弾性と塑性
金属・石・木などは、ふつうの温度では形があまりかわりません。
このような物体を、円体と言います。
固体は、空気や水のような気体や液体にくらべると非常に変形しにくいものですが、ばねのところで調べたように固体でも変形させることができます。
変形の種類
円体に力を加えると力の加え方によって、変形のしかたが違ってきます。
固体の中でも、ゴムは変形が著しいのでゴム糸や消しゴム・スポンジなどを引っ張ったり、押したり、ねじったりしてその変形の様子を調べてみましょう。
力の加え方と、変形の様子をまとめてみるとつぎのような種類にわけることができます。
①伸び
両はしを引っ張ると、その方向に伸びる。
②縮み
両はしから押しつけると、その方向に縮む。
③曲がり
板ばねの実験のように、両はしを支えて、中火に力を加えると曲がる。
片はしだけ固定して、別のはしに力を加えてもよい。
曲がりは、一部分が伸びて、他の部分が縮んだ変形とみなされる。
④ずれ
上下の面で、面に沿って、反対方向に力を加えたときの変形。
見た目には、マッチの外箱を押し潰したような形になる。
⑤ねじれ
両はしをねじるときの変形。
まえに実験したように、つるまきばねの各部分は、これと同じ変形をしめす。
これは、ずれに基づいている。
⑥体積の変化
水の中に沈めたときのように、すべての方向からいちような力を加えると体積が小さくなる。
弾性と弾性変形
このように、力の加え方によって、固体はいろいろの形にかわりますが引っ張った場合について、くわしく調べてみましょう。
図のように上のはしを固定した棒を引っ張ると、その方向に伸びます。
このとき、力が大きいほど、伸びの量も大きくなります。
実験によると、引っ張る力Fと、伸びの量Xは比例します。
いま、この棒のもとの長さをl(センチ)とすると(x÷l)を伸びの割合と言います。
これは1センチあたりの棒の伸びをあらわします。
いっぱんに、変形の割合をひずみとも言います。
加えた力に応じて、棒の内部にも力がはたらいています。
いま、棒の断面積をS(平方センチ)とすると、(f÷S)が棒の断面1平方センチふたりにはたらく力になります。
このようにあらわした、物体内部の力を応力と言います。
引っ張りの場合は、引っ張り応力と言います。
応力(f÷S)をひずみ(x÷S)でわったものを、弾性率と言います。
引っ張りの場合は、伸びの弾性率ともヤング率とも言います。
弾性率は、それぞれの材料について形の大小に関わらず、一定の値を持っています。
棒に加えた力を減らしていくと、変形は次第にもどり全く力を取り去ると、もとの形にもどります。
このように、力を加えると形を加え、力を取り去るともとにもどる性質を、弾性と言い、このような変形を弾性変形と言います。
弾性限度
加える力が、ある大きさを超えると力を取り去っても変形が残るようになります。
このときの境目の応力を、弾性限度と言います。
塑性と塑性変形
物体に、弾性限度を超えた力を加えると力を取り去っても完全にはもとの形にもどらず変形が大分残るようになります。
このような応力の範囲では、物体は塑性をしめすと言います。
そして、この場合の変形を、塑性変形と言います。
したがって、塑性というのは、物体に力を加えて変形させたときその変形をそのまま残す性質ということができます。
銅線や鉛の板、ヒューズの針金などを曲げてみると曲がったままになりま
す。これは、塑性よる変形です。
塑性のことを、プラスチシティとも言います。
プラスチックというのも、これからきた言葉で、熱や圧力を加えた場合に、著しいそ性をしめす高分子物質を、ひっくるめて言います。
金属は、プラスチックとは言いません。
ベークライトは、熱によって変化し、しまいに硬くなります。
いったん硬くなると、もとにもどりません。
塩化ビニル樹脂は、熱すると、やわらかくなって変形しやすくなり冷えると、そのままの形を保ちます。鉄も、熱すると塑性を増すので。
自由に加工することができます。
私たちが使っている、機械や器具の大部分に塑性か利用してつくったものです。
実験
縫い針を1本用意して、指で少し曲げてみます。指をはなすとすぐもどります。
これは、針が鋼でできていて、弾性をもっているからです。
つぎに、この針を、マッチまたはガスの火で赤く焼いた後、板の上において自然に冷まします。
こんどは、これを指で曲げると、よく曲がります。
これは、塑性が著しくなったからです。
このように、鋼は焼きなますことによって、やわらかくなることがわかります。
つぎに、この針をもういちど赤く焼いた後、冷たい水に、急に投げ入れてみます。
これを取り出して、指で曲げてみると、こんどは硬くなっています。
このようにすることを、焼き入れと言います。
焼き入れによって、針には、ふたたび弾性が出てきましたがそのかわり、少しもろくなっています。
鋼の変形
鋼は、弾性の著しい金属ですが弾性限度以上の力を加えると、やはり塑性をしめします。
鋼を引っ張るとき、外力を一定にしておいてもずるずると伸び出す点があります。
この点の応力を、降伏点と言います。
降伏点を越えて、さらに引っ張っていくとしまいにはF点で切れてしまいます。
図は、これらの様子をあらわした、応力ひずみ曲線です。
この曲線で、E点の応力が、見かけ上もっとも大きくなっています。
このときの応力を極限強さと言い、実用上これで材料の破壊に対する強さをあらわします。
加工硬化
図のG点で、力を静かに取り去っていくと応力とひずみとの関係は、GMのような直線になります。
この鋼にふたたび力を加えていくと、ほぼMG線上の弾性変形をおこない、弾性限度は、まえより大きくなります。
そして、このときの弾性限度を越えると、ほぼ曲線GFをたどります。
上の図で、たとえば、亜鉛に500パーセントのずれをあたえるとさらに変形を続けるには、はじめの約7倍の応力が必要です。
このように塑性変形で硬くなることを、加工硬化と言います。