、ヨウ素液をくわえると、青い色になりますが時間が経つにつれて、反応の色がでなくなります。
これは、だ液によって、しだいにでんぷんが糖化されていくからです。

フェーリング液との反応

酒石酸カリウムナトリウムの塩基性溶液に硫酸銅を溶かしてつくった青色の溶液を、フェーリング液といいます。

試験管に、このフェーリング液を少しとってぶどう糖をくわえ、沸騰させると、それまで青かった液がたちまち赤くにごりはじめ、やがて赤い沈殿ができます。

これは、硫酸銅が、ぶどう糖で還元されて、赤い酸化第一銅にかわったからです。
フェーリング液を還元する性質は、ぶどう糖だけでなく、麦芽糖や乳糖も、もっています。

ところが、でんぷんには、この性質がありません。
また、でんぷんと同じように、ぶどう糖が結合してできたグリコーゲンにもありません。

そこで、でんぷんやグリコーゲンが分解されたかどうかを確かめるために
この反応が利用されます。

実験

まず、つぎのような2種類の溶液をつくります。
①結晶硫酸銅34.6グラムを500立方センチの蒸留水に溶かす。

②酒石酸カリウムナトリウム173グラムと水酸化ナトリウム50グラムを500立方センチの蒸留水に溶かす。

①と②の溶液を、それぞれ2立方センチずつとってよくまぜこれにだ液で消化したでんぷん液をくわえバーナーで熱します。

すると、赤い沈殿ができます。

これは、でんぷんの分解によって、麦芽糖ができた証拠です。
この麦芽糖が、フェーリング液を還元するのです。

だ液をくわえなかったでんぷん液は、反応しないことも確かめましょう。



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