腐敗とは? 脂肪とたんぱく質の腐敗とは? わかりやすく解説!

腐敗というのは、発酵と同じように、微生物のはたらきによってもっとくわしくいえば、微生物のもつ酵素のはたらきによって物質が変化することです。

しかし、その変化が、有害なものや、いやなにおいを発するなどいっぱん的に品質を悪くする方向に向かっておこなわれる場合を、とくに腐敗といいます。


パスツールの実験

腐敗が、そこに繁殖する微生物の生活の営みによっておこることをはじめて証明したのも、やはりパスツールです。

パスツールは、肉の汁をフラスコに入れたのちフラスコのくびを細く曲げて引きのばしたものをいったんよく煮沸しておいてからほうっておいたものは腐敗しないがくびを引きのばさないでほうっておいたものはやがて腐敗していくことをしめしました。

これは、空中のごみといっしよに細菌がフラスコの中におちて繁殖したからです。
つまり、細長く、まがりくねったくびをもつフラスコの中にはこのような空気中の細菌をふくんだごみがおちにくいからです。

もちろん顕微鏡でみれば、腐敗した肉の汁には細菌がたくさん観察されます。

腐敗のときの変化

ミカンなどを、温かい部屋においておくとよく皮がべとべとになって、くずれるようになります。

それは微生物が繁殖し、それがつくりだす酵素のはたらきでミカンの皮をつくっているペクチン質などがおかされていくからです。

生のジャガイモなどが腐るのも同じ理屈です。
このとき、べっとりした、ねばっこいものが同時にできることがあります。

これはちょうど、納豆の場合と同じことで微生物のはたらきによって、水に溶けてねばっこい性質をしめすような物質(おもに、たくさんの糖からできている大きな分子からなるもの)がつくりだされたからです。

腐敗と納豆

納豆の場合には、納豆菌という一種の細菌が蒸した大豆に繁殖して大豆のたんぱく質を分解すると同時に納豆菌特有の粘質物を分泌してできたものです。

しかし、納豆はこれによって、味も風味もよくなるものですから別に腐敗とはいいません。

脂肪の腐敗

脂肪、とくに魚の油は長くほうっておくと生ぐさい嫌なにおいをはなつようになります。

この変化は、空気中で、酸素や日光のはたらきでもゆっくりおこりますが、微生物の繁殖によって非常に早くおこります。

これは、脂肪の中にふくまれる脂肪酸のうちのことに不飽和脂肪酸といって、いろいろの反応性にとむ脂肪酸が酸化されてアルデヒドのような物質にかわるからです。

また、このような、酸化の途中で脂肪酸は、分子が多数結合しあって、かっ色に着色したりかたまったりすることもあります。

微生物のはたらきによって、脂肪が分解するときはおもに微生物のもつリポキシダーゼという不飽和脂肪酸を酸化する酵素が関係しているのです。

このような酸化は、ビタミンEなどの酸化防止剤を添加することによってもある程度ふせぐことができます。



たんぱく質の腐敗

よく、くさった魚肉などで中毒することがあります。
これは魚肉の中のたんぱく質が、微生物によって分解されアミノ酸を生じこれがさらに変化をうけて、いろいろ有毒な物質を生じるからです。

アミノ酸から二酸化炭素がとれてできるいろいろの物質は激しい生理作用をもつものが多くその中にはプトレシン・カダペリンのような猛毒のあるものが知られています。

また、たんぱく質がくさるといやなにおいをだしますがこれは、アミノ酸が分解してできる。

硫化水素・メルカプタン・イソドール・スカトール・アソモニアなどによるのです。
たまごが腐ると黒くなりますが、これは硫化水素と鉄分が反応して硫化鉄ができるからです。

食物の保存

食物が腐敗する一つの原因は、細菌・酵母・カビなどの微生物が繁殖しこれらのもついろいろな酵素によって、食品の成分が変化をうけるからです。

それで、微生物が繁殖しにくいような条件にしてやればなかなか腐敗しないことになります。

このためには、いろいろな工夫がなされています。

たとえば、冷凍にしたり、冷蔵庫に入れたりして低い温度で食物をたもっておく方法が、よく使われます。
これは、微生物が、低い温度では繁殖しにくいからです。

このほか、微生物が、よく繁殖するためには適当な水分が必要です。

それで、食品をよく乾燥して水分を少なくしておくこともよい方法です。
乾物・あるいは乾燥食品というのがこれです。

また、防腐剤として、わりあい人体に害が少なくて微生物の発育をおさえ、これを殺すような薬品をくわえる方法も使われています。
防腐剤には、サリチル酸エステルや、抗生物質などが用いられます。

缶詰や瓶詰のようにして、あらかじめ、加熱して殺菌したあと食物を外気から遮断して微生物が入らないようにする方法もあります。

また、特別な微生物を除いては、非常に高い濃度の食塩や砂糖の溶液酸性の強い液中では、繁殖しにくいので、塩漬けや砂糖づけにしたり酢につけたりして保存することもあります。

ミルクやビール・清酒などの滅菌操作としては、火入れをおこないます。
これは微生物は、ある温度以上では、死んでしまうからです。

これは、パスツールによって有害な微生物を殺して腐敗をふせぐ方法として発見されたものですから今日でも、パスツーリゼイションとよんでいます。

残った食物でも、ときどき煮ておくとかなり長いあいだ保存できることは、家庭でもよく知られ、行われていることです。




発酵とは? 発酵に使われる材料とは? わかりやすく解説!

ブドウのしぼり汁を、かめに入れて密閉し、そのままにしておくとしだいに泡がではじめて、ぶどう酒のにおいがするアルコール分ができます。

これが昔から知られていた、もっともかんたんな発酵によってアルコール飲料をつくる例です。


また、食物をほうっておくと、ことに夏のあついときなどはべとべとしたり、いやなにおいや味をもつようになります。

これは食物が腐敗したのです。

発酵も腐敗も、微生物のはたらきによっておこる物質の変化ですが発酵はどちらかというと、ある原料から有用な目的で決まった物質を集めようとしておこなわれるものです。

これにたいして、腐敗は、品質や外観が悪くなって値打ちが下がるような方向に、食物などが変化した場合をいいます。

つまり発酵は、私たちの生活に役立ちますが、腐敗はこの反対なのです。

発酵

人間は、大昔から、それぞれの地方で、果物や麦や米などでんぷんや糖分の多い材料を使って、アルコール飲料をつくる方法を知っていました。

この場合、その材料の中にふくまれているでんぷんや糖分は最後には二酸化炭素とアルコールになっていくのだということだけはわかっていたのです。

しかし、これが、酵母という微生物によっておこなわれていることがわかったのは19世紀のフランスの科学者、パスツールの研究の結果なのです。



発酵のいろいろ

ぶどう酒やビールや清酒のように、アルコールをつくる目的で糖分を酵母のはたらきによって変化させることをアルコール発酵といいます。

しかし、アルコール以外のものをつくる場合にも、微生物はさかんに利用されます。

たとえば、アルコール酵母のかわりに、乳酸菌を使って糖分を乳酸にかえることもできます。

この場合は乳酸発酵とよんでいます。

このほかにも、酢酸をつくったり、アセトンやブタノールをつくったりそのほか人間の生活に役立つ、いろいろの物質をそれぞれ適当な酵母やカビ・細菌などを用いてつくらせることができこのための工業がさかんになってきました。

発酵の材料

発酵に使われる材料は、別に糖分とはかぎりません。
その目的によって、たんぱく質や、そのほかのものもいろいろと利用されています。

たとえば、我が国で調味料として欠くことのできない醤油や味噌などは、大豆や麦の中にふくまれている糖分のほかにたんぱく質が分解してできるアミノ酸やそのほか微生物のはたらきによってつくられたかおり・風味をあたえるようなものをふくんでいます。

このように、微生物や酵素を利用していろいろと役に立つものをつくる方法を、釀造とよんでいます。




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