水は、植物の体の中で、つぎのような2つのはたらきをします。
形を保つはたらき
木の幹や太い枝は、細胞の壁が厚くて、しかも硬くなっていますから丈夫なのはあたりまえですが本当は、この壁は死んでいるので生活をしていません。
芽・葉・茎などのような、生活をしている部分は、みなやわらかです。
しかも、水が細胞をふくらませているので形がぴんとして、しっかりしています。
植物がしおれるのは、水がなくなって体の細胞がしぼむからです。
また、水と細胞のふくらみのつりおいで植物の体の形が保たれるだけではありません。
このつりあいによって、植物は体を動かすこともできます。
たとえば、花や葉を閉じたり開いたりするときには特別な細胞の中の水を多くしたり少なくしたりして運動をします。
また葉の気孔を開いたり、閉じたりするときにも孔辺細胞の中の水を多くしたり少なくしたりしておこないます。
養分の製造や運搬
水は、光合成で炭水化物をつくるときの原料として使われており、さらに、できた炭水化物や根から吸いあげた養分を体のすみずみまで運ぶ役目ももっています。
また、体のあらゆるところで生活のための複雑な化学変化が進んでいますがそれらは、みな水に溶けた状態でおこなわれています。
水は、根から、体の中に取り込まれると、いろいろ大切なはたらきをしながら滞ることなく葉の蒸散作用によって、外に出ていきます。
葉の蒸散作用
土から水を吸いこむのは根のはたらきによります。
吸いこんだ水を頂きまで上げるのは根の押し上げる力も少しは役立ちますが、ほとんどは葉の蒸散作用によります。
日木の植物で高くなるものはモミ・マツ・スギで30メートルもあります。
世界一高いのは、北アメリカのダグラスモミで120メートルもあります。
こんなに高いところまで水を運ぶのも、葉の蒸散作用によります。
つまり、気孔から水が水蒸気になって出ていくと葉から茎を通って根まで続いている水は引き続いて蒸発していくのです。
充分生長したトウモロコシで調べてみると晴天の日には1本で1日に約5リットルもの水を、蒸散させています。
気孔は、ふつうの植物では葉の裏側にあります。
葉の表皮はほとんど水を通しませんが、気孔が開いていると、ここから水分は水蒸気となって、空気中に出ていきます。
しかし、葉は、特別に水蒸気を吐き出すわけではありません。
濡れた洗濯物の水分が、水蒸気となって失われるように空気の乾き具合(湿度)と風によって、水分が運びさられるのです。
開いた気孔の面積は、全部よせ集めても葉の裏側の面積の5、6パーセントしかありません。
これでは葉からの蒸散は極めてわずかなものにしかならないようですが、小さな穴が点々と散らばっているために実際には、かなりの水分を蒸発させることができます。
また、この気孔を閉じさえすれば葉からの水分は、ほとんど失われないですみます。
水の蒸散をさかんにするだけでしたら水を通さない葉の表皮などがないほうが都合がよいのですが、そうなれば、植物は常に、干からびる危険にさらされます。
つまり植物は、干からびるめにあわないで、しかも水分を捨てる方法として気孔のようなしくみをもつように進化してきたのです。
また、蒸散作用は、私たちが暑いときに汗を出して、体温の昇りすぎをふせいでいるように、植物の体の熱を調節しています。
水孔のはたらき
蒸散作用では水分は水蒸気になって出ていきます。
しかし、植物の種類や、時期によって水のままで外に出ていくこともあります。
夏の朝はやく、イネや、フキ・イチゴなどの葉を見ると葉のまわりに水の粒がついていることがあります。
夏は気温が高く地中の水分もたくさんあるので根からどんどん水を吸いあげます。
ところが、夜になって気孔が閉じ蒸散作用が衰えてくると体の中の水分が多くなります。
そこで、体の中にある余分の水分は液体のままで葉のまわりにある水孔という穴から染み出てきて水滴になるのです。
炭水化物の移動
昼間のあいだに、光合成によってつくられた同化でんぷん(炭水化物)は夕方までには葉にたくさんたまっています。
しかし、つぎの日の朝までには、葉からすっかり姿を消してしまいます。
これは、炭水化物が水に溶ける形にかわり師管を通って茎・根・実などに運ばれるからです。
そして運ばれたところで水に溶けていた炭水化物は糖・でんぷん・セルロースなどにかわり、呼吸に使われたり、細胞をつくったり、あるいは栄養としてたくわえられたりします。
これを、果樹を栽培するときなどに利用することがあります。
それには、枝の皮を細い帯びのように、はぎとります。
こうすると、この部分より上の葉でつくられた炭水化物は下のほうに流れていけなくて、ここにたまります。
この手術をする時期によって、花芽をつくらせたりあるいは、すでにできている若い実を、よく太らせたりすることができます。
炭水化物の移動には、光・温度、体の水分状態などが影響しているようですが、くわしいことはまだよくわかっていません。
しかし、移動のしくみがだんだんわかってくれば植物を栽培したときに、私たちが欲しいものをいまよりも能率よくつくりだすのに、たいへん役立つことでしょう。
根からとった養分の使い道
根が水といっしょに吸いあげた養分は光合成でつくられた炭水化物とむすびついて体をつくる材料になったり、生活のための原動力になっています。
また、体のいろいろなはたらきをさかんにしたり遅くしたりするはたらきもします。
しかし植物が同じ場所にはえていても種類によって体の中の成分が違っているので、それぞれ自分に必要な養分を吸収しています。