形鋼
図は角棒を曲げたとき、内部にはたらく応力の分布をわかりやすくあらわしたものです。
棒の上面では、左右の方向に引っ張りあう力がいちばん大きく下にいくにしたがって小さくなり、中間の断面にそってゼロになっています。
それより下では左右に押しあう圧縮の力にかわりいちばん下の面で、その力がいちばん大きくなっています。
このように、棒を曲げたときは、棒の軸に沿って上半分は伸び、下半分は縮んでいます。
この境目の面は、伸びも縮みもしないため、中立面と呼んでいます。
中立面の付近は、ほとんど力がはたらいていないのでこの近くの材料を節約しても、棒の強さには、影響がないはずです。
実際に、このような工夫をして、断面の形を決めたものに建築物や橋などの構造物に使われている、I形の鋼材があります。
これは、材料を節約していながら、曲げに対して、非常に丈夫です。
レールも、これに近い形をしていて、列車の重みによく耐えています。
建築物や構造物に使われる鋼材には、断面がI形をしたもののほかL形(山形鋼)や、U形(溝形鋼)・T形・H形をしたものなどがつくられています。
このような鋼材は、形鋼と呼ばれています。
形鋼は、それだけを、はり(けた)や柱として用いるばかりでなく山形鋼と鋼板とを組み合わせて、組み立てばりや組み立て柱として使っています。
形鋼のほか、断面が円・正方形・八角形をしたものなどがあります。
これらは、棒鋼と呼ばれ、建築物や構造物を組み立てるのに使われています。
丸棒と円筒
同じ量の材料を使った、丸棒と円筒とをくらべてみると中のつまった丸棒よりは、中が空になった円筒のほうが曲がりにくくまた、折れにくいことがわかります。
これは、円筒のほうが中立面の付近の材料を、ほとんど取り去って引っ張りや圧縮の力がはたらく、まわりの部分に集めてあるからです。
洋服ダンスの中の横棒や、椅子などによくパイプが使われているのは、このためです。
また、竹の竿が木の棒にくらべて軽く曲げに強いのも同じような理由からです。
釣竿には先ほど小さく、ねもとほど大きい曲げモーメントがはたらきます。
それで、先がしだいに細くなっている竹が使われます。
材質と強さ
棒は、断面の形によって、曲げの力に対するたわみや、応力が違いますが、材料が木材か金属か、鋼か鋳鉄かアルミニウムかによりまた応力の種類によっても、強さが違います。
同じ木材でも、スギにくらべると、ヒノキやラワンのほうが
曲げたときの破壊に対する強さが強く、カシはさらに強くなります。
水分をふくんだ木材は、乾燥した木材より、強さが劣ります。
また、繊維に平行な方向では引っ張りに強いが
繊維に垂直の方向では、弱くなります。
金属材料では、金属の成分の種類や割合によって強さが著しく違ってきます。
また、どれほど加工したか、どのような熱処理をしたかなどによっても強さが違ってきます。