遺伝子と遺伝形質

生物は子どもを生んで、仲間を絶やさないようにしています。

しかも、ある種の生物から、ほかの種の生物が生まれてくるようなことはありません。

たとえば、ウシからは、ホルスタインとジャージーというように違った品種のウシをかけ合わせても、いつもウシという種だけが生まれてくるのです。

また、違った種の生物どうしから子どもができるということも、滅多にありません。

たとえば、ヤギとヒツジ、ノウサギとカイウサギどうしからは種が違うので、子どもが生まれません。

動物園などでは、属や種の違う動物どうしから子どもが生まれることも、ごくまれにはあります。

ヒョウとライオンの子どものレオポン、ロバとウマの子どものラバ、ライオンとトラの子どものライガーやタイオン、シマウマとトカラウマの子どものトカラ・ゼブラなどです。

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しかし、これらの動物からは、子どもが生まれません。

私たちが、父や母に顔かたちや性質などが似ているように、ほかの生物でも子どもは親に似ています。

これは、親の特徴が子に伝わるからです。

このように、親の特徴が子に伝わることを遺伝と言い、そのはたらきをするものを遺伝子と言います。

また、遺伝子のはたらきで子にあらわれる親に似た顔かたちや性質を遺伝形質と言います。


メンデル研究

親の特徴が子に伝わるのには、一定の決まりがあります。

これを遺伝の法則と言います。
この法則は1865年、オーストリアのメンデルによって発見されたものでメンデルの法則とも呼ばれています。

メンデルは、エンドウを使って実験しました。
エンドウにあらわれている、とくに目立った特徴を7つ選び、その特徴がどのように遺伝するかを調べたのです。

この研究の結果、メンデルは遺伝のしかたに3つの決まりがあることを見つけました。

この3つの決まりは「支配の法則(優性または、優劣の法則)」「分離の法則」「独立の法則」と言われています。

支配の法則

エンドウについて調べてみると、背の高いものと背の低いものとがあります。

メンデルは、このような反対の特徴をもったエンドウをかけ合わせて種を実らせました。

そしてこの種をまいて、育ててみたのです。
すると、どの種をまいてみても、背の高いものになることがわかりました。

これは、背の高い特徴が、背の低い特徴よりも強くて背のひくい特徴を、おおい隠してしまったからです。

この強いほうの特徴を優性と言い、隠された背の低い特徴のほうを劣性と言います。

こうして、メンデルは、優性の特徴を持ったものと劣性の特徴をもったものとをかけ合わせると、その子には、優性の特徴だけがあらわれることを確かめました。

この遺伝の決まりを支配の法則と言います。

分離の法則

メンデルは、さらに研究を続けました。
こんどは優性の特徴をあらわした子の種をまいて、孫を育ててみたのです。

すると、孫の代には背の高いものばかりでなく背の低いものもあらわれてきました。

エンドウは、自花受粉と言って、花は自然のままでは、その花の花粉が、同じ花のめしべについて実をむすぶ性質があります。

したがって孫の代は子の代の別々のものをかけ合わせたことと同じになるのです。

そこでメンデルは、この場合、優性と劣性のあらわれかたには一定の決まりがあるのではないか、と考えました。

そして、孫の代の優性と劣性のあらわれかたの割合が3対1になることを発見したのです。

もっとくわしくいうと、この優性のもの中には混じりけのない優性の特徴のものが3分の1、劣性の特徴を隠したものが3分の2、入っています。

このように、孫の代に、優性のものと劣性のものが3対1という決まった割合であらわれてくることを分離の法則と言います。

このような関係は、オシロイバナの花の赤いものと白いものとをかけ合わせると、よくわかります。

孫の代では、赤花のものと白花のものが4分の1ずつ桃色のものが2分の1の割合でできます。

オシロイバナでは、父親と母親の両方の特徴の混じったものが桃色になるのです。



独立の法則

メンデルは、エンドウの7組の特徴について研究しました。

ところが、この7組の特徴(前ページの表)はお互いのあいだに、つながりがないことに気づきました。

たとえば、背の高さについての特徴は種の形についての特徴とはつながりがないのです。

つまり、背が高いものは、必ず種の形がまるいとか背の低いものは、必ず種にしわがよっているということはないのです。

このように1つの特徴が、ほかの特徴と、まったくつながりなく遺伝することを、独立の法則と言います。

両性雑種

メンデルは、また、互いにつながりのない2組の特徴をいっしょに取り扱うと、それらの特徴がどのように遺伝するかを調べました。

このように、互いに違った2組の特徴をいっしょにとりあつかったとき、これを両性雑種と言います。

たとえば、エンドウの種がまるくて黄色のものと種がしわばって緑色のものとのあいだでは子の代に種がまるくて黄色のものがあらわれましたが、これらを自花受粉させて孫の代をみると、つぎのような特徴のものがあらわれました。

下の数字は、あらわれてきた数です。

  • 種がまるくて黄色のもの……315
  • 種がまるくて緑色のもの……108
  • 種がしわばって黄色のもの……101
  • 種がしわばって緑色のもの……32

これらのあらわれた数をみるとおよそ9・3・3・1の割合になっていることがわかります。

これを種の形だけで見ると、まるいものとしわばったものは423対133でほぼ3対1、種の黄色のものと緑色のものは416対140で、だいたい3対1の割合になっています。

これは、さきに独立の法則で述べたように、種の形と色という2つの特徴は互いにつながりがなく、別々に遺伝するからです。

これらのことから、種の形の特徴では、まるいものがしわばったものに対して優性であり色の特徴では黄色が緑色に対して優性であることがわかります。

この場合、孫の代に、はじめにかけ合わせた両親の特徴が互いにいれかわった、種がまるくて緑色のものと種がしわばって黄色のものが、あらわれてきましたが、これは、子の代にはあらわれなかった劣性の特徴が、あらわれてきたのです。

孫の代に、はじめの両親の特徴がいれかわってあらわれるものでは自花受粉を続けていくかぎりいつまでもその特徴をもった子孫があらわれてきますから、かけ合わせによって品種改良ができるわけです。