分布の様子
広域変成岩であるケッショウヘン岩は広域変成作用によってできますがこの広域変成作用は、造山運動にともなって起こります。
それで、ケッショウヘン岩は造山運動がおこなわれた造山帯の中心部にそって帯状に分布しています。
日本は、たびたび造山運動を受けたのでいろいろな時代にできた結晶片岩地帯が各地に見られます。
そのうち、とくに著しいのは、つぎの2つの地帯です。
三波川結晶片岩帯
関東山地・天竜川流域・紀伊半島中部・四国山地・佐賀ノ関半島をむすぶ地帯で総延長700キロ以上、幅は最大26キロに及んでいます。
利根川の支流の三波川(群馬県)の名をとって、こう呼ばれています。
ここは中生代に広域変成作用をうけた地帯です。
三郡結晶片岩帯
北九州の西彼杵半島・背振山地・三郡山地・中国地方の山口・徳山・益田、岡山県中部などに点々と分布する結晶片岩地帯です。
三波川結品片岩帯のように分布が連続していないのは、広域変成作用をうけた時代が、それより古い古生代の終わり頃のため、その後にできた地層で覆われているからです。
組織
ケッショウヘン岩の、もっとも著しい特徴は、非常にはがれやすいということです。
これは、ケッショウヘン岩の組織に特徴があるからです。
ケッショウヘン岩では、ウンモなどのように板状またはうろこ状の結晶がほぼ一定の方向に平行にならんでいます。
このような組織を片理といい、平行にならんでいる面を片理面といいます。
また、しばしば片片面と平行に縞模様ができていますがこれは、色の濃い鉱物(有色鉱物)が多い部分と白っぽい鉱物(無色鉱物)が多い部分とが、平行に積み重なっているためです。
そのほか、片理とは別の方向に割れやすい面がたくさん見られます。
これは、へき開面といわれています。
ケッショウヘン岩の中に、カクセン石のような柱状または針状の鉱物が入っていると、それらは一定の方向にならんでいます。
これも片理の一種ですが、線構造といわれています。
また、片理面を観察すると、たくさんの小じわが一定方向に平行にならんでいるのが見えます。
これは片川面とへき問面が交わってできたものですが、やはり線構造の一種です。
ケッショウヘン岩に、片理・へき開・線構造などのように組織に方向性のあるのが大きな特徴です。
これは、ケッショウヘン岩ができるとき、一定の方向に力がはたらいていたためです。
造岩鉱物
広域変成作用のときには、力のほかに熱もくわえられるので
変成の前の鉱物は、たいてい分解して再結晶し、いろいろな鉱物ができています。
ケッショウヘン岩の「結晶」ということは、このことを意味しています。
種類,/h2>
ケッショウヘン岩は、変成のまえの岩石の違いや変成のときの温度や圧力の高低によって、いろいろ違った種類があります。
変成のときの温度が高いほど粒の粗い岩石となります。
堆積岩から変成したもの
デイ岩やサ岩からは、黒っぽい色のケッショウヘン岩(黒色片岩)ができます。黒い色は石墨の色です。
片理面には雲母があらわれて、キラキラ輝いています。
無色鉱物は、石英と長石です。
石灰岩は結晶質石灰岩(大理石)になりチャートは、ほとんど石英でできたセキエイヘン岩になります。
三波川結晶片岩帯のセキエイヘン岩にはしばしばコウレン石という赤色の鉱物がふくまれていて美しい桃色のコウレンヘン岩になります。
火成岩から変成したもの
もっともふつうに見られるものは、玄武岩または玄武岩質の凝灰岩から変成したケッシッウヘン岩です。
温度が低いときには、リョクデイ石という緑色の鉱物の多いリョクショクヘン岩になり、温度が高いとカクセン石の多いカクセンヘン岩になります。
ヘンマ岩
変成のときの温度がとくに高いときにできる粒の粗い変成岩でふつうカコウ岩にともなってできます。
日本では、飛騨山地・愛知県・近畿地方中央部・瀬戸内海西部・日高山脈などでみられどこでもカコウ岩の大きな岩体の付近にできています。
デイ岩やサ岩がもとになってできたヘンマ岩は石英・長石・黒雲母が主成分で、カコウ岩の主成分鉱物と同じです。
このようなヘンマ岩が、とくに粗い鉱物の粒の集まりになるとカコウ岩と区別がつかなくなります。
それで、カコウ岩のあるものは、泥岩や砂岩が変成してできたと考えられています。
また、デイ岩やサ岩がさらに高温(700度くらい)に熱せられると、溶けだしてカコウ岩のマグマができると考えられています。