岩石と土
自然のままの土の上には、必ず植物が生えています。
しかし岩石には植物を育てる力がありません。この点が、岩石と土の違うところです。
植物が育つためには、必要なだけの水分と養分を恨からえなければなりません。
ところが、岩石は硬くて、水をたくわえる隙間がなくまた養分元素の量が少ないので、植物を育てることができません。
しかし風化作用が進んで、割れ目ができ、岩石が細かい岩片や砂の集まりにかわると、水分が染み込むようになり、その中に養分が溶けだします。
さらに、ねん土鉱物ができると、水分や養分をある程度たくわえるので植物は育ちやすくなります。
しかしこれだけでは、土としてはまだまだ不完全です。
土の生成
岩石の風化物の上に芽生えた植物が枯れて、その遺体が、細菌やかびに分解されると、黒っぽい複雑な有機化合物の集まり(腐植)に変化して、風化物の上にたまります。
そして植物の吸い上げた養分元素は、地表に戻され地表にたまっていきます。
腐植は、酸化鉄や酸化アルミニウムとともに、砂やねん土の粒をむすびつけて隙間の多い団粒をつくるはたらきをもっています。
団粒と団粒のあいだに、植物の根や細菌の生活に必要な水分や空気が充分にたくわえられます。
このように、植物の生活を支えるという土の特性は植物と風化物との共同のはたらきで、うみだされたものです。
土の断面
穴を掘ったり、道路の切通しなどで土断面を調べてみると、土の生い立ちがわかります。
いちばん上には、落ち葉や枯れ技の腐った層がうすくたまります。
その下に、腐植にとんだ黒っぽいやわらかな層(A層)がありそこには、鉱物の根がたくさんはびこっています。
ミミズや昆虫の幼虫も、たくさん住んでいて、団粒づくりを助けています。
その下には褐色の緻密な風化物の層(B層)があり、砕くと大きなかたまりに割れます。
割れ目には、雨水といっしょに上のほうから移動してきた粘土がうすい膜になってはりついています。
土の分類のしかた
土は、いろいろな方法で分類することができます。
岩石が風化して、その場で土になったものを原積土、もとの場所から水や風などに運ばれ、別の場所にたまって土になったものを運積土という区別は土の分類の1つです。
また、土の酸性、アルカリ性などの化学的成分や土の中の砂や粘土の割合やもとの岩石の種類などで土をわけることもできます。
しかし現在、世界で広く用いられているのに岩石で動植物の場合と同じように土の生い立ち(成因)によって、分類する方法です。
これは、上の断面に記録されている、できかたの特徴にもとづいています。
日本のおもな土
ポドゾル土
高山のコメツガやシラベなどの針葉樹林の下には、腐りにくい針葉樹の葉が気温が低いためにあまり分解されず地表にたまっています。
これらの落ち葉は、強い酸をしみだして土の中の鉄やアルミニウム・アルカリ成分などを溶かし雨水といっしょに下層に運びます。
このためA層下部には、灰色で粒の粗い層ができその下には鉄分に富んだ褐色の層ができます。
このような断面をもった土は、ポドゾル土と呼ばれ、日本の北のはしの稚内付近や本州では高山地帯など針葉樹林の下に広く分布しています。
この土は酸性が強く、養分に乏しいので、樹木はあまり育ちません。
かっ色森林土
北海道・東北地方の丘陵やほかの地域の山岳のブナ・ミズナラなどの落葉広葉樹林の下に分布しています。
この土に、落ち葉や枯れ枝などがよく分解してできた腐植に富むA層と、全体的にかっ色を帯びたB層とからなり樹木がよく育ちます。
赤色土
西日本の丘陵や台地には、鮮やかな赤い色の土が見られます。
これは何万年もまえの、いまよりもあたたかかった時代にできた土のなごりです。
鉱物の風化が非常に進み、養分元素やケイ酸に乏しく鉄やアルミニウムにとんだ、痩せた土です。
ここには、はげ山や小さな松林が多く、樹木や作物はよく育ちません。
火山灰土
日本には、火山灰土が広く分布し畑地として利用されています。
北海道の十勝平野・根釧台地・南九州・関東平野などは、代表的な火山灰土地帯です。
火山灰は粒が細かいので、化学的風化を強くうけ鉱物の一部は完全に分解しケイ酸とアルミニウムが新しくむすびついてアロフェンという特殊なねん土鉱物をつくります。
アロフェンは腐植とむすびつきやすいので火山灰土には、腐植が厚くたまっています。
この腐植は酸性が強いうえ、アロフェンは、リン酸とむすびついてリン酸を植物の作用できない状態にかえます。
このため火山灰土には作物があまり育ちません。