サルの社会とは? ボスザルとは? 餌をとる順位とは?

サルの社会

私たち人間の社会に、もっともよく似た群れをつくる動物はサルです。

アフリカのヒヒや、マライ地方に住むテナガザルなどは大きな群れをつくっているので有名です。

けれども、それらの群れのしくみが、どうなっているのかは、まだよく調べられていません。


ニホンザルの群れ

サルのうちでも、日本に住むニホンザルは日本の学者によって群れの生活の様子が、くわしく調べられています。

そして、サルの群れにも、順位や役目が決まっていて人間の社会と、よく似たしくみのあることがわかってきました。

サルの仲間は、熱帯地方に多くすんでいますが、そのうちで、ニホンザルは、もっとも北に住んでいる種類です。

南は九州から、北は青森県にまでおよび、山の中に群れをつくっていて、木の実や若葉・昆虫などを食べています。

そして、1つの群れは、含まった土地に住んでいて、そこから、ほかの土地へ動くことはありません。

各地のニホンザルのうち、いちばんよく調べられているのは大分県の高崎山に住むサルの群れです。

高崎山は山が険しく木が多いのでサルが住むには都合のよいところなのです。

ここには、むかしからサルが住みついていて、いまでは約1200匹の大きな群れになっています。

ここに、えさ場をつくり、ときどきリンゴ・ミカン・サツマイモなどのえさをやるので、人に慣れてきて人の手からえさをもらうサルも多くなってきました。

ボスザル

時間を決めて、えさ場にえさをまくと、サルが集まってきます。

集まったサルの群れを注意してみると、ところどころに大きなおすザルがいます。この大きなおすザルが、群れの頭で、ボスと言われます。

ボスの勢力は非常に強く、自分の好きなところに座りえさを好きなだけ食べることができます。
ボスが尾を立てて歩いていくと、ほかのサルは食べかけていたえさを捨てて、逃げてしまいます。

ボスは1つの群れに、1匹いるのがふつうですが高崎山のように大きな群れになると、5、6匹のボスがいます。

ボスの順位

よく観察するとボスたちには勢力の大きなものと勢力のあまりないものとがいることがわかります。

勢力のあるボスが、それより勢力のないボスのそばに近よると勢力のないボスはそこから、はなれてしまいます。

勢力のあるボスは、ほかのボスの前を通るときでも尾を挙げて威張っていきますが勢力のないボスは、そのとき尾を下げてしまいます。

2匹のボスのあいだでどちらが勢力があるのかを調べるときには2匹のボスのあいだに、えさを投げてやるとわかります。

ちょうどまん中に投げてやれば、勢力のある強いほうのボスが、ゆっくり近よってえさをとりますが、弱いほうのボスは動かないで、じっとしています。

しかし、弱いボスの近くにえさを投げてやると弱いほうのボスが急いでえさをとり、少し遠くへ逃げていって食べます。

ボスの順位は、ときどきかわることがあって弱かったほうのサルが強かったほうのサルを負かして群れの頭になることがあります。

また、年をとると強かったボスも、だんだん順位が下がってしまいます。

めすザルと子ザル

ボスの近くには、いつも子ザルをつれためすザルがいます。
めすザルと子ザルは、このボスにまもられていて、ほかのサルからいじめられません。

成長したおすザル

ボスやめすザルのいる周りには、成長したおすザルがいます。

このおすザルは、ボスになるほど強くなく、もっと強くなったらボスになろうとしているサルたちです。

成長したおすザルは、ボスがいるうちはえさ場に入って、えさをとることができません。
えさをとろうとすると、ボスに追い払われてしまいます。

若いおすザル

成長したおすザルたちのさらに外側には若いおすザルが数匹ずつ、かたまっています。

これは子どもから、若者になったばかりのサルです。



えさをとる順位

サルの群れでは、えさ場でえさをとる順位が決まっています。

まず、最初はボス、つぎに成長したおすザル、それから若いおすザルの順になっています。

めすザルと子ザルは、特別で、ボスの近くにいてボスザルといっしょに、えさを食べることができます。

ボスザルは、充分えさを食べると山の中へ入っていきます。
それについてめすザルや子ザルも山の中に入っていきます。

こうして、ボスの姿が見えなくなると、まわりにいた成長したおすザルが、えさ場に入ってきます。

そして、まだいくらか残っていためすザルや子ザルも姿を消して少なくなると、それまでいちばん外側にいた若いおすザルもえさ場に入ってきて、いちばん最後に残ったえさを食べます。

見張りザル

ニホンザルの群れには、必ず、見張りのサルがいます。
これはたいてい、群れのいちばん外側にいる若いおすザルです。

見張りのサルは、木の上に昇っていて何か群れに危険が迫ると木を揺すったり、声を上げたりして仲間に知らせます。

ひとリザル

サルの群れの近くには、群れからはなれて1匹だけで生活しているおすザルがいることがあります。

このようなサルをひとりザルと言います。

どうして、1匹だけ、除け者にされているのかわかりませんが群れに近づこうとすると、ボスザルやおすザルが追い払ってしまいます。

サルの群れの階級

えさをとる様子から、ニホンザルの群れにはボスザル、成長したおすザル、若いおすザルなどの階級が決まっていることがわかります。

また、見張りザルのような役目をもったものもいます。
ボスザルは、この決まりを仲間にまもらせるようにしています。

もし、この決まりを乱そうとするものがあると攻撃して懲らしめるのです。

また、群れに危険が迫ったようなとき、まず、めすザルや子ザルを逃がし、群れが無事に逃げのびてから最後にボスザルが逃げていきます。

ボスは、威張っているばかりでなく、いざというときには群れをまもろうとするのです。

サルのものまね

動物園のサルは、人のあたえたものをよく食べますが野生のサルは、見慣れないものは、なかなか食べようとしません。

たとえば、野生のサルにキャラメルなどをやっても、見向きもしません。
しかし、子ザルや若いサルは人に慣れやすく、すぐに食べるよりになります。

こうして、1匹が食べはじめると、ほかのサルたちも、まねをして食べるようになります。

あるとき、たまごをたべることを知らなかった群れに、ほかの群れから、たまごを食べることを知っているサルをつれてきて仲間に入れてやりました。

すると、その群れのサルも、たまごを食べるようになったということです。

このように、まねをするのは、食べ物を食べるときだけではありません。

1つの群れで、あるサルがサツマイモを洗って食べたところ、ほかのサルもまねをしてサッマイモを洗って食べるサルが多くなったということです。

このものまねをするということは、たいへん大切なことで、
これによって二ホンザルの群れは新しいことを覚えていくのです。




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